S→味わい深く、いつまでも心に残りそうな作品

幻詩狩り/川又千秋……

面白かった。
ただし、作品のテーマを読み取れている自信はなく、もう少し考えてみたいところ。

物語としては、シュールレアリスムというナチスによって弾圧された前衛芸術。
その最先端を行く、フー・メイの『幻詩』には人の心を狂わせる麻薬効果がある。
その麻薬を取り締まるため、大量の殺戮が行われる『幻詩狩り』。それは、焚書・言葉狩り・言論統制への警鐘として読める。
しかし、では言論統制・焚書はNGなのか?

芸術を破壊する事は罪なのか?と考えると、『普通に』考えればNGであり罪だろう。
レイ・ブラッドベリの「華氏451度」で描かれたように。
しかし、この作品での『幻詩』は覚せい剤的効果がある。というか、覚せい剤のようにしか読めない。とすると、『覚せい剤、という芸術を統制する』事は罪なのか、NGなのか、という、よりシリアスな領域に足を踏み入れてしまう。

言論統制は、悪だと思う。
しかし、言論統制を覚せい剤に置き換えると、覚せい剤を取り締まることが悪だということになってしまう。

なるほど、シュールレアリスムという芸術において、麻薬を利用する事もあった。
社会一般的なルールを逸脱し、麻薬・覚せい剤効果を引き起こす芸術(=覚せい剤という薬物)も一概にNGではない、一種の芸術表現として、現実の壁を超えていく事への恍惚感と恐怖を描いた作品、なのだろうか?

個人的には、『2131年の火星』さえ出て来なければ、そこまで言論統制的なメッセージを感じる事もなく、普通に鈴木光司「リング」の詩verとして読めたので、そっちの方がシンプルで、テーマ性に悩むことなく楽しめたような気がしている。
実際、ドラッグ小説として、この作品の『幻詩』のイメージ喚起力は、過去読んだ作品の中でもディレイニーに匹敵するレベル(で、ディレイニーよりも遥かに読みやすい。)
ギラギラと、クラクラと眩暈のするような、『黄金の時空間』を楽しめた。


A→読んで良かったと思える作品


猶予の月/神林長平……
上巻は『両想いの姉弟』の思惑が面白い。時間が止まるまでの話。
下巻は「マトリックス」みたいな活劇中心だったので、上巻の方が好き。
とりあえず、ストーリーを紹介するのが凄い難しい話でした。



B→暇つぶし以上の有益な何かを得た作品

パヴァーヌ/キース・ロバーツ……
1588年、イギリスがスペインの無敵艦隊に敗れ、スペイン・カトリックがイギリスを支配した架空の世界。
蒸気機関車が走り、未だに産業革命前のイギリスを舞台に、法王の支配からの独立機運が密かに高まっていた。


C→暇つぶし程度にはなった作品


D→自分には合わなかった作品

E→プロ作品として見るにはつらい作品