★イントロダクション
1冊1冊の感想はその都度書いているのだけれど、もっと大きな括り。
作家全体についてはブログで書いたことがないので、書いてみようと思います。
いつ挫折するかわかりませんが……。
取り上げる作家については、
①僕が好きな作家
②10作以上読んだ作家
③直近半年以内に読む予定のない作家
④未読の方のために、可能な限りネタバレを避けつつ面白さを伝える
というスタンスでやっていきます。
②については、本当は「全著書の8割を読んだ作家」くらいにハードルを上げるべきかなとも思うんですが、
まぁ好き勝手に書くのがブログの醍醐味でもあるわけだし、いいかなと。
それでは本文開始です。
★「トリック派」と「動機派」。「トリック」も疎かにしないが、「動機派」に特にオススメのクリスティ。
第一回はアガサ・クリスティ。
海外古典ミステリで抑えておくべき作家と言えば、アガサ・クリスティは外せないと思います。
また、クリスティ作品は「読み易い」ものが多く、更にほとんどの作品が文庫化されているため「購入しやすい」のも魅力です。
海外ドラマにもなっており、しかもこのドラマが割と良い出来なため、そちらから入ることもできる。そんな敷居の低さもポイントでしょうか。
さて、ミステリ作品を読む際に、皆さんは何を最重要視しますか?
不可能犯罪を可能にする大胆不敵なトリックを解明すること?
それとも、犯人の心情と、そこに流れる人間ドラマ?
個人的な好みを言えば、僕は後者です。
どんなに凄いトリックを見せられても、肝心の人間が血の通わない、盤上の駒のようなキャラクターであるなら、
真剣に身を入れて読むことができないのです。
お堅い人に怒られてしまいそうですが、僕のミステリの原点は漫画「金田一少年の事件簿」ですので、
やっぱりこう、登場人物は美男美女……とは言わなくても、色々とメロドラマがあったり、
涙ながらの犯人自白シーンがあったりね、してほしいんですよw
そんな僕が、過去のミステリ作家を読みますと……他の作家の話は避けますが、有名どころを何人読んでも
イマイチピンと来ませんでした。
どの作家さんも、『トリック』の方に比重が傾きすぎていて、『人物』が蔑ろにされている気がしたのです。
犯人が解った。この犯行を犯せたのはこいつしかいない。おしまい。みたいなね。
アガサ・クリスティに最初に触れたのは「スタイルズ荘の怪事件」。
そのあと、「七つのダイアル」とか「茶色の服の男」とかを読んだんですが(後者はそもそもミステリではない)、
どうもピンと来ず。
決定的だったのは「アクロイド殺し」。
この作品、確かに名作だと思います。トリックを知らない未読の方には是非読んでいただきたい作品です。
でも、あくまで『人間ドラマ』として読んでみて、面白いですかね?
という感じのクリスティだったんですが、「春にして君を離れ」という作品を読んでから、少し見方が変わりました。
この作品の主人公は、すんごい嫌な奴です。嫌な奴なんですが、その心理描写がものすごくリアルなんです。
あ、こういうのも書ける作家さんなんだ、と。
そして次に読んだ「ナイルに死す」で、ガツンと心を持って行かれました。
あ、これ金田一(漫画)だww と。
なんかこう書くとバカにしてるみたいですけど、実に下世話な事件でね。面白いんです。
主人公の男性は、最近結婚したばかり。
ところが、別れたはずの元カノがストーキングをしてきてヤバいと。
元カノは主人公の男性に未練たっぷりでして、もうね、女の戦いが良いんですよ!
思わず(ストーカーなのに)元カノキャラを応援しちゃったりねw
★クリスティ未体験の方に薦めるならば・・・
僕ならば、「オリエント急行の殺人」を薦めます。
オリエント急行の中で起こった殺人。その乗客たちはどの人物も、一癖も二癖もありそうな魅力的な方々ばかり。
この作品は『トリック』と『人間ドラマ』が最も(←僕が読んだ中では)バランス良く高レベルで融合している作品だと思います。
逆に言えば、「オリエント急行」にピンと来なかったなら、クリスティを楽しむのはひょっとすると難しい?
