2012年09月

Steins;Gateクリア(バレあり)

点数は93点。歴代6位です。


「秋葉原を舞台にしたゲームで、厨二病患者が主人公」と聞いて、しばらくプレイする気が起きませんでした。
それがいざプレイしてみたら、ここまで面白いとは。先入観にめげず、プレイして本当に良かったです。


携帯電話を操作してゲームに介入するというのは実に面白く、
メールの着信音が鳴るたびに、誰から来たのかな?とワクワクしながらメールを開封していましたw
脅迫メールや、第5章のラウンダー襲撃あたりから物語は俄然緊迫感を増すわけですが、
あまり展開の早くない序盤も、携帯をいじって遊んでいたので退屈はしなかったですね。


【物語について】

”ほぼ”全ての事象に対して、きちんと論理的な回答を用意している点が、まず素晴らしいなと感じます。
(I/Oのように、説明放棄した部分は一切なかったように感じます)

物語難易度もちょうど良く、ほんの少しメモをとる程度で全ての構造が見えてくると思います。
(つまり、「最果てのイマ」や「Remember11」のような激ムズ難易度ではないです)。


力が入っているなと感じたのはサスペンスシーンで、脅迫メールやラウンダーの襲撃は割と本気で怖かったですし、
トゥルールートの流血シーンや、初回タイムリープ後の頭痛なども、気合が入った描写だったように思います。
泣くというほどではありませんでしたが、感動するシーンは幾つもありましたし、驚きはそれこそ無数にあり、
紅莉栖萌えもありと、至れり尽くせり。


世界線を移ればディストピアは打ち砕かれ世界は平和に、と思わせておきながら、
実は第三次世界大戦が起きてしまう、などなど、捻りが利いている部分も気に入りましたし、
「死んでしまった父親を助けたい」といった切実な願いや、「女の子として生まれ変わりたい」といったささやかな願いが、
IBM5100の行方に大きく関わってしまう、という残酷さも好きです。


Trueルートという救済こそありますが、総じてこの作品は、生ぬるさとは対極にある
「冷酷さ」、「残酷さ」が物語を引き締め、名作たり得るものにしているのではないかなと。
橋田鈴の「失敗した、失敗した」の手紙は最たるものでしたし、β世界線に戻るためクリスを『殺す』シーンなども
実に奮っていたと思います。


【キャラクターについて】

キャラクターの話に移ると、主人公のオカリンとメインヒロイン(と言って良いと思う)のクリスの造形が秀逸。


世界を混沌へと導くマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真は、避けられないまゆりの死に直面するうちに、
自らの無力さを。
自分はただの一大学生である『岡部倫太郎』に過ぎないという事実を、思い知らされていきます。


あれほどナチュラルにウザったかった凶真設定が、後半になるにしたがって、岡部倫太郎という人間の精一杯の「強がり」に思え、愛おしくなりました。
そしてTrueルート、「クリスと世界を救う」という、これ以上ない目標を与えられた彼は、前向きな自信をついに取り戻します。
この一連の流れに、僕は主人公の成長を感じることができました。
声優さんも、実に良い仕事をしています。熱演ありがとう。グッジョブ、です。 


ヒロインのクリスもとても魅力的でした。
献身的に支え、励まし、力づけてくれる彼女に、オカリンは何度救われたことでしょう。
彼女が本当にオカリンを、ラボの仲間を大切に思っていることが、セリフ、行動、メール、全てから伝わってきました。


他のキャラクターもそれぞれ魅力はありますが、正直この二人に比べるとやや弱く、その点は少々残念でした。


シリアスな情報から完全に遮断されながらもオカリンを案ずる「お姫様」、まゆりの健気さは素敵ですが
(「重荷に感じてほしくない」、「やっと役に立てた」という彼女の一連の訴えは心を打つものがあります)

フェイリスやルカ子などは、物語の根幹にさほど関わってきません。


『ラボメン』は8人ということになっていますが、オカリン・まゆしぃ・ダル・クリスティーナ・バイト戦士、までの5人の絆に比べると、
残りの3人はちょっと薄いかな、と。
まぁ、閃光の指圧師は悪役なので仕方ない部分もあるとは思います。


