S→味わい深く、いつまでも心に残りそうな作品


虐殺器官/伊藤計劃……

人を虐殺に駆り立てる『虐殺文法』の設定が秀逸。
『アメリカを守るため、世界を滅ぼす』ジョン・ポール。
そして形こそ違え同様の思想を持つウィリアムズが、主人公クラヴィスの愛する人ルツィアを殺した事、
自分を愛してくれていたと思っていた母親の真実の気持ちに触れた事から、主人公のクラヴィスは『世界の人々のために(詭弁)』アメリカを虐殺の坩堝へと叩き落す。
それが、彼の考えるルツィアを殺したウィリアムズに対する復讐であり、ジョン・ポールの起こした災厄による贖罪だった。

人は『大事な人を守るため』に、『無関係な人を殺す』。
愛のために、人を殺す。
微グロがちょっと苦手だったけれど、名作。


ハーモニー/伊藤計劃……記事はこちらで書きました。


真夏の方程式/東野圭吾……
今まで読んだ東野作品10作の中では一番好きかも。

夏の海で起こった一つの事件。
ミステリというよりも、主人公たちと一緒に寂れた旅館に泊まって、一夏を過ごす旅情が感じられる。
事件自体も、伏線がしっかり貼ってあり良い。

ただ、第二の事件に関しては、犯人が殺意に目覚めるまでが早すぎて「お前、殺さなくても普通に解決できたやろ」としか思えないのが若干の減点。

あと、僕の読解力のせいで、玻璃ヶ浦での生活を満喫しているところで、東京sideが出てくるとちょっと戸惑った。それを差し引いても名作。
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このタイプの作品ではジョン・ハートの「ラスト・チャイルド」、トマス・クックの「緋色の記憶」、ウィリアム・クルーガーの「ありふれた祈り」といった作品群が大好きなんだけど、
日本にもちゃんとこういうの、あったんだね。


ナミヤ雑貨店の奇跡/東野圭吾……
非常にプロットが整った作品であり、作者の技巧を感じさせる作品。 作品自体も「最も泣ける感動作」はともかくとして、「良い話だなぁ」と思わせるものが続く。

1話の病気の恋人の看病と、オリンピック出場のどちらを取るかで悩む女性や、 2話の売れないミュージシャンの話も印象的。 伏線回収を担っているのが実は3話なので、完読後に3話を再読する事になったw

この手のタイムトラベルものにしては、生活臭が漂うヘヴィな内容が出てくるのが東野さんらしくもあるけど、許容範囲。  最後、「迷える子犬」さんにもう一度再会するところまで書いてほしかったけど、まぁいっか。


日本沈没/小松左京……

中々凄まじい災害小説で、『日本だけが沈没』というのがまた(世界中が沈没以上に)胸に来るものがあった。
今まで読んだ小松さんの作品の中では最高傑作。

欲を言えば、小まめに日本地図をつけてほしかった。
日本地理に弱いので、地名を言われてもわからん……


A→読んで良かったと思える作品

地球からの贈り物/ラリー・ニーヴン……

ニーヴンらしい緻密なSF世界観と、ニーヴンらしからぬシンプルかつ活き活きした冒険物語で、
ガチガチSFで読みにくい「ノウン・スペース」シリーズにおいて、娯楽性の高い作品に仕上がっている。


魂の駆動体/神林長平……

『ディック的世界観』+『車』+『老人2人の友情』物語で、
車には全く興味がないため83点だったけど、それでも楽しめたんだから、車好きならもっと楽しめるはず。自分も老人になった時に、こんな友だちが側にいたら嬉しいなと思った。
意識とは何か、知覚とは何か、魂とは何かを探求する『ディック的世界観』なので、
ある種、夢オチと言えなくもないような、夢ではないような。その辺は読者の想像に任せる感じだけど、それでいい。

