本・映画などなど

2017年に読んだ本(随時更新)

S→味わい深く、いつまでも心に残りそうな作品

キングの死/ジョン・ハート……記事あり。こちらで

A→読んで良かったと思える作品

ミスティックリバー/デニス・ルへイン……重い、お話。幸福を得たショーン、ジミーと、得られなかったデイブの違いは、「車に乗る/乗らない」だったのか、それとも「大切な妻に全てを話せた/話せなかった」という違いによるものか……。しかし「少年時代を懐かしむすべての大人たちに贈る、感動のミステリ」という説明は詐欺だと思うw

チームバチスタの栄光/海棠尊……このミス大賞受賞も当然の、圧巻の構成力。パッシブ・フェイズの一巡、アクティブ・フェイズの二巡の末、トラブルが起き、事件が解決と、完璧な構成で凡そケチのつけようがない。強いて言うならば、トリックとその種明かしが少々単純であることくらいだが、重箱の隅つつきであり、些細な問題に過ぎない。


少年時代/ロバート・マキャモン……世界の捉え方が、少年と大人では違う。何にでも「常識的な説明」がつけられてしまう「大人」とは違い、少年の世界は魔術に満ちている。街には幽霊が、恐竜が闊歩し、愛車の自転車には意思がある。空へと届いた野球ボール、魔女、天才、そして殺人鬼。本書は、そんな「少年時代の世界(の見え方)」を、束の間思い出させてくれる良作である。


鳴門秘帖/吉川英治……ストーリー自体は、ちょっと突っ込みどころのある、オーソドックスなTHE・時代劇。ただ、「アネゴ肌で、男にスレてるけど、実は初恋で、好きな相手にはウブで健気」なヒロイン、見返りお綱のインパクトはなかなかのもので、萌え小説として読むなら結構評価が高い。見返りお綱を筆頭に、目明し万吉などサブキャラは良い味を出している反面、主役の弦之丞やヒロインのお千絵様に魅力が乏しいのは残念。

ロストシンボル/ダン・ブラウン……Bに近いA。面白いものの、前2作(「天使と悪魔」、「ダビンチコード」)に比べるとだいぶ落ちる。「悪役が倒れた時」が面白さの頂点なのだが、その後延々と種明かしが続くのは、「動(サスペンス)」と「静(うんちく)」が絶妙にバランスをとっていた前2作と比べ、完成度が低いと思う。そうはいっても、十分面白いのだが。


影武者徳川家康/隆慶一郎……タイトルに似合わない(?)ガチな歴史小説。時代は関ケ原~大阪冬の陣まで、二郎三郎&風魔の忍びVS秀忠&柳生の暗闘が繰り広げられる15年間を描く。
二郎三郎に訪れた、老年の青春。やっと巡ってきた充実した男の一生。羨ましくも、清々しい。
唯一気になったのは、作者が登場しては、××がここで不可解な行動をとったのは『●●としか考えられない』というような自説を開陳する機会が多いのだけど、そんな強弁せずに、普通に小説として書いてくれてよかったんじゃないかな、と。そこだけ違和感があった。

国盗り物語/司馬遼太郎……前半の斎藤道山編が非常に面白い。魅力的な道山とお万阿さんの関係にしんみりとする。それに比べると後半の信長編はややパワーダウン。パワーダウンとはいえ十分面白いけど、光秀に魅力がなくて……。


警官の血/佐々木譲……代々受け継がれていく「警官」としての血。初代が無邪気なヒーローだったのに対し、二代目は暗黒面に堕ちながらももがき、三代目でとうとう吹っ切れてダースベイダーになったのは、警官としての成長とも言えるし、強靭なメンタルを手に入れるための成長ともいえるけど、
僕はやっぱり無邪気な初代が一番好きだった。「成長」なのか「立場」の変化なのか、「時代」の変化なのか……恐らく全部なのだろうけど。
あと、早瀬との対決の後に三代目が豹変する理由が全然わからなかった。そこを描くには尺が短すぎたと思う。

