2012年06月

準決勝 ドイツVSイタリア

ドイツ        1-2                       イタリア

試合内容 B+
MOM CH アンドレア・ピルロ(75)(イタリア)
主審 B-


GK マヌエル・ノイアー(60)                  ジャン・ルイジ・ブッフォン(75)
CB マッツ・フンメルス (55)                  レオナルド・ボヌッチ(65)
   ホルガー・バドシュトゥバー (40)             アンドレア・バルザーリ (50) 
SB フィリップ・ラーム (40)                   フェデリコ・バルザレッティ (60) 
   イェロメ・ボアテンク (60)                 ジョルジュ・キエッリーニ (60) 
CH サミ・ケディラ (65)                   ダニエレ・デロッシ (50) 
   バスティアン・シュバインシュタイガー (35)     アンドレア・ピルロ (75) 
SH ルーカス・ポドルスキ (35)            CH クラウディオ・マルキージオ (60)   
   トニ・クロース (45)                OH リカルド・モントリーボ (55) 
OH メスト・エジル (65)               CF アントニオ・カッサーノ (70) 
CF マリオ・ゴメス (45)                        マリオ・バロテッリ (70)

監督 ヨアヒム・レーブ C-                チェーザレ・プランデッリ A-

 
交代【ド】

マリオ・ゴメス→ミロスラフ・クローゼ(50)
ルーカス・ポドルスキ→マルコ・ロイス(60)
イェロメ・ボアテンク→トマス・ミュラー(50)

交代【イ】

アントニオ・カッサーノ→アレッサンドロ・ディアマンティ(50)
リカルド・モントリーボ→ティアゴ・モッタ(50)
マリオ・バロテッリ→アントニオ・ディナターレ(55)


【試合概要】

前日のスペインVSポルトガルとは打って変わって、とても楽しい試合となった。
やはりせっかく時間を割いてスポーツを見るのだから、これくらい面白くなくては見る価値がない。
とはいえ、これは裏を返せば、守備が……とくにドイツの守備が、スペインやポルトガルのような緻密さを
持っていなかったためとも言える。
開始からピルロを完全に自由にさせていたが、その結果ドイツはイタリアにいいように蹂躙されてしまった。

ギリシャ戦、あれだけ良かったロイスやクローゼを外し、今大会絶不調のポドルスキ、ゴールこそ決めているが
攻撃を停滞させる主因となっているゴメスを先発起用したレーブ監督の采配にも、大いに不満が残る。
中盤、ケディラやシュバインシュタイガーの位置まではボールも動くが、そこから先の攻撃に工夫を欠き、
イタリアゴール前になかなかボールを送り込めないのは、二列目の動きが少なすぎたから。
ケディラを除いて全体的に良くなかったドイツは、後半からクローゼ、ロイスを投入して前がかりになるも、逆に裏を突かれ、イタリアの鋭利なカウンターに再三脅かされる。
主審のプレゼント的なPKをエジルが決めて、ドイツが1点を返すも、時すでに遅くタイムアップ。
イタリアが決勝に駒を進めた。


【ドイツ】

とにかく、守備が脆すぎたし、攻撃にも動きがなさすぎた。
守備面の第一責任者は、シュバインシュタイガーとケディラのダブルボランチである。
彼らがピルロを自由にさせすぎた結果、チャンスの山をイタリアに提供してしまった。
攻撃面で力を発揮したケディラはまだしも、シュバインシュタイガーは故障の影響もあって、最悪のパフォーマンスだった。
中盤でフィルターがかからなかっただけに、最終ラインの負担が大きくなりすぎた嫌いはあるが、
それでもあれだけ崩されたのは彼らにも責任がある。
特にセンターのバドシュトゥバーはこの日も不安定な守備を露呈。
頼りになる相棒フンメルスもカッサーノにあっさりとかわされ、ラームはオフサイドライン崩れの戦犯ともなった。

攻撃面ではケディラ、エジルのラインまでは繋がるが、そこから先のクロース、ポドルスキ、ゴメスに動きがなく、
停滞した。
ギリシャ戦の立役者、ロイスとクローゼ(シュールレはさほど良くなかったのであれだが、ポドルスキよりは数段良いだろう)をなぜ使わなかったのか。
レーブ監督の采配には大いに疑問が残った。
「先発で使われれば点を決める」と豪語したゴメスも、結局いいところなく、失望の残る準決勝となってしまった。


