2007年03月

下妻物語 読了

著者は嶽本野ばら。評価はA+。


映画の方を以前観ていて、とても気に入ったので本も読んでみました。


映画を観た時も思いましたが、実に面白い。


笑えるし、テンポが良くて読みやすいし、締めるところではきっちりシリアスで締める。
何より、桃子(ロリータ)とイチゴ(ヤンキー)のキャラが立っていて、
実に魅力的に描けています。
桃子の駄目っぷりはなんだか共感できるし、イチゴの生真面目さは好感がもてます。
桃子のきつくていい加減な性格と、イチゴのお馬鹿で良い子な発言がいい感じ。


暴走族の癖に、「農家の人は朝早いんだから、夜遅くまで暴走したら迷惑になるだろ」
とか、御意見無様のくだりは何度読んでも笑えます。


テンポの良いやりとりですーっと読んでしまい、読んだ後には
爽やかな若者気分になれるこの本は、文句なしに良作だと思いました。


持ち出すのもなんだけど、普段やってるギャルゲーやらエロゲーでも、
ここまで魅力的な女性キャラはそうそういません。悲しいことに。

ひぐらしのなく頃に祭 憑き落し編終了(ネタバレあり)






何で公共の場である図書館で、みんなで殺人の後始末の話をしているんですか?
揃いも揃ってバカすぎやしませんか?
圭一の家か、ダム建設現場か、そういった誰も人がいないところで話すのが当然ではないのですか?



あまりに軽率すぎる三人に、白けてしまいました。
これじゃ捕まえてくださいって言ってるようなもんだ。


そのシーン以外は別に良かったんだけどね。

このシナリオを見て改めて、ひぐらしで一番怖いのはレナだなと思いました。

黒幕のみよさんは、単にキ印の方なのでいいんですが、レナはそこら辺に
いそうで怖いです。

ひぐらしのなく頃に祭 盥回し編終了(シナリオのネタバレは無し)

……すんごく怖い。
読んでいて疲れたのは、文字が小さいせいもあるけれど、やはり怖かったから。
音声が入ってますます怖くなりました。
胃が痛くなります。後、突然キャラクターボイスの声量が上がるのは反則。
怖いシーンでなくてもビビりそうなのに、怖いシーンでボイス上げんで下さい。
ほんとごめんなさい。勘弁してください。


ひぐらしの良さは青春ゲーの部分にこそあると思っている身としては、
あまりに怖いのはちょっと……。


選択肢でルートが選べることについての成否は後で判断するとして、
音楽はやや劣化しているような。PC版で使われた曲でも、良い曲はどんどん
使っていけばいいのに。


絵はぐっとよくなりました。ようやく美少女ゲームになりました。
ただ、富竹さんのイメージが変わり過ぎな気がしないでもない。トミーファンの目に
ニュートミーの姿がどう映るかは謎。
声も入って良くなりました。特にレナの「はぅーお持ち帰りぃ」が最高。
後、大石さんがいい味出してますね。


システムは完璧。だけど、文字が見にくい。もう少しフォントを大きくしてほしい。
許せるレベルではあるけどね。わしの目が悪いのも確かだし。
ただ、文字を読むゲームなんだから、もう少し大きくしてほしいなと。


ところで、選択肢でレナを選んだはずなのに、レナよりも魅音が活躍する
盥回し編に入ったのはなんででしょ?
てっきりレナ系の鬼隠しあたりに入るもんだと思ってました。

キルプの軍団読了

著者は大江健三郎。評価はC+。

あらすじの方は前記事の要約をごらんください。
もちろん、思いっきりネタバレはしています。


以下叩きが多いので、ファンの方は気分を害する可能性があります。
また、やや思想的なことも書いています。特に思想的に強いこだわりがある方は、
ひょっとすると気分を害するかもしれませんので、読まないことをお勧めします。
読むのは、自己責任でお願いしますね。




