2017年12月

2017年読書&ゲームランキングノミネート

2017年も残すところあとわずか、ということで、今年の読書ランキングのノミネート作を発表します。
新年の記事で、ベスト10を発表するという趣向でして、
去年は体調不良のため出来ませんでしたが、一応恒例行事となっております。

ということで、まずは読書ランキングから。
ノミネート作はこちらです。


キングの死/ジョン・ハート

チームバチスタの栄光/海棠尊

ミスティックリバー/デニス・ルへイン

毒入りチョコレート事件/アントニー・バークリー

試行錯誤/アントニー・バークリー

赤毛のレドメイン家/イーデン・フィルポッツ

少年時代/ロバート・マキャモン

影武者徳川家康/隆慶一郎

国盗り物語/司馬遼太郎

警官の血/佐々木譲

ブレイブ・ストーリー/宮部みゆき

マヴァール年代記/田中芳樹

Yの悲劇/エラリー・クイーン

災厄の町/エラリー・クイーン

+年末に面白い作品に出会えればそれもノミネートに加えます。



なんかミステリが多いですね。
ノミネート14作のうち実に9作ですか。
11月以降はミステリを集中的に読んだのですが(5作がノミネート)、10月までは色々なジャンルを読んでいたつもりだったので意外でした。

次にゲームランキング。

Venus Blood Ragnarok
Venus Blood Brave
ランス9 
イブニクル
美少女万華鏡 呪われし伝説の少女
美少女万華鏡 忘れな草と永遠の少女
美少女万華鏡 神が造りたもうた少女たち

同人↓
魔王軍へようこそ5
竜王ちゃんの野望
お泊り恋人ロリータ
行け! 鳴神学園オカルト研究部
姫騎士レイチェル
ヴァイブレーション
コピークエスト

ソシャゲ↓
フラワーナイトガール
アイドルうぉーず

非18禁
王国のソウルスミス(同人)


同人とRPGばっかりww 
腰を据えてノベルを読む元気がなくて、ポチポチRPGをやりたい感じだったんですね。


さて、来年の話をすると、まず対談ブログの方。
「火星年代記」を終わらせて、「つよきす」に入る予定です
(「火星年代記」の方は、対談自体は既に収録いたしました)。
その後は「つよきす3学期」もやるのかな? 
読書対談の方は「10月はたそがれの国」をやるかも? やらないかも?


それから6月にはワールドカップがあるので、ワールドカップの記事は多分書きます。



読書の方は、引き続き海外古典ミステリが多めになるかな? 
他も読みたいんですけど、今ちょっとブームが自分の中で来ているのでw


ゲームも今年よりはやると思います。
ただ、どちらかというと今までプレイしたゲームの再プレイとかが中心になりそうな気もします。
そうなるとノミネートできない(苦笑)


そんな事もあって、良い記事も書けず、UUは一時期の半分程度まで下がってしまいましたが、
ま、大昔(ブログを始めた頃)は1日10ヒット以下でもコツコツやってましたし、その頃よりは
多く読まれているので、のんびりマイペースにやって行こうと思っています。


あと、なぜか「穢翼のユースティア」の記事が読めなくなっていました。
つい昨日、気づきました。原因は不明です。
ライブドアブログにも問い合わせましたが、よくわからない返事が返ってきました。
さり気なく、うちのブログの人気記事3位なのに、こういう不具合はホント困ります。
ってここに書いてもしょうがないか。


まぁとにかく、そんなわけで。
それでは皆さん良いお年を。







アントニー・バークリー「第二の銃声」読了(バレあり;『試行錯誤(トライアル&エラー)のバレも有)

評価はA-。面白かった。
面白かったんだけど……エピローグは、ない方が好みだ。


★「試行錯誤」との共通点


本書は、作者が後年書いた「試行錯誤」に非常によく似た作品だ。


主人公のシリル・ピンカートンの『相当抜けていて』、『冴えない』けれど、
『ユーモラス』で愛らしい中年男性像は
(ピンカートンは36なので中年とは言いたくないが//自分が36歳になった時に中年とは呼ばれたくないw)、
そのまま『試行錯誤』のトッドハンター氏に共通する特徴だ。
ピンカートン氏を更に優しく、更にヌケた感じにすればトッドハンター氏になるだろう。


