ゲーム関連

美少女万華鏡 神が造りたもうた少女たち(ネタバレ感想)

83点。


物語の展開は非常にオーソドックス。

孤独な主人公→ロボットの目覚め→ロボットとの反目(村人との反目含む)
→ロボットとの和解(村人との和解も含む)→恋人へ(蜜月)→夢の終わり(暗転)→新しい生活へ


という流れです。


人と関わりを持てず孤独に生きてきた主人公の博士(ひろしではありません。はかせです)は、ロボットを練習台にコミュニケーションを取ろうとします。
しかし、そのロボットとすらうまくコミュニケーションが取れません。
このロボット(アリス)は非常にワガママで感情の起伏が激しく、付き合うには難しい相手でした。
(典型的ツンデレだと思って読めば、非常に解りやすい娘ではあるんですが。リアルであの態度を取られたら、難しいですよね)

そんなアリスに手を焼いて、力で従わせようとする博士とアリスの亀裂はますます深まっていきます。
アリス自体は非常に高慢でワガママな性格をしているのですが、
彼女の不満、寂しさ、見捨てられることへの不安と悲しみが非常に巧く描写されており、
博士やプレイヤーに、「ウザい奴」ではなく「面倒だけど憎めない奴、かわいい奴」として印象づけることに成功しています。


無表情なドロシーは、アリスとは違い博士には従順ですが、心に壁を作っています。
そんなドロシーが博士に対して(確かひまわり畑を見た後のシーンだったと思うんですが、自信ナシ)
「口だけの人ではなかったんですね」と話すシーンがあります。
この辺りから、そして博士が見せるアリスに対する優しさ(甘さとも言えますが)を見て、少しずつドロシーの表情が豊かになっていくのも、印象的でした。


そうして関係が深まっていく博士とアリス&ドロシー、そして村人たちでしたが、そんな平和な日常に1つ目の爆弾が落ちます。


アリスとドロシーを村に連れて行ったことから、2人がリリーと接触し、その夜「アリスとドロシー、どちらを取るのか?」と2人に迫られる……そんなシーンがあります。


この作品での博士のNG行動は1にも2にも「2人を村に連れていく」事にありまして、ロボットが身を隠さざるを得ない世界では、非常に危険な行動だと言わざるを得ません。
実際、3回目の(ドロシールートでは2回目の)NG行動によって、楽園での生活は終わりを告げてしまいます。


アリスとドロシー、どちらも選べなかった博士は一度リリーの元へ。
ここで最初の選択肢、「リリーエンド」への選択肢が発生します。


リリーと結ばれた博士は、その後研究に身が入らずに、研究所を火事にしてしまい、アリスとドロシーを失い
廃人になってしまうというエンドです。明らかにバッドエンドですね……。
唯一の人間ヒロインなのに……やはり博士は人間とは結ばれないさだめなのでしょうか。


さて、本筋ではリリーの誘いを断って一路家へと帰ります。
そこで、今までアリス寄りの選択肢を選んでいればアリスルートに、ドロシー寄りの選択肢を選んでいればドロシールートに入ります。この2つのルートは物語自体はほとんど同じで、これがメインルートになります。


どっちつかずの選択肢を選んだ場合はハーレムルートになります。ここでは、幸せに暮らす3人の姿が描かれており……メインルートよりも、こちらのルートの方が遥かにハッピーエンドですよね。
リリーも死なないし、村も崩壊しないし、2人とHできるし……。
物語自体は尻切れトンボだけど、これからも楽しく3人でお幸せに! 完!