【ドイツ代表まとめ】 4勝1敗 得点10 失点6 攻撃 A- 守備 B+ 面白さ B+ 総合 A

ここ数年繰り返されているような、『いつもの』ドイツだった。
ポテンシャルが高い一方で勝負弱い姿は、2002年くらいまでのドイツのそれとは真逆。
ダメなサッカーをしていても、勝ちきってしまう勝負強さが失われたのは痛い。
更に後述する攻撃陣の不調により、2年前に比べれば全体的にスケールダウンしていたという印象だ。

今大会で驚かされたのは、ケディラのプレイ。
バラックの代役として遜色ない働きをした2010に続き、今大会では全盛期のバラックを上回るほどのインパクトを残した。
また、レアル・マドリーでもケディラの同僚を勤めるエジルも、とりわけギリシャ戦では輝かしいばかりのプレイ。
最終ラインでは、新顔フンメルスがしっかりと締め、近い将来、世界を代表するセンターバックに成長するだろうと思わせるだけのプレイを見せた。

一方、レーブ監督が考えていた攻撃の軸である、ミュラー、ポドルスキ、ゴメスは揃って不発。
自分ばかりで周囲の見えていないポドルスキや、点は決めても動きが皆無で攻撃を停滞させるゴメスを先発させたイタリア戦の采配は、レーブ監督の評価を大幅に下落させた。
控えのロイス、クローゼがギリシャ戦で素晴らしい活躍を見せていただけに、どうして使わなかったのか大いに疑問である。
また、中盤の軸、シュバインシュタイガーも故障の影響か終始精彩を欠いた。

このように、選手個々で見てみると、実は今大会のドイツはあまり良くなかったという結論に行き着く。


主要選手の平均採点(5試合)

GK マヌエル・ノイアー(60)
CB マッツ・フンメルス(61)
   ホルガー・バドシュトゥバー(50)
SB フィリップ・ラーム (55) 
   イェロメ・ボアテンク (63.75/4試合)
CH サミ・ケディラ(71)  
   バスティアン・シュバインシュタイガー(54) 
SH トマス・ミュラー(58.3/3試合)
   ルーカス・ポドルスキ(43.75/4試合) 
OH  メスト・エジル(70) 
CF  マリオ・ゴメス(58.75/4試合)
 

準決勝 ポルトガルVSスペイン

ポルトガル      0-0           スペイン
PK          2-4
試合内容  D
MOM なし
主審 B


GK ルイ・パトリーシオ(70)         イケル・カシージャス(70)
CB ブルーノ・アウベス (50)         セルヒオ・ラモス (75) 
    ぺぺ  (60)                ジェラール・ピケ (60) 
SB ファビオ・コエントラン (65)        アルバロ・アルベロア (60) 
   ジョアン・ペレイラ (40)          ジョルディ・アルバ (70) 
DH ミゲウ・ヴェローゾ (45)         セルヒオ・ブスケッツ (65) 
CH ラウール・メイレレス (50)        シャビ・アロンソ (35) 
   ジョアン・モウチーニョ (60)       シャビ・エルナンデス (55) 
WG クリスチアーノ・ロナウド (45)     ダビド・シルバ (60) 
    ナニ (65)                アンドレス・イニエスタ (70) 
CF  ウーゴ・アウメイダ(40)        アルバロ・ネグレド (50) 

監督 パウロ・ベント B-            ビセンテ・デルボスケ B

交代

【ポ】
ウーゴ・アウメイダ→ネルソン・オリベイラ(40)
ミゲウ・ヴェローゾ→クストージオ(?)
ラウール・メイレレス→シルベストレ・ヴァレラ(?)

【ス】

アルバロ・ネグレド→セスク・ファブレガス(55)
ダビド・シルバ→ヘスス・ナバス(65)
シャビ・エルナンデス→ペドロ・ロドリゲス(60)


【試合概要】

すみませんが、ここまでつまらない試合だと、書くことがほとんどありません。
割愛させてください。

簡単に言ってしまえば、お互いがイエローカード覚悟で潰しあった、世紀の凡戦でございました。
試合はブツブツ切れ、FKは全くゴールの予感がせず。
ナバス、イニエスタ、アルバを中心にスペインのサイドアタックが、時折光るプレイをしましたが、
結局ゴールは決まらずPKに。という流れです。

120分間も戦って、枠内シュート数スペイン5:ポルトガル2。
セーブ数2:2。ファインセーブと言えるのは、ルイ・パトリシオの1つだけ。
端的に言って、ゴールの予感がしたのは120分間で1回か2回でした。