そんなピンカートン&トッドハンター氏のユーモラスな語りを、僕は楽しんだ。
正直に言えば、事件やトリック云々よりも、「この主人公から目が離せない!」的な楽しみ方だ。


更に言えば、『倒叙モノ』めいた作りもそうだし、殺されるのが『皆の嫌われ者で、社会にいない方が良い奴』というのも同じである。
(この、『皆の嫌われ者で、社会にいない方がいい奴は殺した方が良い』というのは「毒入りチョコレート事件」でも同様の台詞があり、作者のバークリーは本気でそう思っていた節がある)


★キャラクター小説としての「第二の銃声」


『第二の銃声』が、『試行錯誤』よりも優れているのは、主人公ピンカートン氏の周囲を固める華やかなサブキャラ達。特に女性陣の魅力である。


ピンカートン氏は、長年の友人エセルに招かれる。
性格の良さではこの作品の女性陣No1だと思われるエセルだが、
残念なことに人妻で(も別に構わないのだが)あり、すぐに『親友ポジション』に後退してしまうので
浮いた話はない。


ピンカートン氏が最初に好意を抱くのが、
可憐で儚いように見せかけて、実は陰で相手を笑いものにする『聖女もどき』のエルザだ。
このエルザは、『聖女もどき』キャラとしては直前に読んだ「〇毛のレ〇メイン家」の某女性に比べると弱いが、それでもなかなか面白いキャラクターだ。
36歳にしてキスもまだな、うぶなピンカートン氏がこの手の女性に引っかかるのは無理のない事だし、
エルザの方に引っかける意図はないのであれだが、
ピンカートン氏はエルザを大事に思っているのに、エルザには陰で笑われている。
かわいそうな事である。


苛烈な不倫妻シルヴィアも見逃せない。
好きな男(不倫相手)のためなら何でもしかねない狂気と、なぜか皆の秘密を知っている知性の冴えと、元女優という演技力を兼ね備えた強烈なキャラクターで、
特に皆の眼前で不倫相手のエリックをなじるシーンは最高に面白かった。
(個人的にはシルヴィアのような匂い立つような邪悪さよりも、エルザのような『裏表』の方により
『人間ってこえーな……女性ってこえーな……』という恐怖を感じてしまうのだが)


そんな強烈な女性陣に引きかえ、真・ヒロインたるアーモレルは序盤、影が薄い。
読者(僕)にとっても勿論だがそれは、ピンカートン氏から見ても影が薄い女性だったという事で
読者=語り手の『シンクロ』が巧みになされている好例だと思う。
男モノの服を着て、がさつで、タバコを吸って、化粧をしている。
まぁ、要は男勝りの下品なケバギャル、みたいなのを想像して読んだw
確かに清楚なエルザとは大違いであり、頭の旧いピンカートン氏がエルザに好意を抱くのも解る。


しかしそんなアーモレルが、泣いている姿を見た事で(それだけでw)ピンカートン氏はアーモレル
への偏見を改める。
そしてアーモレルにキスをしただけで一気にアーモレルラブになってしまうのも面白い。


「キスとは野蛮人が鼻をこすりつける習性と変わらない(キリッ)」→初キス→「キスさいこー!!」という変節ぶりも、さすがは我らのピンカートン氏である。
自分がアーモレルを本当に好きかどうかを、『趣味の切手コレクションを見せたい相手かどうか』、
『珍しい蛾の見分け方を教えたい相手かどうか』で自問自答するピンカートン氏も良い。

一見ピンカートン氏に冷たかった態度も、実はツンデレだったということで、一気に正ヒロインの座に就くアーモレルの活躍もあり、事件は無事解決する。


★エピローグの是非


ただ……個人的に『エピローグ』はない方が好みだった。

エピローグでは真犯人とトリックが明かされるのだが、
まずこのトリックが「そんなバカな」と言いたくなる代物なのである。

トリックというか……要は「あいつ死ねばいいのに」と全員が思っていた奴が殺されたので、
みんなで見て見ぬふりをした、というか……。うーん、そういう事もある、のか?


