74 ワールドカップ

ベスト4企画②戦力比較

  ドイツ        イタリア     ポルトガル    フランス

失点 3          1         1        2
得点 11         9         6        1

GK レーマンC    ブッフォンS  リカルドB   バルテズB 

PK ドイツS イタリアD ポルトガルA フランスB



GKはブッフォンが最強。レーマンが最弱だ。ただし、PKになれば話は別。




CB メッツェルダーB- メルテザッカーB(ドイツ) 

カンナバーロS ネスタA (マテラッツィB:イタリア)   

メイラB カルバーリョA-(ポルトガル)

テュラムA ギャラスA(フランス)
               



最も中央部の守りが弱いのはドイツ。とは言え、ここまで上がってきたチームである。
この4チームの中で弱いというだけで、水準以上のレベルは誇っている。
最も守備が堅いのはイタリアだが、4チームそれぞれ守備力には自信があり、大崩れするようなことはないだろう。
ネスタは負傷を抱えており、出られない場合はマテラッツィが入る。


RSB フリードリヒ C ザンブロッタ A ミゲウ A サニョール A


ドイツDF陣の穴、フリードリヒだけが評価を大幅に下げた。
残りの3人はそれぞれ攻守共に安定感があり、このポジションでは世界屈指と言える。


LSB ラーム A グロッソ B- バレンテ B アビダル B-


一転して、こちらはラームの一人勝ち。ポルトガルとフランスに関しては、主に右サイドバックを積極的に上がらせ、左サイドバックは無難に守れる選手を用意しているのだろう。
グロッソは攻撃が得意な選手だが、左サイドの3選手と比べると見劣りするし守備力もやや劣る。


上からドイツ、イタリア、ポルトガル、フランス
DH フリングス 守備B- 攻撃B+  
ガットゥーゾ 守備A 攻撃D    
コスティーニャ 守備B+ 攻撃C-  
マケレレ 守備S 攻撃D



ドイツのフリングスは本来攻撃的な選手。後の3人は文字通りの潰し屋である。
フリングスのパスセンスは特筆すべきものがあるが、もっと守備の強い選手を置きたいというのがクリンスマン監督の本音ではないだろうか。
闘志溢れるガットゥーゾ、コスティーニャも魅力だが、嫌らしさの点で世界最強の潰し屋マケレレにはかなわない。


CH なし 
ピルロ 守備B- 攻撃A- 
マニシェ 守備B- 攻撃A       
ビエイラ 守備A 攻撃A



ドイツはフォーメーションの都合上この位置に選手は置いていない。
イタリアはレジスタのピルロからのロングパスが攻撃の基点のはずだが、今大会はそれほど活きていない。
むしろ、自分から前線に飛び出していくマニシェ、ビエイラの活躍が目を引いている。守備面で図抜けているのはビエイラ。紛れもなく今大会最高のボランチは彼である。


RSH シュナイダーB (カモラネージB) フィーゴA+ リベリーA      
                

最大の驚きはフランスのリベリーだ。ブラジル戦のみを評価するならSでもいいくらい。運動量に溢れ、決断力に富み、技術に優れた超新星。私は彼を今大会の最優秀新人賞に推したいと思う。
老練なスター、フィーゴのこの大会での活躍ぶりには驚かされるばかりだ。この大会での彼とジダンは、6年ほど若返ったように見える。スピードでアンゴラDFを振り切ったのには心底感嘆した。
シュナイダーが目立たないのには、わけがある。彼は同サイドのSBフリードリヒの尻拭いを必死にしているのだ。攻撃ではほとんど目立たないが、実は守備に奮闘している。
イタリアは大会途中までを4-4-2。大会途中からシステムを4-5-1に変えてきた。カモラネージを()にしたのは、4-5-1の場合のみの出番だからだ。
4-4-2の場合は、このポジションは空白となる。