オレたちバブル入行組/池井戸潤……勧善懲悪モノ。日本版ディック・フランシス……という印象を受けたが、多分フランシスを先に知っていて半沢直樹を後に読んだ人ってそんなにいなさそうなので、この表現で通じるかどうか。


ブレイブ・ストーリー/宮部みゆき……途中ややダレるシーンもあったが、全体的に完成度の高いファンタジー小説だった。ワタルの決断も納得。カッちゃんや香織、ルゥ伯父さんといった現実界の登場人物から、キ・キーマやミーナ、カッツなどの幻界の登場人物まで、魅力ある人物が多く楽しかった。



B→暇つぶし以上の有益な何かを得た作品

起業の砦/江波戸哲夫……記事アリ。こちらで。





庵堂三兄弟の聖職/真藤順丈……記事アリ。こちらで。

起業前夜/高任和夫……Aに近いB。潰れかけた扶桑証券(どう見ても山一証券)をどうにか立て直そうと、頑張る主人公の物語。信頼してくれる部下、休日を過ごすテニス友達、不倫相手などもいて、事なかれ主義の上司との論戦など、リーダビリティに溢れる作品。
ただ、基本いい奴なのに相手が嫌がっているのを知りながら煙草をスパスパ吸う主人公とか、基本いい仲間たちなのに勤め先の事で皮肉を言った結果集まりに来なくなっちゃった仲間がいるとか、そういった『不要な』エピソードが謎。まぁ聖人君子なんてなかなかいないわけだけど、不必要にイメージを悪くする必要もないのでは? まぁでも面白かったよ。



ライラの冒険:琥珀の望遠鏡/フィリップ・ブルマン……Aに近いB。3巻終盤に来てようやく、「イブ=ライラ、アダム=ウィル、蛇=マローン博士」の関係性が(私に)見えてきて、「聖書パロディのファンタジー恋愛モノだったか!」と気づいた瞬間から急激に面白くなった。ダイモンは「聖霊」かな? などなど気づけば気づくほど、完成度の高い作品だ。しかし最後の200ページに至るまで気づかなかった私も悪いかもしれないが、実際のところそこまでは退屈で仕方がなかったので、高評価するのも……いや、読解力のない私が悪いのか? いずれにせよ、「子供向けのファンタジー」ではなかった。


ハリーポッターと不死鳥の騎士団/J.K.ローリング……子供たちの『夢』の学園だったホグワーツ=ハリーポッターの世界も、作を追い、ハリーが年齢を重ねるごとに試練を増し、段々と『現実』の影がちらつき始める。亡き父に対するハリーの『尊敬』が崩れた事こそ、本巻最大の見所のように思う。
少年が大人になるためには、父を超えなければならない。というのは少年主人公におけるファンタジー系成長物語の鉄則であり(注:不思議な事に、少女主人公や女性の保護者においてはこのような鉄則は見受ける事が出来ない)、名付け親(??後見人の事か?)のシリウスの死もまたそれに準ずるモノと言える。となると、次巻「謎のプリンス」では恐らくハリーの最大の庇護者であるダンブルドア、もしくはハグリッドあたりが亡くなるというのが『少年主人公のファンタジー系成長物語』の鉄則ではあるが、さて……。


ハリーポッターと謎のプリンス/J.K.ローリング……16歳になって、恋愛に青春に大忙しのホグワーツ。その裏で、恐るべきヴォルデモートとの闘いも熾烈さを増していく。そんな第6巻は、ロンの心理描写が面白い。あがり症の彼を、ハリーが必死に励ます姿がおかしい。ロンとハーマイオニーの関係性も読みどころだ。一方でシリアス面では、ダンブルドアがついに亡くなってしまう。前巻を読んだ時の予想が当たっちゃったな。ただ、この巻は良いのだけど、最終巻にあたる次巻「死の秘宝」がガチシリアスバトルばかりになりそうなのが心配。ハリーポッターシリーズは、学園生活は面白いんだけど、バトルシーンは概してあまり面白くないんで……。