犯人はというと、偽犯人(エピローグ無し)はエルザなのだが、真犯人はピンカートン氏である。
確かに、普通に読めばピンカートン氏になる。
アンフェアではないし、その推理は可能どころの話ではなく、読者の半分は行きつくところだと思う。
しかし、そこを敢えて犯人をエルザとした事で、『エルザというキャラクター』にも深みが出たし、
ピンカートン氏の『抜けっぷり』にも重みが増したのではないか。
冷静に犯行計画を練るピンカートン氏では、今までのユーモラスな味がある程度損なわれてしまう。


また、それに対応してアーモレルがピンカートンを好きになった時期と理由が、『人を殺した時の意外な冷静さ』だというのも残念である。

最初にアーモレルとキスをした時は、アーモレルはまだピンカートンを好きではなかったのか、と思うとガッカリしてしまった(ツンデレじゃないじゃん!)し、アーモレルは『抜けている』ピンカートンを好きになってほしかった。
エピローグがあったせいで、今までのピンカートン氏の魅力や、アーモレル・エルザの魅力が減じてしまった気がして残念に感じた。

聖女ぶっていながら、実は陰で他人を笑い者にして、自分を騙した相手を殺すエルザはある意味COOLだが、
聖女ぶっていて、実は陰で他人を笑い者にしていて、ゴロツキイケメンになびいた普通の娘さんでは、何の印象にも残らない凡人ではないか……。


バークリーの献辞や、序盤ピンカートンの言葉を借りたバークリーの訴えめいたものに
「新しいミステリを書きたい!」とか、「犯人が主人公の作品って新しくない? 面白くない?」という主張が見て取れるので、『作者は、これがやりたかったんだな』とは思う。


クリスティが『アクロイド殺し』を書いて2年後に書かれた作品でもあるので、バークリーが「アクロイド殺し」を読み、『この路線はイケる! もっと面白い倒叙モノを書いて、流行らせたい!』と興奮して「第二の銃声」を書いた姿が容易に想像できる(僕の妄想かもしれない)。
実際、キャラが無味乾燥の「アクロイド殺し」に比べ、「第二の銃声」のピンカートン氏は個性もあり、倒叙モノとして正当進化はしていると思う。


ただ、そういった歴史的意義(?)は大切ではあるけど、今時、倒叙モノだというだけでは読者は感動したりはできないので、やはり今読むなら無理に倒叙モノにしなくても良かったのではないか、と
僕などは思ってしまったのだった。



最後の最後で、真犯人が明かされるのは『試行錯誤』も同じである。
この真相が、『第二の銃声』の構成を裏返しただけ、というのがまた面白い。


『第二の銃声』では、偽犯人が聖女(っぽい)エルザで真犯人がヌケてるっぽいピンカートン氏だったが、
『試行錯誤』では、偽犯人がヌケてるっぽいトッドハンター氏で、真犯人が聖女のフェリシティだっ
た。


私見では、『推理部分』と『エンディング』に関しては『試行錯誤』の方が好きだ。
だが一方で、『試行錯誤』は推理部分が細かく描かれている弊害で、(トリックにそこまで興味がない人間からすると)ダラダラと中だるみしているところがある。


読んでいる間、ずっと楽しかったのは『第二の銃声』の方だ。
とりわけピンカートン氏とエルザ、アーモレルとの関係性は読んでいて楽しかった。
ミステリというよりは恋愛小説としてしか読んでいない気がするが、面白かったので問題ない。


ただ、読み終わった後、『完成度が高かったな』と感じるのは『試行錯誤』の方である。

手軽なキャラ萌え小説が読みたければ『第二の銃声』、
『第二の銃声』とキャラ立てがとてもよく似ているミステリが読みたければ『試行錯誤』を読む。
それが、いいのかもしれない。


