著者はロバート・ラドラム。評価はA+。

掛け値なしの、名作。

アメリカとソ連の、そして何よりお互い大切な人を殺しあった諜報員同士が手を組んで、
謎のマフィア、『マタレーズ』と闘うスリラー。
息もつかせぬ展開もさることながら、人物描写の面でも、このジャンルにしては極めて深く
敵同士だった2人が、相手を認め合っていく描写や、スコフィールドの恋など、見所がたくさん。


個人的に気に入ってる文章↓(引用)

>>地下の世界から浮上した彼は、そこではからずも、このうえもなく貴重なもの、永遠に失ったと思っていたものを、発見したのだ。ふたたび、ひとを愛することができるようになったのである。あの愛を予感するときめきが甦ったのである。声を聞いただけで心がはずみ、手が少し触れただけで胸が躍った。アントニア・グラーブに出会ったのは人生でも最悪の時期であったが、彼女の存在によって、彼は、長い間見失っていた生きることの意味を再発見できた。彼女と共に生き、老いていきたいと思った。単純な望みである。そして、すばらしい展望である。これまで、自分が老いていくことなどまったく考えたこともなかった。それをいま、彼は、真剣に考えている。


この作品は、単なるスリラーの域に留まらず、
何より「仇敵同士」という2人の主人公がお互いを「認め、赦し、愛する」ことを描いた、
心に響く作品になっている。
1000ページと長い作品だが、2日で読み終えてしまった。
まさに止め時が見つからない小説だった。


(一応)作家を志望する身としては、嫉妬を覚えざるを得ない作品だ。