歌姫/エド・マクベイン……偽装誘拐の皮肉な結末が印象深い。

殺意の楔/エド・マクベイン……

クレアが死んでいる/エド・マクベイン

さよならダイノサウルス/ロバート・J・ソウヤー



C→暇つぶし程度にはなった作品

10プラス1/エド・マクベイン

熱波/エド・マクベイン

ライラの冒険:神秘の短剣/フィリップ・ブルマン

三国志/吉川英治……記事あり。
こちらで。

起死回生/江上剛……銀行の汚さを全編にわたって読まされた印象。最後の50ページで好転し、ハッピーエンドに終わるため、読後感は爽やかかもしれないが、それまでが長すぎw 


ハリーポッターと死の秘宝/J.K.ローリング……シリーズ最終巻として、今まで読んできた読者が読む価値はもちろんある。スネイプ先生の想いや、ダンブルドアの正体(?)など読みどころもないわけではない。ただ、「学園生活は楽しいけど、シリアスバトルはあんまりおもしろくないなぁ」と思っていた一読者(僕です)にとっては、シリアスバトルが連続するこの最終巻は「読む前から分かっていた」とはいえ、ちょいしんどかったです。

ハリーポッターシリーズ全体の感想はこちらで記事にしています。


巨大投資銀行/黒木亮……バレあり。こちらで。

宮本武蔵/吉川英治

D→自分には合わなかった作品



これから読む予定の本(入手済み)


ブレイブストーリー/宮部みゆき

三国志/北方謙三

チームバチスタの栄光/海堂尊

らせん/鈴木光司

ループ/鈴木光司


これから読む予定の本(手元になし)

マヴァール年代記/田中芳樹

後継者

クレヨン王国パトロール隊長

クレヨン王国まほうの夏

クレイジーカンガルーの夏

クレイジーフラミンゴの秋

半分の月がのぼる空/橋本紡

ブギーポップインザミラーパンドラ

ソードアートオンライン(とりあえず4巻まで)

とらドラ(ひとまず2巻:1巻は昔読んで割と面白かった)

文学少女と飢え乾くゴースト

文学少女と繋がれた愚者

俺の妹がこんなにかわいいわけがない(とりあえず3巻まで)

鋼殻のレギオス(とりあえず1巻)

乃木坂春香の秘密(とりあえず1巻)

バカとテストと召喚獣(とりあえず1巻)

彩雲国物語(とりあえず1巻)


インフェルノ/ダン・ブラウン

デイヴィッド・コパフィールド/チャールズ・ディケンズ





「起業の砦」読了(バレあり)

著者は江波戸哲夫。評価はB+。

起業を思い立った親子の物語。
序盤は世間の荒波を思わせる描写がかなりしんどい。
50歳近くなっての再就職は厳しいだの、いやいや40歳でも無理だのと、
(将来の僕がそうなっている可能性は結構あるだけに)読み手のHPをガンガン削ってきますね!
やめて!! feeのライフはもうゼロよ!!


ところが、そんな49歳の親父が起業を始めると、これがあれよあれよと巧くいってしまう。
息子の方も悪戦苦闘はあるものの、なんだかんだで巧くいってついでにバイリンガルな帰国美女(帰国子女+美女)もゲット!と、
どうしちゃったのというぐらい爽やかストーリー。
序盤のアレは一体なんだったんだ……まぁ、起業に失敗して路頭に迷う話なんかを読まされた日にはたまりませんが、それにしたってうまくいきすぎw


悪役はいますがそこまでウザくないし(直前に読んだのが「半沢直樹」なので割り引いて考える必要はあるかもしれないw)、
主人公たち(親子両方)の周りは基本いい奴揃い。


まず、息子の方だけど、花田とかいう親友キャラ!
主人公が仕事の都合で帰国美女と連絡できない間、ずっと花田と帰国美女がつるんでたっぽいんですよ!
すわ三角関係か!! って思うでしょ! ドロドロ展開きましたわぁ!! って思うでしょ!
いやむしろ来いよ、どんと来いよ、相手になってやんよ花田ァ!!! 