極論ですが、そう言い切ってしまっていいくらい、この作品には彼女の良さがぎっしり詰まった名著だと思うのです。
「オリエント急行」と並んで、僕がお勧めするもう一つの傑作は「葬儀を終えて」です。
この作品も、『トリック』と『人間ドラマ』のレベルがとても高くて、素晴らしいですね。
こちらを真っ先に薦めても良いのですが、「オリエント」の方がより『派手』で『有名』なため、こちらは次点としました。
ですが、「派手さなんていらねぇ!正当派で、質実剛健な作品が読みたいんだ!」という通好みな方には、
こちらをお薦めしたいと思います。
★超有名な「そして誰もいなくなった」。確かに面白い、けれど……
訳のせいでしょうか。それとも主人公がピンと来なかったからでしょうか。
イマイチ読みやすくなかった思い出があるんですよね。
それでも魅力的な舞台演出に、つい読まされてしまい最後には満足したのですが、あまり「クリスティ初読者」
向きじゃないよなぁ、とは。
「人間ドラマ」も別に、ねぇ。
ミステリオールタイムベストなどでは、「アクロイド」と「そして誰も~」が上位に入ることが多いのですが、
初読者はむしろ「オリエント急行」だろ、といつも思っている次第であります。
★「トリック」派にはあまりお薦めできない、かもしれないクリスティ
僕は元来、犯人当ての出来ない人間です。
あまりにも当たらないので、犯人当てをしようなどとはそもそも思わないのです。
ですが・・・
クリスティ作品は、言うまでもなく古い作品群です。
その後、世に出た作品の中には、クリスティのトリックをパク……りとは言いませんが、
似たようなものも見受けられます。
上述した「金田一少年」にもありましたw
まぁそんなわけで、「予告殺人」、「ABC殺人事件」に関しては、このドブねずみ色の脳細胞を誇る
迷探偵feeメにも余裕で解ってしまったのであります。
今から「予告殺人」やら「ABC」やらを読んでも、「トリック」派の方には満足いただけない事でしょう。
それを言うなら、「トリック」派の方に確実に満足いただけそうな作品って、
僕が読んだ中では「葬儀を終えて」くらいしかないやん……
と、こんなわけで、「トリック」派の方にはあまりおすすめできないのがクリスティ作品、だと思っております。
全部で66(かな? wikipedia参照)の長編を書いたアガサ・クリスティのうち、ほんの4分の1、15作かその程度しか読んでいない僕の文章にどの程度信ぴょう性があるかは、何とも言えないところではありますが・・・。
★最後に言い忘れたことを・・・
文章の流れ上、紹介できなかったんでございますが、「動く指」。
これがまた、好きな作品なんだなぁ・・・。
狭い村の中の人間模様も非常に魅力的なんだけど、
みんなからバカにされていた地味娘が、突然美少女に大変身、とかね・・・。
ニヤニヤが止まらないじゃあ、ありませんか。
**2015年4月15日追記
今現在、クリスティの作品を再び一気読みしておりまして、またお気に入りの作品が増えてきています。
ここで書いた記事の内容自体は特に変更はないのですが、新しいお気に入り作品も絡めてもう少し文章を書きたいなぁと思ったり、思わなかったり。
読了したクリスティ作品 評価S~E
「オリエント急行の殺人」 S
「葬儀を終えて」 S
「終わりなき夜に生まれつく」 S
「鏡は横にひび割れて」 A+
「ポケットにライ麦を」 A+
「ナイルに死す」 A+
「そして誰もいなくなった」 A
「動く指」 A
「カーテン」 A
「メソポタミアの殺人」 A-
「カリブ海の秘密」 B
「春にして君を離れ」 B
「ABC殺人事件」 B
「予告殺人」 B
「ゼロ時間へ」 B
「パディントン発四時五十分」 B
「死との約束」 B
「愛国殺人」 C
「死との約束」 C
「アクロイド殺し」 C
「NかMか」 C
「三幕の殺人」 C
判定不能は、読んだことは間違いないが、「あまり面白くなかった」という記憶だけが残っている作品。
「 スタイルズ荘の怪事件」 判定不能
「七つのダイアル」 判定不能
「茶色の服の男」 判定不能
他に初期作品を2~3作品読んでいるはずですが、もはや忘却の彼方……
この記事をお読みになった方で、「feeは気に入るんじゃないか」と思われるクリスティ作品がありましたら、
コメント、拍手レスなど何でも構いませんので、お寄せください。
是非参考にさせていただきます!
