2009年06月

華氏451度 読了

著者はレイ・ブラッドベリ。評価は


本が焼かれる未来を描いた作品。ブラッドベリは短編でもいくつか、焚書を扱ったものがあります。



「ハムレット」を知っているという連中の知識にしたところで、例の、
〈これ一冊で、あらゆる古典を読破したとおなじ。
隣人との会話のため、必須の書物〉と称する重宝な書物につめこまれた
一ページ・ダイジェスト版から仕入れたものだ。



個人的に、ここの文章にはハッとさせられました。

私は最近、古典もいくつか読んでいます。
その多くは、あらすじくらいは知っていたものばかりです。
ですが、やはり実際に読むと読まないでは、印象が大きく違ってきたりもします。


たとえば、ヘミングウェイの「老人と海」。
あらすじだけを言えば、老人が海で魚と釣りバトルするという話ですが、
そこで味わえる海の空気・魚の匂いまでを想像させる描写というものは
「あらすじ」には含まれません。

「ドンキホーテ」といえば、無謀な男が風車に突撃するというイメージですが、
実際に風車のシーンはごくわずかですし、
読んでみると無謀な男というよりもちょっとズレた人でした(まだ、全部読んでいないので感想はそのうち)。


本だけでなく、たとえばスポーツをダイジェスト版や下手をすると新聞記事で読んだだけで
語る人。

音楽を、サビだけ聞いて語る人。

よく知りもせずに、有名だというだけで勝手に面白いと錯覚したり、
勝手につまらないと叩いたりする人。
いくら忙しい世の中でも、そういう人にはなりたくないな、と思った次第です。
と言いながら、サッカーは最近ダイジェストで見ることの方が多くなっています。良くないですね。



それから、電車で本を読んでいるのに、歯磨きのコマーシャルが大騒ぎしていて主人公がキレるシーンも、非常に共感しました(笑)。

以下、単なる愚痴です。


読書家として言いたいのだけど、本当に外はうるさいところが多すぎます。


電車内のおしゃべりやウォークマンの音漏れが多すぎ。
前者はまだいいとしても、後者はほんといい加減にしてほしい。
前者も、1ブロック先まで聞こえるくらい大きい声で話したり、人が本を読んでいる隣に後から腰掛けてしゃべりだすのは勘弁してほしい。
まぁ、話したい気持ちはわからないでもない…というか、10年前はおいらも大声でしゃべっては迷惑がられるウザガキだったので、強くはいえないのですが(ゴメンナサイ)。


しかし、1両でいいから「おしゃべり禁止車両」作ってください。お願いします。
僕、毎日そこに乗りますんで。


ラーメン屋にしろ病院にしろ、なぜかテレビがついていてこれまた極めてうるさい。
ほんとに見たい番組があるなら、ビデオにでもとって家でじっくり見ればいいし、そうじゃなくてダラダラ単に流してるだけなら、「集中して」本が読みたい人間にとっては極めて迷惑
これ、同様に家族にも言いたいな。見たい番組を見るのは一向に構いませんが、見てもいない番組を何となくでつけておくのやめてくださいな。
何せ、人の声っていうのは単純な音よりも耳に入りやすいので、耳栓しても何しても聞こえるのです。
もう、本当に嫌で嫌で仕方ないので、5000円出してイヤーマフと耳栓をセットで買いましたが、それでも聞こえます。
タクシーに乗ったら乗ったで、ラジオがついてるし、ほんと静かな場所がなさすぎ。