ちなみに既読のバークリー作品で私が一番好きなのは、「毒入りチョコレート事件」です。














2017年に読んだ本(随時更新)

S→味わい深く、いつまでも心に残りそうな作品

キングの死/ジョン・ハート……記事あり。こちらで

チームバチスタの栄光/海棠尊……このミス大賞受賞も当然の、圧巻の構成力。パッシブ・フェイズの一巡、アクティブ・フェイズの二巡の末、トラブルが起き、事件が解決と、完璧な構成で凡そケチのつけようがない。強いて言うならば、トリックとその種明かしが少々単純であることくらいだが、重箱の隅つつきであり、些細な問題に過ぎない。

赤毛のレドメイン家/イーデン・フィルポッツ……沼沢地ダートムア、コモ湖畔などを舞台にした、雰囲気豊かな恋愛小説にして犯罪小説。薄幸の未亡人や、それを狙うチャラ男、純朴な主人公、気難しい老船長などなどキャラクター描写が優れており、ゆったりとしながらも風情を感じる古典的な文体と相まって、味わい深い作品になっている。


A→読んで良かったと思える作品

ミスティックリバー/デニス・ルへイン……重い、お話。幸福を得たショーン、ジミーと、得られなかったデイブの違いは、「車に乗る/乗らない」だったのか、それとも「大切な妻に全てを話せた/話せなかった」という違いによるものか……。しかし「少年時代を懐かしむすべての大人たちに贈る、感動のミステリ」という説明は詐欺だと思うw


少年時代/ロバート・マキャモン……世界の捉え方が、少年と大人では違う。何にでも「常識的な説明」がつけられてしまう「大人」とは違い、少年の世界は魔術に満ちている。街には幽霊が、恐竜が闊歩し、愛車の自転車には意思がある。空へと届いた野球ボール、魔女、天才、そして殺人鬼。本書は、そんな「少年時代の世界(の見え方)」を、束の間思い出させてくれる良作である。


鳴門秘帖/吉川英治……ストーリー自体は、ちょっと突っ込みどころのある、オーソドックスなTHE・時代劇。ただ、「アネゴ肌で、男にスレてるけど、実は初恋で、好きな相手にはウブで健気」なヒロイン、見返りお綱のインパクトはなかなかのもので、萌え小説として読むなら結構評価が高い。見返りお綱を筆頭に、目明し万吉などサブキャラは良い味を出している反面、主役の弦之丞やヒロインのお千絵様に魅力が乏しいのは残念。

ロストシンボル/ダン・ブラウン……Bに近いA。面白いものの、前2作(「天使と悪魔」、「ダビンチコード」)に比べるとだいぶ落ちる。「悪役が倒れた時」が面白さの頂点なのだが、その後延々と種明かしが続くのは、「動(サスペンス)」と「静(うんちく)」が絶妙にバランスをとっていた前2作と比べ、完成度が低いと思う。そうはいっても、十分面白いのだが。


影武者徳川家康/隆慶一郎……タイトルに似合わない(?)ガチな歴史小説。時代は関ケ原~大阪冬の陣まで、二郎三郎&風魔の忍びVS秀忠&柳生の暗闘が繰り広げられる15年間を描く。
二郎三郎に訪れた、老年の青春。やっと巡ってきた充実した男の一生。羨ましくも、清々しい。
唯一気になったのは、作者が登場しては、××がここで不可解な行動をとったのは『●●としか考えられない』というような自説を開陳する機会が多いのだけど、そんな強弁せずに、普通に小説として書いてくれてよかったんじゃないかな、と。そこだけ違和感があった。

国盗り物語/司馬遼太郎……前半の斎藤道山編が非常に面白い。魅力的な道山とお万阿さんの関係にしんみりとする。それに比べると後半の信長編はややパワーダウン。パワーダウンとはいえ十分面白いけど、光秀に魅力がなくて……。


