評価はS。
久しぶりに、心が震えるような読書体験をした。
作品のテーマとしては、『ナチスドイツ』、『戦争責任』などが挙げられるのだけど、
僕は単純に、恋愛小説として読んだ。
罪を犯し、無期懲役の刑を受けてしまった、大切な人のために、
本を朗読したテープを、ひたすら送る主人公の姿は、涙なしに読むことが出来なかった。
↓ちょっと痛い自分語り入ります。そういうのが嫌いな人は回避推奨。
私事で恐縮だけれど、僕もまた、本当に人を好きになったことがある。
もう数年も前に別れたが、未だにその人のことは忘れられない。
あんな恋はもう二度と出来ないだろうと思っている。
けれど僕は、その人に対してでさえ、無償の愛を捧げることは出来なかった。
優しいメールを送るのは、返事を期待したからだった。
彼女を労わるのは、笑顔を向けてほしいからだった。
始めは頻繁に来た返事も、やがて滞りがちになる。
返事が来ないことに苛立ち、彼女を憎みもした。
やがて、そんな僕の行動は彼女にも重荷だろうし、自分自身にとっても何もならないと感じ、それきりになった。
それでも、ふとした時に彼女を想うことはある。
面白い映画を見たとき、彼女にそのことを伝えたいと思う。
こないだの地震の時、真っ先にメールを送ったのは彼女に対するものだった
(返事が返ってきたことが、とても嬉しかった)。
一人でさみしいとき、ひょっとしたら彼女から連絡が来るんじゃないか、なんて思ってしまう。
一年に一度くらい、僕らは今でも電話で話す。
大した話ではない。仕事の愚痴とか、近況とか、ちょっとした冗談とか。
そして、そんな彼女の声を聞くと、僕は「あぁ、今でも僕はこの人のことが好きなんだなぁ」と思う。
そして、その日は幸せな気分で眠りにつくことが出来る。
彼女の声は、付き合っていた時の記憶のものとは少し違う。
付き合っていた時は甘い声を出していたものだけど、今ではざっくばらんな感じでオクターブが下がっている。
今、どんな姿をしているかは知らない。きっと記憶にあるものとは随分違っているだろうと思う。
脱線が過ぎた。本書の話に戻ろう。
主人公のミヒャエルは、本来そうありたかった僕の姿だ。
無償の愛を捧げきった彼だからこそ、ハンナもそれに応えてくれた。
刑務所から来た彼女の手紙は、ミヒャエルに手紙を書くために覚えたものではなかったか。
彼女が文章を読めるようになったのは、紛れも無くミヒャエルの無償の愛ゆえだった。
そして、ハンナと対面することを先送りにした彼の気持ちもまた、よくわかる。
お互いがお互いを繋ぐ距離。お互いに大切に想いあえる最適な距離の測り方。
人を好きになること。
そして、相手のためにその人に尽くすこと。
それが多分に性愛を含んでいても、たとえ罪を犯したとしても。
それは否定されるものでは、全くない。
僕はこの二人の関係を、眩しく思う。
久しぶりに、心が震えるような読書体験をした。
作品のテーマとしては、『ナチスドイツ』、『戦争責任』などが挙げられるのだけど、
僕は単純に、恋愛小説として読んだ。
罪を犯し、無期懲役の刑を受けてしまった、大切な人のために、
本を朗読したテープを、ひたすら送る主人公の姿は、涙なしに読むことが出来なかった。
↓ちょっと痛い自分語り入ります。そういうのが嫌いな人は回避推奨。
私事で恐縮だけれど、僕もまた、本当に人を好きになったことがある。
もう数年も前に別れたが、未だにその人のことは忘れられない。
あんな恋はもう二度と出来ないだろうと思っている。
けれど僕は、その人に対してでさえ、無償の愛を捧げることは出来なかった。
優しいメールを送るのは、返事を期待したからだった。
彼女を労わるのは、笑顔を向けてほしいからだった。
始めは頻繁に来た返事も、やがて滞りがちになる。
返事が来ないことに苛立ち、彼女を憎みもした。
やがて、そんな僕の行動は彼女にも重荷だろうし、自分自身にとっても何もならないと感じ、それきりになった。
それでも、ふとした時に彼女を想うことはある。
面白い映画を見たとき、彼女にそのことを伝えたいと思う。
こないだの地震の時、真っ先にメールを送ったのは彼女に対するものだった
(返事が返ってきたことが、とても嬉しかった)。
一人でさみしいとき、ひょっとしたら彼女から連絡が来るんじゃないか、なんて思ってしまう。
一年に一度くらい、僕らは今でも電話で話す。
大した話ではない。仕事の愚痴とか、近況とか、ちょっとした冗談とか。
そして、そんな彼女の声を聞くと、僕は「あぁ、今でも僕はこの人のことが好きなんだなぁ」と思う。
そして、その日は幸せな気分で眠りにつくことが出来る。
彼女の声は、付き合っていた時の記憶のものとは少し違う。
付き合っていた時は甘い声を出していたものだけど、今ではざっくばらんな感じでオクターブが下がっている。
今、どんな姿をしているかは知らない。きっと記憶にあるものとは随分違っているだろうと思う。
脱線が過ぎた。本書の話に戻ろう。
主人公のミヒャエルは、本来そうありたかった僕の姿だ。
無償の愛を捧げきった彼だからこそ、ハンナもそれに応えてくれた。
刑務所から来た彼女の手紙は、ミヒャエルに手紙を書くために覚えたものではなかったか。
彼女が文章を読めるようになったのは、紛れも無くミヒャエルの無償の愛ゆえだった。
そして、ハンナと対面することを先送りにした彼の気持ちもまた、よくわかる。
お互いがお互いを繋ぐ距離。お互いに大切に想いあえる最適な距離の測り方。
人を好きになること。
そして、相手のためにその人に尽くすこと。
それが多分に性愛を含んでいても、たとえ罪を犯したとしても。
それは否定されるものでは、全くない。
僕はこの二人の関係を、眩しく思う。