ポルトガルに関しては、90分も終わる前から時間稼ぎに入り、
交代と言えば、ヴェローゾに代えてクストージオを入れるような終始PK狙いのような采配でございました。



【ポルトガル代表まとめ】 3勝1分1敗 得点6 失点4 攻撃 B 守備 A 面白さ B+ 総合 A-


大会前の予想で、僕はグループBの最下位候補にこのポルトガルを挙げていた。
そんな大ハズレな予想からすると、ポルトガルは想像以上に素晴らしいチームだったと言える。
大会随一のウイング(ナニ、ロナウド)を抱えた彼らの戦術は、サイドアタックを最重視したもの。
ナニ、もしくはロナウドにロングボールを送り、突破。クロスをあげると、CFのポスティガがうまくスペースを空け、逆サイドのウイングが飛び込んでフィニッシュ。

中盤の3枚は皆、攻撃よりは守備寄りで、唯一モウチーニョはロングパスで攻撃を形作る。
故に、華麗なサイドアタックの印象とは裏腹に、Gk+4バック+3センター の8人で守る、守備的スタイルのチームである。
それだけに守備は堅固で、特にレアル・マドリー勢のペペ、コエントランの働きは目立った。
GKのパトリーシオもほぼノーミス。ベスト4のチームに相応しい守護神だった。

だが、チェコ戦、そしてスペイン戦と、頼みのウイングが抑えられると攻撃陣は沈黙。
センターバックがサイドバックのサポートに回り、1対2の状態を作られると、いくらロナウドやナニと言えどもなかなか思うようにはいかない。
2列目の3センターは飛び出しの意識が皆無で(メイレレスなどはリバプール時代、非常に飛び出しの多い選手だったのだが・・・・・・) 、ウイングが抑えられると完全に手詰まりとなった。

また、選手層の薄さも顕著で、CFポスティガの代わりにスペースメイクを担当できるCFはポルトガル代表チームには居なかった。


とはいえ、死のグループを突破してのベスト4、スペインを相手にPKまで粘ったその頑張りは評価できる。
大会前の予想を覆したその大健闘を称えたい。


【主力選手採点:注:オランダ戦が抜けていますので、それ以外の4試合のということになります】
()は平均。ポスティガのみ3試合、あとの選手は4試合。

GK ルイ・パトリーシオ(57.5)
CB ブルーノ・アウベス(53.75) 
   ペペ(65)
SB ファビオ・コエントラン(67.5)
   ジョアン・ペレイラ(53.75)
DH ミゲウ・ヴェローゾ(52.5)
CH ラウール・メイレレス(55)
   ジョアン・モウチーニョ(63.75)
WG ナニ(67.5) 
   クリスチアーノ・ロナウド(60)
CF エルデル・ポスティガ(46.6)

沙耶の唄 感想(バレあり)

以前からずっとプレイしてみたいと思っていたこのゲーム。
元々、『Phantom』、『鬼哭街』、『Fate/Zero』、『まどか☆マギカ』と氏の作品をこれまで
存分に楽しんできた。

そのうえ、評判では「沙耶の唄は純愛」と事あるごとに聞かされてきた。
『いまあいにゆきます』やら『タイタニック』やら『ロミオとジュリエット』やら『最終兵器彼女』やらで涙を流せる
純愛大好きの僕としては、当然胸に高い期待を抱いていた。

ずっと手元に置きながら、プレイできなかったのは偏に『グロい』との評判を聞いていたからだが、
この度ついにプレイに踏み切った。



さて、ここから先は作品の『良し悪し』についてというよりは、単純に『好み』の話を書く。
普段から僕の感想はそういう傾向にあるけれど、今回はいつにも増してその傾向が強い。


率直に言えば、少々期待はずれであった。
一言感想でも書いたように、『純愛小説』として読もうとしてしまったからだ。


そもそも、純愛というものの定義が今一つわからない僕ではあるが、少なくとも僕の考える純愛というのは、ホロホロと切ない恋の物語である。
読んで心が洗われる、お互いがお互いを極めて大切に想いあう、二人の絆が伝わるような、そんなストーリーである。


となると、沙耶の唄は僕が考える純愛モノとは一線も二線も画してしまう。

ちなみに
wikipediaの『純愛』の項目には
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%94%E6%84%9B

・邪心のないひたむきな愛
・その人のためなら命を犠牲にしてもかまわないというような愛
・プラトニックラブ
・無償の愛

などの例が載っていた。
が、これを読んで、ますますピンと来なくなってしまった。


世間的な意味で『沙耶の唄が純愛であるorない』という議論には参加できないのが悔しいところではあるが、とりあえず僕の考える純愛モノではなかった。
というに留めておく。