警官の血/佐々木譲……代々受け継がれていく「警官」としての血。初代が無邪気なヒーローだったのに対し、二代目は暗黒面に堕ちながらももがき、三代目でとうとう吹っ切れてダースベイダーになったのは、警官としての成長とも言えるし、強靭なメンタルを手に入れるための成長ともいえるけど、
僕はやっぱり無邪気な初代が一番好きだった。「成長」なのか「立場」の変化なのか、「時代」の変化なのか……恐らく全部なのだろうけど。
あと、早瀬との対決の後に三代目が豹変する理由が全然わからなかった。そこを描くには尺が短すぎたと思う。

オレたちバブル入行組/池井戸潤……勧善懲悪モノ。日本版ディック・フランシス……という印象を受けたが、多分フランシスを先に知っていて半沢直樹を後に読んだ人ってそんなにいなさそうなので、この表現で通じるかどうか。


ブレイブ・ストーリー/宮部みゆき……途中ややダレるシーンもあったが、全体的に完成度の高いファンタジー小説だった。ワタルの決断も納得。カッちゃんや香織、ルゥ伯父さんといった現実界の登場人物から、キ・キーマやミーナ、カッツなどの幻界の登場人物まで、魅力ある人物が多く楽しかった。

マヴァール年代記/田中芳樹……中世ハンガリーをモデルにした架空戦記モノ。マヴァール王国の内乱を描いた1巻が秀逸で、諸外国が絡んでくる2巻以降はややパワーダウンしたものの、それでも読んで損のない面白さ。ヒロインのアンジェリナの魅力はなかなかのもの。ただ、主役のカルマーンはやや無能で、悪役のヴェンツェルは劣化オーベルシュタイン。勝手に期待していた皇后アデルハイドは何もできずに死亡で残念。あと、この手の『合戦小説』は地図が必須だと思う。なぜつけないんだろう。
ファンタジー小説にはたいてい地図がついてくるけど、合戦小説にも地図は必須だよ!


Yの悲劇/エラリー・クイーン……250ページあたりで、婆さんの遺書が見つかってから急激に面白くなる。それ以降は怒涛の展開で、さすがオールタイムベスト常連。いつもこうならいいんだけど……。


災厄の町/エラリー・クイーン……今まで読んだ5つのクイーン作品の中で、最も読みやすく、最も飽きずに読めた、ドラマ性に溢れた良作。ただ、謎自体はあまりにも単純で、あろうことか迷探偵feeにも真相が推理できてしまったくらいなので、『謎解き目当て』の読者には物足りないかもしれない。
物語として面白かった。

毒入りチョコレート事件/アントニー・バークリー……Bに近いA。最終のチタウィックの推理が、今までの推理5つの良いとこどりをしたグランド・ルート的になっているのが構成の妙で面白いが、そのせいでチタウィックの推理=真相、のような雰囲気になっているのが果たして良いのか悪いのか。
『名探偵の推理=唯一の解』ではないのでは?という問題提起がなされた、アンチ・ミステリ作品でありながら、『一番最もらしい推理が最後に登場』というミステリ的な王道も踏まえてしまっているので
その辺が、それこそ『ミステリとアンチ・ミステリの良いとこどり』と捉えるか『中途半端』と捉えるかは難しいところ。
奇妙な読後感が味わえてそれもまた面白い。


第二の銃声/アントニー・バークリー……記事アリ。こちらで。

B→暇つぶし以上の有益な何かを得た作品

試行錯誤/アントニー・バークリー……チャーミングなおじ様主人公、トッドハンター氏の魅力が光る、楽しいミステリ。すっかり騙された。



起業の砦/江波戸哲夫……記事アリ。こちらで。





庵堂三兄弟の聖職/真藤順丈……記事アリ。こちらで。

起業前夜/高任和夫……Aに近いB。潰れかけた扶桑証券(どう見ても山一証券)をどうにか立て直そうと、頑張る主人公の物語。信頼してくれる部下、休日を過ごすテニス友達、不倫相手などもいて、事なかれ主義の上司との論戦など、リーダビリティに溢れる作品。
ただ、基本いい奴なのに相手が嫌がっているのを知りながら煙草をスパスパ吸う主人公とか、基本いい仲間たちなのに勤め先の事で皮肉を言った結果集まりに来なくなっちゃった仲間がいるとか、そういった『不要な』エピソードが謎。まぁ聖人君子なんてなかなかいないわけだけど、不必要にイメージを悪くする必要もないのでは? まぁでも面白かったよ。


