評価は B+。
すごく難しい作品でした。
失敗作なのか、敢えて色々考えてもらうためにそういう筋立てにしたのかも解りません。
すごく難しい作品でした。
失敗作なのか、敢えて色々考えてもらうためにそういう筋立てにしたのかも解りません。
表面上の物語は簡単で、オリジナルかぐや姫(竹取物語)の筋をなぞっているだけなんですが……映画版かぐや姫の視点が、現代人視点なんですね。
「竹取物語」は平安時代のストーリーなので、当然平安時代視点の物語だと思います。
竹から生まれたかぐや姫が、美しく成長して、貴族の婚約者にモテまくって、とうとうイケメンな帝に見そめられるけれども、月に帰ってしまった~的なお話でした(でしたよね?)。
竹から生まれたかぐや姫が、美しく成長して、貴族の婚約者にモテまくって、とうとうイケメンな帝に見そめられるけれども、月に帰ってしまった~的なお話でした(でしたよね?)。
今回の「かぐや姫」のあらすじをざっと振り返りますと……かぐや姫は、捨丸という若者と親しくなり、楽しく山で遊びます。
ですがある時、かぐや姫を「高貴な姫君」として育てようと妙な熱意にとりつかれた翁が、都に無理やり引っ越してしまいます。
そこでかぐや姫は、嫌なお歯黒やら何やらを強制されるわ、身分は高いけど明らかにイケてない貴族連中に次々に求婚されるわ、散々な目に遭います。
その上、周囲からは「高い身分の人に嫁ぐのは女の幸せ」と再三言われ、野山を懐かしく思いながら宮中で暮らします。
ですがある時、かぐや姫を「高貴な姫君」として育てようと妙な熱意にとりつかれた翁が、都に無理やり引っ越してしまいます。
そこでかぐや姫は、嫌なお歯黒やら何やらを強制されるわ、身分は高いけど明らかにイケてない貴族連中に次々に求婚されるわ、散々な目に遭います。
その上、周囲からは「高い身分の人に嫁ぐのは女の幸せ」と再三言われ、野山を懐かしく思いながら宮中で暮らします。
これは非常に現代的な思考というか、私たちの時代の人間が見たら、宮中でのかぐや姫の境遇はあまり羨ましくないですよね。
平安時代の価値観ではハッピーだったかもしれませんが、現代の私たちから見ると(……と乱暴に括ってしまっていいのかも迷いますが)、貧しくても捨丸と一緒に楽しく野山を駆け回っていた方が、幸せだったのでは?と思ってしまいます。
平安時代の価値観ではハッピーだったかもしれませんが、現代の私たちから見ると(……と乱暴に括ってしまっていいのかも迷いますが)、貧しくても捨丸と一緒に楽しく野山を駆け回っていた方が、幸せだったのでは?と思ってしまいます。
現実の平安時代の庶民の暮らしは相当辛かったらしいので、一概にそうとも言い切れないんですが、今回の「かぐや姫」の映画ではそうした庶民の悲惨さにはあまり触れていませんので、いい着物は着れないけれど、捨丸たちと楽しく野山を駆け回って、畑で作物をとったりドロボーしたりしてる生活の方が楽しそうに見えます。
間違っても、あんな「麻呂」みたいな貴族に嫁いだり、人の家を勝手に覗いて(平安時代的にはこれは普通の行為だったはずですが)いきなり後ろから抱きすくめる帝に無理やり嫁がされるのは、あまり幸せそうには思えません。
間違っても、あんな「麻呂」みたいな貴族に嫁いだり、人の家を勝手に覗いて(平安時代的にはこれは普通の行為だったはずですが)いきなり後ろから抱きすくめる帝に無理やり嫁がされるのは、あまり幸せそうには思えません。
ですが、かぐや姫は「月に帰りたくない。ここにいたい」と言い出します。
これが解らないのです。
「月に帰りたくない。山に帰りたい」なら解ります。
でも、そうではないんですよね。実際山には帰りません。
ここで山に帰って、捨丸と暮らすエンディングを迎えたなら、「イイハナシダナー」でおしまいなんですが、一方でファンタジー設定が投げっぱなしになってしまいます。
かぐや姫が一瞬で大人に成長したり、月に呼ばれているという設定が宙に浮いてしまうんです……が、物語的にはとても解りやすいものになったと思います。
これが解らないのです。
「月に帰りたくない。山に帰りたい」なら解ります。
でも、そうではないんですよね。実際山には帰りません。
ここで山に帰って、捨丸と暮らすエンディングを迎えたなら、「イイハナシダナー」でおしまいなんですが、一方でファンタジー設定が投げっぱなしになってしまいます。
かぐや姫が一瞬で大人に成長したり、月に呼ばれているという設定が宙に浮いてしまうんです……が、物語的にはとても解りやすいものになったと思います。
しかしこの映画では、そうはなりません。
どうするかというと、原作どおり月に帰ります。月に帰るんですが、その際にも山の事を懐かしむ様子はなく、翁や媼との別れを惜しんでいます。そして、これまた立派な着物を着た月の姫として、月へ帰ってしまいます。
確かにこれならファンタジー設定は活かせるんですが……今度はかぐや姫の気持ちが解らなくなってしまいました。あんなに宮中で酷い目に遭って、なぜ「月に帰りたくない」という言葉が飛び出すのか。
繰り返しますが、「竹取物語」のかぐや姫ならこの発言は解るんです。宮中でイケメンにモテてハッピーな生活を送っていたはずなので。でも、この「かぐや姫」はそうはならないと思います。
どうするかというと、原作どおり月に帰ります。月に帰るんですが、その際にも山の事を懐かしむ様子はなく、翁や媼との別れを惜しんでいます。そして、これまた立派な着物を着た月の姫として、月へ帰ってしまいます。
確かにこれならファンタジー設定は活かせるんですが……今度はかぐや姫の気持ちが解らなくなってしまいました。あんなに宮中で酷い目に遭って、なぜ「月に帰りたくない」という言葉が飛び出すのか。
繰り返しますが、「竹取物語」のかぐや姫ならこの発言は解るんです。宮中でイケメンにモテてハッピーな生活を送っていたはずなので。でも、この「かぐや姫」はそうはならないと思います。
たとえば、山で遊んでいる幼少期を「子供時代」とし、宮中を、俗に言う「ブラック企業」にたとえるとしたら……「ブラック企業」で働き続け、もう嫌だ、子供時代に戻りたいと願うもかなわず、別の転職先(月)へと転職していくかぐや姫……ブラック企業は嫌だったけど、同僚たち(翁、媼など)との思い出は大切、みたいな話なんでしょうか?
なんというか、すごくモヤモヤする映画です。手放しで絶賛とかはできないです。
このモヤモヤが、製作者側の意図したものなのか、それとも単に「竹取物語」に無理やりなぞらえようとした末の失敗なのかがわからないところが、壮絶にモヤモヤします。でも、こういうモヤモヤはある意味貴重というか……
奇妙な味わいのする映画でした。
こういう映画もたまには面白いですね。
このモヤモヤが、製作者側の意図したものなのか、それとも単に「竹取物語」に無理やりなぞらえようとした末の失敗なのかがわからないところが、壮絶にモヤモヤします。でも、こういうモヤモヤはある意味貴重というか……
奇妙な味わいのする映画でした。
こういう映画もたまには面白いですね。