本・映画などなど

2020年に読んだ本



S→味わい深く、いつまでも心に残りそうな作品

再起/ディック・フランシス……
Aに近いS。
フランシス86歳でも衰えず、内向的だが熱い情熱を持つ主人公が攻撃を食らい、そこから仲間の助けを借り、不屈の闘志で立ち上がる競馬シリーズの醍醐味は健在。
シリーズ内でも上位レベルで面白いが、唯一の不満点としては『いつも通りすぎる』ところか。
考えてみればこのシリーズ、主人公も敵も必ず男性であり、最後は1対1の決闘である。それ自体が悪いことではないが、今回は共犯に女性がいたのだから、どうせなら悪女キャラをもっと際立たせても良かったのでは?
やはり英国紳士に女は殴れないのだろうか。

間違いなく良作だが、シッド・ハレー4部作(「大穴」→「利腕」→「敵手」→「再起」)の中では、
最高作「利腕」と2位「敵手」に比べてやや劣るのでSをつけるのは甘い?
いやでも面白いしな。良作!

VA文庫版 Planetarian―ちいさなほしのゆめ―/涼本悠一

人口過剰問題解決のために、宇宙へと乗り出した人類だったが、それも廃れた。
『スノーグローブ』では、昔は大人気だったデパート屋上のプラネタリウム。今は客がほとんど来ないそこで、少年との再会を待ち続けるロボット、ほしのゆめみの姿が描かれる。やがて第三次世界大戦が起こり、人類世界は壊滅的な打撃を受けた。

人類を破壊へと導いたのは大量の核兵器、そして自らが作り出した、
シスター服の戦闘用ロボットたちだった(『エルサレム』)。

時は過ぎ、人類は地中世界に潜って生息していた。
星を見る事もなく育つ地球人たち。
シスターの女神像(ロボット)が見守る集落に、一人の旅人が訪れる。彼は、手作りのプラネタリウムを子供たちに見せた。
子供たちの心には、今はもう見る事の出来ない星々が強く焼き付いた(『星の人』)

月に、チルシスとアマントというAIの双子がいた。
チルシスは言葉を覚え、すくすくと育ち、アマントは『船』を作った。
やがてチルシスは、言葉を伝えるため、地球へと旅立った(『チルシスとアマント』)

全体を通して言えることは、『終末モノSF』+『(アシモフの)ロボット』+『キリスト教』の3点がモチーフになっていること。
海外SFで言えば、アイザック・アシモフのロボット三原則をベースに、
レイ・ブラッドベリの終末観を味わえる、しみじみものSF。


はじまりはセントラル・パークから/アーウィン・ショー……幸福に暮らしていた一家が、子供が巣立っていき、パパとママのやりたい事も変わっていって愛情はありながらも離れていく、しんみり系作品。
何とも言えない余韻。

三国志/北方謙三……記事はこちらに書きました。

インフェルノ/ダン・ブラウン……記事はこちらに書きました。

ありふれた祈り/ウィリアム・ケント・クルーガー……
90点を超える勢いだった中盤までと比べ終盤少し失速した感はあるが、
年間トップ10には入るであろう作品。
特に、前半の幸せだった家族、父と、姉のアリエル、主人公、弟のジェイクの5人の関係性が暖かい(母も一応入れてもいい)。
また、目の見えないエミールと耳が聞こえない自閉症のリーゼ、
そしてエミール以外にリーゼが唯一心を許す、どもりのジェイクの関係も良い。酒に溺れながらも優しいガスが新たな幸福を掴み立ち直っていく姿や、一度は崩れかけながらも再び取り戻した父母の絆も非常に暖かく、繊細で読ませる。
やや気になるのは後半。
町で次々と人が死に、姉のアリエルも犠牲となってしまう。
この物語のテーマは、キリスト教的な『人を赦すこと』にあると思う。
母は父を赦したし、ジェイクはリーゼを赦した。
しかし、父はエミールを赦せたのか、主人公や母はエミールとリーゼを赦せたのか。
もし赦せないのだとしたら、果たして『罪』が誰にあったかを明示する意味があったのか
(エミールの罪は、明かさずとも読めばわかるようになっている。リーゼはわからないが、果たして裁くことも赦すこともできないのならば、
『犯人を見つける必要があったのか』)。興味がある
割と急いで読んじゃったせいもあり、ぼくの読解力不足もあって
その辺がなんだかしっくりこずにモヤモヤが残った。
とはいえ、読み終えた後、主人公が過ごしたニューブレーメンの一夏が、読者の心に香るような素晴らしい作品でした。11歳のジェイクが、神。主人公はヘタレ。


ナイチンゲールの沈黙/海堂尊……
前作「チームバチスタの栄光」が、ミステリという枠組みの中での論理的美しさを表現していたのに対し、
作者は本作で、ミステリという枠組みに頼らずとも詩的物語の美しさを表現してみせた。
個人的には奇策(一発屋ともいう)である「バチスタ」の方が印象深いけれど、逆に本作では奇策に頼らずとも面白い作品を生み出せる事がわかり、作者への信頼感が増した。
瑞人と由紀、そして小夜の関係性。小夜の歌に乗せて、由紀が海辺に舞うシーンが殊更印象深い。
次作も読みます。


吉永さん家のガーゴイル11巻/田口仙年堂(再読)……
再読のつもりじゃなかったんだけど、このブログを検索したら9年前(!?)に一度読んでたわ……。
まぁとにかく、面白かったし癒されたのでおk。
バカ騒ぎの中にも優しさが混じるこのシリーズは、心の清涼剤ですね


文学少女と飢え渇く幽霊/野村美月……
まず、この作品はエミリー・ブロンテの『嵐が丘』のオマージュ作品である。二次創作、と言っても良いぐらい、『嵐が丘』の魅力に頼っている部分がある。そこを割り引くかどうかが難しいけれど、作者は明確に『嵐が丘』のオマージュであると明示しているので、パクリではない。
現代日本を舞台に、『嵐が丘』で描かれた、狂おしく鮮烈な愛憎を見事に再現し、更に一ひねり加えた
『ライトノベル版 嵐が丘 ver1.5』。
古典名作でありながらややとっつきにくい『嵐が丘』の猟奇的な狂愛そのままに、魅力を更に加える事に成功したと感じた。ただし、全300ページ中、面白くなるのは200ページ以降とスロースタートなのはネック。
殺して、犯して、吐いて、拒んで、奪い尽くす愛。
叩いて、縛って、鎖を打って、刺して、憎む、愛。
邪魔する者を全て殺して、
時を戻して、親族全て殺し、結婚さえも利用して、
ただ、相手の心に憎しみを刻みつけることで、
自分を覚えていてほしい、
そんな愛の物語ですね。