この本は、主人公の一人称で綴られています。
んで、率直な感想として、この主人公、本当に高校三年生なの??
小学生にしか見えません。
確かに英語が読めたりとか、遠いところまで電車で一人で行ったりしているのですが、
言動が明らかに小学生。良くて中学1年生だと思うのですが……。


この主人公、すごく良い子です。親や叔父さんにもすごく愛されていて、
主人公の方でも親や叔父さんにとても優しい。
実に良いことです。素晴らしい。
みんなに、"オーちゃん”と呼ばれてかわいがられています。

……親戚の前で、親から"オーちゃん"とか言われて、ムッとしない高校三年生って変じゃないか?
私なら不機嫌になるか、返事しないかどちらかだと思う。


話し言葉も実に丁寧で、いかにも『お坊ちゃん』なんです。
そして、ギャグは徹底的に寒く、何事にも緊迫感が感じられず、
受験勉強のためにオリエンテーリング部を抜ける部員に対して、
教科書の言葉を引用して、引き止めるように諭そうとしたりするのです。
一応、が口癖で頻繁に地の文で出てくるのですが、「おぉ、一応痛い」とか
不自然で"一応”痛いのです。しかも、一応がいちいち強調されているのです。
これは一応どころじゃなく相当痛いと、私は一応思います。


ついでに言うと性欲の方も小学生並です。
綺麗なお姉さんの生乳がバスタオルからこぼれているのに、
ギリシャ彫刻の乳房について想いを馳せる枯れっぷりです。
確かにそこで、「ぐへへ、いい乳だぜ」とか言い出したら困りますが、
だからと言ってここまで枯れていていいものか。
高校生ですよ? 中学生ほどじゃないにしろ真っ盛りじゃないっすか。
AVすら自由に借りることができず、友達がAVを持っているというと、
大して好みの女優じゃないにもかかわらず、大して好みのプレイでないにもかかわらず、
「よし、お前の家で試写会するぞ」と。あるいは、「俺の秘蔵の品と貸し借りしないか?」と。
お色気系の漫画なんか見たらもう大変ですよ。パンチラのために漫画を買うような年頃ですよ。
クラスメイトとパンチラ情報を交換しあい、どの子がどんな下着をはいていたかについて語りあうような奴は俺だけで十分ですすみませんつーかそんなことはさすがにしてませんうそじゃないですしんじてください


とにかく、反抗期も来てない素直ないい子だったら、「あっ」と息を呑んで
見ちゃいけない、見たら失礼だとか言いながらも、ちらちらと見てしまう、とかね。
こういうウブな助平心が欲しかったわけです。
高校生の時の私はこれだな、きっと。AVコーナーに入りたくて入りたくてたまらないんだけど、はずかしくて入り口をうろうろする、
傍から見ると一番恥ずかしいタイプ。


ただ、終盤になるとわかるのですが、これはひょっとすると大江氏の息子が
主人公のモデルになっている可能性がある……というか、高いです。
そして、息子がモデルになっているのなら、(散々叩いておいてなんですが)
迂闊に叩くのはあまり誉められたことではないかもしれません。
こんな高校生いねーよ! というのが、この叩きの根本にあるので、
「いますよ。私の息子です」と言われてしまうと、もう「すみません」と言うしか。
更に言えば、登場人物なら叩きはアリだと思っているのですが、実在する人物ということになると、
よく知りもしないで叩くのは失礼かなと思うわけです。


さて、ようやく物語の方に話を進めたいと思います。


物語は、前半と後半に大きく分かれており、実質的な物語が始まるのは後半からです。
前半は、忠おじさんと主人公を中心にした、登場人物紹介に終始します。
また、モチーフになっているキルプについても詳細に語られます。
物語の土台になっているので、この部分は大事ではあるのですが、
ぶっちゃけるとあまり面白くないです。
それはやはり、主人公に魅力が……。


