準決勝、決勝が、これから始まる。
チームの総括は大会が終わってからするべきもので、今するべきものではない。
という事を前提にしたうえで、ここまで残った4チームの印象をざっと書いてみる。
順番は、私が応援している順である。


☆デンマーク

今大会最大のサプライズチームはデンマークだ。
それはエリクセンの突然の離脱から始まった。
しかし、私がデンマークを応援するのは当然それだけが理由ではない。

デンマークは代々、美しいサッカーを展開してきたチームだ。
90年代のラウドルップ兄弟の躍動から、グロンキア、ロンメダールの鋭利なサイドアタックを武器にした2000年代。
ところが、2018ワールドカップのハレイデ・デンマークではその姿は見る影もなかった。
自陣からのカウンターだけが武器のチームに成り下がり、ペルーどころかオーストラリアにすら劣勢に立つ始末だった。

しかし今大会、ヒュルマン体制でのデンマークはかつての輝きを完全に取り戻している。
ダムスゴー、ブレイスウェイトが巧みにポジションを入れ替える流動的なサイドアタック、フィニッシャーのドルベア、そして途中投入されるポウルセンと前線の破壊力はスペクタクルで、
そこにサイドバックのストリガー・ラーセンやメーレまでが絡んでくるのだから手に負えない。
ディレイニーとホイビェアが支配する中盤のボール出しも極めて質が高い。

弱みはやはり圧倒的な個のタレントに欠けるところだろうか?
とはいえ、エムバペのフランスも、ルカクのベルギーももういない。
イングランドに勝てる可能性が高いとは言えないが、期待して観たいと思っている。


☆イタリア

恐らく、サッカー観戦人生で初めて、イタリアを応援している。
マンチーニ監督が作り上げたチームは、かつてのナポリを思わせる。
崩しの軸となるインシーニエがタクトを振るえば、逆サイドから売り出し中のキエーザが果敢に攻め立てる。ストライカーのインモービレも好調で、ベンチにはベラルディやベロッティも控えている。

中盤はベスト4に残ったチームの中では間違いなくベスト。
ジョルジーニョ、バレッラ、ヴェッラッティ、そしてロカテッリ。
とりわけジョルジーニョのレジスタとしての能力は、クロースと並んで現役最高だと思っている。
スピナッツォーラの負傷は残念で、大ベテランのキエッリーニが衰えを見せるなど最終ラインにはやや不安も覚えるが、最後尾にはドンナルンマが構えているし、
90分での失点は未だにベルギー戦でのPK1本だけである。

このチームの未来は極めて明るく、ベンチにも一体感・充実感が漂う好チームだ。



☆スペイン (注:イタリア戦で素晴らしい試合をしたので、これを書いた時とはだいぶ印象が変わっている)

ある意味で最大のサプライズチームだ。
ベスト4の中で、唯一、この位置にいることに首を傾げてしまうのがこのスペインである。

確かにポゼッションは圧倒的で、チャンスクリエイト力でもトップの数値を叩きだしている。
しかし、それに反してオフェンス面でそれほど圧倒的なようには見えない。
相手に退場者が出たスイス戦の後半終盤以降やクロアチア戦の延長など、スペースが開いた状態ならば、敵陣を攻略し猛攻を仕掛けることができる。
とはいえ、敵陣にスペースがない状態で、ゴールをこじ開ける力はこのチームにはない。
90分での勝敗は、1勝4分0敗。勝ったのは、スロバキア戦だけだ。
では守りの固い、負けないチームなのかと言われると、とんでもない。
ポーランド戦、クロアチア戦、スイス戦と3試合にわたって追いつかれている(クロアチア戦は2点差を追いつかれた)。
とりわけCBにはタレントが不足しており、パウ・トーレスもラポルテも、そしてもちろんエリック・ガルシアも不安定極まりなく、守勢に回った際の中盤のフィルターも弱い。

長所はフェラン・トーレス、サラビアの先発陣に、オヤルサバル、ダニ・オルモ、ジェラール・モレーノと豊富に繰り出せる両翼の選手層の厚さだろう。
また、相手に体力勝負で勝る事が出来るのは、ポゼッションを徹底する事で体力面の消耗を抑えているためだろう。

しかしベスト4に勝ち上がってなお、「復活」とは言えないのがスペインの現状である。


☆イングランド

ファンの方には怒られるかもしれないが、最も魅力を感じないのがイングランドだ。
守備は固いのだが、とにかく攻撃がつまらない。
シュート数では1位イタリア、2位スペイン、3位デンマーク(90本)と、いずれもベスト4に勝ち上がったチームが並ぶのに対し、イングランドは37本だそうだ。
ケイン、スターリングは好調だが、中央での崩しはほぼ見られず、チームに流動性を感じたのはドイツ戦の、開始15分だけだった。
ただし、失点はしない。速攻を受ける機会が少ないのが大きな理由だろう。
中央でボールを奪われる機会がほぼないのは、同じく超守備的なラ・リーガのアトレティコ・マドリ―を思わせる。
そう、中央での崩しがほぼ見られないのだから、中央で奪われる回数が少ないのも当然だ。
それ故に、得点も失点も少ない。

とにかく固いチームであり、ホームアドバンテージも期待できるイングランドは、
優勝にかなり近いチームだと言う事はできるだろう。
それを私が望むかどうかは、別として。