後継者/安土敏……魔が差したとしか思えないひっどい後味の最終章はD評価だが、全体的にはまずまず楽しめた。卑劣な大手デパートにハメられ、会社の危機が迫る中、ゴルフの事しか頭にない遊び人の二代目が起ちあがる。大手デパートへの復讐鬼と化したヒロイン詠美ともども、見事に勝利する主人公。
と、ここまでは爽やか企業バトル小説だったのだが、悪役を自殺させたことにより後味が最悪なものになってしまった。しかも、悪役の自殺に加担した主人公のクズ伯父はお咎めなし。
ヒロインは主人公じゃなく部下と結ばれるし、本気で意味不明な最終章でござった。そこまでは面白かったよ、うん。







ライラの冒険:琥珀の望遠鏡/フィリップ・ブルマン……Aに近いB。3巻終盤に来てようやく、「イブ=ライラ、アダム=ウィル、蛇=マローン博士」の関係性が(私に)見えてきて、「聖書パロディのファンタジー恋愛モノだったか!」と気づいた瞬間から急激に面白くなった。ダイモンは「聖霊」かな? などなど気づけば気づくほど、完成度の高い作品だ。しかし最後の200ページに至るまで気づかなかった私も悪いかもしれないが、実際のところそこまでは退屈で仕方がなかったので、高評価するのも……いや、読解力のない私が悪いのか? いずれにせよ、「子供向けのファンタジー」ではなかった。


ハリーポッターと不死鳥の騎士団/J.K.ローリング……子供たちの『夢』の学園だったホグワーツ=ハリーポッターの世界も、作を追い、ハリーが年齢を重ねるごとに試練を増し、段々と『現実』の影がちらつき始める。亡き父に対するハリーの『尊敬』が崩れた事こそ、本巻最大の見所のように思う。
少年が大人になるためには、父を超えなければならない。というのは少年主人公におけるファンタジー系成長物語の鉄則であり(注:不思議な事に、少女主人公や女性の保護者においてはこのような鉄則は見受ける事が出来ない)、名付け親(??後見人の事か?)のシリウスの死もまたそれに準ずるモノと言える。となると、次巻「謎のプリンス」では恐らくハリーの最大の庇護者であるダンブルドア、もしくはハグリッドあたりが亡くなるというのが『少年主人公のファンタジー系成長物語』の鉄則ではあるが、さて……。


ハリーポッターと謎のプリンス/J.K.ローリング……16歳になって、恋愛に青春に大忙しのホグワーツ。その裏で、恐るべきヴォルデモートとの闘いも熾烈さを増していく。そんな第6巻は、ロンの心理描写が面白い。あがり症の彼を、ハリーが必死に励ます姿がおかしい。ロンとハーマイオニーの関係性も読みどころだ。一方でシリアス面では、ダンブルドアがついに亡くなってしまう。前巻を読んだ時の予想が当たっちゃったな。ただ、この巻は良いのだけど、最終巻にあたる次巻「死の秘宝」がガチシリアスバトルばかりになりそうなのが心配。ハリーポッターシリーズは、学園生活は面白いんだけど、バトルシーンは概してあまり面白くないんで……。


デイビッド・コパフィールド/チャールズ・ディケンズ……大叔母や女中のペゴティ、ミコーバーにユライア、空気の読めない医師などなど、キャラ描写は非常に巧いがとにかく長い。


歌姫/エド・マクベイン……偽装誘拐の皮肉な結末が印象深い。

殺意の楔/エド・マクベイン……

クレアが死んでいる/エド・マクベイン

さよならダイノサウルス/ロバート・J・ソウヤー


樽/クロフツ……容疑者候補が少ないせいか、事件に身を入れて読む事ができて面白かった。かなり複雑なトリックとともに、それよりも読み進めるごとにどんどんと謎が増え、容疑者候補への心証が変わっていく、英仏海峡を行き来する樽よろしく、ダイナミックな展開が楽しい。