と思っている私にとって、あの歯磨きCMにキレるシーンはものすっごい共感したり。


描かれる世界観だけでなく、アクションシーンもハラハラしたし、
ラストが少し弱い気はするけどほとんど文句なしです。

されど罪人は竜と踊る 感想

著者は浅井ラボ。評価はA-。


非常に、読みにくいです。読みにくいにも関わらず、面白いです。


奥深い設定+思わずくすりと笑ってしまう軽妙なやりとり+やんわり理系要素+イケメン=本作
という感じ。

なぜ読みにくいかというと、漢字の羅列がすごいんですよ。
十文字以上連続漢字使用(11文字)なんてザラではないって感じです。

「生体生成系ジュ(漢字出ない!)式第四階位<胚胎律動癒(モラックス)>」

と、このような感じですね。

バリバリ文系の私の印象では、理系知識はあんまりなくても大丈夫だと思います。


最初の50ページまでは、厨二臭い作品だなぁと思ったのですが、
作りこまれた世界観と、ガユス+ギギナの楽しいやりとりに思わず引き込まれてしまいました。
また、「種族の断絶」など、なかなかに深いテーマに触れているのも魅力的です。


ただ、2巻は460ページもあるんですよね……。一応手元にあるので、読む気はあるんですが、
なかなか大変だ。

追記:2巻も評価A-です。

ラビシリーズ感想

著者はハリイ・ケメルマン。

「金曜日ラビは寝坊した」 評価 C+
「土曜日ラビは空腹だった」   B-
「日曜日ラビは家にいた」    C
「月曜日ラビは旅に出た」    B-
「火曜日ラビは激怒した」    これから
「木曜日ラビは外出した」    これから


ユダヤ教の聖職者であるラビを主人公に据えた、探偵モノです。

この作品の特徴は、「日常パート」であるラビの生活に、「殺人事件」がすんなり溶け込んでいる点にあるように思います。

推理モノにありがちなのは、「非日常:冒険小説」の側面を持っているもの。
つまり、探偵が旅行なりなんなりで、遠隔地の非日常的空間に赴き、事件を解決するパターンですね。

それから、警察小説やハードボイルド探偵に代表される、「犯罪に関わること自体が日常」というパターン。

この2つが多いように思います。


しかし、このラビシリーズでは、一人の聖職者として日々の生活を送り、
社会に組み込まれた人間として、近隣の人々と触れ合ったり、信徒会の面々とやりあったりしながら、その近辺で起きた事件を片手間に(?)解決していくという、片田舎の、のどかな雰囲気の漂うミステリとなっています。

実際のところ、ユダヤ社会のパートの方が、推理パートよりも興味深かったり。
めちゃくちゃ面白いとは言わないけれど、これはこれで味があるミステリのシリーズだと思います。


注:「水曜日」だけ、なぜか図書館にないです。「金曜日」と「土曜日」は家にあって、「日」「月」「火」「木」は図書館本です。


余談:実は私はユダヤ人…というより、イスラエルという国にはかなり悪いイメージを持っています。
それを前提としてこのシリーズは読んでいます。

このシリーズでは、アメリカのユダヤ社会が描かれるのですが、
これがまたどうにも「日本人の村社会」に共通する匂いを感じるんですね。
何というか、閉鎖的で、詮索などが横行していて、見栄張りな人だらけで、あまりいいイメージではないのです。
一方で、牧歌的で、ミステリシリーズの割には平和な雰囲気が溢れています。

なんか、同じ「あまり好きじゃない」という感情でも、別人種として嫌いだったのが、なんだか同族嫌悪みたいな気分に変わってきたのが、ちょっと面白いです。

このシリーズ、日本ではあまり売れてないみたいなんですが、
ユダヤの文化に興味がある方にはお勧めですよ。

87分署シリーズ 感想

著者はエド・マクベインです。


☆斧 No18(18作目) 評価 C

テンポの良い会話が印象に残りましたが、取り立てて面白かったわけでもなかったです。

しかし、何も考えずこの本を最初に読んだのですが、実はこれは『87分署シリーズ』という長寿シリーズの1冊だったようです。
手元に87分署シリーズらしき本が他にも数冊ありますので、読んで感想を書いていきたいと思います。幸い、順番どおりに読む必要はなさそうなので。

