評価はB+。
人間の死体を使って、工芸品を作り出す架空の職業、遺工師の長男とその兄弟を描いた作品。
日本ホラー小説大賞受賞作だが、ホラーというよりはスプラッタである。
グロ注意だが、作品を成立させるために必要なグロである事は一読すればわかるだろう。
作品を成立させるために必要なグロといえば、三男の汚言癖がある。
これについてはamazonレビューや、あろうことかホラー大賞の審査員までもが「無意味に汚い言葉を連発する」と低評価しているが、全くもって『無意味ではない』(一読者であるamazonレビューはともかく、審査員がこれで大丈夫なのか?)。
死体・汚言癖といった、一見『穢れ』に見えるけれどもその実、倫理的には『穢れていない(人が死ぬこと自体は悪ではない・汚言はトゥレット症候群であり本人に悪はない)』ものを描くことで、
本当にこれは穢れなのか?
死体や汚言を忌み嫌う者の心にこそ、穢れが生まれる温床があるのではないか?
という価値観の転倒を、生気溢れる猥雑な筆致で描いた力作である。
以上、あまりに本質を捉えていない低評価が目立ったため熱く弁護したが、ラストの投げっぷりは肩透かしではあるし、キャラが立ちまくっている三男に対して、長男・次男の描き込みは相対的に弱い、暴力描写がショボい(スプラッタ描写は良い)などの粗はある。
三男を置いてどこかに逃げてしまったキャバ嬢は一体どうなったのか?
長男、三男ともに精神疾患を患っているように思えるし、次男も会社でうつ病一歩手前になっているが、そうした精神疾患になりやすい因子は一体どこにあったのか?
などの説明もない。
死体の側に長年いたからそうなってしまった……というのは、ちょっと説得力が弱すぎる。
暴力団の父母の死もとってつけたように唐突だ。
最後に、気に入ったシーンを。
死体の皮を剥ぎながら、遺体の母と長男が「おぉブレネリ!」を歌うシーンは神だった。
こういう鳥肌もののシーンを描けるのだから、実力のある作家さんなのだと思うが、粗削りというかなんというか、全編鳥肌ではないところがなんとも。
総合してみれば75点。部分的には80点を超すし、完成度だけを言えば70点を切るだろう。
あと、擁護はしてきたけど、個人的にスプラッタは苦手です。いや、ほんとに。
食事しながらは読めません。
人間の死体を使って、工芸品を作り出す架空の職業、遺工師の長男とその兄弟を描いた作品。
日本ホラー小説大賞受賞作だが、ホラーというよりはスプラッタである。
グロ注意だが、作品を成立させるために必要なグロである事は一読すればわかるだろう。
作品を成立させるために必要なグロといえば、三男の汚言癖がある。
これについてはamazonレビューや、あろうことかホラー大賞の審査員までもが「無意味に汚い言葉を連発する」と低評価しているが、全くもって『無意味ではない』(一読者であるamazonレビューはともかく、審査員がこれで大丈夫なのか?)。
死体・汚言癖といった、一見『穢れ』に見えるけれどもその実、倫理的には『穢れていない(人が死ぬこと自体は悪ではない・汚言はトゥレット症候群であり本人に悪はない)』ものを描くことで、
本当にこれは穢れなのか?
死体や汚言を忌み嫌う者の心にこそ、穢れが生まれる温床があるのではないか?
という価値観の転倒を、生気溢れる猥雑な筆致で描いた力作である。
以上、あまりに本質を捉えていない低評価が目立ったため熱く弁護したが、ラストの投げっぷりは肩透かしではあるし、キャラが立ちまくっている三男に対して、長男・次男の描き込みは相対的に弱い、暴力描写がショボい(スプラッタ描写は良い)などの粗はある。
三男を置いてどこかに逃げてしまったキャバ嬢は一体どうなったのか?
長男、三男ともに精神疾患を患っているように思えるし、次男も会社でうつ病一歩手前になっているが、そうした精神疾患になりやすい因子は一体どこにあったのか?
などの説明もない。
死体の側に長年いたからそうなってしまった……というのは、ちょっと説得力が弱すぎる。
暴力団の父母の死もとってつけたように唐突だ。
最後に、気に入ったシーンを。
死体の皮を剥ぎながら、遺体の母と長男が「おぉブレネリ!」を歌うシーンは神だった。
こういう鳥肌もののシーンを描けるのだから、実力のある作家さんなのだと思うが、粗削りというかなんというか、全編鳥肌ではないところがなんとも。
総合してみれば75点。部分的には80点を超すし、完成度だけを言えば70点を切るだろう。
あと、擁護はしてきたけど、個人的にスプラッタは苦手です。いや、ほんとに。
食事しながらは読めません。