著者は有島武朗。評価はB-。

「アンナカレーニナ」「ボヴァリー夫人」「或る女」。

全く同じプロットで書かれたと言われてもおかしくない作品群なのだが、
これは偶然の一致なのであろうか。


(主人公の造形)

美女で、神経症。夫、もしくは許婚がいる。
許婚はいい人で、主人公にぞっこん。
しかし、主人公は別の男に走る。

主人公は金遣いが荒く見栄っ張り、平気でどんどん浪費する。
主人公は妄想家で、何を見ても自分の都合の悪いほうに妄想し、勝手に激怒する。
…端的に言って、不快です。

主人公は、男とともに破滅する。


タイトルは、女性の名前、もしくは女性そのものからつけられる。


なんでこんなテンプレートが生れたのかが気になります。
確かに、ヒステリックな女性はいますが、何もこんな女性ばかりではないでしょう。
読んでいて憂鬱になるだけで、特に面白い筋でもない気がしますし、
パーソナリティもよくにているので、
アンナ・カレーニナVSエマ・ボヴァリーVS早月葉子で、
イタい女三姉妹といわれても、違和感がないし。


この中で最も愚かさが強調されていたのがボヴァリー、
最も痛々しい神経症的側面が強調されていたのが葉子かと思います。

ボヴァリーは、「バカじゃねーの?」と心の中で連呼しながら読んでいましたが、反面、バカな詐欺に引っかかった被害者といえなくもないです。

アンナは「つまんね…眠い」と思いながら読んでいました。相手の年齢が20も上なこともあって、一番情状酌量の余地がある気もします。

その点、葉子は情状酌量の余地がほとんどなく、あまりの痛さに悲鳴をあげながら読んでいました。


3作の中から一番を決めるなら、ヒロインの痛さ・不快さを一番感じられた、「或る女」に軍配を上げたいと思います。


この3人から1人を選ぶなら、誰を選ぶか……究極の選択といえそうです。


ちなみに、「アンカレ」は痛女以外のエピソードも豊富に取り揃えており、
悪く言えばまとまりがなく冗長だったのに対し、
「ボヴァリー」と「或る女」は、痛女の描写が本のほとんどを占めます。
寄り道がないぶん、読みやすいです。


PS
この3作品を読んで、「あら、私が出演してるわ」とか「うんうん、わかるわかる」と思ってしまった女性読者がいたら要注意かもです。

男から相当嫌われるタイプです。この3作のヒロインばりに美人でも、最後は不幸に終わるのです。そこまで美人じゃないなら、絶望的といってもいいでしょう。