86点。

本作は、ゴーストの噂が頻繁に囁かれる冬の地方都市、内田川邊市を舞台に、
復讐の念に凝り固まった河野初雪(主人公)が、『復讐までの、かけがえのない時間』を過ごす、
青春恋愛作品です。

初雪は幼少時、父親からの『洗脳』を受け、成長してからもその復讐だけを目標に生きてきました。
大切な家族であるランが初雪を支え続けましたが、
高1の冬、そのランをコノハサクヤに殺された事で、初雪の復讐の念は更に強まり、物語が始まります。


☆ランルート 評価 A

共通ルートと言った方がいいですね。
掴みはOKという感じで、とても面白かったです。
なんだかんだで、最初の数時間でノリが合わないと、最後までプレイするのは苦痛ですからね……。

物語の謎がスムーズに明かされるため、中だるみすることなく、読み進めていけますし、
初雪に想いを寄せる桜の痛ましさも含めて、先が気になる展開になっています。

ランに関しては、あまりヒロイン、という感じはしませんが、
初雪をずっと見守り続けてくれた家族であり、本当に貴重な存在だったんだなと感じました。
夏目漱石「坊ちゃん」で言う、お清ばぁやみたいな安心感がありますね(伝わりますか?)。

ランがいなければ初雪は、高校1年生まで成長できなかったでしょう。
初雪の人生で、一番大切な存在と言う事ができるかもしれません。

それだけに、ランを失った初雪の復讐心にスッと共感することができれば、本作は楽しめるんじゃないかと思います。
(ランの大切さが本当の意味でわかるのは、最終ルートだったりしますが……)


☆綾ルート   評価 A+(S~E)

家もなくし、ネットカフェ難民や剣道場での不法宿泊など、最下層をはい回った初雪ですが
(あれ、学費はどうなってたんだっけ……?)
そんな初雪に助けを差し伸べたのが、小坂井姉弟や東雲妻といった人たちでした。

綾のクールな立ち振る舞いと、その裏に隠れた優しさに魅せられ、切ないエンディングを迎える
綾ルートはかなり好きなルートです。

ただ、個人的に桜よりも綾(桜も好きですが)が一番の推しヒロインだったので、
最終ルートで綾と幸せになるエンドも、ほしかったですね。
サクヤとの対決で、綾がボロカスに言われた時にはサクヤに殺意を覚えました(苦笑)

初雪のために自分を犠牲にし、必要とあらばどこまでもついていく、
クールな仮面の下に激しい情熱を秘めた小坂井綾は、かなり好きなヒロインです。



☆夜ルート  評価 B。


前半はラブコメ、後半は胸糞悪役が出てくる胸糞話+伏線のための話という感じで、正直微妙でした。

ただし僕自身の持病のため、胸糞悪役に過剰にストレスが溜まるので、
そこは割り引いて考えないといけないかもしれません。

とりあえず、黒幕に立ち絵すらないのはどうなんだろう。
黒幕には苛烈な制裁を受けてほしいと思いましたが、あまりにもヌルいですし、
かと言って、「敵を赦す」という物語でもなかったので、どっちつかずかなと。

夜ちゃん自身はかわいかったですが、どちらかというと恋愛相手のヒロインというよりも、
楽しくツッコミを入れてくれる後輩、『ホワイト・グラデュエ―ション』一番の常識人として、
日常シーンなどでの活躍が光りました。


☆希ルート  評価 A。

別れが決まっている恋人たちが過ごす、かけがえのない季節。
これはどのルートでもある程度共通して言えることですが、希ルートではゴースト関連の大きな動きよりも、二人の関係に比重が置かれている分、入り込みやすいルートでした。

希はアホの子でもありますが、その穢れのないまっすぐさは眩しいと感じました。
表に出すのが気恥ずかしいような気持ちも、希はストレートに出してきますよね。
こんな「親友」が懐いてくれたらいいなと、思いました。

復讐ではなく、誰かのために委員会活動を行なうことができて、
初雪も成長できたのではないでしょうか?