端的に言って、僕は『世界中の人の眼に、醜いと映る異生物を、愛してしまった男の恋物語』を期待して読んだのだ。
誰からも理解されることのない二人の愛を、読む気まんまんで手に取った。


気持ち悪いことを言えば、(物語世界の誰もが理解できない愛でも)、僕は二人の愛を応援するぞ!的なモチベーションで読み始めたのである。


この前提がそもそも間違っていたのではあるが、こういう期待を持っていなければそもそもプレイすることもなかったので、仕方ない。



で、いざ読んでみたら、そういうシーンはほとんどなく、そもそも主人公にはまるで感情移入できず(これが一番痛かった)、ホラーとしてはなかなか良かったものの、「あれ、これって純愛作品じゃなかったの?」という失望を感じつつ読み終えてしまった。
さて、ここからは純愛とか何とかを抜きにして、もう少し具体的に書いてみる。


最大の不満点は、瑶の扱いにある。


個人的にこの瑶ちゃんが沙耶よりも好みである~という点はとりあえず瑣末なことなのでおいておくが、
瑶ルートも作っても良かったのではないか?というのが率直な感想だ。
回想シーン(Hシーンのことじゃないよ!)も大幅に増やし、耕治、青海、瑶、郁紀の4人の仲むつまじかった頃のエピソードを大幅に増やす。
そして、沙耶の対立軸に瑶の存在をクローズアップする。


つまり、『本当はグロいけど、郁紀には綺麗に見える沙耶』と対比するキャラとして、
『本当は綺麗だけど、郁紀にはグロく見える瑶』をもっと取り上げても良かったのではないかと思うのだ。
こうすることで、2種類の『純愛』を描ける素地はあった。
沙耶バッドエンドでの携帯でのやりとりを振り返ってもわかるとおり、僕が勝手にでっちあげた
瑶ルート(仮)においても、そういう仕掛けは十分に可能だったと思う(さすがにエロシーンは書けなかっただろうが)。


そんな瑶ルートがなかったのは残念だが、それはともかく本編での、郁紀の瑶に対する仕打ちは
いくらなんでも冷たすぎるように思うのだ。
グロテスクな怪物に見えていた時はまだ、いい。仕方ないともいえる。
僕だって、昔の友達があんな姿になって擦り寄ってきたら、追い払うと思う。
しかし、だ。
沙耶の力によって、『キレイ』に見えるようになった瑶をペットのように扱う、というのは
話が違う。
率直に言ってあの瞬間、僕は郁紀の心に擦り寄ることができなくなった。
スイッチが切れたように、彼に共感することができなくなってしまったのだ。
それは姿かたちの問題ではなく、心の在りようとして、彼と沙耶との愛を受け止めることができなくなった、と言える。


郁紀の変容が、やや唐突すぎたというのも少々違和感があった。
最初の選択肢で、『元の生活を取り戻したい』か『沙耶といたい』かを選ぶのだが、
そこで『沙耶』を選んだ瞬間から、彼は妙な決意を固めてしまったのかヒトであることをやめてしまう。
確かに、『沙耶』を選んだ以上、もうすでに彼がおかしく(?)なっていることは明確なのだが、
直前までは割とまともだっただけに、選択肢一つで人格が崩壊してしまうのはどうかと思った。



一方、やはり虚淵氏というべきか、テキストは非常に良好で、エロゲというよりも小説のような読み応えがあり、
無駄に飾られた萌えやあざといキャラクター属性もなく、不快を感じることなく読み進めることができた。
昨今のおちゃらけた萌えテキストには食傷しているだけに、旧き良きエロゲテイストを味わうことができた、
といえば、懐古厨の謗りは免れないかもしれない。
とはいえ、それが率直な感想でもある。