(追記)「魂の駆動体」の第二部だけど、
『現実説』と『夢オチ説』それぞれに良いところがあるなと思う。

メタ的な事を言うなら『現実説』しかない。
夢の中で主人公はキリアになっているけど、アンク視点のパートもあるので。
キリアの見た夢だと考えるなら、その視点移動は『反則』だと思う
ただ、『夢オチ説』の良さは、主人公が昏睡している間、いろんな人たちが病室を見舞って主人公に声をかけてくれていた、という
人間的な暖かさを感じられること。
このセリフは、誰が見舞いに来た時のものかな?などと考えるのも楽しい。

『現実説』を僕は取るけど、夢オチ説も味がある。

柳生忍法帖/山田風太郎……
忍者もエロも出てこない、シリーズでは異色の剣術チャンバラ作品だけど、普通に面白かった。
沢庵和尚や、ラスボスの銅庵、最後の柳生十哲登場などの下巻は少しダレたけど(そういうのはなしで、純粋な剣術アクションが面白かった)、それでも良作。


百舌鳥の叫ぶ夜/逢坂剛……

チリのピノチェト大統領来日に際して、暗殺への警備と、公安警察の躍動。
そして、「男の娘暗殺者」の百舌鳥。

大勢の思惑が入り乱れるノンストップサスペンスは、複雑な構成、(当時の)世界情勢、巧みな伏線に支えられている。

最後、少しあっけなかったけどね。


夜のオデッセイア/船戸与一……

八百長ボクサーの主人公、その元カノで売春婦に転落した女と、売春婦に育てられている孤児の黒人男子。
あぶれもののプロレスラー2人と、八百長ボクサーのトレーナー。

人生に失敗した6人が、パーレヴィの財宝を求めて輝きだすも、それも束の間。
再び八百長ボクサーとトレーナーは、オデッセイア(車)に乗って広大なアメリカを走り始める。

しかし、最後をギャグで〆るとは思わなかったなw


B→暇つぶし以上の有益な何かを得た作品

友よ、静かに瞑れ/北方謙三……

七人のおば/パット・マガー……感想記事はこちらに書きました。

秘悪書争奪/山田風太郎……

EDになった将軍家定のため、伝説のエロ本を求めて、忍者たちがエロ忍術で戦う、という設定は素晴らしかったんだけど、
今回はキャラ的に少し弱めで、シリーズの中ではハズレ気味。
ラスボスは「相手と一緒にエロい夢を見て、相手を操る事が出来る忍者」でした

忍法忠臣蔵/山田風太郎……
『忠臣蔵』本来の面白さに忍術を絡めた【二次創作的】作品。
そのぶん、忍者同士の戦いは正直いらなかった気もするけどw

婚約者を刺身にした序盤のシーンがラストに繋がってくる構成は秀逸。


フロスト日和/ウィングフィールド……
前作「クリスマスのフロスト」よりは面白かった気がする。

ブラック体質のフロスト警部&デントン署、無能揃いの警察官の中で、フロスト警部は比較的マシな方、という感じ。
多数の事件を絡み合わせて、見事に全てを解決してしまうプロットは流石。

新平家物語/吉川英治……
最後の方は義経話が多いというか、頼朝と梶原景時が真のクズキャラだったなって。
清盛の姿が活き活きと描かれている前半が面白い。平家の時代が良かった……。
後半は、陰湿な源氏内でのいじめっ子頼朝が暴れるので鬱。


ワインズバーグ、オハイオ/アンダーソン……
アメリカの田舎町を舞台にした群像劇。
複数の短編に出てくるキャラクターに関しては、登場人物紹介がほしかったところ(ジョージとかトムとかエリザベスとか、よくある名前で頭がこんがらがった)



白銀ジャック/東野圭吾……


オックスフォード運河の殺人/コリン・デクスター……
入院中のモース警部は暇つぶしに100年以上前の事件に興味を持ち、驚くべき真実を掴む。デクスター作品の特徴でもある、モース警部の混線した迷推理がない分、デクスターファンには物足りないかもしれないが、個人的にはスピーディーでこちらの方が好み。
あと、入院中にモテモテのモース警部がウケた。