93点(歴代6位)というのは、僕がつけた点数の中でもめちゃくちゃ高いのですが、敢えて言うならそこの部分が少々物足りなかったかなと感じています。
ラボの空気は、心地良くて好きですが、好き好き大好き超愛してる、という次元までは到達しなかったな、と。
 
絵はなかなか気に入っていますが、イベントCGにもう少し差分などが欲しいところ。
後は、バグですね。最新パッチを当てても、ロード時に高確率でフリーズするのは勘弁。


最後に軽く不満点なども挙げましたが、それでも本作は最高でした!
先が気になって、毎日睡眠不足になるまでプレイしたのは、本当に久しぶりの経験でした。



この青空に約束を バレあり感想

「この青空に約束を」コンプしました。

まずは点数から 
話 105/150 人 110/150 絵 80/100 音 80/100 その他システム 80/100 印象 30/50 
合計 485/650  ESにつける点 79 


「ヤンキーたちに残された、最後の1年」。
敢えて擬人化すれば、「ダメだけど、かわいい」ゲーム。
雰囲気の良さが、多々ある不満点を際どいところで覆い隠してくれる良質の萌えゲー。


【前置き】

全7ヒロインルート中、良かったのは海己と凛奈だけ。
約束の日はまぁいいけれど、共通ルートとなるACT1.2もあまり面白くない(特にACT1はぶっ叩きたい)。
その割に満足度はそこそこ高いという不思議なゲーム。


細かい粗が非常に多いのだが、その粗が、後々、妙な味を出してしまったりもするので安易に叩くこともできず、
どう評価していいのか判断しにくいという、実にレビューの書きにくいゲームとなりました。


とりあえず、クリア順に感想を書き、最後に総評を書きます。

(前半は叩きが多いので、ファンの方は一番下の【総評】を読んでいただければと思います)



【ACT1】


心を閉ざした凛奈という少女に積極的に働きかけ、彼女がつぐみ寮の一員となるまでの物語。
率直に言って、酷い導入部だった。


開始3分で、『食事を待つヒロイン達』の描写が描かれるのだが、
静の行儀の悪さは異常で、早くもキレ気味(え、こいつクリアすんの?)。
食器で音を立てる彼女を、誰も注意しようとしない寮メンバー。
「お腹すいたー」を連呼するさえちゃん。
「全員が集まってから食べましょう」という、率直に言ってウザったい規則を押し通す海己。
(「僕は今手が離せないので、先に食べ始めててくださいよ!」)
もうこの時点で、モチベだだ下がりです。


話が始まると、「誰とも仲良くしたくない」(?)凛奈を仲間に引き入れようとする航たちの図。


『結果オーライ』なので構わないのですが、『寮に暮らしているから』という理由だけで強引に仲間に引き込もうとするのは、
端的に言ってウザいかなと。
「誰とも仲良くしたくない」は虚勢であって、実は誰かと仲良くしたいのは確かでしょうが、
それは何もつぐみ寮のメンバーじゃなくてもよく、凛奈の方にも友達選択の自由くらいはあるはず。
もし僕が凛奈なら、たまたま住んでいる場所が同じだという理由で仲間に誘ってくる人たちではなく、
自分の目で確認して、信頼できそうなグループに入りたいと思います。
そして、その凛奈に対してマラソン大会で勝負を挑む航の、あまりにも下品な下ネタにもドン引きと、序盤はまさにクソゲーを地で行く低評価ぶりでした。


そして極めつけが「マラソン大会」。


まず、教頭&学園長の陰謀のレベルが低すぎます。
生徒同士の賭け(口約束)を鵜呑みにして動く大人が、どこの世界にいるというのでしょう。
航がバックレてしまったら、凛奈が「やっぱり賭けは延期にしてあげるよ」と言えば、それだけで崩れてしまうような陰謀ですよ。
ナンセンスにも程があります。


余談ですが、この教頭&学園長は物語上「いなくても良かった」ような気がしています。
確かに、学園生活に緊張感を走らせるスパイス程度の役には立っているのですが、スパイス以上の存在にはなれていません。
どちらにしろ、1年後に廃寮になる(約束の日)のだから、こんなにも焦る必要はないし、
焦っている割に、やり口が常軌を逸しているレベルで拙すぎると思います。