文学少女と繋がれた愚者/野村美月……
このシリーズの特徴でもある、クライマックスの盛り上げ方、遠子先輩の口を通じて語られる作者の『魂の叫び』は必読。
過去の失敗に『繋がれ』て進めなくなったすべての『愚者』への、エール。
『どんな時も、心に理想を掲げる愚か者であって。失敗を恐れず行動する愚か者であって』。

一方、武者小路実篤の『友情』を『恋と再生の物語』と読み解くことはもちろん可能だけれど、前作の『嵐が丘』ほどの近接性はないような気がした点。
あまりにも小西さんがかわいそうで、結ばれて欲しかったという気持ちが1点で、ちょっとモヤッた。
けど、やっぱりこのシリーズ大好き。3作読んで全部85点以上なので、残り5冊大切に読みます。


クレイジーフラミンゴの秋/誼阿古……
中学1年生の女子、晴の初恋が描かれる作品。
「クレイジーカンガルー」と並んで、いやぁな感じのリアリティが強い作品だけど、
「カンガルー」の男子学生生活は全くなじめなかったのに対し、
こちらの「フラミンゴ」の方が心情的には共感できた。
同年代の男子の『ガキ臭さ』と、自らもまた『オトナとコドモの中間にいる、女子主人公』。
そして、年上の男性に感じる憧れと恋。
切なくて、良い作品ですね。
誼阿古はこの2作しか出してないけど、売れなかったのかなぁ。
明らかに売れそうな作風じゃないけど、『フラミンゴ』の方は良かったのでまた書いてほしい

A→読んで良かったと思える作品

五番目のサリー/ダニエル・キイス……
堅物で何もできないオドオド系のサリー、
みんなのまとめ役デリー、
知的で芸術を愛するノラ、
奔放でエッチ大好きなベラ、
乱暴で暴風のように物を破壊しまくるジンクス。

一つの身体に5人がいる、そんな物語。
ラスト、1人の人間になったサリーだけど、後ろ盾がいなくて本当に1人で生きていけるのか少し心配……

四日間の奇蹟/浅倉卓弥……
知的障碍者の千織と、過去の悔恨を抱え続ける元ピアニストの如月。
2人がある日訪れた施設(重度障碍者居住ホーム)は、慈しみに満ちた真理子たちスタッフが運営する、楽園だった。
そこで起こった、四日間の優しい奇蹟の物語。「いい話だなぁ」と思うし、ディテールもきちんと描かれていて心に残りそうな作品なのだけど、
読者が『奇蹟』を無条件に受け入れられるかどうかで判断が分かれそう。
個人的には、「そんな事があってもいいんじゃない?」とも思う一方で、童話のハッピーエンドのような釈然としない気持ちも残る。
あと結局、最後、千織はどうなったん? 障碍者じゃなくなったってことでいいの?


夏服を着た女たち(短編集)/アーウィン・ショー……
生々しくも、うまくいかない恋愛模様が多い短編集。
正直、(恋愛相手としては)ロクな女性が出てこないので、読んでいて厳しかったw
恋愛なんてするもんじゃないですね、と思ってしまったw

吉永さん家のガーゴイル12巻/田口仙年堂……
いつまでも時が止まっているかのような、愉快な御式町商店街にも、季節の移り変わりはある。
何より吉永家の長男、和巳が高校を卒業し、晴れて大学生になるのだ。
今まで相思相愛ながらも、『何となく』付き合ってきた後輩、片桐桃とも一波乱が起きたが、晴れて告白し、結ばれる。
「ガーゴイル」全15巻、時が動き出した12巻。

12巻単独の感想を書くなら、恋物語として悪くないと思うけれど、サイドエピソードとして流れる『チャック』の物語はインパクト不足、かなって思った。
和巳と桃の恋愛模様の話としては満足です。

復讐法廷/ヘンリー・デンカー……娘をレイプし、殺した相手は法の穴を突いて無罪放免。
父親はレイプ殺人犯を撃ち殺し、自首をした。
父親の「意思」で、「故意に」撃ち殺した。法律の条文どおりならもちろん有罪。
しかし法の穴を突く凶悪犯は無罪とされ、父親は有罪。それで本当に良いのだろうか?
という物語。

何の役にも立たない「法律」は「変える」べきである。
誰にとっても有害な「ルール」に従うべきではない。
しかしそれと同時に、守るべきと定められたルールを各々が勝手に破るのも、それはそれで危ういとも思う。

「ルールで決まっているから」を思考停止の道具として採用し、冷酷に、機械のように人を裁く『法』の在り方と、
「明らかにルールが間違っている!」と『個人が判断する』ことの危うさとどちらが危険だろうか。
ただ、この父親が無罪になったのは、良かったと思う。
フィクションとしてみるならば。あるいは、特例・個別ケースとしてみるならば。


異邦の騎士/島田荘司……
面白かったんだけど、終盤、「今まで信じていたものは全部嘘だった!」的な、いわゆる「ドンデン返し」が起こります。起こるんですが、ドンデン返し前の方が面白かったんだよなぁ。
あと、割と救いがないのもちょっと悲しい。面白かったですけどね。

ラブコメ今昔(短編集)/有川浩……
Bに近いA。自衛官をモデルにした恋愛短編集。
表題作「ラブコメ今昔」、3番目の「広報官走る」、6番目の「ダンディライオン」は面白かったし、
2番目の「軍事とオタクと彼」や5番目の「秘め事」あたりは正直あまり面白くなかったので評価に困るけど、読みやすいしいいんじゃないかな?

赤い予言者/オーソン・スコット・カード……
精神的なインディアン的世界観と、物質的な西洋白人の相容れない世界観の対立を、実際の史実を基に描いた歴史ファンタジー作品。
最後30ページ、無理やり駆け足で物語を締めた感じが拭えないのが残念だけど、そこまでは面白かった。

密封/上田秀人
……徳川家基の怪死と田沼意知暗殺事件をベースに、その闇を探る歴史ミステリ+バトルもの。
徳川一族の系譜が頭にないと、本気で混乱するので、家系図をつけてほしかった。面白いけど、江戸時代の知識がないと読みづらい。バトルはどうでもいい。

国禁/上田秀人
……1800年代初頭、徳川家斉の時代を舞台にした歴史陰謀もの+チャンバラな小説。
歴史陰謀部や江戸時代の蘊蓄が面白い。
主人公の人間関係とか、アクションシーンなどのエンタメ部分は小説としてはあまり面白くないけど、江戸時代のお勉強的な意味では面白いので続きを読むかどうか迷う。

