2014年01月

フィリップ・ホセ・ファーマー「恋人たち」読了(バレあり)

評価はA。

2014年に入って最初のA評価です。

フィリップ・ホセ・ファーマーは「階層宇宙シリーズ」と「リバーワールドシリーズ」を読みましたが、
特に後者は正直あまり面白いと思いませんでした 。
なので、本書はあまり期待せず読んでみたんですが……いやぁ、良かったです。


厳格な宗教国家と化した未来の地球人ハルが、窮屈な地球を抜け出して違う星に行き、そこで一人の女性と恋をします。
文化の違いに戸惑いながらも絆を深めていった二人でしたが、その習慣の違いから、二人は悲しい別れを迎えてしまうのでした。


というストーリーです。
落涙、までは行かないまでもかなりジーンときました。


特に最後の行の
「ジャネット! ジャネット! きみが打ち明けてくれるくらい、ぼくを愛してくれてさえいたら……」 
はかなり破壊力がありましたね。


SF要素についても真面目に描かれていて、未来の地球の宗教、文化、言語、異星人の文化、特性などが
リアリティをもって描写されています。
そのうえ、「恋愛小説」の邪魔をせず、奥深くはあるもののあくまで背景要素として機能させている辺りが巧いです。


「セックスをテーマに扱うのがタブー」だった、当時のSF界では毀誉褒貶あった作品だそうですが、
全然エロくもなければ、下品でもありません。
欲情をそそるような物語でもないのにこれがタブー扱いとは、当時はずいぶんお固かったんだなぁと思いました。


欠点は、280ページというボリュームの薄さゆえ、恋愛描写が少しあっさりしていることでしょうか。
十分感情移入できたので、これで良いとも思いますが、もう少し二人の楽しかった思い出を描いてくれたら、
多分マジ泣きしたと思います。



忠臣蔵46+1感想(重バレあり)

まずは点数から。

シナリオ 125/150 キャラ 120/150 絵 75/100 音 80/100 
その他システム80/100  印象  +40/50   合計 520/650 (34位/170ゲームくらい中)

ESにつける点 85点。


【前置き】

本感想で使用する単語について、
便宜上「世に流布している忠臣蔵ストーリー」を、『リアル忠臣蔵』、または『忠臣蔵ストーリー』。
「歴史上実際にあった赤穂事件」を、『リアル赤穂事件』。
「本作の舞台となる、内蔵助たちが女性になった忠臣蔵世界」を、『女体化忠臣蔵』と書かせていただきます。
よろしくお願いします。


【前置き2】

本作を手に取るまでは、「忠臣蔵ストーリー」のことはほとんど知らず、大石内蔵助も名前は聞いたこともある、というレベルでした。
一応、本感想で書いたことは自分なりに調べたことですが、間違いも色々あるかもしれません。
「リアル忠臣蔵ファン」の方も、いらっしゃるかと思いますが、
どうしても許せない誤りはご指摘を、笑って許せる誤りはご寛恕のほど、よろしくお願いします。


では、本題に移ります。



【内蔵助ルートについて】

学もなければ剣の腕もさほどなく江戸時代の知識もない直刃が、内蔵助の多大な助力を受けながら、力をつけていく第一章。
詳しくないので違ったらごめんなさいなのですが、おおよそ「忠臣蔵ストーリー」をそのままなぞりつつ、
エロゲ的な楽しい会話、イベントを入れていったような印象を受けました。
十二分に面白かったんですが、特に言及したいこともないですね。
内蔵助は本作中最も頭が良く、剣の腕も安兵衛並で、懐も深く、なおかつ楽しい、素敵なキャラでした。
恋愛相手という目では見られなかったのですが、人間としてこの内蔵助に好感を持ちました。