また、マラソン大会で『ズル』をしてまで勝とうとする航には心底あきれ果てました。
(そして、停学処分に対して「なんでだよ」と不満を漏らす航にも)


この勝負は何のために行われているのか。それは、凛奈の心を掴むためでしょう。
仲間として、凛奈を迎え入れるためでしょう。
別に、勝負自体に意味はないのです。
凛奈が欲しいのは、『足の早い友達』ではなく、『自分を裏切らない、信頼できる友達』なはずです。
凛奈は何故、心を閉ざしていたのか。
それは、「新しい恋人を見つけ、しかもそれを凛奈に黙っていた、パパのズルさに傷ついた」からではなかったでしょうか? 


全力で凛奈と向き合い、誠実さをアピールする。気持ちの良い仲間として、凛奈に認識されれば、マラソンの結果自体は重要ではなかったはずです。


なのに航はズルをして勝とうとした。
そして、にも関わらず凛奈は航に心を許した。


『友達』との勝負において、最低のことを航はしたと僕は思うのですが、これでいいんですか?と。
もうね、ついていけないなという感じでして、ACT1だけを評価するなら、40点といったところです。


【ACT2】

ツッコミを入れたいのは、寮に蔓延している飲酒癖。
ビールと枝豆の味を語っちゃう高●生って……いったいどこのおっさんだよと。
監督責任のあるさえちゃん自身が、航に飲酒を勧めるに至ってはもう話になりません。


男1:女6で、飲酒が常態化しており、(これはエロゲだからいいけど)高校生の男女が一緒にお風呂に入り、カップルでのエッチも盛んな『つぐみ寮』は、
もはや生活の場というよりも、好き勝手遊べる、ヤンキーの溜まり場の様相を呈しています。
事実、寮にいる生徒の大半は、寮がなくても問題ない生徒たちばかり。


(静・凛奈は寮がないと辛い境遇ですが、虐待されているわけではないですし、それでも家庭に不和を抱えつつ通学している生徒は多いと思います。
本当に困るのは、島に家がない奈緒子くらいでしょうか)


南栄生島のリゾート開発だの何だのとぶちあげれば、さぞ学園側が悪のように錯覚してしまいがちですが、
普通に考えて、ここまでモラルが低下していれば『潰されて当然』だと思います。
学園側も、本気で潰したいならここを突くだけであっさり廃寮にできるはずで、「やる気がないんだな」と白けてしまいましたし、
学園側が手ぐすね引いて廃寮を狙っている状況下で、危機意識が足りなすぎでしょう。本当に寮を守りたいのか疑ってしまいます。


そもそも飲酒シーンなんてまるで必要なかったと思うのですが……。




【静・沙衣里・宮穂ルート】


まず静ルートから。
心と体の成長をリンクさせたこのシナリオは、エロゲーならではの工夫と言えそうです。
ただ、静をきちんとしつけるシーンが最後までなかったのは、ちょっといただけないかなと。
奈緒子がもっとガツンと言ってあげても良かった気がします。


沙衣里ルート。
ダメっ子ティーチャーなのは彼女の魅力なのだろうけど、それにしてもダメすぎます。
特に学園長と教頭に囲まれた際、航が庇っているにも関わらず自白しようとする彼女には愛想が尽きかけました。
個別ルート入口の、彼女と結ばれる流れが綺麗だったため評価が多少上がったのに、いろいろ台無しに。
なお、沙衣里自体は『約束の日』では良いところを見せていましたね。


宮穂ルート。
宮はかわいいです。萌えます。
ただ、シナリオはよくありません。
あの程度の口論で、「航に嫌われたと勘違いし、家に引きこもる」宮穂の行動は実に不可解ですし、
『結婚相手としてはダメだけど、セックス込みの恋人としてならOK』という滝村さんの立ち位置も不可解でした。
男と違って、女の子は妊娠のリスクが高いので(現に中出ししてるし)、後半あれだけ干渉してくるなら前半からもっと目を光らせてくると思うのですが……。