後半は、殺人事件が発生した折、考え無しの発言で事態を深刻化させてしまったと思い悩む主人公が、家族の支えを得て立ち直っていく物語。
ここに、キルプが深く絡んでくるわけで、このモチーフの使い方は巧いなと思いました。
前半部だけの評価だとDなのですが、この辺でC+に評価を上方修正。


ただ、まぁいろいろと言いたいことはあります。
まず、この主人公、本当に要らんことを言ったな……という。
もうね、読んでて腹が立ちましたよ。


次に、僕はどうしても森とかサッチャンとかいう悪役が好きになれないこと。
このブログを読んでくださっている皆様にはおわかりかと思いますが、
思想的に私はやや左寄りです。
少なくとも右翼的な嫌韓思考は好きになれませんし、9条は守るべきという考えです。
自衛隊のイラク派遣は大反対でしたし、国歌国旗の強制などにはあまりの馬鹿馬鹿しさに腹が立つほどです。
強制されて、愛が生まれるわけないでしょーに。
土地を愛する心は、多分誰だって持っているわけで、国歌だとか国旗だとか
そういう、目に見える形で敬わないと愛することにはならない、というのとは違うと思います。それから、国を愛する心と土地を愛する心は、重なる部分もありますが、重ならない部分もあります。
僕は土地を愛していると胸を張って言うことはできますが、国を愛しているかというと、好き半分、嫌い半分くらいです。


何で、こういうやや問題のある文を書いたかというと、この「強制」ということが言いたかったからです。


森とかサッチャンというのは、思想的には極左だと思うのですが、
子供を人質にとって、相手を従わせようとしているのですね。
このグループがどんな主張を掲げているとしても、こういうやり方をしていては、単なる誘拐魔にしか見えないわけです。
自ら、自分の思想を汚して、何がしたいのか僕にはわかりません。


そもそも、彼らの思想が思想的に優れているのかというのは、僕には判断がつかないのですが、それ以前の問題です。
人質なんてとりだしたら、もう完全に単なる誘拐魔なのですよ。はっきり言ってヤクザとか暴力団と何ら変わりません。
そんな連中に肩入れしてしまうというのは、ちょっとどうかなと思うのです。


私は左寄りと書きましたが、ぶっちゃけ友達の中には右よりの人も沢山います。議論を吹っかけてきたりされると、辟易としたりもしますが、
基本的に相手のいるところでは、左翼的・右翼的な言動をしないことと、
なるべく議論を吹っかけたりしない、押し付けない。
これさえ守れば、楽しく過ごせるのです。



だから、異なった思想のグループ同士の抗争だとか殺人だとかいうのは、
全く理解不能で共感できなかった、というお話でした。

キルプの軍団 要約

激ネタバレです。




主人公のオーチャンは高校二年生。オリエンテーリング部の部長で、作家の父と障害者で
ピアニストでもある兄を含めた五人家族。
皆からかわいがられ、父の弟で警官をしている忠とはディケンズの『骨董屋』を毎朝読みあう仲である。


ある夜、オーチャンは忠が謎の女性と会っているのを見かける。ヤクザが女性を尾行していたが、忠がヤクザをブロックし、女性を護った。
オーチャンは忠の活躍を誇りに思うのだった。
翌朝、自然な流れで忠から謎の女性について聞くことができた。女性は百恵さんという名で、彼女が子供の頃サーカス団に所属していた頃からの知り合い。現在夫の原が抱えた借金から、サラ金の取立てに負われているらしい。
そんな状況の中、百恵さんから電話があったら自分に取り次いでくれと言い残し、忠は四国へ帰ることとなる。