(好みを言えば綾なのですが)
初雪にとって、実は一番幸せになれるパートナーは、希なんじゃないかなと個人的には思っています。

初雪が間違った道を進んでしまう場合、希なら全力でそれを止めてくれると、最終ルートなどを見ても感じました。
(夜も止めてくれそうですが、希の方が断固たる感じで止めてくれそう。
綾は一緒に地獄に落ちていっちゃいそうなので……)



☆シロクマルート 評価 B


前半がDで、後半がA-、でしょうか。
前半の日常掛け合いは正直、相当しんどかったです……。
シャケクマがどうとか、全然面白くないし……💦💦
最初のヒロインがこのルートだったら、投げてたかもしれん……。


そのシロクマが成長し、片思いから『卒業』する話として
後半は結構切なかったし、面白かったです。
シロクマも高校生版はまずまずかわいいです。

ただ、作品の本筋にそこまで関わってくるかというと微妙ではありますよね。
佐々木議員の孫娘、というのはありますが、最終ルートでもシロクマはただ受験しているだけですし……。



☆ 桜ルート 評価 A。

グランドルート。
ついに父親の「洗脳」を乗り越え、初雪の心が『雪解け』を迎えるルートです。
春を迎えるまで、長かったですね。

他攻略ヒロイン(夜・希・綾・ラン)の印象が良くなったルートでもあり、
伏線をほぼ回収したという意味で、首尾よく〆ることに成功したと感じました。

ずっと、初雪を見守っていた桜。
たった一度の冬を一緒に過ごしたい、という桜の想いが叶い、無事に皆で卒業できました。


さて、初雪は今後どう過ごしていくのでしょうか? 今後も桜は彼を見守り続けるのでしょうか?


物語の流れを考えれば、初雪は新しい道を進み、桜は成仏(?)するという事になると思うんですが、
集合写真にちゃっかり入っていたので、正直よくわかりません。
(集合写真のシーンは好きですけどw)

初雪がこれからも桜への想いに囚われ、桜もまた初雪を見守っているならば、
作品テーマとして『未練・執着=ゴーストからの卒業』にはふさわしくないように思います。
何せ、元彼への想いに1年間囚われていただけの綾ですら、コノハサクヤからゴースト扱いされていたぐらいですし……。

一方で、これからもどこかで桜が初雪を見守っていてくれたらいいなというのは、やはり思ってしまいますし、初雪も『良い思い出として』桜のことを消化していってくれればいいなと思います。


他に、気になったのは桜の立ち位置です。
というのも、「初雪を陰ながら見守る」という立ち位置は、ランとモロ被りするように思うからです。
別に被っても全然いいんですが、それなら最終ルートのヒロインはランでも良かったように思いましたw


個人的な妄想ですが、今後、初雪はランをパートナーに選ぶんじゃないかなと思います。
ランは爆発事故で顔を火傷してしまったようですけど、そんな事関係なしに、結ばれてくれればいいなと。
もっとも、火傷という形で、否が応でも『過去』と結びついてしまっているのが、テーマ的にはネックかもしれませんが……。


それ以外のヒロインですと、前述したように希がベストパートナーかなと個人的には思っています。
初雪が悪いことをした時に、

ラン=優しくたしなめながら、見守る
桜=見守る(そもそも成仏してしまっている?)
綾=初雪と一緒にどこまでもついていく
シロクマ=そもそもグランドルートでは、ほとんど接点がないので論外
夜=消極的ながらも、初雪を止める。
希=積極的に、初雪を止める。


という姿が、思い描けるからです。
あくまでも一番好きなヒロインは綾ですが、初雪にとって一番いいのは、こう考えると希かなって。


もう1点、素朴な疑問として、カフェのオーナーの正体は来栖先生で良かったんでしょうか?



長くなりましたが、長文・乱文を読んでいただきありがとうございました。