☆警官嫌い No1 評価 B-

探偵というか、主人公自身や同僚たちが次々と襲われていくので、緊迫感はかなりあります。
それだけといえばそれだけなのですが……。


☆ショットガン No23 評価 C

印象に残らない……

☆サツ No22 評価C

マイヤー・マイヤーの『本騒動』と、JMVのくだりが見所なんだろうけど、
それくらいしか面白かったところがない……。


☆ 死に様を見ろ No14 評価 B+

ここまでの4作が外れだったため、期待しないで読んだのですが、
これが意外にも当たり。
アイソラの腐敗した雰囲気は、好みとは言いませんが、よく描けていました。

また、水兵とチャイナのすれ違いなどは、うまくいかなくてガッカリしてしまいましたし、何より、少年ジプのウザさが異常。
パーカーとかパパとかウザキャラは多数登場しますし、敵の大物はペペ・ミランダなんですが、
このジプのウザさは別格で、「存在そのものが不快…頼むから氏んで」と腸が煮えくり返りながら読みました。
ほんと、どこまで頭が弱いんだ…。

人種差別・少年少女のモラルハザード・売春などなど、問題を提起する内容で、単純な捕り物じゃなかったのが良かったです。

☆麻薬密売人 No3 評価 C

「死に様を見ろ」を褒めたのもつかの間、また評価は戻ってしまいました。
でも、何作も読んでいるうちに各キャラに愛着が少しは湧いてきたので、
同じ評価でも以前よりは楽しめてます。


☆キングの身代金 No10 評価 B+

誘拐事件自体はあっさり解決するんですが、それよりも。
読んだ方は、キングというキャラをどう評価するのだろう?と思いました。

肯定(許容含む)派?否定(同情はしても否定、含む)派?

私は…んー、許容、かなぁ。

「従業員の子供が誘拐されて、自分のところに身代金請求(全財産の3分の2)が来た。さぁ、あなたなら払うか?」ということです。

キングは払いません。はっきり言って、自分のことしか考えていない嫌なキャラだと思います。
でも……ねぇ。自分なら払うかと言われると、どうなんだろうか……。


今回の小説だと、悪(?)の道に走ろうとする夫と、それを強引に妨げ善の道に向かわせようとする妻という構図が2組ありました。
エディはいい妻を持ったなぁとつくづく思います。

ディック・フランシス「競馬シリーズ」感想

☆利腕 評価 A No18(競馬シリーズ18作目)


主人公のシッド・ハレーが格好良すぎる件。
健速主人公など足元にも及ばないクールぶりに痺れました。
外見は超人、でも内面はそうではないというところも、深みが感じられて良かったです。
ジェニイとのやりとりは、某エロゲの健速主人公を思い出しました。
「完璧すぎるところが、玉に瑕」というか。
たまには「弱さをさらけ出してほしい」という台詞はぐっときました。そして、それに応えられないハレーの悲哀も。


この、ディック・フランシスという作家さんは、本当に人物を魅力的に描くことのできる作家さんですね。


ただ、ラストはシッド・ハレーを更に格好良く見せるために、ちょっと
「やりすぎ」た感はあります。

簡単に言うと、


敵「ば、ばかな! お前を止めることは誰にもできないのか!」




みたいなラストです(笑)。
こういうノリが好きなら是非。

にしても、今回の馬主たちは、マフィアっぽいというか恐ろしい人たちばかりですね。

ストーリー自体はB+くらいで、「素晴らしい」とは思わなかったので、
評価はちょっと悩みました。
読み終わった直後はA-をつけていたのですが、どうにも余韻が収まらず
A評価に上方修正いたしました。



☆反射 評価 B No19


競馬に興味はない私ですが、なかなか面白かったです。
騎手の世界の雰囲気は確かに楽しめますが、あくまで、競馬場を舞台にしたミステリなので、専門用語とかそういうのもなく気楽に楽しめます。
本作の主人公のフィリップ・ノアは、至って平凡な「流されるように生きてきた」人なので、アメリカ的な「俺はヒーロー、俺はタフガイ!」的なキャラクターに比べて親しみが持てました(笑)。
馬主のヴィクターや、ツンデレ(?)祖母のラヴィニアなど、キャラクターも魅力的でした。


