評価はA。
日本人が選ぶ海外ミステリのオールタイムベストというと、決まって選ばれる名前がある。
たとえばエラリー・クイーンの「Yの悲劇」であったり、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」であったり、
レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」であったり(ラインナップが古すぎる……)。
本書「幻の女」はこの手のオールタイムベストで長年「Yの悲劇」と鍔迫り合いを繰り広げてきた、
日本人が好む海外ミステリの名作だ。
とは言っても、オールタイムベストにあげられるからといって自分の好みに合うとは限らない。
ファンの方の心証を無駄に害する気はないので作品名は伏せるが、
『2012年版東西ミステリーベスト100』 の海外部門ベスト10は全10作中、この「幻の女」を含めて7作を読んでいる。
そして、勝率は2勝1分4敗。半分にも満たないのである。
被る作品が多いので当たり前と言えば当たり前だが、これは1985年版のものでも変わらず、こちらも勝率5割を切っている。
ハヤカワのミステリマガジンやジャーロ誌のオールタイムベストにおいても同様だ。
まぁ何が言いたいかというと、筆者の感性がひねくれているためか、元々そういうものなのかは知らないが
オールタイムベスト作品=名作!というわけにはいかない、ということだ。
しかし本書「幻の女」は僕にとっても名作だった。
まず冒頭、 大都会で容疑者になってしまう男はカボチャ帽子だけが目立つ謎の女をナンパし、劇場へ向かう。
僕自身ナンパをしたことはない。
が、ネットで知り合った方と1対1で連れだって遊んだ経験は何度もあり、そのうちのほとんどは本名を知らない。
(これは別に本名を知らせたくないというわけでもないのだが、便宜上ハンドルネームで呼ぶことが多く、それが定着してしまうからである)。
そして経験上、何度も遊ぶ方と、一度かせいぜい二度で終わってしまう方の割合は大体半々であり、
後者に関してはネットでの繋がりがなくなれば、どこに住んでいるかもわからない。
今回のような殺人事件に関連するとなれば、また探し方も違うのかもしれないが、たとえば数年前に某所で会った当時大学院生だった女性(正直器量は整っていなかったが、話してつまらない相手ではなかった)を今から探せと言われても、まぁ無理だろう。今からでは無理というか、会った翌日に探せというのも無理だったはずだ。
というような経験を自分もしているため、本書の彼が立たされた立場というものは関心を持って読むことができた。
結局濡れ衣を着せられた男に代わり、彼の親友が一肌脱いで探偵役を買う事になるのだが、ここの友情もホロリとさせられた。
もし自分がこういう事態に立たされたら、果たして自分のために捜査をしてくれる友人はいるだろうか?
多分いない……いるとしたら彼かなという顔は1人思い浮かぶが、多分無理だろう。
これが学生時代ならもう少しいたのだが、悲しいかな、環境が変われば疎遠になってしまうものなのだ。
まぁ疎遠になったことだけが原因というよりは、仕事で忙しいという方が大きいけれど。
自分も「こいつのためなら何とかしてやりたい」とは思っても、仕事を休んでまでと言われると難しいものなぁ……。
というような事を考えると、この容疑者と探偵役の友情にはしんみりさせられ、俄然読む手に力が入った。
その後も緊迫した展開が続き、ダレることはなく……そして意外な犯人。
慌ててもう一度、前に読んだ部分を読み直す気にさせる豊かなドラマ性。
……変わらぬ友情に感動したのにww
しかし一方で、この刑事さんとは新たな友情が生まれそうな予感はするし、自分のために頑張ってくれた愛人(恋人?)もいるしで、絶望的な終わり方でもない。
希望と苦みがうまく配合された読後感も良く、「良い作品だったな」としみじみ感じさせられる作品だった。
面白かったです。
日本人が選ぶ海外ミステリのオールタイムベストというと、決まって選ばれる名前がある。
たとえばエラリー・クイーンの「Yの悲劇」であったり、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」であったり、
レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」であったり(ラインナップが古すぎる……)。
本書「幻の女」はこの手のオールタイムベストで長年「Yの悲劇」と鍔迫り合いを繰り広げてきた、
日本人が好む海外ミステリの名作だ。
とは言っても、オールタイムベストにあげられるからといって自分の好みに合うとは限らない。
ファンの方の心証を無駄に害する気はないので作品名は伏せるが、
『2012年版東西ミステリーベスト100』 の海外部門ベスト10は全10作中、この「幻の女」を含めて7作を読んでいる。
そして、勝率は2勝1分4敗。半分にも満たないのである。
被る作品が多いので当たり前と言えば当たり前だが、これは1985年版のものでも変わらず、こちらも勝率5割を切っている。
ハヤカワのミステリマガジンやジャーロ誌のオールタイムベストにおいても同様だ。
まぁ何が言いたいかというと、筆者の感性がひねくれているためか、元々そういうものなのかは知らないが
オールタイムベスト作品=名作!というわけにはいかない、ということだ。
しかし本書「幻の女」は僕にとっても名作だった。
まず冒頭、 大都会で容疑者になってしまう男はカボチャ帽子だけが目立つ謎の女をナンパし、劇場へ向かう。
僕自身ナンパをしたことはない。
が、ネットで知り合った方と1対1で連れだって遊んだ経験は何度もあり、そのうちのほとんどは本名を知らない。
(これは別に本名を知らせたくないというわけでもないのだが、便宜上ハンドルネームで呼ぶことが多く、それが定着してしまうからである)。
そして経験上、何度も遊ぶ方と、一度かせいぜい二度で終わってしまう方の割合は大体半々であり、
後者に関してはネットでの繋がりがなくなれば、どこに住んでいるかもわからない。
今回のような殺人事件に関連するとなれば、また探し方も違うのかもしれないが、たとえば数年前に某所で会った当時大学院生だった女性(正直器量は整っていなかったが、話してつまらない相手ではなかった)を今から探せと言われても、まぁ無理だろう。今からでは無理というか、会った翌日に探せというのも無理だったはずだ。
というような経験を自分もしているため、本書の彼が立たされた立場というものは関心を持って読むことができた。
結局濡れ衣を着せられた男に代わり、彼の親友が一肌脱いで探偵役を買う事になるのだが、ここの友情もホロリとさせられた。
もし自分がこういう事態に立たされたら、果たして自分のために捜査をしてくれる友人はいるだろうか?
多分いない……いるとしたら彼かなという顔は1人思い浮かぶが、多分無理だろう。
これが学生時代ならもう少しいたのだが、悲しいかな、環境が変われば疎遠になってしまうものなのだ。
まぁ疎遠になったことだけが原因というよりは、仕事で忙しいという方が大きいけれど。
自分も「こいつのためなら何とかしてやりたい」とは思っても、仕事を休んでまでと言われると難しいものなぁ……。
というような事を考えると、この容疑者と探偵役の友情にはしんみりさせられ、俄然読む手に力が入った。
その後も緊迫した展開が続き、ダレることはなく……そして意外な犯人。
慌ててもう一度、前に読んだ部分を読み直す気にさせる豊かなドラマ性。
……変わらぬ友情に感動したのにww
しかし一方で、この刑事さんとは新たな友情が生まれそうな予感はするし、自分のために頑張ってくれた愛人(恋人?)もいるしで、絶望的な終わり方でもない。
希望と苦みがうまく配合された読後感も良く、「良い作品だったな」としみじみ感じさせられる作品だった。
面白かったです。