著者はエヴァン・ハンター。評価はA+。

この作者は、エド・マクベイン名義で87分署シリーズなども描いている。
しかし、「エド・マクベイン」と「エヴァン・ハンター」は、言われなければ同一人物だと気づかないくらい、
物語の創り、ジャンル、文体まで、まるで別の作家だ。

本当に、芸の幅が広いと感心する。


マクベイン名義を現在までに8冊、ハンター名義を3冊読んだが、個人的にはハンター名義の作品により魅力を感じる。

特にこの「暴力教室」は、最初の1ページから最後の568ページまで、一日で、文字通り一気に読んでしまった。先が気になって仕方ないとはこのことだ。


舞台は、落ちこぼればかりが集められた実業高校。熱血教師の主人公ダディエが奮闘する物語だ。
昨今、学級崩壊が叫ばれているが、実に50年以上前からこのような事態が起きていたというのが驚きだ(恐らくこれは作者の想像ではなく、実際にあった社会現象にヒントを得た物語だろう)。


とにかく、キャラクターが良い。特に魅力的なのは、黒人生徒のミラーだ。
授業中・そして、他の生徒の目の前ではとにかく問題児。
しかし、主人公のダディエ先生と一対一の時は善良な少年。
彼の性格を形作っているのは、非行に走ることでしか人望を得られないという、実業高校という名の歪んだ社会だ。


五十一匹目の竜の授業も秀逸だ。これこそが読書の楽しみと断言できる、素敵な高揚感を味わった。


また、「よぉ、親父(ダッディ)よぉ」というダディエ先生へのからかいを含んだ呼び方もいい。
映像化作品を見たわけでもないのに、声がそのまま脳内で再生されてしまうという、稀有な体験もすることができた。


金八先生でもごくせんでもGTOでもいいが、教師モノが好きな人には是非一読を薦めたい作品だ。きっと、のめりこむように読むこと請け合いだろう。