夏休み、オーチャンは百恵さんからの電話を待ち続けるも連絡は無い。そんなある日、忠が東京へとやってくる。百恵さんからオリエンテーリングの地図が送られてきたのだ。
地図の場所はオーチャンが以前、オリエンテーリングで行った場所だった。
忠からも頼まれ、百恵さんの隠れ家へ偵察に行くオーチャンだったが、
途中森の中で足を捻挫してしまう。
そこを腹に見つけられ、隠れ家へと案内されたオーチャン。捻挫を治療してもらう過程で、オーチャンと原、百恵さんの三人はすっかり打ち解ける。
隠れ家暮らしとはいえ、地主からの許可も得ており、意外に楽しそうに暮らしている原一家であった。


二学期になり、いよいよ受験の影がちらついてきた。
オーチャンは進路に悩み塞ぎこんでしまう。心配した母の差し金で、原一家の元へストーブを届けに行くオーチャン。ところが隠れ家の様子は一変していた。
プレハブの小屋が建ち、何人もの人間が作業をしていたのだ。
原のアイディアが認められ、新しく映画をとることになったのである。
一輪車を愛する百恵さんを、長年撮りためていた原。そのフィルムを使って、百恵さん主演の映画を作るという。制作費として払われたお金で、サラ金にもお金を返し、鳩山・森・サッチャンの協力もあって映画作りは順風満帆に見えた。
新しい映画では、ドストエフスキーの『虐げられし人々』に登場するネリーというキャラクターを、モチーフに使う。ネリーは元々、『骨董屋』のネルのオマージュであるということで、『骨董屋』を読んでいるオーチャンも映画作りに参加することになった。
そのため、『虐げられし人々』の研究に余念がないオーチャン。マクパイクの書いた専門書や、『骨董屋』も精読し、映画制作に臨む。


製作現場ではサッチャンと森の二人と、原と鳩山の二人が映画の方向性について対立を深めていく。
森は原に「メッセージ性のある映画を作れ」と迫る。


忠が家にやってきた。父と忠、二人の話は原に関するものだった。原は昔、
革命党派に所属しており、鳩山は対立党派に所属していた。そんな二人が、
協力して一つの映画を作り上げる。
そんな二人を、党のメンバーはよく思っていなかった。森とサッチャンは、
昔、原が所属していた党の党員だったのである。


その日、朝から原と百恵の一人息子タローが熱を出し、サッチャンが彼を病院へと連れて行った。
原は鳩山との会話で「人を殺したら、誰かに殺されない限り、罪は赦されない」と語る。
そして、森が動いた。原に、「子供は預かった。党のためになる映画を作り、党に復帰しろ」と迫る。森は、原の作りたい映画のことなど、なんとも思っていなかったのだ。


一人解放されたオーチャンは、帰るなり忠に事の次第を報告する。
いきり立つ忠に、「警察権力の手引きはできない」と発言し、警察の出動を禁じてしまうオーチャン。
それでも個人として助けに行く忠。だが、忠が到着する前に、原は殺されていた。
鳩山と誤認され、森のグループに暗闇で襲われたのだ。忠も傷を負い、オーチャンは発熱してしまう。
忠に運ばれ、帰宅したオーチャンは夢うつつの中*キルプの軍団に追われ続ける。
それは、自分の発言のせいで警察が動けず、原が死に、忠が傷を負ったという罪悪感。
そしてオーチャンは、原が襲撃者に対し、名乗りを上げて誤解を解くこともせず、鳩山の代わりに撃たれたことを知る。


「人を一人殺したら、自分も殺されない限り罪は赦されない」。もしも、原が進んで討たれたのであれば、原は過去に対立党派の人間を殺したのではないか。そして、原を殺す遠因になった自分も死ぬべきなのではないか。
思い悩むオーチャンだったが、家族の助け、そして兄の曲に歌詞をつける作業を通じて、立ち直っていく。


*キルプ……『骨董屋』に出てくる悪党。美少女ネルはキルプを恐れるあまり、
幻影を見るシーンがあり、このシーンが今作では重要となってくる……と解釈した。
キルプの解釈はいろいろとできそうなので、単に罪悪感とか悪事の象徴とするのは、
安易にすぎるのだが、大きくは外れていないと思う。
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