と思ったのに、手を出してないんですよ! すげー仲いいのに! いやぁ驚いたなぁ……。
うん、ドロドロも結構好きなんですけど、これはそういう小説じゃないんで、それでいいや。


ただ……ちょっと気になったのは親父の方。
レインボースカイ神楽坂という住宅を販売するんですが、善意の住民(つか親父が昔一度だけ寝た元水商売の女性)が自分のブログで、レインボースカイ神楽坂の宣伝をしてくれるんですね。
文章が、めちゃくちゃステマ(ステルスマーケティングの略)っぽい!
これが追い風になって、レインボースカイが売れに売れるんですが、ちょっと眉唾だなぁと。
しかも、その女性のブログ、303アクセスとか248アクセス程度なんだそうです。

このアクセスが「PV」なんだか「UU」なんだかがよくわかりませんが、「UU」だと仮定しましょうか。


僕のページはですね、大体毎日200PVの100UUくらいです。
最近、ちょっと人気が下降気味なのでもうちょっと少ないかもしれないけど、大体そんなもん。
要するにこの水商売の女性のブログは僕のブログの3倍程度の人が見ているわけですね。
羨まし……というのはおいといて、僕のブログの3倍程度しか見られていないわけですよ。


僕のブログの3倍程度しか見られていないブログで、「まるわかりのステマくさい文章」を書いて、
それで住宅が売れますかね??? 
そもそも、個人ブログに堂々と「レインボースカイ神楽坂」に住んでいる事を書いちゃって大丈夫なの?
という疑問も当然湧いてきますし、「そりゃないでしょw」と。


ただまぁ、ちょっとファンタジー入っている爽やか起業ストーリーとしては結構楽しいんじゃないかなぁと思ったんですが、いかがでしょうか!?
江波戸哲夫『起業の砦』皆さん、是非買ってみてください! 買ったら、買ったよ!って教えてね!!


(100UUのうちのブログで宣伝してみたぞ! さて、何人が買うかしら……ちなみにアフィリエイトとか貼ってないので、買っていただいても、僕には1円も入りません)

火星年代記読書会のお知らせ(9月30日)

ホームページオブ百合機械、管理人の残響さんと、
「火星年代記」の読書会を行いました。

1冊の本について、今回もまた7時間以上の対談を行い、有意義な時間を過ごすことができました。
素晴らしい機会を与えてくださった残響さんに、深く感謝いたします。
楽しかったですw

対談の模様はこちらにて公開しております。




『火星年代記』  

2030年1月   『ロケットの夏』 9/2公開

2030年2月   『イラ』9/2公開

2030年8月   『夏の夜』 9/2公開

2030年8月   『地球の人々』 9/2公開

2031年3月   『納税者』  9/2公開

2031年4月   『第三探検隊』    9/7公開 

2032年6月   『月は今でも明るいが』  9/7公開 

2032年8月   『移住者たち』  9/7公開 

2032年12月  『緑の朝』  9/7公開 

2033年2月   『いなご』 
 9/7公開 

2033年8月   『夜の邂逅』 NEW 9/30公開

2033年10月   『岸』  NEW 9/30公開

2033年11月   『火の玉』  NEW 9/30公開
 
2034年2月   『とかくするうちに』  NEW 9/30公開

2034年4月   『音楽家たち』  NEW 9/30公開

2034年5月   『荒野』

2035-2036   『名前をつける』 近日公開

2036年4月   『第二のアッシャー邸』 近日公開

2036年8月   『年老いた人たち』  近日公開

2036年9月    『火星の人』  近日公開

2036年11月   『鞄店』    近日公開

2036年11月   『オフ・シーズン』 近日公開

2036年11月   『地球を見守る人たち』 近日公開

2036年12月   『沈黙の町』 近日公開

2057年4月    『長の年月』

2057年8月    『優しく雨ぞ降りしきる』

2057年10月    『百万年ピクニック』





巨大投資銀行 読了(バレあり)

