2009年08月

ガープの世界 感想

著者はジョン・アーヴィング。評価は

多くの純文学作品がそうであるように、あらすじは一言では言えません。
ガープという作家の悲喜こもごもの人生を描いた作品です。

一番気に入っているフレーズは、

だからわたしはあの人たちが大嫌いなんです。
他人をすべて、無理やり自分の同類にしてしまうか、そうならないものは敵とみなすんですもの。



人間の悪徳の根源を直球で表したセンテンスだと思います。
私もこういう人間は大嫌いだし、そういう人間にはなりたくないと思っています。

「性欲」の問題と合わせて、本作では愚かな人間の振る舞いがてんこ盛りといった様相を呈していまして、
上で叩かれている「エレン・ジェイムズ党」というのも、醜い連中の1つですね。

「性欲」に関しては、幾度にもわたるレイプの描写もそうですが、
何より「両親の不倫が、一人の子供の命を奪い、一人の子供の片目を奪う」という衝撃的な描写で、
露骨に表現されています。

大きな事件にはなりませんが、「夫婦スワッピング事件」など、伏線も張られており、起こるべくして起きたという印象です。


この作品の巧いところは、シーンごとの関連付けと、展開のさせ方が驚くほど巧妙なんですよね。
伏線がいたるところに張り巡らされていて、何度も、巧いなぁと思わされましたし、
時系列が過去に飛んだり、未来に飛んだりと定まらないにもかかわらず、
混乱もなく、流れるように読めます。


モチーフの例としては、「言語障害」が挙げられます。
父ガープがそうでしたし、恩師のティンチ先生、アリス、エレン・ジェイムズ、そしてウィットコムです。


他の例としては、「用心怠りなく」という劇中劇の中の
主人公VSフェクトーと、ガープVSエレン・ジェイムズ党の関わり方ですとか、
ガープと、隣家の一族(+犬)の確執、
ヘレンが母ジェニーと出合ったシーンと、ヘレンがプーを見たシーンなどが挙げられます。



何より、900ページ弱の本を、約2日で読んでしまったことからも、
「ハマり具合」がわかっていただけるかと。

ここまで、『本の置き所に困った』物語は、久しぶりです。

我輩は猫である 感想

著者は夏目漱石。評価はB-。

「こころ」は大好きなのだけど、こちらはそうでもなかった。
それはともかく。

ユーモア小説なのだけど、センスの問題か時代の問題か、
面白いギャグもある反面、寒いギャグも多い。
餅と格闘するシーンのように、たまに活躍することはあれど、基本的に「猫」は語りに徹しており、脇役。

主人公はくしゃみ先生と、それを取り巻く愉快な仲間たち。
ギャグはさておき、彼らののんびりした空気は割に好き。
本当に働いてるのか?と疑ってしまうけれど、いい大人が昼間からくだらないことを真剣に討論していて、なかなか楽しい。人生楽しそうだな。


この雰囲気は、武者小路実篤の「真理先生」なんかにも流れていたし、
現代で言うなら京極堂シリーズもこの雰囲気だったりする。

私も、この雰囲気で何か一つ作品でも仕上げてみようか。
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