で、終わってしまってはあれなのでメインルートの感想へ。
アリスとドロシーを再び村に連れていく、というNG行動の結果、誰にとっても悲惨な展開へと繋がっていくわけですが、
このルートで面白いのはエンディング。
顔にやけどを負った主人公は自らの容貌に強いショックを受け、『化け物』と形容します。
それはそうでしょう。動揺するのは当然です。


ただ、そんな博士の容貌を、アリスやドロシーは受け入れてくれました。
生き残った人々であるブギーマンも受け入れてくれました。
そして、エピローグでの博士は、元気を取り戻しているように思えます。
これはつまり、「誰も気にしない:皆から受け入れられる障害」は最早、障害ではないということだと思いました。


ジョン・ヴァーリィの短編小説「残像」では、盲目の人々が集まって住んでいるコミューンがあります。
孤独を感じていた主人公、どこに行ってもハズレものだった主人公は、
彼らの仲間に入るために、自ら進んで目を潰すのです。
そうして、主人公はコミューンに受け入れられ、そこで幸せに暮らしていきます。


「村」を失った博士でしたが、ブギーマンと共に暮らす新たな生、決して悪いものではないように感じました。
ただ、ラストの「たった一つの冴えたやり方」はちょっと浮いていたかなとはw



本作では、ライターの趣味でしょうか。
非常に様々なところからパロディやオマージュが取られています。
単に名前を借りたところだけで言えば、30や40じゃきかない感じで、
それもラノベやアニメからギャルゲ、古典童話に海外SFに海外ドラマなど、割と広範囲なところから取られているのが趣深いです。

ある意味ひけらかしとも言えますが、僕などは単純なので「おぉ、そうきたか!」と思ってしまいました。
また、火傷の描写やウィルスの説明などは、きちんと調べて描いている印象を受けましたし、SF的世界観もきちんと作りこまれていて、「短編抜きゲーでしょ?」と思ってプレイすると驚くことになると思います。


個人的にはとても気に入りました。
続編にも期待したいです。

フェアリーテイルレクイエム 感想(バレあり)

85点。

甘美で不穏な暗黒童話の世界へようこそ。


☆前置き

本作のテーマは「現実逃避と、逃避からの脱出」。

不登校、引きこもり、ニート、ブラック企業社員、ブラック集落在住者、愛情のない夫婦、長期入院者、長期受刑者……
その他何でも良いのだが、
「今の境遇のままではいけないと解っている」、「けれど、今の境遇を壊して、新しい社会に出るのが怖い」という葛藤は、恐らく多くの人が抱えている普遍的な命題だと思う。
それ故に、媒体問わず多くの作品がこのテーマで作られている。

個人的にはこの作品をプレイしながら、映画「ショーシャンクの空に」を連想した。
刑務所の中の世界は確かに苛酷だが、楽園でもあった。
刑務所から出た受刑者の一人は、自殺してしまう。彼は、「楽園」の中にずっといたかったのだ。
一方で、「楽園」で殺されていく者もいる。


エロゲでも、そっくりそのままではないものの、「Fate/hollow ataraxia」、「リトルバスターズ」、「ナツユメナギサ」、「すみれ」あたりが当てはまるだろう。
しかし……これらの作品の中でも、本作は一際完成度が高かったと思っている。

それは、ひとえに「童話世界の持つ甘美な残酷さ」が実によく描けているからだと思う。



☆前半5ルートについて


前半5ルートで描かれているのは、「現実世界に向き合わず、耽溺した童話世界の『甘さ』と『残酷さ』」。

甘い甘いお菓子の家は、子供を食べるために魔女が作った残酷な装置。
本作における『楽園』は、まさに「ヘンゼルとグレーテル」に登場するお菓子の家そのものです。

そこは確かに、甘く、いつまでも浸っていたいような幸福な空間で、けれども陰に残酷な思惑が渦巻いています。
逆に言えば、残酷な思惑が渦巻いてはいるけれども、そこは確かに甘く、いつまでも浸っていたいような幸福な空間なのです。



「幸福」の描き方として特に秀逸なのはアリスルートで、「猫のない笑い」を取りに木に登っては落っこち、
主人公に抱きとめられての「これが恋に落ちるということなのね」、「それが愛の重みよ」などの一連の流れ、台詞回しは完璧。
このシーン以外でも、アリスの言い回しは非常に楽しく面白く、何度も癒されました。