【安兵衛ルートについて】

前ルートでの知識・能力を受け継いで再スタートする、第二章。
ループものの王道ではありますが、こういう展開は大好きです。
赤穂浪士の討ち入りを防ごうと頑張る直刃ですが、どうも空回り気味で、ちっともうまくいきません。
ですが、郡兵衛や小平太、孫太夫といったサブキャラクターたちや、デレた後の安兵衛の可愛さもあり、とても楽しめたルートでした。


【主税ルートについて】

自棄を起こし、歴史にかかわらないことを決めたにも関わらず、主税に一目惚れされてしまう第三章。
僕が一番気に入ったのはこのルートでした。
完全にデレデレの主税はウザ可愛い(ただし、デレ安兵衛には負ける。異論は認める)し、内蔵助、茅野さん、それにキモヲタ様までも現れる、
ほのぼのした日常シーンがとにかく楽しかったです。
中盤で登場する新八郎も可愛い中に、いつ斬られるかわからない怖さがあってスリリングでしたし、
ラスト、現代に戻った直刃の前で姿を現す相合傘などは、わかっていても感動させられました。
余韻の残る最高のエンディングで、ここで終わっても良かったんじゃないかなぁと今でも思います。

真面目ではあるものの視野が狭い主税が、内蔵助に感化され、少しずつ器を広げていく成長物語としても面白く、
恋愛モノとしてもとても楽しく読めました。


【一魅ルートについて】

主税ルートから約1年。直刃の元に現れた一学そっくりの女、一魅と共にまたもやタイムスリップする第四章。
吉良側からの『赤穂事件』を語る一魅の歴史観を拝聴するルートとなります。
このルートの捉え方は難しいです。
最も出来が悪かったと思うのですが、色々語りたいこともありますし、「なければ良かった」と切って捨てるのも気が引けるのです。


『忠臣蔵』というコンテンツを「真面目に」考える上で、やはり吉良側から見た歴史観は避けて通れないと思います。
大石側の一方的な美談とせず、こういった視点を取り入れた制作者の志を、僕はむしろ好意的に受け止めました。
ですが、前章のラストが作品最後を飾るに相応しい素晴らしいものだったこと、
そもそもの批判:擁護が噛み合っておらず議論にすらなっていないのに、何故か直刃と一魅の二人は気づかないこと、
議論を除いた部分で、四章の中心となる橋本兄妹に魅力が欠けていることなどから、面白い章だったとは到底言えませんでした。


もっとも、『噛み合わない不毛な議論の典型例』として、反面教師のように観るぶんには面白いかもしれません。


議論がズレた最大の原因は、言ってはなんですが、直刃の頭の悪さにあると思います。
主税ルート後、一年間の現代生活で彼は一体何をしていたのでしょうか。
赤穂浪士、忠臣蔵について読んだような素振りがありますが、かなり疑わしい感じです。


「ぐぐれ」ではないですが、赤穂浪士≠正義の考え方は、インターネットを少しでも使えばある程度の情報に接することができます。
それこそ、忠臣蔵の「ちゅ」の字も知らなかった僕が、このゲームをプレイする際に興味を持ってさっと調べただけでも、一魅の発言の7割方は頷ける内容でした。
だと言うのに、一魅の「赤穂浪士叩き」にほとんど耳を傾けず、まず反発から入る直刃の議論スタイルはあまりに度量が狭すぎるというか。
今まで赤穂浪士達と素晴らしい時間を過ごしてきたのはわかりますが、「うちの子に限って(いじめなんてしない)」といったバカ親のような態度はやめて、
ニュートラルな気持ちで聞くべきでしょう。
そうすれば、一魅が叩いているのは、彼の大好きな『女体化忠臣蔵』の赤穂浪士ではなく、『リアル赤穂事件』の赤穂浪士であることがすぐに解ったはずです。