侵触/上田秀人
……相変わらず、
江戸時代の陰謀→奥右筆が狙われる→ボディガードの主人公がバトル
→倒す
の公式で済まされる話ではあるけど、江戸時代の豆知識部分が面白いのが魅力。
しかし、江戸時代って本当に身分に強く縛られていて、皆が『家』の『禄』(お給料)や『家格』を少しでも上げよう上げようとし続けているのが息苦しいなぁ、という感想は変わらず。
というかそういう時代だったんでしょうね、多分。平和な時代で大きな変動が起こらなかったため、身分も固定され、先祖代々の『家柄』や『功績』で給料が決まり、生き方が固定される時代。
たぶん、黒船が今後襲来したり、大きな争いが起こるとはまだ誰も思っていなかった時代だとそうなるのかなぁ。『今』がずっと続く事なんて絶対ないのに、人間は、『今の社会体制』がずっと続く事を前提で、考えるものだなぁと思いました。



B→暇つぶし以上の有益な何かを得た作品

マリオネットの罠/赤川次郎……赤川次郎らしからぬ(??)割と重たい雰囲気。サスペンススリラーとしてさすが赤川さんと思わせる出来だけど、最後のどんでん返しは要らないし、ヒロインはひたすら気の毒だし、まぁ何というか(彼の中での)異色作だなぁと
しかしこれがデビュー作ですか

ジェネラル・ルージュの凱旋/海堂尊……「ナイチンゲールの沈黙」の裏にあたる物語だけど、
個人的に好きなキャラがいなかったせいか、ちょっとけん引力に欠けたかな。つまらなくは、なかったけども。救急病棟、小児科病棟の慢性赤字体質の話。


マリア様がみてる リトルホラーズ/今野緒雪……
リトルホラーと銘打っているように、奇妙で不思議で宙ぶらりんな話が集まっている。
『ワンペア』が怖くて、『ハンカチ拾い』がロマンを感じて良い。
ただ、良くも悪くも宙ぶらりんなのと、最後の『胡蝶の夢』(&【糊付け部分の、リトルホラーズ】)が一番つまらないため、読後感はちょっとしっくりこなかった。
また、祥子様たちが卒業してしまい、代わりに入ってくる新入生もまだいないので、物足りなさもあった。



アリアドネの弾丸/海堂尊……
前半は「イノセント・ゲリラ」に引き続きAi推進派 VS Ai拒絶派の論戦に終始し、退屈。
中盤以降事件が動きミステリとしては面白いものの、被害者・加害者共に魅力はなく、(加害者は不気味ではあるが)、ミステリとしても人間ドラマとしても最高峰の「チーム・バチスタ」や
、詩情イメージの美しさが印象深い「ナイチンゲール」にはだいぶ落ちる。

リオノーラの肖像/ロバート・ゴダード……時が過ぎ、少女は大人になる。
庭園を去り、新しい住人が庭園に住み、そして新しい物語を、繰り返された物語を。役者を変えて再演される物語。
過ぎ去りし過去は、夢幻のように揺らめき、いつかそこで起こった事実も、時の中に忘れられていく。

夏の日の声/アーウィン・ショー……面白いんだけど、感想に困る。
今は50代になった主人公が、近くの公園(学校?)で行われている息子の野球試合を見ながら、
自分の半生を思い出す、そういうお話。
サッコ&ヴァンゼッティ事件、世界大恐慌、第二次世界大戦があった主人公の人生、
子供の頃の野球の思い出、野球の試合のメモをひたすら取っていた父親の思い出、
サマーキャンプの思い出、弟との友情(兄弟の場合友情っていうのかな?)
奥さんとうまくいかず不倫をし、不倫相手にガチ恋をしたけれど、やがて奥さんを再び愛するようになる、そういった色々なことが主人公の人生を流れていったけれど、
次代は変わり時が流れ、少年は父親になり息子を設けた。
そして今日も少年は野球をし、父は息子を見守るのだった。

説得/ジェイン・オースティン……
周囲の反対で別れた元カレと8年ぶりの再会。から始まる恋物語はさすが少女漫画の祖オースティン。
面白かったんだけど、山場をもう少し盛り上げてほしかったところ。

狭き門/アンドレ・ジッド……
とりあえず、コンプレックスをこじらせまくって、信仰と自罰に逃げた女の話、だとしか思えなかった。主人公はジュリエットを選んでおけば良かったのに。

ダフニスとクロエ―/ロンゴス……
海と牧場と初々しい恋と爽やかなハッピーエンド。たまにはこういうのもいいね。

剣の名誉/エレン・カシュナー……Cに近いB。キャラクターの恋愛模様などがとても面白かったけど、
悪役が中途半端すぎて、そちら方面ではイマイチ。同性愛全開でちょっと驚きました。

殺意/フランシス・アイルズ……嫌な奴しか出てこない、嫌キャラ王者決定戦。個人的には最ウザのマドレインは死んでほしかった(酷い感想)
あと、ネタバレだけど(反転)
最後の2ページ絶対要らないでしょ。悪人に裁きがくだらないとまずい、というためだけに付け加えられたような唐突なエンドだけど……。
奇跡の輝き/リチャード・マシスン……
感動系小説かと思ったら宗教小説だった。まぁ、それはそれでいいけど。
天国が本当にあるといいですね。

奇跡の少年/オーソン・スコット・カード……
えーと、これは完全にシリーズの第1巻ですね。続きが気になりますね。
続きが気になるんですが、これの次の2巻(赤い予言者)までしか翻訳されていません!
酷いです(😢)

シカゴブルース/フレドリック・ブラウン……
ブラウン好きだしこの作品も悪くないけど、そこまででもないかなぁ。青春ミステリ。


アドレナリンの匂う女/ジェームズ・ケイン……
悪女サスペンスなんだけど、悪女に魅力を感じないとつらいところがあった。

刃傷/上田秀人…… 今回は(今まで単なる守られ役だった)併右衛門の活躍と、法廷モノにも繋がるような裁判(??)シーンが見所。 あと、主人公の衛悟とヒロインの瑞樹が結ばれて、良かったね!ただ、毎回何かというと変な輩に囲まれる『安定(マンネリ)』のシリーズ展開や、単に続刊が手元にない事も含めて、このシリーズはここまででいいかとも思う。
毎回チャンバラがあるのに、悪役の魅力がないのは厳しいよなぁ (最近は伊賀忍者とよく戦ってるけど)

