Ⅹさんの*「18禁ゲーマーへ向ける小説20選」を拝見して、私も真似企画をしてみようと
思ったんだけど、
「エロゲーマーのみんなにお勧め」なんて本は、おいらには正直わからない。
結局自分の好きな本を書き連ねることになって、10冊ほど選んでみたんだけど、
これがまたあまりにも偏っている。
ほんと、どうしたもんかと思うけど、まぁいいや。

これは皆さんに勧める本ではなく、自分の好きな本や
子どもの頃に影響を受けた本を純粋に10選んだまで、と割り切れば偏りもOKでしょう。
ということで、選んでみました。順不同。


●思い出のマーニー (ジョーン・ロビンソン)
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中学生の頃に読んで、人生で初めて「ハマった小説」。
幻想的でもの悲しく、それでいて心温まる友情物語。
そして意外なラストシーンを経て、余韻がいつまでも残る。
多感な時期に読んだせいか、まさに思い出の1冊です。
自分が死ぬときに1冊だけお墓に持っていくとしたら、多分この本を選ぶんだろうなというくらい、
自分にとってかけがえのない作品です。

●西の魔女が死んだ(梨木香歩)

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どうしても学校に馴染めない少女、まいは魔女の血を引くという祖母の元に預けられる。
祖母とのゆったりとした暮らしの中で、まいは一歩ずつ大人になっていく。

日だまりのような描写の中で、時折鮮烈な清水のように鋭く、はっとさせられる。梨木香歩独特の癒しを是非、味わってみてください。

意外かもしれないけれど、今作と「ダカーポ1」って根っこの部分がとても良く似ているんですよね。雰囲気はだいぶ違いますけど。

●グリックの冒険 (斉藤惇夫)

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子ども時代に読んだ数多の冒険物語。
「十五少年漂流記」「宝島」「ホビットの冒険」などなどなど。
そんな作品群の中から選んだのが今作。
荒涼とした冬山を駆けるリスのつがい。どこか寂しく、それでいて胸躍る冒険物語。
……素直に「ガンバの冒険」を挙げても良かったのだけど、グリックの方が知名度が低そうなので(グリックの冒険は、ガンバの冒険の外伝的作品です)。


●故郷 (魯迅)

教科書で読んだ小説から1冊。
中国の広い大地を南北に連なる道。果てなく感じる人生の道。
少年時代の郷愁と、不自由な大人になってしまった寂しさと、未来へ繋げる祈り。
そんな寂しさと切なさと、そして幸せが入り交じった物語が大好きなんですね。


●魍魎の匣(京極夏彦)
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京極夏彦作品の中からどれを選ぼうかと迷い、最終的に「おんもらきのきず」と、この「魍魎の匣」の2つに絞り、
結局PCゲーム『水月』のライター、トノイケ氏が影響を受けたとされる、魍魎の匣をセレクト。
ラストの、圧倒的な多幸感に包まれた男と、彼を見つめる者たちの胸に去来する切なさが鮮烈。

●魔性の子 (小野不由美)

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小野不由美の十二国記シリーズは、ファンタジー小説の中では一番の好み。
そんなシリーズからどれを選ぼうかと考えた末、この「魔性の子」を選びました。
純正ファンタジーの十二国記シリーズの中で、本作はミステリアスな要素の濃い異端的作品であり、キャラ萌え小説でもあると個人的には思っております。
しかし、キャラ萌え小説って言って、男性キャラ(高里)に萌える小説を出しちゃまずいでしょうか。

●君にしか聞こえない (乙一)

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乙一は、僕の琴線にダイレクトに触れる作家で、とても気に入っています。
内向的で悲観的で、綺麗な心を奥底にそっと押し隠している。そんな登場人物たちには非常に共感しやすく、彼ら彼女らの哀しみや喜びが、文章から直接伝わってくるのです。
今回は、思わず泣かされてしまった切ないラブストーリー「君にしか聞こえない」を選ばせていただきました。

●いまあいにゆきます (市川拓司)
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圧倒されるほどに優しく、それでいて触れるのをためらうくらいに儚い、幸福。
終わりの予兆を感じながら、この幸せが永遠であってほしいと願う。
至高の恋愛小説であり、至高の家族愛小説でもある。
実はこの作品しか読んでいないので断定はできないが、市川拓司という作家もまた乙一と同じく、私のツボにはまる作家なのだと思う。

●死のロングウォーク (スティーブン・キング)
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友人同士、歩きながらのくだらない馬鹿話。そんな雰囲気が感じられる一作がこの「死のロングウォーク」だ。
もちろんこの小説は青春小説というよりも、サスペンス小説にカテゴライズされるのだとは思うけれど、
男子校特有の下ネタ話などは、国が変わっても変わらないんだなと。
「スタンドバイミー」や「夜のピクニック」など、歩く青春物語は幾つかあって、どれをセレクトしようか迷いはしたのだけど。

敢えてエロゲーに絡めて言うなら、「グリーングリーン」と「群青の空を越えて」に見られるような、性欲に満ちた思春期の男子が良い感じに描けてます。
「夜のピクニック」はもっとずっと、上品なのよね。それはそれで良いのだけれど。

●バトルロワイアル (高見広春)

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ついこないだ読んだ本なので、選ぶのには若干ためらいもあったが、
深い感銘を受けた作品であることに間違いはない。

名前はとても売れているし、「殺し合い」の物語であることは広く知られていると思う。
けれど、ここで描かれているのは単純に暴力の応酬ではない。
読み進めていけば、ここで描かれているキャラクターたちはそれぞれ、何の変哲もない少年少女たちであることに気づく。
自分の中学生の頃のクラスを振り返ると、「あぁこういう奴いたな」と思える人物が、1人や2人ではない。人物描写力は圧倒的で、良くこれだけの人数を、魅力的に描けたものだと感心してしまう。
単なる暴力小説で片付けてしまうには、実に勿体ない作品といえよう。

健速氏の「キラークイーン」がこの作品に影響を受けているのは、あまりにも明白。


以上、十作。
……案の定すごい偏りというか、似たような雰囲気の作品が並んだなというか。
まぁ自分の好きな作品以外を薦める気にもならないので、これで良いのでしょう。



*氏が選んだ本は、3作しか読んだことなかったりしますが読んだ3作、「こころ」「虚無への供物」「女郎蜘蛛の理」はみんな、かなり好きな作品です。