さて、一魅の方にも問題点は多々あります。
まず、態度が悪すぎます。
『赤穂浪士』に対する尽きせぬ怒りはわかりますが、無駄に挑発的な言動があったり、そもそもの動機をずっと隠していたりと、
話を聞いてもらう態度ではありません。
何故彼女が赤穂浪士を恨んでいるのかを話せば、直刃も同情的になったかもしれません。
また、序盤は赤穂浪士の姿を知らない一魅に責任はありませんが、山吉新八郎や色部らに出会った後では、
ここが『リアル赤穂事件』の赤穂ではなく、『女体化忠臣蔵』というパラレルワールドであることは解ったはずです。


一魅は必死に『リアル赤穂事件』の赤穂藩士を叩き、直刃は『女体化忠臣蔵』の赤穂藩士のイメージのままで『リアル赤穂藩士』を擁護しようとするから、
わけのわからない不毛な議論になってしまうのです。
まず落ち着いて、お互いの前提条件を開示しあう。そして、話し手(一魅)は聞き手に誠意をこめて話し、聞き手は話し手の言葉を(反発から入らず)冷静に聞く。
これができて初めて、有意義な議論と言えると思います。


ちなみに、『女体化忠臣蔵世界』は、直刃たちの『作中現代』に繋がる過去ではなく、全くのパラレルワールドです。
なぜなら
「私は清水一学と、鶴姫(吉良の娘)の子孫だ」
という一魅の台詞があるからです。
『女体化忠臣蔵』世界では清水一学は当然『女』なので、鶴姫との間に子供が生まれるわけがありません。


ですので、『異世界の赤穂』に迷い込んだ一魅が『現実の赤穂』についてぶっ叩き、『異世界の赤穂』しか知らない直刃が『現実の赤穂』を擁護するという
ある種滑稽な論争が繰り広げられたのが4章ということになります。


……不毛すぎて、正直読んでいて辛かったです。


【余談】

ここはゲームを離れた余談です。そんなのは読みたくないという方は、スクロールしてください。


本作で描かれる「無責任に仇討ちをけしかける町人」たちの姿に対し、個人的に強い嫌悪を覚えました。
自らが命を捨てるわけではない安全地帯から、他人の命についてあれこれ口を挟むとは、一体何様のつもりなのでしょうか。
実際、『忠臣蔵ストーリー』がもてはやされ、赤穂浪士たちの人気が上がる一方で、脱盟した者への迫害があったようです。
これなども言語道断で、素晴らしい(?)行いをした者への賞賛はともかく、
それを裏返して素晴らしい行いができなかった者に対し、何故そこまで辛辣になれるのでしょう。
脱盟した藩士たちに対してこの仕打ちですので、詳しくは知りませんが、吉良家への迫害も推して知るべしです。
「忠臣蔵」という物語は感動的かもしれませんが、『現実(赤穂事件)と虚構(忠臣蔵ストーリー)の区別もつかない』愚昧な人々に与える影響を考えると、実名なぶん、相当有害な物語かもしれないと感じました。
それを考えると、一魅の言い分に全く耳を傾けない直刃の姿勢は、僕には許せませんでした。
たとえ論点がズレていたとしても、彼女の言葉には耳を傾けるべきだと思うのです。


実際のところ、僕が調べた限りでは浅野内匠頭と吉良上野介の間で起こった事件は『よくわからない』というのが本当のようです。
浅野が吉良に斬りかかった。その際に「遺恨がある」と口にした。
ということ以外はよくわかっていないと。
吉良が浅野をいじめていたという話も諸説色々あって眉唾のようです。
浅野の人柄が「短気で女好き」だったというのは、赤穂事件以前の資料に乗っているので割と信ぴょう性が高いとして、
吉良は実は名君だった、いややっぱり嫌な奴だった、というどちらの説も結局はよくわからない、と。