創竜伝1/田中芳樹……
真面目で優しい頼れる長男、クールで毒舌ホスト系の次男、
やんちゃで元気な三男、おとなしいけど怒ると一番強い四男。
ドラゴンの血をひくこの四兄弟が、暴れまわるエンタメバトル。
キャラクター小説として四兄弟に魅力があるので、そこを楽しむのがお薦め。悪役がネット右翼な言動を繰り返したり(作者はネトウヨ大嫌いだと思われる)、
クレーマーみたいな読者から来たファンレター(というか中傷メール)を公開したりと、色々とやりたい放題かましているので、
そういうのが苦手な人は注意ね。
ぼくはまぁ、「作者、楽しそうだなwww」って思ったけど、
割と危ういバランスというか、もう少し踏み外すと途端に嫌になると思う。

クレイジーカンガルーの夏/誼阿古……
田舎に住む中学生のもとに、東京から「異分子」の少年がやってくる。父母の離婚問題で、彼は一時的に預けられたのだ。
母親に会うために、田舎町から東京に電車を乗り継いで向かう、昭和版スタンドバイミー。
リアリズム溢れる昭和の田舎描写は善し悪し。
まるで作者の少年時代をそのまま振り返ったような、『ホントっぽさ』が、逆に『田舎のいやぁ~な、湿った夏』を思わせる。
それがリアルで良いとも思うけれど、
『機動戦士ガンダム(初代)』の話が頻繁に出てきたり、富野由悠季と宮崎駿とはっぴぃえんどhttps://youtube.com/watch?v=DpnSNRvG6rw
とに彩られた男子学生の青春に、
懐かしさを感じられるかどうか、と言われると「わからねぇ……」ってなってしまう。
あと、男なら「『あげる』じゃなくて『やる』といえ」とか、男が台所に上がるのは恥ずかしいとか、なんか色々、昔の人って何考えて生きてたんだろなぁってなった。


C→暇つぶし程度にはなった作品

デミアン/ヘルマン・ヘッセ……自立して新しい世界を切り開きなさい、という超人思想的なお話、でいいのかな?
そうとしか読めなかったんだけど。

イノセント・ゲリラの祝祭/海堂尊……
本作で表現される、日本の官僚制度の腐敗や、医療現場の置かれた厳しい現実など、作者の想いが伝わってくる作品。
ただし、作者の熱意が強すぎるあまり、小説の体をなしておらず、これではほぼ論文のよう。
会議室という狭い世界での論絶バトルということもあり、法廷モノのような緊迫感を期待したが、それもなしで、氏の作品の中で初めて「あまり巧くないな」と感じた作品。
とりあえず1作のうち20回は「言い放つ」という単語を見たけど、そう使う単語でもないので、悪目立ちしている。

ポンスン事件/クロフツ……つまんない事を言うようだけど、卑劣な恐喝犯は死んでほしかったと思うの。

ダンシング・ベア/ジェイムズ・クラムリー……前作の「酔いどれの誇り」は名作だったんだけどなぁ。今回はただドンパチやってるだけだしなぁ。

秘闘/上田秀人……徳川家基暗殺事件は、1巻の「密封」でもう解決したやろ……? 何故もう一度出してきた??

隠密/上田秀人……上田秀人の「奥右筆秘帳」7巻『隠密』読了。69点。
今回は繋ぎの巻。
最後に主人公とヒロインとの仲を、ヒロインパパが認めてくれるところで終わるので「良かったのぅ」という気分にはなるが、
さて本編の内容が面白かったかと言われると うーーーーん、、、前巻ほど酷くはなかったけど……
シリーズ全体の特徴として、
何やら怪しげな陰謀により、奥右筆であるヒロインパパが襲われる(主人公が護衛)。
毎回チャンバラ! とこんな感じなんだけども、
人物描写に魅力が感じられないため、毎回襲ってくる奴が同じように感じてしまう。
辛うじて冥府防人だけは存在感を出しているけど、それ以外の甲賀忍者、伊賀忍者、お庭番、お山衆に個性を感じるかと言えば感じないし、それは津軽藩士や薩摩藩士、松平主馬守の部下なども同じ。
本当に全方面から命を狙われているんだけど、毎回同じことをしている感が付きまとう。
謎自体も、1巻で明かされる徳川家基暗殺事件が最大の謎で、3巻の大奥の物語も面白かったけど、それ以降はトーンダウンしているというか。

コロナもあって、買っちゃった8巻までは読もうかなと思うけど、
読むのは3巻までで良かったかな、って思った。


D→自分には合わなかった作品

銀の匙/中勘助……

星界の紋章Ⅰ 帝国の王女/森岡浩之……

上中下巻の全3巻の作品を、上巻だけ読んで評価するようなものなので、正当な評価は不可能。
そのうえで、とてもじゃないけどしんどいのでここで離脱。

アーヴという『宇宙エルフ』のような存在が設定・容姿(イラストがあるので)ともに魅力的で、アーヴ社会についての考察が割と細かい。
そこが作品の魅力になってはいるのだが、アーヴという存在単体だけで読むにはあまりにもしんどいのが、ぼくの本音。
原因は漢字に振られた大量の『アーヴ語』ルビ(カタカナのルビ)。
架空言語はたまにファンタジーやSFで見るが、読みやすく処理できている作品もある中で、大半の作品は実に読みにくい代物になっている。
本作もその悪例。
ラフィールは確かにかわいいし、アーヴは魅力的。けど、ごめん、むり。

アーウィン・ショーの短編集「夏服を着た女たち」を読みます(バレあり)

☆80ヤード独走  評価 A+

20歳の夏、彼はスターだった。
アメリカン・フットボールの試合で、80ヤードの独走ゴールを決めたのだ。
皆から祝福され、恋人のルイズは彼を自慢にし、溺愛した。

やがて時は流れ、1929年の大恐慌が訪れた。

職を失くし、酒浸りになる彼とは対照的に、ルイズは自身の才能を開花させ、
本来の自分の世界に飛び込んでいく。
夫である彼の、知らない世界へ。


ステージが変わり、関係性も変わってしまう切ない恋愛物語。


☆「アメリカ思想の主張」 評価 C+

ひたすらかわいそうな主人公が、皆に金をせびられる話。
かわいそう。

☆「ストロベリー・アイスクリーム・ソーダ」 評価 B₋

軟弱なピアニスト志望の弟が、兄に付き合わされて他人のボートを無断借用し、
おまけに無理やりボート主の子供と喧嘩させられる話。
最後、「弟はついに男になった。兄ともわかりあえるようになった」
みたいな、ちょっといい話ふうになってるけど、
喧嘩なんてしたくない弟が、無理やり喧嘩せられてかわいそうとしか思えなかった。