上からドイツ、イタリア、ポルトガル、フランス
LSH シュバインシュタイガーB 
ペッロッタC+ 
クリスチアーノ・ロナウドA- 
マルダB-
  



このセクションでは、シュバ&Cロナが突破力溢れるサイドアタッカー、ペッロッタが守備重視のバランサー、マルダは攻撃重視のバランサーである。
ただ、シュバが目立ったのは第1戦くらいでその後は際立ったプレイは見せていない。その点Cロナは彼ならではの凄みを随所に見せており、この4人の中では最強だろう。控えにシモンという有能なバックアッパーが控えているのも強みである。……ちなみに、フィーゴとCロナは左右逆でプレイすることもあるのでご了承を。


OH バラックA+ トッティB デコB- ジダンS   


ジダンの存在感はスペシャルだ。この大会最強のトップ下として、年齢を感じさせないプレイを披露。真に偉大な選手として、歴史に名を刻むことに成功した。これで仮に優勝でもしようものなら、ペレ、マラドーナと肩を並べる存在になるのではないかとすら思う。
バラックもまた、新皇帝として素晴らしい活躍を見せている。シュートを撃ってよし、パスを出してよしとドイツ攻撃の中核を担っている。
トッティはようやくウクライナ戦で調子が上がってきた。ポテンシャルはAクラスなだけに、大舞台で弱いというジンクスをどこまで覆せるか。イタリア最大の弱点であり、最大の武器にもなるのが彼だと思われる。バッジョほどの存在感はまだないが……。
デコは何分いない時間が長すぎる。第1戦は怪我で欠場。第2戦は出場して1ゴール。第3戦は温存。第4戦はレッドカードで途中退場。第5戦は出場停止だ。
これではなかなか正当な評価を下せない。だが、デコがいないと攻撃にリズムが生まれにくいのは確かである。また、この4人の中で最も守備力が高いのがデコである(バラックも結構ある。トッティとジダンは無い)。


上からドイツ、イタリア、ポルトガル、フランス
FW クローゼA+  ポドルスキーA-
  トニB+  (ジラルディーノB)  
  パウレタC+  
  アンリB
 



このセクションに登場するストライカーは、奇しくも今シーズンの各国リーグ得点王を獲得した選手ばかりである。
今大会トップスコアラーのクローゼ、同2位タイのポドルスキーは、2人だけで実に8ゴール。
恐るべき得点力である。ポドルスキーがサポートに回りクローゼが決めることが多いが、利他的精神に溢れたこの2トップは逆のパターンも可能。ポドルスキーはシュート時の振りの速さが素晴らしく、クローゼは足も頭も使いこなすトータルバランスが素晴らしい。
また、クローゼは今シーズンのドイツ、ブンデスリーガの得点王であると同時にアシスト王でもある。まさにゴールあるところにクローゼありだ。
 トニはウクライナ戦でようやく2ゴールをあげたものの、それまでの4試合(出場は3試合だったと思う)では全く振るわず。ウクライナ戦のゴールでどこまで調子を戻せるかにかかっている。トニは今シーズンのイタリア、セリエAの得点王である。そのゴール数は31を数えるが、セリエAでの30ゴール超えは47年ぶり。まさに快挙と言えよう。
 アンリはこの4人の中で最も偉大なストライカーであるように思う。得点、アシスト、何でも出来、イングランド、プレミアリーグの3年連続得点王だ。今大会では彼本来のプレイがなかなか見られないが、気がつけば3ゴール。得点ランク2位タイにつけている。
 パウレタもまた、フランスリーグの得点王である。だが、今大会はわずかに1ゴール。それもアンゴラ戦のゴールのみでどうにも頼りにならない。強豪とは言えないパリサンジェルマンでゴールを量産したのだから、実力はあるはずなのだが大舞台に弱いのだ。弱小国相手に固め取りが出来るため、欧州予選では毎回のようにトップスコアラーなのだが、本番になるといつも沈黙してしまう。今回もそれで終わってしまうのか。ここから先に進むにはパウレタのゴールが強く求められている。