吉良が浅野をいじめまくっていたとすれば、それこそ『キチガイ上司』にいびられまくったわけですから、「このクソ上司がぁぁぁ!!」とご乱心して、
その後46人の家臣が討ち入り、殿の仇をとる物語を読み、「吉良wwwwざまぁぁぁぁwww よくやったぞ赤穂浪士!! 亡き主のためにさすがやで!」と溜飲が下がる。
そういう単純な話になるわけですね。 
ですが、いじめがあったかどうかすら解らないのが実際。仮になかったならば、まさに一魅の言うとおりで「勝手に斬りかかった浅野」が一方的に悪く、
逆恨みして討ち入りするなど、話にならない暴挙でしょう。
実際、浅野がどのようにいじめられていたのかを、大石は書き記していないようです。
……以上のことを考えると、『忠臣蔵ストーリー』にはあまり良い印象はありません。
ただ、見もしないで言うのもなんなので、この機会に一度、ドラマなり小説なりで、この有名なコンテンツに触れてみたいと考えています。


【右衛門七ルートについて】

最終ルートは、矢頭家の生活を描く前半、浅右衛門の元での右衛門七の成長を描く中盤、事件の黒幕であるカグヤと闘う後半に分けられます。
前半は正直面白くなかったです。他ルートで見る限り、小夜結構可愛いなーと思っていたんですが、このルートで個人的に株が下がりました。
浅右衛門のところに行く中盤は割と面白かったです。初めは内蔵助や安兵衛に教わっていた彼が、主税ルートあたりから教える側に回ったのも興味深いですね。


最終決戦に関しては、面白いとは言えないのですが、仕方なかったのかもしれません。
バトルものによくある、強さのインフレが必ずしもおもしろさに繋がるわけではない、という陥穽にはまったような感じです。
カグヤの動機も、前ルートの一魅と比べても共感しにくい理由で、ラスボスとしての魅力に欠けました。
右衛門七のプッシュが弱いのもよくわからないところで、Hのあるヒロインでありながら、見せ場を小夜と折半してしまってどうにも印象が弱いです。
カグヤの術で蘇る赤穂浪士は内蔵助・安兵衛・主税と順当に大将格の武将が選ばれたにも関わらず、最後は右衛門七ではなく何故か数右衛門……。
右衛門七のショボさを物語る一幕ではないでしょうか。


余談ですが、最終決戦前、赤穂浪士の一行が現代で繰り広げたであろう珍エピソードも見てみたかったですね。
 

【敢えて設定されている(と思われる)ツッコミどころについて】


本作は、バカゲーの類ではないにも関わらず、クスリとさせられるツッコミどころが数多くありました。


恐らく誰もがツッコミたい気持ちにかられるのが、内蔵助の変身でしょう。
昼行灯→マジモードで声が変わるのはいいとして、何故スタイルまで変わるんだよwと。
内蔵助繋がりでいうなら、彼女の年齢にもツッコミたいところですが、ここはぐっと我慢するとします。


赤穂藩士のほとんどが女体化して華やかになっているのに対し、吉良家家人がほぼ全員むさ苦しい男揃いなのも地味に面白いですし、
吉良上野介が若返るのも割とツボでした。


最終決戦については既に一部書きましたが、『赤穂藩士の亡霊を蘇らせる』と豪語したカグヤさんが、実際には『大将格の4人』しか蘇らせなかった事も、
「内蔵助・安兵衛・主税」と攻略ヒロインの亡霊を呼び寄せておきながら、最後が何故か「数右衛門」なことも、制作者がボケをかましたのかどうかがわからないところも含めて、
地味に笑えました。


本作のどこかほのぼのとした魅力を作り出しているのは、案外こういう部分なのかもしれません。


【まとめ】

批評空間の2013年上位作ということですが、評判に違わぬ力作だと思いました。
3章のラストがあまりに素晴らしかったため、そこで終わっておれば~という気持ちもありますが、
4章は4章で(娯楽的には面白くなかったけど)吉良側から見た歴史観を出してきた作者の姿勢自体には好感が持てますし、
ラスボスのショボい5章も含め、最後まで楽しんで読むことができました。