☆「ニューヨークへようこそ」 評価 B

恋の始まり。

☆「夏服を着た女たち」 評価 B+

通りの女を見るとついついじろじろ見てしまうしょうもない男と、
束縛が強い女の話。
嫉妬かわいいと思うか、面倒くさいと思うかは読者次第かな。

ぼくも人間観察好きだから、結構見ちゃうほうだけど、
それをいちいちグチグチネチネチ言われるのは正直嫌だな。
一方で、この男はちょっと見すぎだとも思うw
でもなんだかんだでこの男、奥さん愛してるなぁってのはわかるし、男は、失ってから女の良さに気づくんだよなって思う。

まぁ、奥さんに甘えてるよ、この男はって思うけど、
でもやっぱり奥さんの束縛強すぎって思うし、
いろいろモヤるww

☆「カンザス・シティに帰る」 評価 B

クソ妻の言いなりになるかわいそうなボクサー夫の話。


☆「原則の問題」 評価 B+

車にぶつかられ、鼻を殴られたのに、『大した犯罪ではないから、示談で済ませろ。裁判にはお金も時間もかかるぞ』と言われてしまう、かわいそうな運転手の話。
運転手の『社会不適合者感』へのある種の共感があった。


☆「死んだ騎手の情報」読了。評価 A₋。

バーバーは、怪しげな男スミスに「冒険」の話を持ち掛けられる。
何度かフライトをするだけで、大金を支払うというのだ。
怪しみながらも話に惹かれていくバーバーだったが、競馬場でバーバーとスミスが賭けた馬の騎手が落馬し、死んでしまう。
冒険もいい。けれど、そこには危険がつきまとう。
うまい話には裏がある、バーバーは理性を取り戻し、「冒険」の話を断った。

そして一か月後、バーバーの親友、頭は足りないが人のいいリチャードソンは大金を手に入れた。
スミスの仕事はそれほど危険でもなかったのだ。
バーバーは虚しい気持ちで去っていった……。

日常の中の不思議な冒険話は「真夜中の滑降」などでも描かれる、もう一つのショーの顔だけど、
こちらはなんと冒険に出ないのが失敗だったというオチで面白い。


☆フランス風に 評価 B+

エジプトに行っている間に、恋人を寝取られた話。
切ない。


☆愁いを含んで、ほのかに甘く 評価 A₋

大女優になるという夢と野心のために、主人公を捨てた元カノ。
二年が経ち、夢破れた彼女は故郷に戻ろうとしていた。
これまた切ないけど、主人公は二年で別の人と巡り合えたみたいで良かった。
ぼくだったら一生引きずるわ、こんなん。


総評

というわけで、アーウィン・ショーの短編集「夏服を着た女たち」読了。83点。
生々しくも、うまくいかない恋愛模様が多い短編集。
正直、(恋愛相手としては)ロクな女性が出てこないので、読んでいて厳しかったw
恋愛なんてするもんじゃないですね、と思ってしまったw

好きな小説 殿堂入り 随時(年に1回ぐらい)更新

作家順、五十音順。随時追加。
この記事の作品は全て超大好きだけど、敢えてその作家の個人的ベストを太字赤に。

   

   【アーウィン・ショー】

   真夜中の滑降 
   はじまりはセントラル・パークから  

  
  【アーサー・ヘイリー】
    
   最後の診断      
   マネーチェンジャーズ
   自動車     

  【アイザック・アシモフ】

  アイ・ロボット     
  永遠の終わり     
  鋼鉄都市        
  はだかの太陽  

  【アイラ・レヴィン】


   死の接吻   
  

  【アガサ・クリスティ】
 
  終わりなき夜に生れつく 
  オリエント急行の殺人  
  ナイルに死す      
  五匹の子豚       
  葬儀を終えて      
  死の猟犬        
  鏡は横にひび割れて  
   
  【秋山瑞人】

  
イリヤの空UFOの夏 

  【アルベール・カミュ】

   異邦人        
   ペスト  
  
  【生島治郎】

  黄土の奔流     
  追いつめる 
  
  【ヴァーナー・ヴィンジ】
   
  最果ての銀河船団        

  【ウィ・ギチョル】

   9歳の人生  

  【ウィリアム・アイリッシュ】

  黒い天使      
  暁の死線       

 【エラリー・クイーン】

   十日間の不思議   
  九尾の猫       


【オーソン・スコット・カード】


  死者の代弁者    
  エンダーのゲーム  

 【乙一】

  君にしか聞こえない
 
 【小野不由美】
  
  屍鬼         
  魔性の子       
  月の影、影の海    
  黄昏の岸、暁の天   
  華しょの幽夢      
  東の海神、西のそう海 
  
  【カート・ヴォネガット】
  
   スローターハウス5  
  
   【海堂尊】

   チーム・バチスタの栄光
   ナイチンゲールの沈黙
  
  【韓寒】

  
  上海ビート 
 
  【京極夏彦】

  魍魎の匣       
  絡新婦の理     
  陰摩羅鬼の瑕     
  姑獲鳥の夏      

  【クリフォード・シマック】
 
  都市         
  愚者の聖戦      
 
 【グレアム・グリーン】

  ヒューマンファクター    

  【グレッグ・イーガン】
 
   祈りの海 

  【ケン・フォレット】

   針の眼        
      
  【小泉喜美子】
  
  弁護側の証人     

 【コリン・ウィルソン】

 
  精神寄生体      
  殺人者       
 
 【ジェイン・オースティン】


   高慢と偏見     
 
 【ジェームズ・クラベル】

  キング・ラット     
  将軍         
 
 【ジェイムズ・クラムリー】

   酔いどれの誇り   

  【ジェームズ・ケイン】

  郵便配達は二度ベルを鳴らす 
  殺人保険          

 【ジェフリー・アーチャー】

  百万ドルをとり返せ  
  めざせダウニング街10番地 
  ケインとアベル 

  【シオドア・スタージョン】
   一角獣・多角獣      
  
  【重松清】
   
   君の友だち     
  
  【司馬遼太郎】

   最後の将軍     

  【シャーリィ・ジャクスン】

  ずっとお城で暮らしてる 

  【ジャック・ヒギンズ】
   
  死にゆく者への祈り 

  【ジョイス・ポーター】
  
   切断         


  【ジョー・ウォルトン】
 
   図書室の魔法 
  
  【ジョージ・オーウェル】
   
   1984年           

  【ジョージ・r.r.マーティン】

  七王国の玉座     
  王狼たちの戦旗    
  剣嵐の大地  

 【ジョーン・ロビンソン】
 
  思い出のマーニー   
  
 【ジョゼフ・ウォンボー】
  
  クワイヤボーイズ  

  【ジョナサン・スウィフト】

  ガリバー旅行記    

 【ジョン・ヴァーリィ】
  
  ブルーシャンペン   


 【ジョン・ハート】


  ラストチャイルド   
  キングの死    

 【スコット・トゥロー】
 

  推定無罪  
  
  【鈴木光司】

  リング        
  らせん           
  
  【スティーブン・キング】

  グリーンマイル     
  デッドゾーン     
  ザ・スタンド     
  ファイアスターター  
  IT          
  クージョ       
  死のロングウォーク 
  