【奈緒子ルート】

『高嶺の花』の奈緒子ルートに関しては、正直に言って「失恋エンド」の方がより切なさが伝わって良かったのではないか、と感じた。
高嶺の花は、見上げているうちこそが華。航のレベルに自らを合わせてしまった奈緒子は、『可愛くて、少々性格に難のある普通の恋人』になってしまったような。
是が非でも主人公と結ばれないと嫌だ、と感じるプレイヤーが多いのかもしれないが、
『片思い』をこじらせている航の心情はなかなか切なくて良かったし、あぁいう想いをするのも恋の『楽しさ』だと思うのだけれど。
それと、奈緒子は2年前の方が可愛かったなぁ、と。
内面が2年前に比べて、あまり成長していないように感じられたのはマイナスかもしれません。


ちなみに、奈緒子は『女』としては魅力的だと思うけど、
好きではない男への対応があまりにひどいので、『人間(友達)』としてはあまり好きになれないです。


【凛奈ルート】

凛奈が南栄生島への想いをぶつけるシーンや、ピーターパンの演劇を通じて、
初めて皆の、『南栄生島』への想いに共感することができた、ある種ターニングポイントとなったシナリオでした。

南栄生島はネバーランド。
考えるまでもなく、初めから提示されていたはずなのに、実感を持ってそう感じたのはこのシナリオが初めて。
『大人になるまでのわずかな時間』を、
『子供』として精一杯楽しむ『今』がどれほど貴重で、どれほど素晴らしいものなのか。
どういうスタンスでこのゲームを楽しめばいいのかがようやくわかり、
最終的に79点という『中の上』にまで評価が改善されたのはこのシナリオのおかげです。


また、『合わせ石』の相手についても、ちょっとした仕掛けが施されており、「驚き」こそなかったものの好印象を受けました。


強いて言うなら、演劇シーンで三角関係の真似事をするのは、ちょっと調子に乗りすぎかな、とは思います。
僕が観客だったら、冷めていると思うので。



【海己ルート】

頑固で面倒な女ではありますが、海己はかわいい幼馴染です。
辛い境遇だったとはいえ、あそこまで心を病むかしら?というのは疑問ではありますが。


クライマックスの演説は、『つぐみ寮存続を訴えた』前半部分の出来が秀逸。
ディテール(例えば壁に刻まれた相合傘、例えば傾いたままのバスケットゴールなど)を具体的にきちんと描くことで、
お客さん(と読者)の胸を打った良いシーンだったと感じました。


一方、後半の『交際宣言』は、僕なら「さいですか」と思ってしまうかな。
事情を知らない人間からすれば、何を言っているのかわからない演説になっていると思うので。
(狭い島なので、事情を知っている人の方が多いかもしれませんが)。


いずれにせよ、海己かわいいな。海己を守りたいなと感じてしまった時点で、雰囲気づくりの勝利と言えるでしょう。


【約束の日】

短いけれど、最後を飾るに相応しいエンディングだったと思います。

卒寮式では、司会役(?)のさえちゃんが(ほぼ初めて)輝いて見えました。


エンディングの合唱は、泣いたりジーンとくるというよりは、痛さが転じて微笑ましい気分に。
感動・泣きを狙って入れたのだとしたら、僕には外れでしたが、暖かい気持ちになれたので結果オーライですね。


【茜ルート】

バッドエンドから繋がるので、ある意味仕方ないといえば仕方ないのだけど、
『約束の日』を読んだ後でないと読めないという攻略制限がついているため、実質的に最終ルート。
だとすると、ちょっと蛇足かなと感じました。「約束の日」で終わっておいた方が、読後感が良かったためです。


『つぐみ寮が壊された』背景シーンを見て、嫌な気持ちになったのは、良かったのか悪かったのか。
南栄生島の大切さは凛奈ルートの段階で実感できていましたが、つぐみ寮に関しては別段思い入れがないつもりだったのに、
いつの間にか思い入れが生まれていたのでしょう。
それ故の『嫌な気持ち』だったのであり、それに気がつけたことは自分の中では結構衝撃でした。


一方で、せっかく海己ルートでは存続しているつぐみ寮を、最後のルートで壊す必要はないじゃないかとも思いましたし、
航がおじいさんをひっぱりだして、南栄生島のリゾート化に待ったをかける、というシーンは正直白けてしまいました。


ラスト、合わせ石の相手が茜であったことはそれなりに感銘を受けましたが、まぁ他にいないよね、とも。


【総評】


想像はしていたが、案の定『叩き』成分が強くなってしまった。
冷静に書いてみれば、


・凛奈の入寮のいきさつ
・学園長たちのしょうもない陰謀
・つぐみ寮を守るべき大事な時期にも関わらず、飲酒三昧などのモラル低下(そもそもつぐみ寮は本当に必要か?)