何より、今までまるで知らなかった「忠臣蔵」に興味を持つこともでき、プレイして良かったと思っています。


【最後に】

内蔵助×主税、一学×新六、新六×右衛門七、内蔵助×右衛門七と、レズっぽい絡みが4つもあったのに
エロシーンが1つもないなんてあんまりですよ…… くすん。

2013年に読んだ本ベスト10&ゲームベスト10

新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


今年は新年から忙しく疲れ気味だったせいか、長い文章を書く元気がなかなか湧かず、
すっかり遅くなってしまいました。

時期を逸した感もありますが、遅ればせながら、2013年に読んだ本&プレイしたゲームのベスト10を発表させていただきます。
(2013年発売ではなく、あくまで僕が2013年に触れた作品のベスト10です)



★読書部門

10位 度胸/ディック・フランシス

筆舌に尽くしがたいほどの邪悪さを誇る本作の悪役は、強く記憶に焼きついている。
好きな作品とは言い難いが、忘れがたい作品。


9位 特別料理/スタンリー・エリン

傑出した作品があるわけではないが、どの短編も水準を超える面白さ。トータルバランスに優れた短編集。


8位 ウィチャリー家の女/ロス・マクドナルド

家族間の心のすれ違いや孤独。家庭の悲しみを描き続けるロス・マクドナルドの代表作。
中盤はやや冗長だが、ロスマクを読むならこの作品と「さむけ」の2作は抑えておきたい。


7位 敵手/ディック・フランシス

10位に挙げた「度胸」が『嫌悪』を催す忘れられない作品ならば、本作は安心して読めるエンタメ作品。
敵とのバトルだけでなく、白血病の少女との心の交流も見所。


6位 死にゆく者へ祈りを/ジャック・ヒギンズ

全編に漂う哀愁が印象深い、ヒギンズ作品を6位に。罪を背負った暗殺者の救済を描いた名作です。


5位 クワイヤボーイズ/ジョゼフ・ウォンボー

事件解決の様子を描いた警察ミステリではなく、一人ひとりの人間性に焦点を当て、等身大の警察官を描いた作品。悲喜こもごもの警察官生活に、どこか切なさを感じる。


4位 動く指/アガサ・クリスティ

登場人物が実に生き生きと描かれているキャラクターミステリーの良作。狭い村における複雑な人間関係、ネガティブなやりとりや暖かな交流も含め、とにかく人の『心』を中心に組み立てられたミステリ作品。


3位 崩れゆく絆/チヌア・アチェベ

ブラックアフリカの村が、西欧キリスト社会に飲み込まれるまでを描く作品。西欧を一方的な「悪」として描くのではなく、様々に考えさせられる内容になっている。あまり知ることのなかった現地文化を知ることができたのも面白かった。


2位 葬儀を終えて/アガサ・クリスティ

一族をめぐる殺人ミステリは王道ではあるが、だからこそ面白い。クリスティらしく、一人ひとりの描き分けもできており、トリックにも驚かされる。設定良し・キャラクター良し・謎良しと、欠けたところのないミステリの傑作。



1位 秒速5センチメートル/新海誠

その週の仕事が手につかなかったほどに心を抉られた恋愛小説。未練がましい失恋を美しく描いたストーリーは、共感できる人にとっては、とことん共感でき、バカらしく感じる人にとっては、まるで印象に残らない作品だと思われる。


 ★ゲーム編


10位 リアル妹がいる大泉くんの場合

小品ではありますが、一秒たりとも飽きることなく楽しめたという意味で、画期的だったノベルゲーム。
キャラゲーとしてとても魅力的なヒロインたちに、テキストも面白く、気軽にプレイできるお薦めゲーム。

9位 鬼畜王ランス

往年の名作。今プレイしても、十分楽しいです。2~30時間はどっぷりハマれました!