1冊1冊の感想はその都度書いているのだけれど、もっと大きな括り。
作家全体についてはブログで書いたことがないので、書いてみようと思います。
いつ挫折するかわかりませんが……。
取り上げる作家については、
①僕が好きな作家
②10作以上読んだ作家
③直近半年以内に読む予定のない作家
④未読の方のために、可能な限りネタバレを避けつつ面白さを伝える
というスタンスでやっていきます。
②については、本当は「全著書の8割を読んだ作家」くらいにハードルを上げるべきかなとも思うんですが、
まぁ好き勝手に書くのがブログの醍醐味でもあるわけだし、いいかなと。
それでは本文開始です。
★「トリック派」と「動機派」。「トリック」も疎かにしないが、「動機派」に特にオススメのクリスティ。
第一回はアガサ・クリスティ。
海外古典ミステリで抑えておくべき作家と言えば、アガサ・クリスティは外せないと思います。
また、クリスティ作品は「読み易い」ものが多く、更にほとんどの作品が文庫化されているため「購入しやすい」のも魅力です。
海外ドラマにもなっており、しかもこのドラマが割と良い出来なため、そちらから入ることもできる。そんな敷居の低さもポイントでしょうか。
さて、ミステリ作品を読む際に、皆さんは何を最重要視しますか?
不可能犯罪を可能にする大胆不敵なトリックを解明すること?
それとも、犯人の心情と、そこに流れる人間ドラマ?
個人的な好みを言えば、僕は後者です。
どんなに凄いトリックを見せられても、肝心の人間が血の通わない、盤上の駒のようなキャラクターであるなら、
真剣に身を入れて読むことができないのです。
お堅い人に怒られてしまいそうですが、僕のミステリの原点は漫画「金田一少年の事件簿」ですので、
やっぱりこう、登場人物は美男美女……とは言わなくても、色々とメロドラマがあったり、
涙ながらの犯人自白シーンがあったりね、してほしいんですよw
そんな僕が、過去のミステリ作家を読みますと……他の作家の話は避けますが、有名どころを何人読んでも
イマイチピンと来ませんでした。
どの作家さんも、『トリック』の方に比重が傾きすぎていて、『人物』が蔑ろにされている気がしたのです。
犯人が解った。この犯行を犯せたのはこいつしかいない。おしまい。みたいなね。
アガサ・クリスティに最初に触れたのは「スタイルズ荘の怪事件」。
そのあと、「七つのダイアル」とか「茶色の服の男」とかを読んだんですが(後者はそもそもミステリではない)、
どうもピンと来ず。
決定的だったのは「アクロイド殺し」。
この作品、確かに名作だと思います。トリックを知らない未読の方には是非読んでいただきたい作品です。
でも、あくまで『人間ドラマ』として読んでみて、面白いですかね?
という感じのクリスティだったんですが、「春にして君を離れ」という作品を読んでから、少し見方が変わりました。
この作品の主人公は、すんごい嫌な奴です。嫌な奴なんですが、その心理描写がものすごくリアルなんです。
あ、こういうのも書ける作家さんなんだ、と。
そして次に読んだ「ナイルに死す」で、ガツンと心を持って行かれました。
あ、これ金田一(漫画)だww と。
なんかこう書くとバカにしてるみたいですけど、実に下世話な事件でね。面白いんです。
主人公の男性は、最近結婚したばかり。
ところが、別れたはずの元カノがストーキングをしてきてヤバいと。
元カノは主人公の男性に未練たっぷりでして、もうね、女の戦いが良いんですよ!
思わず(ストーカーなのに)元カノキャラを応援しちゃったりねw
★クリスティ未体験の方に薦めるならば・・・
僕ならば、「オリエント急行の殺人」を薦めます。
オリエント急行の中で起こった殺人。その乗客たちはどの人物も、一癖も二癖もありそうな魅力的な方々ばかり。
この作品は『トリック』と『人間ドラマ』が最も(←僕が読んだ中では)バランス良く高レベルで融合している作品だと思います。
逆に言えば、「オリエント急行」にピンと来なかったなら、クリスティを楽しむのはひょっとすると難しい?