監督 クリンスマンA リッピA+ スコラーリS ドメネクB


ドイツの攻撃サッカーは全て、クリンスマンの手によるものだ。彼が就任するまでのドイツは手堅く退屈なチームだった。それをこれほどまでに変貌させるとは。やや守備が弱くなったのはマイナスだが、この破壊力はまさにクリンスマンの賜物。采配も思い切りよく早い時間帯から、オドンコールやノイビルなどを投入する。そして、その采配が当たりポーランド戦では劇的な勝利を収めた。
リッピはベンチに切り札を抱えている。インザーギとデルピエロ、そしてイアキンタがそれだ。
本来守備マインドの強い監督ではあるが、彼らの使いどころは逃さない。その采配で多くの試合を勝ち抜いてきた知将である。
前回大会ではブラジルを率いたスコラーリは、リスクマネジメントの達人だ。デコ、コスティーニャが抜けて9人の戦いを強いられたオランダ戦、この2人が出場停止だったイングランド戦を勝ち抜いたのは偏にメキシコ戦での実戦テストあってこそ。常に先を見越した選手起用が当たり、ポルトガルは主力2人抜きで強豪を連破してきた。
フランスのドメネクはこの3人に比べるとかなり弱い。弱いものの、大会前の”最も愚かな監督”との汚名は完全に晴らしたといっていいだろう。リベリーの抜擢が彼の最大の功績である。そのリベリーを下げたり、トレゼゲのテストが足りなかったりと采配は未だ怪しいものの、ここまで勝ち上がっているのだから文句は言えまい。


優勝予想 ドイツ40% イタリア30% ポルトガル10% フランス20%

開催国であるドイツが優勝候補の最右翼だろう。次いで守備磐石のイタリアが続く。
優勝経験が無く、戦力的にもやや落ちるポルトガルが最も可能性が低いだろう。
ちなみに、私が大会前に予想していたイタリアはまだ残っている。

74 西ドイツ代表まとめ

Date
西ドイツ代表。1次リーグ:2勝1敗。
VSチリ ○1-0 VSオーストラリア ○3-0 VS東ドイツ ×0-1

2次リーグ:3勝。
VSユーゴスラビア ○2-0 VSスウェーデン ○4-2 
VSポーランド○1-0

決勝VSオランダ ○2-1

7試合、得点13 失点4。

攻撃 A 守備 A スペクタクル A- 総合 A。



総評。


西ドイツは、逆境に強い。
54年ワールドカップ、神話の世界の住人、3年間無敗を誇っていたハンガリー代表に土をつけ優勝をもぎとったのは彼らだった。
そして、74年。またもや神話の世界から降臨したオランダ代表を、打ち倒したのも彼らだった。


72年の欧州選手権。74~76年のチャンピオンズカップのバイエルン三連覇。
西ドイツは黄金時代の真っ只中であった。
それでも、西ドイツは神話のチームではなかった。
ブライトナー、ベッケンバウアーに代表される華麗なポジションチェンジは斬新ではあったものの、オランダのトータルフットボールはその上を行っていた。
西ドイツは地上のチームのチャンピオンであり、天上のチームではなかった。
にも関わらず、しばしば天上の国のチャンピオンたちを打ち倒す。
西ドイツはそんな、奇跡のチームなのだ。


チームの中心は皇帝ベッケンバウアー。彼の指揮のもと、チームは有機的に動く。だが、このチームの真の強みは、偉大なストライカーと偉大な守護神、偉大なストッパーを抱えていたことにある。


ゼップ・マイヤーは、敵の猛攻をことごとくシャットアウトする”タイタン”だ。彼が守る限り落城はなく、彼がいる限り勝利は西ドイツにある。
彼の伝統は脈々と受け継がれ、現在へと続いていく。マイヤーの教え子であり、プレイスタイル、風貌から受ける印象までもマイヤーに生き写しのGKオリバー・カーンは、2002年ワールドカップでドイツのゴールを守った偉大なる巨人であった。


偉大なるストライカー、ゲルト・ミュラーはこぼれ球への反応が世界一鋭いストライカーだ。彼のいるところにボールは流れ、誰もがボールの行方を見送っているときに一人、彼は走り出している。
ミュラーの挙げたゴールは、今大会4ゴール。だが、準決勝のポーランド戦、決勝のオランダ戦と最も大切なゴールで、西ドイツの勝利に大きく貢献している。