☆血統 評価 C+ No7

リニイ、ユーニスという魅力的な女性陣が出てくるのが嬉しいですね。
ただ、200ページを過ぎるまであまり引き込まれなかったのも確か。
ラストのウォルトとの友情は、ベタではあるけれど悪くはないです。


☆暴走 評価 C No13

主人公のデイヴィッドが、「シッド・ハレーのなりかけ」で、微かにカッコ良いです。
有能で頭の切れるところは良いのですが、内面に踏み込んだ描写ではシッド・ハレーにだいぶ劣ります。
後は、ノルウェーが舞台というのは面白かったかな。
逆に言うと、それくらいです。


☆骨折 評価 A- No11

「利腕」以来のヒット!
傲慢で息子への妄執に満ちたエンソと、エンソの影響を受け傲慢で鼻持ちならない青年アレサンドロ。
頑固で、自分のやり方を押し通そうとするネヴィルと、ネヴィルとは別のやり方を模索するニール。

親からの自立をテーマに、2組の親子を描いた作品。
嫌な奴でしかなかったアレサンドロが、段々とニールを信頼し、憑き物が落ちたように成長していく描写が秀逸。
ラストの、彼の笑顔が脳裏に思い浮かびます。


不満なのは、ネヴィルの死があまりに唐突でタイミングが良すぎるところ。
さらに言えば、人が死んで(それも、根っからの悪人ではなく、「障害」にすぎない)グッドエンドというのは、ちょっと抵抗があります。

それにしても…梅毒って怖い病気なんですね。

☆査問 評価 B No9

濡れ衣を着せられた主人公が、濡れ衣を着せた謀略家を見つけるというお話。

なかなか引き込まれる設定で、先が気になるのですが、どうにも謀略家のスケールが小さかったのがマイナス。
また、ほとんど唯一の味方であるトニーやロバータが、ケリイにとってどんなに心強かったか、というような描写もあまりなく、やや肩透かしを食った。

また、理由はわからないが、今回は誤字が多かったのもややマイナス。

それでも、読んで損したとは思わないけれども。


☆重賞 評価 B+ No4

馬のすり替え詐欺を行う悪党三人組と、仲間の協力を得て愛馬エナジャイズを賭けて闘うスリラー劇。

悪役の一人、ガンサー・メイズの凶悪ぶりはなかなかのもので、主人公が襲われるシーンでは、読んでいて身震いしてしまいました。
また、ラストの競馬シーンも迫真の描写で、競馬の楽しさが、未経験(今後も経験しないでしょう)の私にも伝わってきました。

更に、今作もヒロインはかわいいし、仲間のチャーリィは頼もしいし、敵役は揃いも揃って憎らしいしで、キャラクターの魅力はさすがフランシスといったところ。


ただ、これは好みなんですが、今回は敵を凶悪にしすぎた気がするんですよね。
「とりあえずの勝利」は収めるわけですが、この程度じゃ満足できないというか…。
メイズには単純な死では生ぬるいというか…。


勧善懲悪モノでは、どちらかといえばハッピーエンド主義者なので
(注:恋愛モノの場合は、失恋・悲恋も美しいと思うのでハッピーエンドにはこだわらない)
、今作の締めはどうにも煮え切らないというか……。
メイズが玩具を壊したのが、とてもショックでした。

私も自称創作家(自称するだけならタダです:笑)なので、魂を込めたモノを踏みにじられるのってすごいショックなんです…。

そこが「骨折」よりも評価が低い理由です。
「骨折」も、いやらしい悪党が出てくる勧善懲悪で、この作品と大枠が似ているのですが、最後本当に爽やかに終わったので。


☆追込 評価 C+ No15

主人公のトッド・悪友のジックとその妻セアラが活躍する冒険モノ。
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