一方でどのルートを辿っても、選ばれなかったヒロインの中から誰かが死ぬという「残酷さ」も見事で、
ラプンツェルルートではグレーテル、ゲルダルートではアリス、グレーテルルートではゲルダが亡くなりますが、
主人公とヒロインは、幸福に生きていきます。

毎日がお祭り騒ぎのアリスとの日常。青い鳥を探し続けるグレーテル(ミチル)との日々、
永遠に続くラプンツェルとの毎日。
もう一生正気に戻らなくても良いのではないか。ずっと甘美な世界に浸っていたい。
そんな気持ちにさせられる「キャンディのような甘さ」の陰で、少女たちは犯され、死んでいきます。

この対比が実に素晴らしいと感じました。
「現実逃避からの脱出」を描く作品において、
逃避先に「甘さ」しかないならば、現実に帰る必要を感じません。
逆に、逃避先に「辛さ」しかないならば、勇気を出して現実に帰るのを、読者は焦れながら待つしかありません。

しかしこの作品には「甘さ」と「辛さ」が、どちらもきちんと描かれている。
それだけに、彼女たちが下す「現実へと帰る」という決断が重みを増すのだと思います。


バッドエンドで良かったのは、グレーテルのバッドとラプンツェルのバッド。
キモキャラのコミヤをかまどで焼き殺すグレーテルは、本作品登場童話の中でも随一の武闘派、
グレーテルの貫録を見せてくれました。
魔女をかまどで焼き殺したという逸話を持つグレーテルに手を出すとか、命知らずにも程があるぜ……。

ラプンツェルのバッドは、ラストシナリオにも繋がる「現実世界へ帰って、どうするの?」という残酷な問いを発しており、「死亡」エンドよりも心がひんやりとする思いがしました。


もしも、私たち読者が「楽園」の住人だったらどうでしょうか。
やはり、現実へと帰りたいですか? そりゃ、あんなキモい医者だらけのところ、居たくないとは思います。
でも、わけのわからないままあそこで楽しく暮らし、そして死ねたら……それはそれで一つの幸せだと思ってしまう私は、やはり現実世界に疲れているのでしょうか……。


☆最終ルート「レクイエム」感想

最終ルートでは、そんな「楽園」からの脱出が描かれます。
と、こう書くだけで終わってしまってもいいんですが(汗)、

ドロシーの魔法で帰還するシーン。
竜巻に乗って皆で手を繋ぎ、励まし合うシーンは最高に良かったです。

振り返ってみれば、「楽園」では楽しい事も沢山ありました。そこで生まれた絆もありました。
特に印象深いのは、ラプンツェルとグレーテルの絆でしょうか。
皆で催したはちゃめ茶会、アリスとゲルダの友情など、印象深いシーンがたくさんありました。

そして、ラプンツェルのバッドエンドでも描かれたように、現実世界への恐怖があります。
精神病院から帰ってきた、身寄りのない彼ら。現実世界で、果たして生きていけるのかと聞かれれば、
相当過酷だと思われます。

現実に怯えるあまり、魔法が解けかかってしまう主人公やオディール。
そんな彼らを励まし、力づける仲間たちの暖かさ。

もちろん生活保護などを受けたり、池野氏からの何らかの援助などもあるかもしれず、
絶対に生きていけない、というわけではないでしょうが……。
本作では、その部分がカットされているのが、数少ない不満ではあります。
長々と描写せずとも良いので、各ヒロインの現実世界での奮闘も見たかったです。
まぁ、ラストの「花束」で、健在ぶりが確認できるだけでも良いか、と思わなくもない、ですが……

せめて誰か一人でいいから、主人公の側にもいてあげてほしかったという気持ちはやはりありますね。

現実世界に戻っても、突拍子もないアリスのムードにあてられれば、苦しさも苦しく感じないでしょう。
亡くした妹の、兄の代わりではないが、グレーテルと身を寄せ合って暮らすのもいいかもしれません。
側にいてくれるのがオディールならば、きっとあらゆる局面で頼もしいでしょう。
個人的に一番ヒロインとして好きなのがラプンツェルで、彼女と共に荒波を乗り越えていくのも良いです。
そして、明らかにメインヒロイン格のゲルダ……なぜ主人公の側にいないのか理解に苦しむw