準々決勝 イタリアVSイングランド

イタリア     0-0                   イングランド
   PK                  4-2

MOM    CH アンドレア・ピルロ(70)(イタリア)
試合内容 A-
主審 C+

GK ジャン・ルイジ・ブッフォン(75)         ジョー・ハート (75) 
CB レオナルド・ボヌッチ(60)           ジョン・テリー (65) 
   アンドレア・バルザーリ(60)          ジョリオン・レスコット (60) 
SB フェデリコ・バルザレッティ (65)        アシュリー・コール (65) 
   イニャツィオ・アバーテ (70)           グレン・ジョンソン (75) 
CH アンドレア・ピルロ (70)          DH スコット・パーカー (60)   
   クラウディオ・マルキージオ (65)     CH スティーブン・ジェラード (75) 
    ダニエレ・デロッシ (55)          SH  ジェームズ・ミルナー (70) 
OH リカルド・モントリーボ (60)            アシュリー・ヤング (40) 
FW アントニオ・カッサーノ (60)       FW ウェイン・ルーニー (60) 
   マリオ・バロテッリ (70)             ダニー・ウェルベック (65) 

監督 チェーザレ・プランデッリ A-         ロイ・ホジソン  C+

交代
(イタ)
アントニオ・カッサーノ→アレッサンドロ・ディアマンティ(65)
ダニエレ・デロッシ→アントニオ・ノチェリーノ(70)
イニャツィオ・アバーテ→クリスチャン・マッジョ(60)

(イン)
ジェームズ・ミルナー→テオ・ウォルコット(55)
ダニー・ウェルベック→アンドリュー・キャロル(50)
スコット・パーカー→ジョーダン・ヘンダーソン(?)

【試合概要】

堅い試合を予想していたが、思いの外両者攻勢に出た序盤戦となった。
とはいえ、やはりポゼッションはイタリア。ピルロ、デロッシ、カッサーノの他に
モッタに代えて起用されたモントリーボと、パスの基点が更に増えたことは大きい。
一方のイングランドは右サイドから、ジョンソン、ミルナーの仕掛けが目立ち、いつになく決定機を作り出していた。
しかしそれも前半の30分すぎまで。普段に比べれば攻撃的ではあったが(普段は10人で守るところを、今日は9人で守っていた)、やはり守備的は守備的である。
後半の25分すぎになると、疲労からか足も止まるようになった。
それでも何とか守りに守り、時折のセットプレイでイタリアゴールを脅かすシーンもあったが、結局スコアレスでPK戦へ。
イタリアはモントリーボが外すなど、一時はイングランド有利の展開になったものの、ピルロのパネンカ(PKの際、ゴール中央にチップキックをすること)を境にそれも一変。結局ベスト4最後の切符は、試合を終始押し気味に進めたイタリアのものとなった。



【イタリア】

ゲームを支配していたのはイタリアだ。PK決着とはいえ、この結末は試合内容を考えれば順当といえる。
モントリーボが先発したこの日は、更にパスの基準点が増え、スムーズにボールが流れていた。
デロッシ、モントリーボ、ピルロと、縦のスルーパスが出せる選手が複数いるというのはイタリアの強みだ。

MOMはピルロ。この日の彼は、軽率なボールロストが二度ほどあり、いつもに比べるとパフォーマンス自体は低かったように思う。
ただ、試合を決定付けたあのPKは圧巻だった。
それまで読みを当てていたイングランドGKハートの表情から余裕が消えうせ、あのキックを境に彼の読みは当たらなくなった。
単なる一発以上に精神的ダメージを与えた、素晴らしい一撃だった。

そのピルロを採点で上回ったのはGKのブッフォン。活躍の場面は多くなかったが、前半の決定的なピンチを奇跡的なセーブで防ぎ、PKのシーンでも勝利に貢献した。

アバテは短い時間ながら、後半開始直後の猛攻に一役買った。
デロッシはパフォーマンス自体悪くなかったものの、ペナルティエリア内で相手ユニフォームを露骨に引っ張るシーンがあり、PKを取られても文句の言えないプレイだったために減点をした。


【イングランド】

いつになく、攻勢に出ていた印象だ。
いや、どちらにしろ守備的すぎる感は否めないのだが、通常10人で守るところを、今日は9人で守っていた。
その甲斐あってか、何度かチャンスを作ることにも成功したが、やはり時間を追うごとに守備一辺倒になってしまった。
セットプレイ時のジェラードは、大会を通して輝いていた。
惜しむらくは前半早い時間、ジョンソンとミルナーが素晴らしい突破でイタリアを蹂躙していたあの時間に、
点を決められていれば……。しかし、そんな儚い願いは相手GKブッフォンに阻まれ、後の時間はひたすら守るのみだった。

それでも、底知れぬ不気味さを感じさせるあたり、スリーライオンズの威光はまだ失われていない、と見るべきか。



【イングランド代表まとめ】 2勝2分 得点5 失点3 攻撃 B- 守備 A+ 面白さ B- 総合 B

注目選手 CH スティーブン・ジェラード(66.6/3試合:ウクライナ戦は未採点)。
       GK ジョー・ハート(68.3/3試合:上に同じ)
       CF ダニー・ウェルベック(63.3/3試合)
       SB グレン・ジョンソン(63.3/3試合)