著者は黒木亮。
評価は判定不能。多分力作。ただ、好み度はC。


本書は、一人の銀行マン・証券マンを中心に据え、彼と共に日本マネーが躍進した80年代、バブルの崩壊、メキシコ通貨の下落、湾岸戦争、地下鉄サリン事件、9.11、吸収合併によるみずほ銀行誕生などなど、1980~2005年あたりの金融史を振り返れる力作となっている。


ということで、金融経済に強く、その辺の知識を仕入れたい人には強くお薦めできる作品になっているし、既に知っている人も『あぁ、あの時はあんな事もあったなぁ』としみじみ振り返るのも良いだろう。
何の問題もない。良作だと思う。


で、だ。
問題なのは僕の方である。
金融経済に全く興味がなく、知識も全くない私にとって、この本ほどアウェイ感を感じる小説は久しぶりだった。


過去にアーサー・ヘイリーの「マネーチェンジャーズ」という本を読んだことがある。
「マネーチェンジャーズ」は銀行マンを主人公とするエンタメで、非常に面白かった。
金融知識がさほどなくても楽しめたのだ。主人公は末端の銀行マンにすぎなかったし。


ところが、である。本作で描かれるのは末端の銀行業務ではない。
為替と株である。専門用語がバンバン飛び交うのである。

「価格ボラリティが高い低クーポン債をスペキュレート」したりするのである。


『スクリーンは、米国債の利回りとスワップ金利の差や、米国債とファニーメイ、フレディ―マックといった政府機関債の利回りの差を示すスクリーンで、基準となる米国債はすべて「オン・ザ・ラン」が遣われていた』みたいな文章がひたすら延々続くのであり、このレベルの文章は簡単に理解できない事には、1100ページにも及ぶこの小説を読みきるのは相当辛いと言わざるを得ない。


と、まぁこういった感じで第一の壁は「知識・興味の壁」である。
これはもう全面的に僕が悪い。バカですみませんでしたぁ!!! である。


壁はそれだけではない。もう一つ、別の壁がある。それは人物描写である。

この作品では徹頭徹尾、ビジネスの話しかしていない。
会話シーンも全部ビジネスに絡んだことである。


本作に出てくる登場人物は、ほぼ全員が上昇志向が強い独立系の人間か、
でなければ相手の出世やら何やらを気にして、足を引っ張ったり妬んだりするクズ人間かのどちらかだ。
唯一、清涼剤となるのは「〇〇の妻」という一連の妻群で、非常に男にとって都合の良い、人間のよくできた女性たちである。平たく言えば、人間味を感じないレベルであるし、そのせいか名前すら与えられていない。
桂木の妻にしろ、竜神の妻にしろ、そうである。


大学の同窓会でのシーンも酷い。
なぜか。そう、僕にとってはなぜかなのだが、皆が仕事の話しかしない。
お互いの給料を聞いたりしている。
うわーー行きたくねーこんな同窓会ww 
大学時代の恩師なる人間も登場し「日本のために働いてほしかったのに……」と外資系に行った主人公に恨み言を言うのである。
余計なお世話にも程があるwww


投資金融業界は概ね超ハードワークのブラック企業だと思われる。
本書の主人公が最初に勤めていた東都銀行は真っ黒も真っ黒の、スーパーブラックである。
年収1000万だったらしいが、ブラックである。