何にせよ、「楽園」は崩れ、少年少女は現実世界へと帰りました。
プレイヤーである私も「楽園」を去り、現実世界を生きる準備をするべき時なのでしょうか……。


……すみません、もう少し「逃避」させてください。また、別の「エロゲ」という「楽園」へ……。
いっつも逃避している気がするんですが、特に今(2016年12月現在)、ちょっと現実が辛いんですわw



銀色 感想(バレあり)

77点。

まず章ごとの感想を、最後に全体の感想を書きます。


【1章】 評価 A~A+  (S~Eで)

後年、1章のライター片岡とも氏の手から、「ナルキッソス」という作品がリリースされました。
不治の病を抱えた少女が自らの死に場所を探し、旅に出るという物語ですが、
1章のストーリーはそんな「ナルキ」に通じるものがあります。

つまり、人とは呆気なく死んでいくものだということ。
どうすることもできない不幸、死はあるのだということ。
名前のない彼女、名前を忘れられた彼。
花は咲き、枯れていく。蛍は光り、消えてゆく。
人は生まれ、そして死ぬ。

徹底されているのは、これは何も特別な悲劇ではないということです。
この当時、多くの人々がこのように、誰からも顧みられることなく人知れず死んでいったことでしょう。
それは何もこの時代だけではなく、あらゆる時代、あらゆる国において、
こうした「死」はくり返されてきたことだと思います。


「生きた証がほしい」。
あやめと水仙(ナルキッソス)の違いはあれど、書かれているテーマは同じです。
誰からも顧みられず、特別派手な花でもないけれど、それでも凛と咲く一輪の花。
片岡とも氏の死生観とは、つまるところそういうものなのかもしれません。

私たちはいつか死にます。その時に、「精一杯咲いていたよ」と言えるような生き方をしたいものですね。


【2章】 評価 A-

2番目に出来の良い章。

1章とは違い、序盤は良くも悪くも「普通のギャルゲー」といったほのぼのな日常シーンが続きます。
狭霧かわいいなーとも思いますし、1章と比較すると若干緩いなぁという印象も受けます。
物語はそのまま終盤へと進み、狭霧が人柱となって洪水を収め、村を助けるという物語が展開されます。

こちらは1章とは違い、死が「華々しい」ものとなっています。
何せ、村を救った英雄になるわけですから。(英雄として迎えられたかどうかはともかく、本人にはそうした満足感があったと思います)
それは、村から受け入れられなかった彼女が、生命を賭けて掴んだ「居場所」であり、名誉ある死だと思います。

それに対する村人のゲスぶりなどは、(予想はしていましたが)やはりなかなか熱いものがあり、
ラスト30分の展開はエンタメとしてとても面白かったです。

良い意味でも悪い意味でも1章のそれとは違い、「感情のある死」、「泣ける」ストーリーだと思います。


【3章】 評価 B

これが噂のねーちゃんですか。

個人的には、「三角関係の修羅場」は大好物なのですが、これは率直に言ってねーちゃんの頭がおかしいだけかなと思いました。
いや、確かに現実にもこういう頭のおかしな人はいるわけで、突拍子もないとかリアリティに欠けるとは思いません。

しかし個人的には、もう少しねーちゃんの心に寄り添えるような内容が良かったなと思います。

たとえば、優しかった夕奈と朝奈の過去エピソードを大幅に増やすとか。
ねーちゃんの心理描写にテキストを費やすとか。
もう少しねーちゃんに同情できる部分を増やすとか。
「10年来の許嫁が、妹にとられた」とかならあの怒りようもまぁまぁ解りますが、まだ付き合ってもいない男でしょ?
好きになったのが数日早かった、ぐらいの話でしょ? 