『弱小チーム』なりに素晴らしい結果を残した、ポジティブな大会だったと言える。
気持ちの強さを見せてくれたし、何より10人で固めたゴールは非常に堅固だった。

元々イングランドは真の強豪国ではない。ビッグトーナメントでベスト4に進出したのは96年が最後だ。
その上、今大会は記録的な数の負傷者を出し、監督は大会1ヶ月前に就任したばかり。
更に更に言えば、エリクソン監督以降イングランドは常にドン引き、引きこもりサッカーを磨き上げてきた。

イングランドの攻撃が魅力に欠けているのは、もはや今更、なのだ。
そう考えれば、イタリアを相手にPKまで粘ってのベスト8敗退。
立派ではないか、と思う。

選手個々に目を向ければ、やはり守備ブロックの評価は高い。
最後尾に控えるハートの奇跡的な反射神経に、救われた試合もあった。
数々のスキャンダルに見舞われたテリーも、ピッチ上ではイングランドを代表するだけのパフォーマンスを見せてくれた。
レスコット、ジョンソン、コール、皆、文句のつけようがない。

そしてジェラードだ。
極端に攻め手が少ないこの代表では、センチメーター単位で通す彼の正確無比なロングパスが、
チャンスの8割を占めていたという印象だ。
前線ではウェルベックが、エースのルーニー以上に奮闘。
守って守ってスピードカウンターという、イングランドの戦術は、攻撃面でジェラードとウェルベックの二人に依存していたと言える。




【プレビュー】

カテナチオから脱却し、テクニカルなサッカーを目指し始めたイタリアと、
イタリアからカテナチオ戦術を取り入れ、ゴールを10人で守るイングランド。
まさに、新旧カテナチオ対決、師弟対決と言えるかもしれない。

3バックと4バックを使い分けるイタリアだが、コンセプトの部分は変わらない。
それは、ピルロ、デロッシ、カッサーノを中心にした足元で繋ぐテクニカルなスタイルだ。
この3人を縦の軸で繋ぐのが3バック、ピルロデロッシを横に並べた従来のスタイルが4バックである。
この試合、どちらを使ってくるのかはわからないが、イングランドの快速攻撃陣に対抗するためには
3バックよりも4バックが望ましいだろう。
3バックの方がより、足元に繋ぐ本来のスタイルを保持できる一方で、4バックの方がよりサイドを攻略できるというメリットもある(本来3バックの方がサイド攻撃に適しているシステムのはずなのだが、実際この大会では3バック時のサイドアタックは乏しく、むしろ4バック、バルザレッティ起用時の方がサイドを抉れていた)。

最終ラインは毎試合メンバーが変わっているように流動的であり、負傷したキエッリーニの回復具合も気にかかる。
守備の局面では、スペインのように繋いでくるチームには鉄壁を誇っているのだが、クロアチア、アイルランドのようにロングボール主体のチームにはやや脆さも見られた。イングランドもまたロングボール主体のチームだけに、マークのズレなど十分ケアしておきたい。
攻撃の局面では、カッサーノに一度預けてからゲームを作る。前線ではフィジカル自慢のバロテッリが控えるが、
マルキージオの飛び出しも含めて、やや攻撃が中央に偏りすぎる嫌いがある。


10人で守る。それが現在のイングランドのスタイルだ。
まさに要塞を守る人間の壁。その人海戦術の故もあってか、そう簡単にゴールを許すことはない。
常に、ボールよりも後ろの位置に人数をかけるのがイングランドの特徴である。
最後尾に控えるGKハートは、今や世界でも三本の指に入るGKと評価してもいいだろう。
(No1はスペインのカシージャス、No2はドイツのノイアー)。
人種差別騒動もあり大きな批判を浴びながらのプレイとなった守備の要、CBのテリーのプレイも際立っている。
攻撃のキーは、正確無比なジェラードのロングボールだ。
ミルナー、ウェルベック、ヤング、控えと予想したがウォルコットやチェンバレンなど、快速を持ち味とする
2列目の選手たちが単独でボールを持ち込み、チャンスを作り上げる。
セットプレイの際にはテリーやレスコットも含む長身選手が上がり、ゴールを狙う。
とにかく1ゴールを奪い、後は守りきってしまう。それがイングランドの狙いである。
控えには、高さ自慢のキャロル、爆発力のウォルコットなど、切り札になりうるメンバーが揃っており、
0-0のスコアで終盤を迎えれば、彼らの出番も回ってくるだろう。
イングランドのサッカーは、出場16チームの中で、最も守備的であり、クラシカルなカテナチオスタイルである。
個人的にこのようなサッカーは、(殊に、選手がある程度揃っているチームがそれを行う場合)許容しがたいが、こんなチームもある、ということだ。