8位 つよきす3学期

二番煎じならぬ三番煎じではありますが、実は初代「つよきす」よりも好きです。
個性溢れるヒロインを傍若無人に描くのではなく、性格に丸みを加え、人間的な成長を描いてくれたのが良かったです。

7位 スカーレット

「非現実」に憧れる一人の少年が、非現実の世界へと旅立ち、現実の世界へと還ってくるまでの物語。
ラストの邂逅が切ないです。

6位 恋ではなく

エロゲには珍しい「男女関係」を描いた力作。プレイ中はストレスが溜まったけれど、印象に残りました。

5位 黄昏のシンセミア

田舎を舞台にした癒し系エロゲー。夏になったらまた御奈神村に帰りたい。
まるでもう一つ故郷を得たような、素敵なホームステイ(?)体験でした。

4位 ランスクエストマグナム

去年もっとも長時間プレイしまくったゲーム。モルルンという設定もなかなかよく考えられており、
気づけばレベル上げ廃人と化していました。

3位 StarTrain

思春期の感性が光る青春系エロゲ。自分自身との対話と、他者との関わりを描いた良作でした。
葛藤を深めつつ、前向きに生きていく。こういうストーリーは凄く好きですね。

2位 紫影のソナーニル

精緻に作られたプロットに感動を覚える良作。一つひとつの設定・展開が実によく考えて作られており、
プレイ後の読後感の良さも相まって、「ゲームをクリアするのが惜しい」とまで思いました。

1位 ひまわり

過去編からが本番。
高校生主人公を差し置いて、アクアと大吾のストーリーに最も感動を覚えたのは良いのか悪いのかわかりませんが、大人ならではの深みと、未だ眠る少年の心が絶妙にブレンドされた大吾というキャラクターが強く心に残りました。



と、以上が2013年の読書&ゲームのベスト10ということになります。 
 

ちなみに、『ノミネート』に「俺たちに翼はない」を含めていたのですが、2012年ベストゲームの記事の4位に
書いていたことが発覚したため、2013年記事には含めませんでした。
そのこと、ご了承ください。

(実際には、「俺つば」は2012年の年末からプレイを始め、2013年の正月にクリアしています) 


こうしてみると、「シュタゲ」、「ユースティア」に「ef」がトップ3、「俺つば」が4位だった2012年版に比べると、
ちょっと落ちる感じのランキングになりました。
1位の「ひまわり」も、去年のランキングだと5位くらいになってしまいます。


もっとも、(しばらくエロゲを休んでいて、復帰直後から話題作をプレイしまくった)2012年がおかしかっただけで、
これが普通の……というよりこれでも恵まれたランキングなのかな、と思わなくもありません。


2014年も、読書・ゲームともに励んでいきたいと思いますので、よろしくお願いします! 

るいは智をよぶ 感想(バレあり)

まずは点数から。

シナリオ 110/150 キャラ 110/150 絵70/100 音 75/100 その他システムなど 100/100
印象 +30/50  合計 495/650  

ESにつける点数 81    69位/160ゲームくらい中(かな?)


ガールズトークが楽しく雰囲気の良い、「友達ゲー」。
エロゲ主人公屈指の可愛さを誇る智の魅力もあって、百合ゲーとして存分に楽しめた。
反面、シナリオはややパンチ不足。ハズレ者たちの同盟にしては悲壮感に欠け、鬱屈もしておらず皆が皆良い子ばかり。
単なる仲良し集団の域を出ないように思えたのが残念だった。



☆女装主人公「智」のかわいさと、ガールズトーク

女装主人公モノというジャンルは「おとぼく」くらいしかプレイしたことがないのですが、女顔の主人公はエロゲによく登場します。
後者に関しては本当に女顔というだけですし、前者に関しても中身はバリバリの男で、(それが良いという方もいるかと思いますが)
個人的には何か違和感がありました。
「お姉さますてきー」と慕われまくるその姿は、イケメン主人公がハーレムを形成している様子と何ら変わらないように思えたのです。