銀糸がもたらした悲劇~という体裁のストーリーですが、銀糸がなくてもいつか似たような事は起きたと思います。
だって、ねーちゃん、普通に頭おかしいもん。

ラストも尻切れというか、ねーちゃんが死んだ後どうなったのかわからないし……


【4章】 評価 B-

正直、書くことがないです。全4章の中では一番テキストが拙くて、展開も一番地味でした。
カウンセラーは頭おかしいな。



【総評】

「願いをかなえる銀糸」の話ということになってはいるものの、実際の所、物語にそこまで「銀糸」が絡んでいるかと聞かれると微妙です。

2章は「村の洪水が収まる」云々の奇跡はありますが、そこは物語の大切な部分ではないと思います。


村人の「人柱になれ」という欲求に、狭霧が喜んで従う話です。

3章は、「銀糸」の力でねーちゃんが狂っていくのかと思いきや、実際起こった事は最初の「彼が店に入ってきた」を除けば、
「足を滑らせたら皿が割れて怪我」とかそんなレベルなので、「銀糸」の存在はアクセントではありますが、主役ではありません。
ではどういう話かというと、キチガイねーちゃんの虐待に、朝奈がそれでも姉を慕い続けて不幸になる話です。

4章も、「銀糸」の存在感は「母の死」と「失語症」。これらは銀糸がなくても描ける内容です。
それよりは、ヤブカウンセラーの虐待めいた治療に、あやめが粛々と従う話かなと。


つまり、2~4章の共通点としては、「周囲からの虐待・ブラックな環境に、ヒロインがなぜか粛々と従うストーリー」と言い換えられまして、
起こる悲劇・苦しみのほとんどは、「ブラックな環境から逃げ出す」ことで、回避できたように思うのです。


村なんか捨てて男と逃げれば狭霧は死なずにすんだし、
夕奈なんかほっといて男と逃げれば朝奈はあそこまで追い詰められずに済んだし、
ヤブカウンセラーの診療に行かなければ、あやめは追い詰められることもないのです。
だから、これらは一見「避けえない悲劇」に見えますが、悲劇を呼んだのは結局のところ、「ヒロインの思考」の方にあるわけですね。


この中で、2章の狭霧のストーリーは、「人柱」に力があると思われているであろう世界での物語であり、
彼女の決意によって実際村が救われたわけですから、「無駄な死」でもないという意味で、バランスが取れたストーリーだと思います
(「意味のある死」だからこそ、1章の突き放したような「どこにでもある死」という印象が薄れてしまっているのも確かですが)。


そんなわけで、「ブラックな環境からは逃げればいいじゃんw」と思ってしまうわけですが、過労死問題などを考えましても、
「逃げるという選択肢を選べずに、不幸になってしまう人」というのは多数いるわけで、バカにしたものでもありません。
ただ、そんな過労死で亡くなっていくかのようなヒロインの姿を読まされる身としては、「もういい……もう逃げろ!」と思ってしまいますね。


で、1章がなければ、「不幸を回避できなかったのは結局、本人の心の中にある」
「ブラックな環境からは逃げるべし!」というテーマの物語でした!と言い切っちゃってもいいんですが、
1章はそんな生ぬるい話ではなくて、文字どおり逃げ場がないですからね。
だから1章だけは、2章以降とは別種の物語だと思いますし、1章が一番出来が良いんだよなぁ……。

千の刃濤 桃花染の皇姫 感想(バレあり)

話 105/150 人 115/150 絵 100/100 音 80/100 その他システム 100/100 印象 30/50

合計 530/650  (35位/180ゲームくらい中) ESにつける点 83~84


肩の力を抜いて楽しめる王道バトルものとしては優秀。それ以上を求めると、期待外れ。
個人的には、「ユースティア」に大差をつけられてのAugust内2~3位。それなりに面白いです。


本作は「滸パート」→「奏海パート」→「エルザパート」→「過去編」→「古杜音パ―ト」→「朱璃パ―ト」
といった流れで進んでいきますが、「過去編」を境に大きく物語の姿が変わります。
便宜上「過去編」の前を「前半」、「過去編」の後を「後半」と呼びます。