  【スティーブ・ハミルトン】
   
   解錠師      
  
  【瀬名秀明】
  
  パラサイトイヴ 
  
  【高橋源一郎】
  
  さようならギャングたち 
  
  【貴子潤一郎】
  
  12月のベロニカ   

  【高見広春】

  バトル・ロワイアル  
  
  【太宰治】

  斜陽        
  人間失格    
 
 【田中ロミオ】  
  
  AURA        

 【ダニエル・キイス】

  アルジャーノンに花束を 
  24人のビリーミリガン  

  【ダン・ブラウン】

  天使と悪魔      
  ダヴィンチ・コード 
  インフェルノ 

  【チヌア・アチェベ】
   
  崩れゆく絆 
 
  【ディック・フランシス】

  利腕         
  大穴        
  敵手         

  【テッド・チャン】
 
   あなたの人生の物語 
  
  【ドナルド・ウェストレイク】

   ホットロック    

   【中井英夫】

   虚無への供物 
   
   【夏目漱石】
 
  それから      
  こころ       
  
  【貫井徳郎】

   慟哭      

  【ネビル・シュート】

   渚にて  
  
  【野坂明如】
  
  エロ事師たち  
 
  【ハーマン・ウォーク】
 
  ケイン号の叛乱    
  戦争の嵐

  
  【フィリパ・ピアス】

  トムは真夜中の庭で  

  【フィリップ・K・ディック】
  
  スキャナー・ダークリー 
  ユービック 
  
  【フィリップ・ホセ・ファーマー】

   恋人たち      


  【福井晴敏】

  亡国のイージス  

  【フランソワーズ・サガン】
 
  悲しみよこんにちは  

  
  【フレドリック・ブラウン】
  
  天の光はすべて星
   
  【フレデリック・ポール】
   
   タウゼロ 

  【マイクル・クライトン】

  ジュラシックパーク  
  プレイ――獲物    
  失われた黄金都市   

 【マイク・レズニック】
  
  キリンヤガ      
  
  【マリオ・プーヅォ】
   
   ゴッドファーザー  
   
   【三浦綾子】
    
   ひつじが丘     

 【ミゲル・デ・セルバンテス】
   
   ドンキホーテ    

 【ミッチ・アルボム】
 
  天国の五人      
  もう1日    

  【山口雅也】


  生ける屍の死

  【山田風太郎】

  魔界転生   

  【吉本ばなな】
  
  TSUGUMI     
  キッチン     

 【リチャード・アダムス】

  ウォーターシップダウンのウサギたち  
  ブランコの少女        
 
【リチャード・マシスン】
 
 ある日どこかで    
 アイ・アム・レジェンド 

 【隆慶一郎】
  
  影武者徳川家康    
 
 【レイ・ブラッドベリ】

  火星年代記      
  刺青の男       
  太陽の黄金の林檎   
  10月はたそがれの国 

 【ロバート・ゴダード】

  千尋の闇       

 【ロバート・F・ヤング】
 
 たんぽぽ娘      

 【ロバート・ラドラム】
  
  マタレーズ暗殺集団  

  【ロベール・メルル】

   マレヴィル      


ダン・ブラウン「インフェルノ」感想(86点)

前置き

本書は、『ダヴィンチ・コード』で有名なラングドン教授シリーズ、第4作。
第3作の『ロストシンボル』は個人的にやや落ちるものの、第1作『天使と悪魔』(個人的最高傑作)、第2作『ダヴィンチ・コード』に引き続き、本書『インフェルノ』でも見事な快打を見せてくれました。

シリーズ通しての特徴は、上質なタイムリミットサスペンス+豊富な蘊蓄が楽しめること。
驚嘆すべきは、『動』(サスペンス)と『静』の巧みな展開。
回想シーンなどを駆使する彼の筆にかかれば、動と静は見事に溶け合い、説明が長すぎる、冗長といった不満を感じる事がありません。
巻き込まれ方主人公のラングドン、そして読者への情報開示のタイミングはまさに職人芸と言えます。

本書『インフェルノ』が下敷きにしているのは、タイトルのとおり、ダンテ・アリギエリの『神曲』。特に『地獄篇』であり、本作でもイタリアの宗教建築、美術に関する蘊蓄が散りばめられています。

個人的には本作『インフェルノ』の蘊蓄部分は少々長く、展開が遅く感じました。
しかし、最後の300ページはまさに怒涛の面白さ。

個人的ランキングは
『天使と悪魔』>『ダヴィンチコード』&『インフェルノ』>『ロストシンボル』となりました。

本書のテーマ(世界の人口問題)

本作の悪役にあたるのが、ゾブリストという生化学者。
彼の考える地球の適正人口は40億人だと言います。

世界の人口が増えれば増えるほど、二酸化炭素濃度が増え、熱帯雨林が焼失し、絶滅種が増え、水・紙の使用量が増え、海産物は消費され、オゾン層は喪失する。
これらすべてが、人間による地球環境の破壊(罪)であり、人口が増えれば増えるほどますますその被害は増えていき、ついには人類自体が住めない環境へと、地球を破壊しつくしてしまう。

人類が増えすぎぬよう、絶妙な自然バランスを保ったのが疫病でした。
中世に蔓延したペスト(黒死病)は当時の人口の、およそ3分の1を殺し尽くしたとも言います。
人が増えすぎると感染が拡大するペスト
まさに増えすぎた人類に対する神の警告のようにも思えます。
(3密を避けよう! これを書いているの新型コロナウイルスの緊急事態宣言下です!)。

しかしそんなペストも、医療の進展により被害は大幅に減りました。
人は医療の進化や大規模戦争の廃絶によって豊かになり、寿命が延び、その結果、どんどん増え続けた人類は、やがて地球を覆い尽くしていきます。

1920年。100年前の地球の総人口は20億人でした。
それが、2020年現在は77億人。2100年頃には110億人を超えるという試算も出ているそうです。

神となったゾブリスト

そんな中、立ち上がったのが今回の悪役(?)、ゾブリストでした。
彼は、人類の3分の1の『生殖能力を奪う、ウイルス』を世界中に蔓延させ、人口を抑制しようと企んだのです。