準々決勝 スペインVSフランス

スペイン    2-0            フランス

試合内容  B-
MOM CH シャビ・アロンソ(75)
主審 B


GK イケル・カシージャス (70)     ウーゴ・ロリス(60)
CB ジェラール・ピケ (50)        アディル・ラミ (45) 
   セルヒオ・ラモス (65)        ロラン・コシールニー (55) 
SB ジョルディ・アルバ (70)       アンソニー・レバイエール (50) 
   アルバロ・アルベロア (60)     ガエル・クリシー (45) 
DH セルヒオ・ブスケッツ (60)     ヤン・エムビラ (40) 
CH シャビ・エルナンデス (65)     ヨアン・キャバイェ (55) 
   シャビ・アロンソ (75)      SH フロラン・マルダ(40) 
WG ダビド・シルバ (60)         マテュー・ドゥビュッシー (45) 
   アンドレス・イニエスタ (60)   OH フランク・リベリー (60) 
CF セスク・ファブレガス (60)   CF カリム・ベンゼマ (45) 

監督 ビセンテ・デルボスケ A    ローラン・ブラン   C+

交代
(ス)
ダビド・シルバ→ペドロ・ロドリゲス(70)
セスク・ファブレガス→フェルナンド・トーレス(50)
アンドレス・イニエスタ→サンティ・カソルラ(55)

(フ)
マテュー・ドゥビュッシー→ジェレミー・メネズ(45)
フロラン・マルダ→サミール・ナスリ(50)
ヤン・エムビラ→オリビエ・ジルー(?)


【試合概要】

両者ともにパスサッカーを主軸に置くチーム同士だが、それだけに如実にレベルの違いが浮き彫りにされた印象だ。
フランスがスペインゴールを脅かした機会は皆無に近く、わずかにキャバイェのFKや、リベリの突破があった程度。
前半の早い時間にシャビ・アロンソがゴールを決めてからは、
まだ1点差だというのに、早くもスペインの勝利が磐石なものとなったような錯覚に陥った。
後半、フランスはややペースを上げ、前半に比べればスペインのゴールに迫ったものの、勝利は遠いと痛感させられた。
結局、ロスタイムには交代で投入された絶好調ペドロの突破にラミがまるで対処できず、
慌てたレバイエールがPKを献上。
この日、代表100キャップを飾ったシャビ・アロンソが2点目となるPKを決め、スペインが準決勝へと駒を進めた。


【スペイン】

中盤のクオリティで、フランスを圧倒した。
全く危なげない勝利というべきで、特に言うべきことは少ない。
敢えて苦言を呈すなら、1-0で十分とも言える消極的な姿勢(ペドロ投入まで)が気になったが、
実際1-0で十分とも言えるくらいフランスに怖さがなかった。
MOMは2ゴールのアロンソを選んだが、チーム全体として仕掛けのパスが少なく
いつも以上に横パスが多い展開だっただけに、少々退屈さを感じたのは確か。
一方、ほとんどミスパスがなく、流れるようなボール回しはさすがの一言で、
横パスをまわされ、時計の針が進んでいくのを、なすすべなく見守るフランスの姿が印象に残った。


【フランス】

スペインとの差は歴然としていた。どう手を打っても、勝利することは難しかったかもしれない。
だが、それにしてもブラン監督は無策だった。
大会を通して良いところのなかったベンゼマを代え、ジルーを早い時間から投入することはできなかったのだろうか。まるでベンゼマと心中をしたかのように感じた。
ラミの守備はあまりにも軽く、CBの層が薄いことを改めて痛感させられた。
キャバイェ、ロリス、コシールニーなど及第点を与えられる選手が数少ない中、リベリだけは相変わらず違いを作り出せていた。リベリのチャンスメイクを、ゴールに結び付けられるだけのストライカーがいれば……。