マイ国家/星新一(ショートショート集)


C→暇つぶし程度にはなった作品

Zの悲劇/エラリー・クイーン……語り手サム嬢のおかげか新訳のおかげか、読みやすく飽きずに読めたが、事件自体は甚だどうでも良かった。読んでもいいし読まなくてもいい作品だと思う。

10プラス1/エド・マクベイン

熱波/エド・マクベイン

ライラの冒険:神秘の短剣/フィリップ・ブルマン

三国志/吉川英治……記事あり。
こちらで。

起死回生/江上剛……銀行の汚さを全編にわたって読まされた印象。最後の50ページで好転し、ハッピーエンドに終わるため、読後感は爽やかかもしれないが、それまでが長すぎw 

トレント最後の事件/E.C.ベントリー……「ミステリに恋愛要素を入れてはいけない」というふざけた暗黙の了解を打ち破った勇気と、その功績は称えたい。作品としては悪くはないものの、面白くなるまでに時間がかかりすぎる気はする。半分を過ぎてから少し面白くなります。


ハリーポッターと死の秘宝/J.K.ローリング……シリーズ最終巻として、今まで読んできた読者が読む価値はもちろんある。スネイプ先生の想いや、ダンブルドアの正体(?)など読みどころもないわけではない。ただ、「学園生活は楽しいけど、シリアスバトルはあんまりおもしろくないなぁ」と思っていた一読者(僕です)にとっては、シリアスバトルが連続するこの最終巻は「読む前から分かっていた」とはいえ、ちょいしんどかったです。

ハリーポッターシリーズ全体の感想はこちらで記事にしています。


巨大投資銀行/黒木亮……バレあり。こちらで。

宮本武蔵/吉川英治

エジプト十字架の謎/エラリー・クイーン……Bに近いC。新訳で読んだせいか、「Xの悲劇」(旧訳で読んだ)よりも格段に読みやすかった。感動はないものの、まずまず楽しんだが、内容のせいなのか訳のせいなのか不明なので、(Xの悲劇ともども)評価しづらい……。




D→自分には合わなかった作品

Xの悲劇/エラリー・クイーン……謎解き自体は問題ない。しかし、事件の全容がわかる残り60ページを除いて、非常に退屈した。


途中の家/エラリー・クイーン……途中までは楽しく読めたが、最後の30ページは酷すぎる。
登場人物の行動が『あまりにも』作為的。犯人はもう死んでいて、周囲の人間は全員それを知っているのに、ご丁寧に敢えて犯人の名を伏せて長々と推理をし出す名探偵と、いちいち驚く周囲が謎。
いやいや、君たちはもう犯人の正体を知ってるでしょ?
 
パイプ煙草は男性しか吸わないから犯人は男性、とかいうひっどい推理。
しかもそれが推理の根幹にあるので、「パイプ煙草を吸う女性」がいたら、その時点で推理は崩壊してしまう。

「自分の名前が入ったマッチ箱を持参して、犯行現場で煙草を吸う犯人」。バカすぎて涙が出てくる。
この事件の教訓は「犯行現場では煙草は我慢しましょう」。
煙草さえ吸わなければ発覚しなかったよね。名前入りのマッチを犯行現場に持参するほどの間抜けは、
殺人なんて大それたことをするべきじゃなかったですね。


オランダ靴の謎/エラリー・クイーン……登場人物に全く魅力がないので、誰が犯人だろうがどうでもいい、ロジック一辺倒の旧きミステリ。好きな人は好きなんだろう。

ギリシア柩の謎/エラリー・クイーン……犯人は単なる小悪党だし、事件自体が面白くない。

黄色い部屋の謎/ガストン・ルル―……徹頭徹尾、面白くない。その上に、凶悪犯罪者をわざわざ探偵が逃がすという結末もイミフ。同情の余地がある犯人とかならまだしも、こんな野郎を野放しにするとかあり得ないでしょ……




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