もう一人、偉大なるストッパー、闘犬と呼ばれたベルティ・フォクツは決勝でクライフに徹底的にまとわりつき、彼を試合から殺した。
彼はエース殺しの達人で、ユーゴ戦では同様にジャイッチ抹殺に成功している。「トイレにまでついていく」と揶揄された彼だが、それはもちろん真実ではない。
それどころか、チャンスとみるや果敢に攻め上がり惜しいシュートも放っている。


西ドイツの偉人たちは、現在でも現場に大きな影響力を残す。
ベッケンバウアーは2006年ワールドカップ組織委員会の会長を務めている。
マイヤーはバイエルンのGKコーチで、カーンを育てた実績がある。レーマンへの「首でも吊ればいい」発言により、ドイツ代表のGKコーチは解任された。
フォクツは90年から98年までドイツ代表の監督を務め、スコットランド代表監督にもなった。
ゲルト・ミュラーはバイエルンのFWコーチを務め、ゲレーロを自らの後継者だと目を細めているという。
オベラートはケルンの会長となり、2部に落ちたチームを必死で立て直している。
へーネスはバイエルンのゼネラル・マネージャーとなり、一言多い男として悪名を轟かせている。
ネッツァーは解説者として人気を博している。
 



勝者の歴史は、一人の英雄の姿を隠す。
真なる西ドイツの皇帝、ボールの芸術家と呼ばれたギュンター・ネッツァーは、ベッケンバウアーとの権力闘争に敗れ、終始ベンチを暖め続けた。
CBのパートナー、シュベルツェンベックは言う。
「ベック(ベッケンバウアー)は独裁者だ。だが、彼の言うとおりにしていれば、間違いはない」。



後にネッツァーと同じ道を辿ることになる、毛沢東主義者のブライトナーはこの時はまだベックと肩を抱き合っていた。ここに、西ドイツ優勝の秘密がある。
ブライトナーが抜けた78年、ベッケンバウアーが抜けた82年ともに、西ドイツは優勝をつかんではいない。

74 オランダ代表まとめ

Date
1次リーグ:2勝1分 
VSウルグアイ  ○2-0 VSスウェーデン △0-0 
VSブルガリア  ○4-1

2次リーグ:3勝
VSアルゼンチン ○4-0 VS東ドイツ ○2-0 VSブラジル ○2-0

決勝 VS西ドイツ ×1-2

7試合 得点 15 失点3

攻撃 A- 守備 S スペクタクル A+ 総合 A+


総評

オランダは、天上の国から舞い降りたフットボールの天使たちだ。
彼らのサッカーは、他の国とは次元が違った。
DFがゴールを守り、MFがボールをつなぎ、FWがゴールを決めるスポーツ。
そんな常識を覆したのが、74年のオランダだった。
クライフを中心にした巨大な渦巻きが、ピッチ上を席巻した。
クライフは時にDF、時にMF、時にFWだった。ニースケンスは、クロルは、アリー・ハーンは、レイスベルヘンは……
彼らもまたDF、MF、そしてFWだった。
彼らには4-3-3という数字も、DFやMFといった区分も全く意味を為さなかった。新たなフットボール、トータルフットボールの誕生である。
トータルフットボールは、攻撃であり守備だった。ピッチ中央に出現した巨大なオレンジの渦がボールを呑み込んでいく。その渦を乗り越えてオランダゴールに到達するFWは皆無に近かった。
相手チームはシュートすら打てない。そんな試合が続いた。


ウルグアイ、アルゼンチン、ブラジルの南米三大巨頭を相手に得点8の失点0。
旧時代を飲み込む革命の寵児たちが、そのまま優勝まで突き進むと誰もが思ったことだろう。


だが、そこに落とし穴が待っていた。
オランダとは別の形で、進化を遂げた西ドイツもまたモダンフットボールの担い手であった。
彼らはオランダほどに斬新ではなかったが、オランダよりも数段優れたストライカーを持っていた。
オランダに足りなかったのは、絶対的なエースだった。