猟犬クラブ/ピーター・ラヴゼイ……
めんどくさいミステリオタクの社会人サークルでの殺人事件。

ラヴゼイに求めていたものとは違ったけど、最低限は楽しめた。


戦闘妖精雪風・改/神林長平……
妖精さんが戦う話かと思ったら、戦闘機の話かよww
というのはさておき、ところどころ神林さんらしく『ディック的世界観』が垣間見られたものの、全体的にはメカメカしい(?)SFで、あまり肌には合わなかった。

新宿鮫/大沢在昌……
最後の50ページは、サスペンス性が溢れて面白いし、序盤の伏線もハマって見事な出来。
読後感としては、『プロットのしっかりした、レイモンド・チャンドラー作品』といった印象。

あまりにもホモホモしく、BL描写が苦手なため。気にならない方なら72点。
あとは、ギリギリ平成に書かれているんだけど、
ケータイ電話がなかったり、カセットテープがあったり、溢れる昭和感が凄かったw



殺しへの招待/天藤真……

これは天藤さんには珍しい、後味の悪いミステリだなぁ。
被害者は性格ブスすぎるので殺されても仕方ないが、
犯人も負けず劣らずヤバい。
ある意味お似合い夫婦だったような気もするけどな。

車輪の下/ヘルマン・ヘッセ……
ヘッセ自身は14歳から数年間人生のどん底を味わうけど、18歳で復帰してるから、良かったね。
「車輪の下」の主人公ハンス君は復帰できなかったヘッセだけど、とにかく周囲にクズしかいないのがつらいですね。
最悪なのは校長だけど。

C→暇つぶし程度にはなった作品

森を抜ける道/コリン・デクスター……
モース警視シリーズが好きな人には楽しめるんじゃないかな。



忍者月影抄/山田風太郎……
このシリーズのファンだけど、今回は外れ。
「エロ」+「人間ドラマ」+「無常感」+「厨2バトル」の四拍子揃っているのがこのシリーズの良さだけど、今回は厨2バトルしかない。

各キャラ1人につき1つの忍法を持っているのがこのシリーズの特色だけど
キャラクターが立っていないと、忍法だけの存在になってしまうし、
その忍法自体も今回は大人しめ。

ついでに、今回は闘うのが男だけだからエロもないw


新宿鮫2毒猿/大沢在昌

黄金銃を持つ男/イアン・フレミング……
007シリーズ最終作として、何となく感慨深いものがある。敵の『黄金銃を持つ男』は、黄金銃をほとんど使えなかったけどw
『ドクター・ノオ』で出てきた、友人キャラのライダーや、ジャマイカが出てきたのは懐かしかった。



夜のフロスト/ウィングフィールド……
『イジリ』と『笑い』のバランスを間違えたなぁと思う作品。

イジられ役が嫌な奴だったり、剽軽に描けていればいいけれど、本作のギルモア君はひたすらかわいそう。

ミステリー部分の出来とかよりも、ギルモア君への同情しかなかったです。




D→自分には合わなかった作品


火星夜想曲/イアン・マクドナルド……アーニー・テネヴラが政治家の道を志した中盤以降、凄いつまらなくなった(それまでもそこまで面白かったわけではない)ので、後半きつかった。

ムーンレイカー/イアン・フレミング……
相変わらず、最初はカード詐欺のチンケな悪役が、突然世界を破滅させる大物になるという謎プロットは健在。

007は二度死ぬ/イアン・フレミング……
タイガー田中とかキッシー鈴木とか、プロレスラーみたいな日本人だらけである意味面白い……。



E→プロ作品として見るにはつらい作品
 

これから読む本







星の王子さま/サン・テグジュペリ……


『神の力』が笑えた。


ヴェノムの盲点/野尻抱介

非合法員/船戸与一

陽だまりの彼女/越谷オサム……