このゾブリストの行為が、果たして正しいとは私は言いません。
勝手に人の生殖能力を奪うわけですから、当然ですよね。

しかし、たとえばナチス・ドイツの悪名高い『優生学』(優れた遺伝子情報を残すために、劣等遺伝子を抹殺する)や、
経済的な分断をより深く引き起こしかねない『トランスヒューマニズム運動』(遺伝子を操作して、人類をより強靭にする計画。それ自体は素晴らしいのだけど、お金持ちにしか行き渡らず、独裁者や富裕層が占拠して奴隷制に繋がるという懸念が本書では示されている)に比べ、
まさに運・不運、ランダムで生殖可能か不能かが決まる、ゾブリスト・ウイルスはより『公平』で、実に慈悲深い人口の間引き方だと、個人的には思いました。

これは、私自身が子供を特段欲しがっていない、という事情から来る冷たい考えなのかもしれませんし、ゾブリストの思想を支持するわけではないのですが、大規模戦争や、生物兵器などで人を間引くよりはよほどマシなのではないかなと。

実際には何が正しいのかわからない。ゾブリストの行為の捉え方は、読者によってさまざまだと思います。

私個人としては、100人中100人が同じ感想を持つような物語よりも、
読者によって、意見・考えが分かれるような物語が好きです。
まぁあまり過激すぎる意見が出てくると面食らってしまいますが、本を読んで、その本の内容について深く話す。
それこそが、読書人同士が分かち合える、最大の楽しみではありませんか。

北方謙三「三国志」感想(重バレあり) 85点

前置き(いろいろな三国志)

歴史に全く興味のない方でも、名前ぐらいは聞いたことがあるかもしれない、『三国志』。
しかし、一体どれから読めばいいのだろうか?

選択肢の一つに『三国志演義』がある(私が読んだのは岩波版なのだが、探しても見つからなかったので徳間書店版を貼った)

三国志演義 1

三国志演義 1著者: 立間 祥介/羅 貫中

出版社:徳間書店

発行年:2006

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まずはこれが王道であり、基本中の基本だ。
とはいえ、私が読んだ『演義』は講談調だったりしたので、読みづらいと感じる人もいるかもしれない。

『三国志演義』をより小説風にしたのが吉川英治の「三国志」である。

三国志 1(桃園の巻)

三国志 1(桃園の巻)著者: 吉川英治

出版社:1万年堂出版

発行年:2016

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では、これがお薦めかというと、個人的には微妙なところだ。
確かに、『演義』よりも手に取りやすい気はする。
しかし、実際のところ中身は『演義』と大して変わらず、更に二大決戦の一つ『官途の戦い』が端折られている点と、諸葛亮の死後が書かれていない点が厳しい。

大判三国志 1(桃園の誓い)

大判三国志 1(桃園の誓い)著者: 横山 光輝

出版社:潮出版社

発行年:2017

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この吉川三国志を漫画化したのが横山三国志で、まずは漫画から、というのも一つの選択だが、欠点もまた吉川三国志を引き継いでいる(と思う。読んだのが昔すぎてうろ覚えだけど)。

この3作を比較すると、こうなる。

演義:
長所:三国志の最初から最後までが読める。
短所:講談調で、とっつきづらいかもしれない。

吉川・横山三国志
長所:演義よりも読みやすいかもしれない。
短所:官途の戦いが描かれていない(吉川。横山はどうだったかな?)。
 諸葛亮の死後がない。
 基本線は『演義』そのまま。

この3作を『演義系三国志』と仮に呼称する。
なお、今回のメインである北方三国志は、演義系ではない。

演義系とは

『三国志演義』とは、三国時代の歴史を基に、民間伝承やら何やらを混ぜ、エンタメ要素を盛り込んだ歴史ファンタジー小説である。
玄奘が仏典を求めたのは史実でも、孫悟空や猪八戒は連れて行かなかったであろう『西遊記』と同じで、歴史そのままを描いた作品とは言い難い。

特に大きな特徴としては、蜀(劉備)贔屓、漢の天子贔屓(献帝など)だろう。
劉備だけでなく、劉備のお友だちまでがみな美化されて描かれている(最たる者は陶謙である)。
そのあおりを食って劉備に敵対したキャラクターは、意図的に悪役にされてしまっていたりもする(曹操に顕著)。

また、万能軍師諸葛亮が風向きを変えてみたり、謎の仙人が孫策を祟り殺すといったファンタジー要素も登場する。

個人的には、『これはこれで楽しい』と思う。
しかし、ファンタジー小説ではない三国志を読みたい、と思う人もいるだろう。

そんな人にお勧めしたいのが、私が今回読んだ北方謙三『三国志』なのである。

三国志 1の巻(天狼の星 付:地図(1枚))

三国志 1の巻(天狼の星 付:地図(1枚))著者: 北方 謙三

出版社:角川春樹事務所

発行年:2001

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北方三国志は、地味である。ファンタジー要素は出てこない。しかし、その中には一つの芯が通っており、リアリティがある。

劉備は善玉ではない。曹操は悪玉ではない。孔明は万能ではない。
皆が皆、悩み苦しみ、長所も短所もある一人の人間である。

演義ではあまりピンと来ない、戦場・地形についてもわかりやすく書かれている(なぜ孫権は合肥にこだわるのか。なぜ漢中は重要なのか、など)。
演義ではよくわからない、群雄の身分の問題も丁寧に描かれている
(荊州刺史劉表と長沙太守孫堅の関係性など)。

そして、万世一系思想(劉備・諸葛亮・荀彧など)と
易姓革命思想(曹操)
更に地方の独立国としての道を歩む呉(孫権)
三者の立場の違いが如実にわかる点も特徴的である。

一方で、吉川三国志と共通しているが、諸葛亮死後の事が全く触れられていない点。
周瑜亡き後の呉には作者が熱意を持てなかったのか、特に夷陵後は呉の出番が全くない点は気をつける必要がある。

呉について

まずは三国の一つ、孫呉について。
個人的に、地方独立国という思想自体は悪いとは思わないものの、大志が感じられないぶん、こうした戦乱ドラマではインパクトが弱い。
リアルで考えれば、領土拡大の野心が薄く、内政重視の平和主義国として好印象が持てそうなものだが、戦乱ドラマでは魅力を感じられないというのは、血を求める人間の性なのだろうか……。

天下統一を目指して大国(魏)に立ち向かう蜀の足を、陰謀を駆使して引っ張り、あくまで天下三分の中のNo2であり続ける呉の描写は、従来の三国志以上に陰湿に思えるので(従来の三国志だって結構陰湿に感じたのだけど;苦笑)、赤壁以後の呉ファンの方は特に注意してほしい。
(周瑜存命中までは、呉も魅力的に描かれている)