次に主人公が行く、モーガン・スペンサー銀行は「理不尽な不公平さはない」ので
人によってはブラック企業だとは思わないかもしれないが、
人を超えた存在、超人以外がこの会社に入ったら3日で潰れてしまうのではないか?と感じる程度にはブラックである。
求めるレベルがクッソ高い。
そこで主人公は年収5000万を稼ぐのだが……そんなに稼いで何がしたいんだ? としか思えないのが
悲しいかな、僕の限界である。


5000万だと!? クッソうらやま!! とはならないのである。
こんな地獄みたいな環境、5000万もらっても嫌だわとしか思えない(そもそも務まらない)し、
なんでそんなに金が欲しいのかさっぱりわからない。
主人公は奥さんがいるが子供はいない。そこまで稼がなきゃならない理由が見えてこない。


金のために働くのではないのかもしれない。しかし……僕自身が金融業界に全く興味がないせいなのか、主人公が『楽しそうに働いている』とは、僕には全く思えなかった。


総合して言えば、ここに書かれている世界は、僕と地続きでありながらあまりにも遠いファンタジー世界だし、ここに書かれている人間は、僕とは違う人種……例えて言うなら宇宙人を見ているかのようだった。


世の中にはこんな人たちもいるのか。いるんだろうなぁ。とは思う。
全く理解できなかったけれども。



「価格ボラリティが高い低クーポン債をスペ 「価格ボラリティが高い低クーポン債をス 「価格ボラリティが高い低クーポン債をスペキペキュレート」キュレート」

真藤順丈「庵堂三兄弟の聖職」読了(ばれあり)

評価はB+。

人間の死体を使って、工芸品を作り出す架空の職業、遺工師の長男とその兄弟を描いた作品。


日本ホラー小説大賞受賞作だが、ホラーというよりはスプラッタである。
グロ注意だが、作品を成立させるために必要なグロである事は一読すればわかるだろう。

作品を成立させるために必要なグロといえば、三男の汚言癖がある。
これについてはamazonレビューや、あろうことかホラー大賞の審査員までもが「無意味に汚い言葉を連発する」と低評価しているが、全くもって『無意味ではない』(一読者であるamazonレビューはともかく、審査員がこれで大丈夫なのか?)。

死体・汚言癖といった、一見『穢れ』に見えるけれどもその実、倫理的には『穢れていない(人が死ぬこと自体は悪ではない・汚言はトゥレット症候群であり本人に悪はない)』ものを描くことで、
本当にこれは穢れなのか? 
死体や汚言を忌み嫌う者の心にこそ、穢れが生まれる温床があるのではないか?
という価値観の転倒を、生気溢れる猥雑な筆致で描いた力作である。


以上、あまりに本質を捉えていない低評価が目立ったため熱く弁護したが、ラストの投げっぷりは肩透かしではあるし、キャラが立ちまくっている三男に対して、長男・次男の描き込みは相対的に弱い、暴力描写がショボい(スプラッタ描写は良い)などの粗はある。
三男を置いてどこかに逃げてしまったキャバ嬢は一体どうなったのか?

長男、三男ともに精神疾患を患っているように思えるし、次男も会社でうつ病一歩手前になっているが、そうした精神疾患になりやすい因子は一体どこにあったのか?
などの説明もない。
死体の側に長年いたからそうなってしまった……というのは、ちょっと説得力が弱すぎる。
暴力団の父母の死もとってつけたように唐突だ。


最後に、気に入ったシーンを。
死体の皮を剥ぎながら、遺体の母と長男が「おぉブレネリ!」を歌うシーンは神だった。
こういう鳥肌もののシーンを描けるのだから、実力のある作家さんなのだと思うが、粗削りというかなんというか、全編鳥肌ではないところがなんとも。
総合してみれば75点。部分的には80点を超すし、完成度だけを言えば70点を切るだろう。


あと、擁護はしてきたけど、個人的にスプラッタは苦手です。いや、ほんとに。
食事しながらは読めません。
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