感想のところで書いたんですが、回想シーンが頻繁に挟まれるため、
要約がえらい不恰好になってしまいました。ご了承願います。


☆キッチン

桜井みかげは幽霊大学生。母も父も亡くし、長い間二人暮しをしていた祖母もつい先日亡くなってしまった。うちひしがれ、部屋を探す元気も無いみかげの元に、一つ年下の田辺雄一が訪ねてくる。生前、祖母が足を運んでいた花屋でアルバイトをしていた彼は、みかげを自分たちの家に迎えにきたのである。みかげは、雄一の誘いを受け、田辺家を訪れることにした。

田辺家の台所を気に入り、くつろいでいると、雄一の母(?)えり子が帰宅する。えり子は夜の仕事をしている魅力的な美人だが、雄一によれば実は男性であるという。えり子と雄一、二人暮しの田辺家にみかげは居候することに決めた。


昔の恋人、宗太郎に呼び出されたみかげは、大学でみかげが田辺家にいることが噂になっていることを知る。その噂が原因で雄一は彼女と別れたらしい。
宗太郎の健全さがみかげにはつらかった。彼と会うときまって自分が惨めに思えてしまう。彼と別れたのはそれが原因だった。


雄一が新品のワープロを買ってきた。早速みかげの引越しはがきを打つ雄一。
自分のせいで、雄一が彼女と破局したことを気に病むみかげを、雄一は「君のせいじゃない」と慰める。しかし、みかげは田辺家をできるだけ早く出なければと思い悩むのだった。

バスの中、祖母と孫のやりとりを見て、みかげは祖母を想い泣いた。時間が、みかげを置き去りにしていく。時はみかげの気持ちを鑑みることなく、ダッシュで流れて行ってしまうのだ。

祖母と暮らしていた部屋を引き払う日、雄一は手伝いに桜井家へとやってきた。「君はまだ元気が無い。利用してくれよ。焦るな」。雄一の言葉にうなずくみかげ。
しばらくの間、田辺家にお世話になることに決めたみかげに、えり子がつぶやく。「誰かを育てることで人は一人立ちできる。一度絶望しないと、本当に捨てられないものが何か、本当に大切なものが何かがわからない」。

みかげは雄一とえり子のいる田辺家のキッチンを、とても居心地よく感じていた。


☆満月

夏に料理を学んだみかげは、大学をやめ料理の先生のアシスタントになり、秋の始めに田辺家を出た。そして、秋の終わりストーカーと刺し違えてえり子さんが死んだ。
葬式後しばらく経ってから、雄一の電話でみかげはそのことを知った。祖母を亡くした時と同じか、それ以上の孤独を感じるみかげ。
最後にみかげがえり子に会ったのは夜のファミリーマートだった。
まだみかげが田辺家にいた頃、雄一の母の思い出を語ってくれたのもえり子だった。病室にも生き物が欲しいと願った妻に、パイナップルの鉢植えを買ってきたえり子さん。しかし、妻は死の間際、死がしみこむ前にパイナップルを持って帰ってほしいと、えり子さんに頼んだという。


久しぶりに再会した雄一とみかげ。雄一はえり子の死後、悲しみから逃れるように酒浸りになっていた。「私たちのまわりは、いつも死でいっぱいね」。
ぽつりぽつりと会話を交わす二人。軽口を叩いたみかげに、「君の冗談が聞きたかったんだ」と涙を流す雄一。そんな雄一をみかげは抱きしめる。
“雄一がいたら何もいらない”。ふと、そんな言葉が胸に浮かんだ。
雄一はみかげに、ここに住んでくれと頼む。「女として住んでほしいのか、友達として住んでほしいのか」と問うみかげに、わからないと雄一は答えた。


翌朝、寝ぼけ眼で田辺家の電話に出たみかげ。すると電話はすぐに切られてしまった。
バイトで、明後日から3泊4日の伊豆取材へ同行することになったみかげ。そこに朝電話をしてきた女性(奥野)が乗り込んでくる。嫉妬心にかられてみかげを口撃する女性を撃退した夜、雄一と喫茶店に入るみかげ。雄一の優しい仕草に触れ、その仕草が奥野にも向けられていただろうかと考えると、嫉妬をしてしまうみかげだった。


出発前日、えり子さんの仕事仲間であるちかちゃんに誘われ、昼を一緒に。そこで雄一の気持ちを聞かされる。みかげがいない間、一人で寂しいという雄一に、ちかちゃんは宿の紹介をしたという。宿の地図と電話番号を、ちかちゃん
に強引に渡される。


伊豆初日の夜。苦手な料理ばかりで空腹のみかげは、食べるものを探して外出する。カツ丼を待つ間、雄一に電話。
2人の気持ちは緩やかなカーブを描いていた。ここを過ぎてしまえば、2人は今度こそ永遠のフレンドとなる。永遠に恋人にはなれない。だというのに……無常にも電話は切れてしまう。

やがて来たカツ丼があまりにおいしくて、思わず持ち帰りを頼んでしまうみかげ。雄一にも味わってほしい。そんな気持ちが胸に広がり、衝動的にタクシーに乗り、雄一の宿へ。

無事雄一にカツ丼を届けた帰り際、「雄一を失いたくない。2人で生きていきたい」とみかげが告白。「これからはもっと男らしいところを見せてやる」と雄一は応じた。


最終日、みかげのホテルに東京から雄一の電話が届く。駅まで迎えに来るという雄一。自分を待っていてくれる彼を思って、暖かな気持ちになるみかげであった。





会話と心理描写が主体の物語なので、要約には不向きでした。
2人の気持ちがカーブを描いている、だとか、時間がダッシュで自分を置き去りにしていくなど、印象的な描写は敢えてそのまま入れましたが、やや浮いてるかも。
要約では浮いていますが、本編ではぴったりはまった感動ポイントなんですけどね。