北方三国志の呉で魅力的だったのは、孫策と周瑜特に周瑜は呉最大のスターとして、赤壁の戦いを勝利に導き、天下二分の計を持って益州侵攻を企てる。
この2人が長命であれば、天下も変わったであろうと思わせる、本当に惜しい人材であった。

魏について

三国時代最大のスター、曹操の存在感がまずは光る。『演義』とは違い悪役描写はされておらず、彼の死のシーンはなかなか感動的だ。
互いの思想は違えども、曹操最大の腹心として活躍を見せる荀彧や、心を通い合わせたボディガード、許緒にも存在感があった。後は、合肥を守り抜いた張遼あたり。
曹操亡き後は、偉大すぎる父を持った病み属性の曹丕、気まぐれな二面性を持つ曹叡、なぜかドMにされてしまった司馬懿などが光るものの、やはり曹操、荀彧、許緒の三人だろうか。

天子贔屓がない分、献帝の描かれ方は極めて否定的だ。
こんな『腐った漢の血』は絶やして曹家が覇者になればいい(易姓革命)、という曹操の気持ちは、『漢の血を絶対に絶やすな』という劉備の理想よりも遥かに共感しやすい
しかし、類まれなる曹操が統治者であるうちはいいものの、その子供、子孫へと続いていくうちに『血は腐っていく』もの。
それは曹魏よりもむしろ孫呉に出ている気もするが、易姓革命思想を続けていけば、『ダメな子孫が生まれればすぐに内乱』になってしまう。

心情的には共感できるが、結局、万世一系の方が思想としてはいいのかなぁ、どうなんだろう、というのが読み終わった後の感想だった。
万世一系は万世一系で、結局腐敗した側近政治になってしまえば国が衰退するので、権力のチェック機構をしっかりしない限りダメな気もするけど……。

蜀について

蜀漢びいきが薄れているためか、北方三国志の劉備は相当にしたたか(腹黒)だ。
とにかく世渡り上手というか、しぶとい!
不正役人の襟首をつかんで顔面強パンチを連打する劉備は、北方ハードボイルドに登場するヤクザにしか見えない(笑)
そんな劉備を『徳の人』に見せかけるため、細やかな気配りを見せる張飛が前半の蜀では一番好印象だった。オリジナルキャラの奥さんともども、瑞々しい印象を残す。

後半の蜀で主役を張るのは、諸葛亮だ。
20代後半、田舎にこもって隠遁しながら『ロクな勤め先がない(主君がいない)。自分はこのまま腐っていくのか』と鬱屈を抱える諸葛亮。
劉備に出会い、彼の志に魅せられて、どこまでもついていく孔明の人間臭さは、演義系にはあまりない描写だと思う。
劉備、そして最後の名将趙雲とも死別し、期待していた馬謖とも別れ、独りになってもなお、劉備の夢を追って戦い続ける悲壮な姿は読んでいてしみじみとさせられた。

また、『泣いて馬謖を斬る』でおなじみの馬謖も印象的。
演義系では単なる無能キャラのような描かれ方で、『泣く』ほどのキャラでもない気がするが(汗)、北方三国志の馬謖は違う。
頭は良いけれど、天才ではない。
にもかかわらず『納得できない事は、自分のアイディアを優先してしまう』。

いますよね、こういう人。上司の指示が非効率的にしか感じられなくて、つい自分の考えた効率的なアイディア(だと本人は思っている)で仕事を進めてしまう人。
つーか、俺じゃん……。はぁ、自分を見ているようだったよ、馬謖くん……。
そんな馬謖を厳しくもかわいがる孔明と、そんな孔明を慕いながらも、孔明に良いところを見せたくて、つい自分の考えた素晴らしい作戦を実行してしまい、蜀の未来を壊してしまった馬謖くん。
かわいがってきた馬謖を斬るシーン。これは泣きますわ……。
ごめんよ、孔明さん。馬謖は最後までダメな子だったよ。
でも孔明さんに認めてほしかったんだ。
すごいって思ってもらいたかったんだ(涙)。

三大勢力以外では、やはり呂布

北方三国志の呂布は一体どうしてしまったのでしょう。
あまりにカッコ良くてびっくりしました。
推しキャラは、諸葛亮、呂布、曹操、張飛ってぐらい呂布の存在感が凄い。

愛妻家で、奥さんと赤兎馬だけに心を通わせる呂布。
真っ黒な鎧に、血のように赤いスカーフを奥さん手ずから巻いてもらい、赤兎にまたがり戦場を駆ける雄姿。
奥さんのために丁原を斬り、董卓を斬り、赤兎のために曹操を助け、陳宮のために死んでいく呂布。
呂布の死の瞬間、海に飛び込もうとする赤兎も含め、わずか3巻の登場でありながら鮮烈な印象を残しました。

袁家の天下

後漢末期の状況については、今までの演義系作品であまり実感できなかったポイントの一つ。
特に袁術の存在。北方三国志ではこの辺をきちんと拾っているのが面白かった。
董卓亡き後、演義系作品では献帝のいる長安(リカク・カクシ)の存在感が大きいけれど、北方三国志ではほとんど触れられません。
変わって強調されるのが、
袁紹同盟VS袁術同盟の対立軸

袁紹・劉表・(曹操)の同盟ラインと、
袁術・孫堅(孫策)・公孫瓚の同盟ライン
この2勢力の対立を軸に、袁術のラインから抜け出した孫策や、フラフラしながら土壇場で袁紹側についた劉備
最後までどちらにもつかず、滅ぼされてしまった呂布といった構図が見えてきます。
公孫瓚は袁紹に倒され、袁術も倒れ、いよいよ袁紹連合の中の二大巨頭
袁紹VS曹操の争いへと移り変わっていく
過程が本作ではわかりやすく描かれています。

その後、曹操の天下を挫いた赤壁の戦い。
益州侵攻を間近に控えた周瑜の死。
漢中から攻め寄せる予定の蜀を背後から襲った、孫権の裏切り。
あわや曹叡の首を奪取する手前で、馬謖の大失態で夢が潰えた第一次北伐。
司馬懿が辛くも逃げ延びた第四次北伐と、諸葛亮の死で終わった第五次北伐。このような歴史の転換点が理解しやすく、印象深く描かれていました。

一方で、武将の華々しい活躍は(一部、呂布のものなどを除き)抑えられ、スーパー軍師の知謀戦という側面も弱まっているため、地味な印象は否めません。
関羽絡みの一連の一騎打ちや、孫策VS太史慈などは、本作では全く印象に残りませんでした。

そんなわけで、北方『三国志』13巻、じっくり読ませていただきました。
新型コロナで大変ですが、読書の春ということで、少しでも有意義に過ごしていきましょう!

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