【前半部の感想】


本作「千桃」(と略します)において印象に残ったのは
ゾロアスター教をほうふつとさせる善(宗仁)と悪(かはく)との終わりなき激突。
そして、まつろわぬ神々や土蜘蛛のように、「敵対勢力」を神話上の悪神(あるいは妖怪・悪魔)として
歴史に組み込んでしまうその歪さと、桃の花を背景に抱き合うラスト、朱璃と宗仁の姿でした。



伝統的な倭国風の「皇国」が、アメリカを髣髴とさせる「共和国」に滅ぼされ、共和国の傀儡となった偽帝の翡翠帝と、それを操る小此木。
そして更にその小此木を操るウォーレン総督とその一人娘エルザという図式で始まる本作。
前半部では、共和国に占領された「皇国」の復興…というストーリーラインが展開されます。


ここでは「忠義」というワードについて、様々な掘り下げがなされています。

「本物の皇帝」であるが「現体制下では犯罪者」である朱璃と、「偽の皇帝」である翡翠帝、どちらに忠義を尽くすのか。
「主が誤っていると感じた場合、それでも主の希望通りにする」のが忠義なのか、「主を諭し、正しい道に導くのが忠義」なのか。
「血筋に忠義を尽くすのか、人柄に忠義を尽くすのか」。


そして本作では忠義を「必死に生きること」とし、「自分の中の譲れない何かに尽くす」こと。
ごく乱暴に言ってしまえば「忠義とは、自分の生き方に筋を通し、それに向けて必死に生きること」のような
結論がなされたように思います(あまり興味のあるテーマではないせいか、記憶がやや不確か)。



個人的には、前半部よりも後半部の方が面白かったです。
特に恋愛面でのヒロインの描かれ方は、後半部での古杜音や朱璃に比べてもいかにも弱いです。
奏海は個別ルートで「凄み」を見せてくれましたが、滸やエルザは個別ルート自体もやっつけ仕事めいたものでした。

ひ弱そうに見える、傀儡の皇帝、奏海ですが、実は「お義兄様に忠義を尽くす」という意味では恐らく作中ヒロインでは最もブレのないキャラクターで、ある意味物語当初から完成されています。
頼りなく見えたそんな奏海が、お兄様のために一歩も引かない「怖い女」としての真価を見せるに従い、彼女への好感度は大きく上がっていきました。


物語当初から「芯」がしっかり定まっている奏海とは違い、物語が進むに従って自分なりの「忠義」を見つけていくエルザは、作中大きく成長した人物の一人です。
ヒロイン格というよりも、もう一人の主人公として、本作を「エルザが『忠義』を身につけていく」ストーリーと見ることもできるでしょう。
そうした意味では、彼女はとても重要なキャラクターだということができます。


滸は……ラストで頑張ったから、まぁ……。


【後半部の感想と全体の感想】


上述したようにエルザ編あたりまでの物語は、要は共和国に占領された「皇国」の、復興の物語でした。
過去の因縁が明かされる「過去編」を挟み、後半部では、過去2000年にわたって戦い続けてきた「かはく」と、主人公の死闘へと物語が展開していきます。
現在、世界は「混沌の時代」であり、人知れず、世界のどこかで善神と悪神は戦い続けている。
だからこそ人の世には争いが絶えないという、そんな世界観の物語です。


ヒロインの感想で言いますと、やはり過去の因縁が深い後半ヒロインの朱璃・古杜音と、前半の3ヒロインでは
物語全体での存在感といいましょうか、重みに差があるように思えてしまいます。


また、これは全編を通してではありますが、本作は非常にオーソドックスなバトルものであり、それ以上でもそれ以下でもありません。

物語は基本的に予定調和のまま進み、大きな驚きがない。
「ユースティア」にあるような、主要人物も死にかねないような容赦のない重みはなく、
あくまでもエンタメバトルものの枠に留まっているため、読者は安心して読むことができますが、
緊迫して読むことはできません。