【フランス代表まとめ】 1勝1分2敗  得点3 失点5 攻撃 B- 守備 B 面白さ B 総合 B+

不完全燃焼の大会だった。
初戦のイングランド戦、中盤を圧倒的に支配したフランスには、躍進の可能性を見出したものだ。
だが、振り返ってみれば、そのイングランド戦で相手を圧倒しながらも、気の抜けたフィニッシュとどこか消極的な姿勢で、結局引き分けで良しとしたその短所こそ、今回のフランスのその後を象徴していたのだ。

ドゥビュッシー、キャバイェ、リベリ、ナスリを中心にした崩しはなかなかのレベルなのだが、
肝心のフィニッシュに持ち込めない。
最前線のベンゼマが決められないというよりも、ベンゼマ以外にフィニッシュに絡もうとする選手が少ないのだ。
結果、中盤は支配するものの誰もゴール前に入っていかず、パスをひたすらまわし続ける羽目になる。
まるで、ポゼッションサッカーの本家スペインの悪い部分をコピーしてしまったかのようだ。

そんなミニ・スペインが、本家スペインに勝てないのが当然というなら、そのスペインを相手にポゼッションされ、
ポゼッション率4割の状態で勝機が見出せないのもまた、当然だった。
もとより、カウンターをコンセプトに作られたチームではないのだ。
似たもの同士のチームスタイルを持つ両者がぶつかれば、完成度の違いが如実に表れてしまうのもまた、至極当然の結末だった。









【プレビュー】

似たもの同士とも言える顔合わせだが、有利なのはクオリティで絶対的に上回るスペインの方だろう。
クロアチアの攻撃にピンチの連続となった守備陣には不安がないとは言えないが、結局は完封を収めており、
今大会でも3試合で1失点。
そもそも、攻撃は最大の防御ならぬ、『ボールポゼッションは最大の防御』を地でいくチームだけに、
守備が破綻をきたすことはない。自分たちがボールを持っていれば、敵に攻められることはないのである。
最大の特徴はやはり中盤である。
スペイン代表は、他のチームとは全く別のスポーツをプレイしている。
非常に異質であり、過去に類を見ないスタイルと言えるだろう。
相手にほとんどボールを奪われず、ひたすらボールを自分のものとする、バルセロナ譲りのスタイルだ。
ポゼッションの鍵を握るシャビ・エルナンデスから、両ウイングのシルバ、イニエスタへ。
シルバの飛び出し&パス、世界一とも言えるイニエスタのキープ力は必見だ。
また、ここに来て、過去2年全く頼りにならなかった男が、再び輝き始めている。
フェルナンド・トーレスの動きは見違えるようで、点取り屋不在の危惧を払拭してみせた。
万が一、トーレスが抑え込まれた場合にも、控えにセスク/ゼロトップシステムという切り札がある。
ゼロトップが機能していることは、イタリア戦、アイルランド戦の後半を見ても明らかであり、
リードを許した終盤にはジョレンテ、ネグレドといったパワープレイ要員も備えている。
守勢に回ることは少ないが、世界最高の守護神カシージャスがクロアチア戦ではビッグセーブを見せていた。
現在、最も優勝に近いチームと言えるだろう。


対するフランスは、劣勢が否めない。
とはいえ、それは相手がスペインだからというだけの話である。
最終ラインで目を引くのが右サイドバックのドゥビュッシーだ。サイドバックでありながら、基準ポジションはサイドハーフのそれであり、彼のオーバーラップは今大会でも一際目をひいている。
対照的に中央の守備には不安がある。センターバックのラミは軽率なプレイが多く、頼りになる相棒のメクセスは出場停止。コシールニーが代役となるが、アーセナルでのプレイを見ている限りでは、彼の守備力に信頼は置けない。最後尾にGKロリスが構えているのは救いである。
中盤の底、アリュー・ディアッラの守備とキャバイェのビルドアップは信頼性があり、イングランド戦では完全に中盤を支配した。
攻撃においては2列目のリベリーのキレのある突破、ナスリのミドルシュートなども大きな武器となっているが、
真の意味で鍵を握るのはメネズであると思う。
というのも、最前線のベンゼマが今大会、ここまで完全に不発に終わっており、フィニッシュにおいてフランスは大きな問題を抱えているからだ。そのため、せっかく中盤を支配しても有効なフィニッシュに繋がらず、結果として攻撃に迫力を欠き、満足に得点が奪えていない。
2列目から最前線に飛び出して、フィニッシュに絡めるキャラクターが、現在メネズくらいしか見当たらないだけに、彼の飛び出しがゴールを生み出す特効薬となるかもしれない。






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