評価は A+。
女子校生活に溶け込めないSF大好き少女モリが、同じSFを愛する仲間たちに出会い、絆を深めていく成長物語。
いやね、こういうお話、本当に好きなんですよ。
周囲に溶け込めない疎外感と、周囲が馬鹿らしく見えて仕方ない(混ざりたくない)感覚。
めぐり合う同好の士。
イケメンの恋人まで作ってしまうのも、「等身大の自分(のような少女)を主人公にした、憧れの青春」という感じでまた良し。
ほんと、こんな青春送ってみたかったですよ……。
(僕の現実では同性のヲタ友が関の山でね、揃ってモテない連中でした……。モリの感覚とか、凄くわかるんだけどなぁ)。
さて、本書はヒューゴー賞/ネビュラ賞/英国幻想文学賞をとった作品。
ヒューゴー、ネビュラといえばSFの二大タイトルですが、この作品が『SF』とは少々言いかねる感じです。
『ファンタジー』とか『幻想文学』ではあるのですが。
ではなぜヒューゴー/ネビュラ賞を取っているかというと、主人公がSF大好きだからという理由ぐらいしかちょっと思いつきません。
作中ではアーシュラ・K・ルグィン、ロバート・A・ハインライン、ロバート・シルヴァーバーグ、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、サミュエル・ディレイニー、ロジャー・ゼラズニイといった名前が乱舞しますので、SF小説が好きな方、これらの作家に触れた事がある方はニヤリとさせられること請け合い。
ただ、この作品が、これらの作家の作風に似ているかといわれるとちっとも似ていないので、そこは注意が必要です。
本書はあくまでもSF大好きな少女の『成長物語』であって、(おそらく多くの方が思い浮かべるであろう)『SFではない』のです。
では、SFなんて知らないよという方は……途中登場人物が何を言っているんだかいまいちわからないページもあるかもしれませんが、多分、大丈夫だと思います。
少なくとも、SFを知らない事で物語の本筋がわからなくなるということはありません。
ただし、『指輪物語』ぐらいは抑えておいた方が良いかもしれません。
映画版の『ロード・オブ・ザ・リング』でも結構ですが、度々出てきますので。
*以下、軽ネタバレ
とても楽しめた作品ですが、Sに届かなかったのは、少々物足りなさも残ったからかもしれません。
というのは、『双子の妹』や『魔女である母』との対決は良かったのですが、まだ書くべきことが残っていると
感じたからです。
たとえばダニエルとの関係。
できることなら、ダニエルが三人の叔母から独り立ちするようなシーンをもう少し強く描いてほしかったです。
ジャニーンの、ウィムに対する誤解を解くシーンも欲しかったですね。
ディアドリもなぁ。ディアドリとの関係はもっと深めさせてあげたいなぁと思いました。
多分この娘、学校では付き合うけれど、卒業したら二度と合わないぐらいの関係ですよね。
それはそれでリアルだと思いますし、学校内で作れなかった真の友達を外に見出すというのは悪くないんですが、しかしそれにしてはそこそこ仲良くはしていますし……もう少しフォローしてあげたかったです。
レズビアンのジルは……ジルとの関係性も本当は改善したいですが、これは仕方ないかもしれません。
ダメになってしまった絆、というのも一つぐらいあった方が作品的に良い気もしますし。
そんなわけで、「本当にこれで終わりなの?」と思ってしまいました。
「もっとこの作品世界に留まっていたいのに」という気持ちも込みで、もう少しページ数があっても良かったかもしれません。
もう一つ挙げたいポイントとしては、非常によく『偏屈なヲタク』が描けているなぁと思いました。
この作品に出てくる登場人物は、『本を読むキャラ』と『そうでないキャラ』に大きく分けることができます。
そして、主人公の理解者となるキャラは皆、本を読んでいますし、そうでないキャラは主人公と仲良くなることはできません。
更に「本を読まないキャラ(音楽とバイクが大好き、みたいな感じの男の子とか)」のことを『バカ』と評するシーンなどもあるんですよね。
先に言っておきますと、これは、少しこじらせてしまった年頃のヲタクにはままあることだと思いますし、
本を読まないキャラはキャラで、本に夢中になっている人の事を悪く言っていたりすることもあるので、
それはそれでいいとは思うんです。
それに、本作に出てくるキャラクターの大部分は、確かに『バカ』ですしね……。
ただ、こういう態度をとっていると、そりゃ友達は作れねぇわなぁと思うのも事実ではありまして、
『趣味が合う友人だけが、真の友人ではないんだけどなぁ』とも思ったりもするのです。