骨太のストーリーもの、「ユースティア」のような作品を期待したい私としては、やはりとてもヌルく感じてしまいました。
さらに言えば……「エロゲー批評空間」の他ユーザーを批判するのもどうかと思いますが、トップページの一言感想に「ハッピーエンド最高!」と書いていくような無神経な方などもいて。


(最近、そういう方が凄く多いです。ネタバレを怖がらずに見られるのがこのサイトの良いところなのに、なぜ後半や終盤の展開、エンディング内容までわかるような事を、長文ネタバレ感想ではなく、一言感想で書いてしまうのか……。
ハッピーエンドで良かったとか、バッドエンドなのが気に入らないとか、ヒロインが死にます寝取られます注意、みたいなの、ほんとやめてほしい。「エンディングが良かったです」とか「ちょっと辛いシーンがあったのが残念でした」ぐらいに収めて、具体的な感想は長文で書くということが、何故できないのでしょう)


そういう意味でも「安心」と言いますか、終始平和でヌルーいストーリーだと感じてしまいました。


不死身の者同士が2000年間戦い続ける、神話的物語へと移行する後半はまだヌルくても良いのですが、
共和国の支配と皇国の復興という、シリアスなストーリーが展開される前半にこのヌルさは正直キツかったです。
武人が次々と処刑されていくわけでなし、囚われの身となったヒロインが陵辱されるわけでもなく、
物語内ではそれなりにシリアスな話をしているのに、読んでいる私の心は非常に平和でした。


また、パクリだのなんだのというわけではないのですが、後編のストーリーは昔「久遠の絆」という、
1000年以上に及ぶ「転生」と「悲恋」と「因縁」の物語がありまして。
「神」が絡んでくるところも同じなのですが、そんな心に響く過去の名作と比べると、
本作はどうしても弱いと思いました。


Hシーンがあまりエロくないのも問題で、Augustと言えばかつて「夜明けな」や「FA」ではむしろ「エロさ」も長所だったはず。
本作はHシーンでの声優さんの演技がイマイチなのと、Hシーンテキストも適当で、全然抜けませんでした。


忠義の物語なのに、「敵に囚われてエロいことされてそれでも忠義を曲げない!」的なシーンが1つもないのも非常に残念でしたが(滸と古杜都は、ヤバい奴に捕まったんだからさぁ。あってもいいじゃない、そういうの。)、それを抜きにしてもエロくなかったですね。

絵を大きく見せたい気持ちは解るけど、そもそもテキストが2行しか表示されないんじゃ、クリックも忙しくて抜いてる暇もないよ……。
サブヒロインの子袖のHシーンが一番エロかったかな…多分。


と、ここまで叩いてきましたが、テキストの読みやすさはさすがの一言。
また、(悪役以外の)登場人物への不必要な苛立ち、読んでて苛々する寒いノリや展開もなく、
良い意味でも苛々せずに平和に読めるのは、本作に限らないAugust作品の魅力。
大したストーリーじゃないなーと思いつつも、プレイ中、読むのを途中でやめようという気持ちには全くなりませんでした。

個人的には、宗仁と朱璃が再会しなくてもいいんじゃないかとは思いましたが、
桃の花びらが舞う中で抱き合う二人の絵はとても美しいため、これで良かったとも思います。

……まぁ、ネタバレのせいで、「ハッピーエンドだ」というのは解っていたから、
「良かった、本当に良かった!」というよりは、「まぁそうなるよね」という気持ちの方が強かったんですけど……。




イチャラブゲーマー残響さんと対談しましたー! (11/7更新)

タイトルそのままなのですが、残響さんという方との対談ブログを立ち上げました
現在9記事。11月7日に更新したものが最新となります。


対談相手の残響さんはイチャラブゲーがお好きということで、僕の好みとはだいぶ離れております。
だいぶ離れた好みの者同士が、意見を戦わせる対談をするのも面白いだろうと思い、参加いたしました。
(実際、楽しかったです)

 
当ブログでは、対談記事がアップされるたびにまた告知させていただきますので、ご興味がある方はお楽しみに! 
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