極論ですが、そう言い切ってしまっていいくらい、この作品には彼女の良さがぎっしり詰まった名著だと思うのです。
「オリエント急行」と並んで、僕がお勧めするもう一つの傑作は「葬儀を終えて」です。
この作品も、『トリック』と『人間ドラマ』のレベルがとても高くて、素晴らしいですね。
こちらを真っ先に薦めても良いのですが、「オリエント」の方がより『派手』で『有名』なため、こちらは次点としました。
ですが、「派手さなんていらねぇ!正当派で、質実剛健な作品が読みたいんだ!」という通好みな方には、
こちらをお薦めしたいと思います。
★超有名な「そして誰もいなくなった」。確かに面白い、けれど……
訳のせいでしょうか。それとも主人公がピンと来なかったからでしょうか。
イマイチ読みやすくなかった思い出があるんですよね。
それでも魅力的な舞台演出に、つい読まされてしまい最後には満足したのですが、あまり「クリスティ初読者」
向きじゃないよなぁ、とは。
「人間ドラマ」も別に、ねぇ。
ミステリオールタイムベストなどでは、「アクロイド」と「そして誰も~」が上位に入ることが多いのですが、
初読者はむしろ「オリエント急行」だろ、といつも思っている次第であります。
★「トリック」派にはあまりお薦めできない、かもしれないクリスティ
僕は元来、犯人当ての出来ない人間です。
あまりにも当たらないので、犯人当てをしようなどとはそもそも思わないのです。
ですが・・・
クリスティ作品は、言うまでもなく古い作品群です。
その後、世に出た作品の中には、クリスティのトリックをパク……りとは言いませんが、
似たようなものも見受けられます。
上述した「金田一少年」にもありましたw
まぁそんなわけで、「予告殺人」、「ABC殺人事件」に関しては、このドブねずみ色の脳細胞を誇る
迷探偵feeメにも余裕で解ってしまったのであります。
今から「予告殺人」やら「ABC」やらを読んでも、「トリック」派の方には満足いただけない事でしょう。
それを言うなら、「トリック」派の方に確実に満足いただけそうな作品って、
僕が読んだ中では「葬儀を終えて」くらいしかないやん……
と、こんなわけで、「トリック」派の方にはあまりおすすめできないのがクリスティ作品、だと思っております。
全部で66(かな? wikipedia参照)の長編を書いたアガサ・クリスティのうち、ほんの4分の1、15作かその程度しか読んでいない僕の文章にどの程度信ぴょう性があるかは、何とも言えないところではありますが・・・。
★最後に言い忘れたことを・・・
文章の流れ上、紹介できなかったんでございますが、「動く指」。
これがまた、好きな作品なんだなぁ・・・。
狭い村の中の人間模様も非常に魅力的なんだけど、
みんなからバカにされていた地味娘が、突然美少女に大変身、とかね・・・。
ニヤニヤが止まらないじゃあ、ありませんか。
**2015年4月15日追記
今現在、クリスティの作品を再び一気読みしておりまして、またお気に入りの作品が増えてきています。
ここで書いた記事の内容自体は特に変更はないのですが、新しいお気に入り作品も絡めてもう少し文章を書きたいなぁと思ったり、思わなかったり。
読了したクリスティ作品 評価S~E
「オリエント急行の殺人」 S
「葬儀を終えて」 S
「終わりなき夜に生まれつく」 S
「鏡は横にひび割れて」 A+
「ポケットにライ麦を」 A+
「ナイルに死す」 A+
「そして誰もいなくなった」 A
「動く指」 A
「カーテン」 A
「メソポタミアの殺人」 A-
「カリブ海の秘密」 B
「春にして君を離れ」 B
「ABC殺人事件」 B
「予告殺人」 B
「ゼロ時間へ」 B
「パディントン発四時五十分」 B
「死との約束」 B
「愛国殺人」 C
「死との約束」 C
「アクロイド殺し」 C
「NかMか」 C
「三幕の殺人」 C
判定不能は、読んだことは間違いないが、「あまり面白くなかった」という記憶だけが残っている作品。
「 スタイルズ荘の怪事件」 判定不能
「七つのダイアル」 判定不能
「茶色の服の男」 判定不能
他に初期作品を2~3作品読んでいるはずですが、もはや忘却の彼方……
この記事をお読みになった方で、「feeは気に入るんじゃないか」と思われるクリスティ作品がありましたら、
コメント、拍手レスなど何でも構いませんので、お寄せください。
是非参考にさせていただきます!