決勝の西ドイツ戦。オランダの攻撃に立ち向かった西ドイツのGKマイヤー。
オランダにはマイヤーを打ち崩すだけの武器が無かった。
ゲルト・ミュラーはオランダの一瞬の隙をつき、見事にネットを揺らす。


オランダは膝をつき、クライフは代表からの引退を決意する。
神話のオランダは4年後にも登場し、ここでも決勝でアルゼンチンに敗れた。
2大会連続、決勝でホスト国と当たる不運。


オランダは未だかつて一度もトロフィーを掲げていない。

74 西ドイツVSポーランド&ポーランドまとめ&コンディションの話

2次リーグ最終節。
事実上の準決勝第2戦は、ホスト国の西ドイツと東欧の雄ポーランド。
勝った方が決勝戦、負けた方が3位決定戦、引き分けた場合は西ドイツが決勝へ行くことになる。


試合の方は、悪天候の影響で水浸しのピッチによって台無しに。
ボールが急に止まったり選手が滑ったりと、とてもハイレベルのプレイが見られる環境ではなかった。
おかげでボール回しにリズムが生まれず、退屈な展開に。
というかそのせいで、途中で脱落したのだけれど。
後でハイライトを見たらチャンス自体は随分あって、それをことごとく西ドイツGKマイヤーがセーブしていた。
リズムが悪かったから退屈だったけれど、チャンス自体はあったということか。


結果は1-0で西ドイツが決勝に進出しました。
ではポーランドのまとめを。


ポーランド代表:1次リーグ 3勝 2次リーグ 2勝1敗→3位決定戦へ。
攻撃 A- 守備 B+ スペクタクル B- 総合 A-



1次リーグ、唯一の3戦全勝を達成し序盤の台風の目となったポーランド。
アルゼンチンを3-2で下して勢いに乗った彼らは、ハイチから7-0の勝利を収め、完全に自信をつけると、返す刀でイタリアをも粉砕。まさかの1位突破を成し遂げた。
前線の3トップ、ラトー、ガドーハ、シャルマッフは盛んにポジションチェンジを繰り返し、攻撃に幅を加えれば、守備ではGKのトマシェフスキーが大会期間中PKを2本も止める活躍を見せた。


だが、彼らのピークはその1次リーグだったのかもしれない。
戦いぶりにケチをつけるわけではないが、2次リーグではスウェーデン、ユーゴスラビアに勝利を収めるものの、1次リーグで見せた華麗なアタッキングは鳴りを潜めてしまう。
敗退を決めたのが、両チーム満足な試合の出来なかった、雨中での西ドイツ戦では正当に評価するのは難しいが、いずれにせよ1次リーグで見せたような勢いを感じることは出来なかった。




だが、ポーランドはこの大会で一人のスターを輩出する。8ゴールで得点王に輝いたグジェゴシュ・ラトーである。ウイングでありながら中央へ切り込み、得点力を発揮したラトーと、CF(センター・フォワード)でありながら、ラトーが切り込むスペースを作り、彼にスペースを提供したシャルマッフの連携は実に見事であった。



一ヶ月にも及ぶ戦いで、どこにコンディションのピークを持ってくるかというのは、難しい問題だ。アルゼンチン、イタリアと同居したポーランドは1次リーグにピークを持ってこざるを得なかったため、2次リーグではやや精彩を欠いた。
逆に、1次リーグで敗退したイタリアは、ピークをその先に設定していた可能性がある。イタリアが毎大会スロースターターと言われ、予選グループで苦戦すればするほど、好成績を収めると言われるのはこの辺が関係してくる。歴史は証明している。グループリーグ0勝3分で青息吐息の突破を決めた後、一気に優勝まで駆け上がった82年大会。同じくグループリーグ1勝1分1敗とこちらもギリギリで突破した後、準優勝にのぼりつめた94年大会。


逆の例ではアフリカ勢が上げられる。90年のカメルーン、94、98年のナイジェリア、02年のセネガルを思い出してほしい。彼らはいずれも大会初戦にピークを迎え、大会が進むにつれて緩やかにコンディションが下がっていくのである。