女子校生活に溶け込めないSF大好き少女モリが、同じSFを愛する仲間たちに出会い、絆を深めていく成長物語。
いやね、こういうお話、本当に好きなんですよ。
周囲に溶け込めない疎外感と、周囲が馬鹿らしく見えて仕方ない(混ざりたくない)感覚。
めぐり合う同好の士。
イケメンの恋人まで作ってしまうのも、「等身大の自分(のような少女)を主人公にした、憧れの青春」という感じでまた良し。
ほんと、こんな青春送ってみたかったですよ……。
(僕の現実では同性のヲタ友が関の山でね、揃ってモテない連中でした……。モリの感覚とか、凄くわかるんだけどなぁ)。
さて、本書はヒューゴー賞/ネビュラ賞/英国幻想文学賞をとった作品。
ヒューゴー、ネビュラといえばSFの二大タイトルですが、この作品が『SF』とは少々言いかねる感じです。
『ファンタジー』とか『幻想文学』ではあるのですが。
ではなぜヒューゴー/ネビュラ賞を取っているかというと、主人公がSF大好きだからという理由ぐらいしかちょっと思いつきません。
作中ではアーシュラ・K・ルグィン、ロバート・A・ハインライン、ロバート・シルヴァーバーグ、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、サミュエル・ディレイニー、ロジャー・ゼラズニイといった名前が乱舞しますので、SF小説が好きな方、これらの作家に触れた事がある方はニヤリとさせられること請け合い。
ただ、この作品が、これらの作家の作風に似ているかといわれるとちっとも似ていないので、そこは注意が必要です。
本書はあくまでもSF大好きな少女の『成長物語』であって、(おそらく多くの方が思い浮かべるであろう)『SFではない』のです。
では、SFなんて知らないよという方は……途中登場人物が何を言っているんだかいまいちわからないページもあるかもしれませんが、多分、大丈夫だと思います。
少なくとも、SFを知らない事で物語の本筋がわからなくなるということはありません。
ただし、『指輪物語』ぐらいは抑えておいた方が良いかもしれません。
映画版の『ロード・オブ・ザ・リング』でも結構ですが、度々出てきますので。
*以下、軽ネタバレ
とても楽しめた作品ですが、Sに届かなかったのは、少々物足りなさも残ったからかもしれません。
というのは、『双子の妹』や『魔女である母』との対決は良かったのですが、まだ書くべきことが残っていると
感じたからです。
たとえばダニエルとの関係。
できることなら、ダニエルが三人の叔母から独り立ちするようなシーンをもう少し強く描いてほしかったです。
ジャニーンの、ウィムに対する誤解を解くシーンも欲しかったですね。
ディアドリもなぁ。ディアドリとの関係はもっと深めさせてあげたいなぁと思いました。
多分この娘、学校では付き合うけれど、卒業したら二度と合わないぐらいの関係ですよね。
それはそれでリアルだと思いますし、学校内で作れなかった真の友達を外に見出すというのは悪くないんですが、しかしそれにしてはそこそこ仲良くはしていますし……もう少しフォローしてあげたかったです。
レズビアンのジルは……ジルとの関係性も本当は改善したいですが、これは仕方ないかもしれません。
ダメになってしまった絆、というのも一つぐらいあった方が作品的に良い気もしますし。
そんなわけで、「本当にこれで終わりなの?」と思ってしまいました。
「もっとこの作品世界に留まっていたいのに」という気持ちも込みで、もう少しページ数があっても良かったかもしれません。
もう一つ挙げたいポイントとしては、非常によく『偏屈なヲタク』が描けているなぁと思いました。
この作品に出てくる登場人物は、『本を読むキャラ』と『そうでないキャラ』に大きく分けることができます。
そして、主人公の理解者となるキャラは皆、本を読んでいますし、そうでないキャラは主人公と仲良くなることはできません。
更に「本を読まないキャラ(音楽とバイクが大好き、みたいな感じの男の子とか)」のことを『バカ』と評するシーンなどもあるんですよね。
先に言っておきますと、これは、少しこじらせてしまった年頃のヲタクにはままあることだと思いますし、
本を読まないキャラはキャラで、本に夢中になっている人の事を悪く言っていたりすることもあるので、
それはそれでいいとは思うんです。
それに、本作に出てくるキャラクターの大部分は、確かに『バカ』ですしね……。
ただ、こういう態度をとっていると、そりゃ友達は作れねぇわなぁと思うのも事実ではありまして、
『趣味が合う友人だけが、真の友人ではないんだけどなぁ』とも思ったりもするのです。