その点、本作の主人公の「智」は中身が完全に女の子だったため、男1:女5という人数構成にありがちなハーレム的嫌らしさ
(注:ハーレムものが嫌いなわけではありません)は欠片もなく、仲良し女性6人組の楽しいトークを堪能することができました。
(本当は男だけど)女の子同士の友情、という感じがしてとても居心地が良かったです。


智を男の子にしたのは、SEXシーンを入れたいためだけなんじゃないかとすら思います。
でもSEXシーンでも智はどう見ても女の子なので、これはもう「ふたなり」だと思って楽しみました。
Hシーンの描写が濃いわけではありませんが、「抜きゲー」以外で「ふたなり」が出てくる作品はほとんどないこともあり、
割と実用もできたのは嬉しい誤算でした。


☆魅力的な5人の「友達」

(めちゃくちゃ気に入っているヒロインというのもいないんですが)、ヒロイン達は誰もが欠点を抱えながらも、
「友達」として魅力的なメンバーで、ストレスを感じることなく楽しめたのも良かったですね。
ただ一方で、『呪われた者たち――ここでしか仲間を作れない人の群れ――』という境遇を考えるなら、
もっと悲壮感のようなものを。
ここだけが楽園であり、他の世界では生きられないと感じられるような雰囲気を、もっと出してほしかったです。
終始和気藹々とした彼女たちからは、「世界で唯一の仲間たち」という印象を受けることはなく、どこにでもいる仲良しグループに留まっているような感覚を受けました。


『呪い』自体も、もちろん大変なハンディキャップではありますが、現実世界ではもっと悲惨なハンディを抱えて生まれてくる障害者の方も大勢いるわけで、そういう方たちに比べると「特殊能力」が備わっているぶん、「呪われている」とまでは言えないのでは?
と思います。


余談ですが、「空気読め」と再三伊予が言われるシーンがありますが、正直に言えばこの面子は智を除くと全員が空気を読めてない気がします。
こよりあたりはかなりマシかなとは思いますが、それこそ茜子自身は空気を読む気すらないじゃないですかw


☆シナリオについて

一番気に入ったのは花鶏シナリオでした。
花鶏がどんどん孤立していく展開は、彼女が抱える「呪い」も相俟ってとても良かったと思います。
また、こよりシナリオで明かされる「幼馴染」という設定は、共通ルートでさりげなく伏線が張られていることに感心しました。

ただ、それ以外のシナリオはまずまず悪くないものの、可も不可もなかったかなと思います。
特に茜子ルートはラストなのだから、もう少し盛り上げてほしかったなと。


原因として考えられるのは、三宅・小夜里&社長、恵(恵も一応立ち位置は悪役だと思う)と、悪役が割とショボかったこと。
三宅は良い人そうなので、もっとうまくだましてくれるのかと思ったんですが、どのルートでもアッサリ本性がばれてしまいます(もしくは死んでしまう)し、
社長などは典型的な小物すぎて失笑してしまうレベル。

恵にしても、
「自分の命を生きながらえるために、社会のクズを殺す恵」を許容するのはまだしも、
「正義の味方」としてある程度積極的に肯定するようなシーンがあるのも、少々興ざめでした。


☆総評

一言感想でも書きましたが、雰囲気の良い百合ゲーというか、女友達同士の軽妙で楽しい会話を楽しむゲームとして、
一定の評価はできると思います。
シナリオも特段悪くはなく、むしろ良い方の部類ではあるのですが、やはりパンチ力不足が気になりました。
「泣いた」「感動した」「熱くなった」など、感情を強く揺さぶられたシーンが一度もなかったんですよね。


個人的には、もっと「呪われた社会」に対して、牙を剥いてほしかったな。
仲間だけを特別視して、それ以外の者にもっと排他的になっても良かったんじゃないかな、と。
良い子たち、すぎた気がします。


最後に。
高○生にもなって、図書館で騒ぐような人間は正直軽蔑します。
まぁこのゲームに関しては、雰囲気も良いしそんなことで減点はしませんが……場所は弁えてください。
図書館ヘビーユーザーからのお願いでした。

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