彼らがサプライズを起こすのは多くの場合、初戦である。アルゼンチンを破った90年のカメルーン、スペインを破った98年のナイジェリア、フランスを破った02年のセネガル、いずれも初戦である。


06年大会、アフリカ最強と目されるコートジボアールと初戦で当たるチームは、アルゼンチン。
同じく、ガーナと初戦で当たるのは、イタリア。


ここに、波乱の香りを感じ取ることができる。



74 ブラジル代表まとめ

1次リーグ:1勝2分。2次リーグ:2勝1敗。→3位決定戦へ。
攻撃 C+ 守備 A- スペクタクル C- 総合 B-。

 ブラジルというのは永遠のブランドなのだと思う。他のチームとは違い、スペシャルなものが要求される。
それは、圧倒的なスペクタクル。ボール扱いの美しさ。絶対的なまでの強さ。目も眩むようなタレント集団。カナリアは美しく鳴き、そして勝つ。
 
 今大会のブラジルはベスト4で敗退。結果だけを見れば好成績である。にも関わらず、今大会のブラジルは“大失敗”のように言われている。それは何故か。
 
 それは上記のブラジル像をほとんど体現できていなかったから。
 
 今大会のブラジルの立場は、元より微妙な立場であった。
 4年前、メキシコの地で3度目のワールドカップ優勝を遂げたタレント集団は、今でも史上最強のブラジルと呼ばれている。
 王様ペレを筆頭に、技巧派ストライカーのトスタン、華麗なるウイングジャイルジーニョ。ペレの補佐役として輝きを放つリベリーノ。中盤を締めるのはクロドアウド、ジェルソンの最強ボランチ二人組。
 
 そして4年後。残ったのはジャイルジーニョとリベリーノの2人だけであった。
 ペレは早々に代表引退を宣言、今大会はベンチでファンのサインに応じている姿が映し出された。
 若きトスタンは、目の負傷だか病だかを患い、20代にして現役を引退。後に自身の経験から眼医者さんになったらしい。
 ジェルソンとクロドアウドのその後は知らないが、いなかったことは確かだ。
 ジャイルジーニョの輝きはすっかり色褪せ、今大会のジャイルジーニョに魅力を感じることは出来なかった。そんな中、唯一リベリーノだけが奮闘していた。これが、ブラジルの中盤から前線にかけての評価である。
 迎えた1次リーグでは、スコットランド、ユーゴを相手に無得点。ザイールからは3点を奪ったものの、続く2次リーグ東ドイツ戦でもFKからの1点のみ。アルゼンチン戦では2点を決めたが、オランダにもノーゴール。6試合で6得点。ザイール戦を除けば5試合で3得点。これはかなり情けない数字である。


 一方の守備陣は実に堅固だった。6試合での失点は3。そのうち2失点はオランダ戦である。オランダには屈したが、それ以外の相手からはほとんどゴールを許さなかったということだ。
 GKのエメルソン・レオンを中心に(後にJリーグで監督を務めたあのレオンだ)、よく守っていた。また、金髪の若き右SB、フランシスコ・マリーニョの攻め上がりは鮮烈で、淀んだ攻撃のリズムに一陣の清風を吹き込んでいた。
 
 
 このように74年のブラジル代表はディフェンススタイルのチームだったのだが、これは他のチームでは許されてもブラジルには許されないことなのだ。
 また、絶対的な強さという意味でも今大会は大失敗だった。何せ、ブラジルの上を行くスペクタクルを、オランダにやられてしまったのだから。
 サッカーファンの人気をオランダに持っていかれ、タイトルを西ドイツに持っていかれ、ベスト4進出の好成績を誇るでもなく大会を去っていったブラジル。
 彼らのサッカーはオールドスタイルであり、時代に取り残されていく焦りもあったのかもしれない。
 もはやペレはいない。ブラジルの天下は終わった。そのことを強く印象付けられたブラジルは、だからこそ”大失敗”だったと言われてしまうのかもしれない。
 それは、永遠のブランドに付きまとう一つの悲劇である。
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