と、物語の土台となる部分において、
ハァ?と感じる部分が多かったのは確か。


それでいて、不思議と読後感が悪くないのは、南栄生島をネバーランド、寮生たちをピーターパンに例えた、
『大人になる前の、楽しい共同生活』に、ある種の羨ましさと郷愁を感じることができたから。


羨ましい。僕もあんな生活がしたい。
そう思わされてしまったら、その時点で『萌えゲー』側の勝利、『粗探しプレイヤー(僕のことです)』側の敗北は決定したようなものでしょう。


粗に関しても、モラル低下は欠点と思いつつ、大人になる前の最後の期間、心残りのないよう「暴れ切った」感があって、
まぁいっかと思えてしまったり、
しょうもない陰謀を繰り返す学園長たちの存在は要らないだろうと思いつつ、「約束の日」での奈緒子の演説(「私たちはこの日まで寮を守りきった」みたいな部分)を読むと、
しょーもない敵がいたからこそ思い出が輝いたのかもと思えてしまったり、
そんな感じで、何となく許せてしまうのも事実。


終わってみれば、いろいろ言いたいことが多いけれど、プレイして良かったなという結論に落ち着いてしまいました。


あやかしびと クリア(重バレあり)

シナリオ120/150 キャラ115/150 絵75/100 音90/100 システムその他80/100 お気に入り35/50

合計515/650(39位/150ゲームくらい)。 ESにつける点数 84。



このゲームでとりわけ感心したのが、キャラ立ての巧さ。
メインキャラはもちろんだが、やられ役といってもいい光念兄弟や、『おっちゃん』、鴉など、
ほとんどのサブキャラを好きになることができたのは、それだけキャラがしっかり描きこまれていたということ。
あれだけ多くのキャラクターがいながら、捨てキャラがほぼおらず、誰もが一度は輝いている。

虎太郎先生の闘う理由(「飼い猫」のエピソード)や、おっちゃんの娘のエピソードなど、
簡潔でありながら、見事に読者の同情を引き寄せる手腕は、さすがと言える。


個人的には、九鬼先生、光念兄弟が一番好きだが(男ばっかりw)、女性陣も、
ラストルートで素晴らしい健闘を見せた美羽やさくら、ヒロインで言うなら刀子や薫など、
皆、愛着を持つことができた。
名前を挙げなかったキャラにしても、(ヤタガラスがちとウザかったが)嫌いなキャラは、敵味方問わずいない。


癇癪持ちで独占欲が強いすずは、いつもの僕ならかなりウザさを感じるタイプのキャラなのだが、
回想シーンで、双七との強い結びつきをあれほど見せられては、大目に見ざるを得ないところ。


【各ヒロインシナリオについて】

個人的に刀子ルートがやや劣るように感じた。
このゲームで欠点と感じた部分は2つだけ。
そのうちの一つが、刀子ルート前半のストーカー騒動である。

この『あやかしびと』というゲームは、全編を通して、とにかく丁寧に物語を作っている点に好感を抱いたのだが、
このストーカー騒動は、ライター東出氏らしからぬミスだったように思う。


すずの言霊を、ストーカー女に憑かせれば一発で解決することなのに、何故そうしないのか、
正直理解に苦しんだ。
もしどうしてもあの展開がやりたいならば、ストーカー女は耳が不自由という設定にするとか
(すずルートでこのネタは使われてしまってはいたが)、何かしらやりようはあったはずだ。


付け加えていうなら、個人的にストーカー被害を間近で見たことがある経験上、
『恋人の振りをする』など下策も下策。
むしろ、激昂するだけというのは火を見るよりも明らかだった。


ストーカー女の改心も、あんな簡単に改心するような人はストーカーにはならないと
思わずにはいられなかったが、いつまでもあのエピソードを続けられる方が苦痛だったので、
まぁそれは良しとしたい。


続けて言えば、東出氏は恋愛を描けないライターなのかな、とも感じた。
トーニャルートに続いてこのルートをプレイしたのだが、
『恋人の振りをしていたら、いつの間にか好きになっちゃった』というネタを
2回も見せられるとは思わなかった。


余談だが、せっかく『一つの身体を二人で使う』という美味しいキャラなのだから、
エッチシーンの最中に変身してしまった(アッー)とか、
「何を言っているのか、わからねぇだろうが、刀子さんと手をつないで歩いたと思ったら、いつのまにか会長と手を繋いで歩いていた」
みたいな展開をちょっと期待した。
完全に俺得で、ブーイングの方が明らかに多そうなので、無理に入れろとは言わないが、
せっかく美味しい設定なので、間違った方向に期待しすぎてしまった。


薫ルートは、『再会した薫と双七が、ちっとも恋人同士に見えない』という点を除いては
特に不満のない出来。
敵地での3Pが、一部識者の不評を買っているようだが、選択肢を間違えたせいか
僕の双七君は3Pなどという、不埒でうらやましい行為は残念ながら行なってくれなかった。
後で、シーン回収にて拝見したが、このようにワンクッション置いていたので特に不満は抱かなかった。
おっぱいでいっちゃう薫さんエロいです。
ただ、零奈さんの喘ぎ声がちとわざとらしすぎやしませんかね。
 

このシーンに限ったことではないが、『あやかしびと』は意外にエロかった。
3Pも多いし、結構満足しました。はい。


トーニャルートは、本線から外れた話のため、あまり重きを置くのも個人的にはどうかと思っている。
どちらかというと、ifルートな感じ。
ただ、『手紙』のエピソードではしんみりと泣けたし、九鬼先生とのバトルも割と熱かったし、
高品質なのは間違いない。



ラストのすずルートは、前半85~90点、ラストバトルが-10点で、結局は75~80点という感じ。


ラストバトルに至るまでの、すずルートの流れはかなり良かったように思う。
九鬼先生VS美羽、バイクで疾走しながらのバトル、刀子VS一兵衛と、
3つも心を燃えたたせてくれるシーンがあった。

この「あやかしびと」が『燃えゲー』なのかどうかはわからないが、
燃えた回数だけでいうなら、すずルートの3回がトップなのである。


ただラストバトルは……策士策に溺れるというか、奇をてらいすぎて外してしまったな、と。

1、強さをインフレさせすぎたことにより、今までのようにきちんと文章で表現しきれなかった。
2、ラストバトル故、敢えて違いを生み出すべく、変わった表現法に挑戦したかった。


1なのか2なのか、それとも他の理由かはわかりませんが、ドラクエのウィンドウのような
(マーニャはメラゾーマを唱えた。おにこんぼうに182のダメージ。のような)文章を延々読んでも仕方がないし、
ラストバトル終盤に、文章がオートになるに至っては、そもそも早すぎてまともに読めないし。


本来、物語における文章とは、書かれ、そこに秘められた意味を読みこんでいくものですが、
読み手の時間を調節するために書かれることもあります。
長々とした描写を敢えて入れることにより、読み手をじらしてみたりと、そういう用途にも使うことができるのです。


してみると、ラストバトルでの表現方法は、文章自体を記号とし、
とにかく『クリックさせる→クリックをし、文字が読まれている間、バトルが行なわれている』という以上の意味はなかったように思います。


もはや、ヒトでなくなってしまった九鬼と双七。
物語の機能として、二人が、『人間であることを、辞める』ことは、『あやかしびと』というゲームに必要不可欠ではありますが、
バトルによって交わされる熱い想いなどもなく、単なる力比べと化したあのバトルは、どうしても赴きに欠ける。


しかし、ラストバトルでもあることだし、あまりに呆気なく勝負をつけてしまうと、今まで読んでくれた読者に申し訳ない。
そんなジレンマに陥ったライターが、
「とにかく派手な戦いを、長時間やってたよ!」ということをアピールするために、苦し紛れに紡いだ文章。

まぁ、不評でも仕方はないかなと。


そんなわけで、ラストバトルには不満がありましたが、それを差し引いても
面白かった、満足した、と言えるゲームだったと思います。




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