悪意なく人を押しつぶす「死神=固定観念」と、それを打破する6人の仲間
本の裏にある紹介に『心暖まるサスペンス』とあります。
僕は癒しを求めているので、その紹介に飛びついたわけですがこれがなかなかの劇薬で、精神的にしんどい読書にw
とはいえ、名作だと思います。
主人公は55歳の童貞男ケネス君。すっごくいい奴だけど、今まで女性に縁がありませんでした。
彼は32歳の貧乏な女性ローズマリーと出会います。彼はローズマリーを金銭的に助け、無事結婚!
しかし、幸せは長く続きません。
ローズマリーの起こした事故によりケネスは足に怪我を負います。
そこでこの二人の生活を助けるためにやってきたのが、ケネスの妹である『死神』エセルです。
「自分が正しい」、「あなたたちはわかっていない」とマウントを取る性格で、
二人の家に住み着き、新婚生活を仕切り出してしまいます。
事故に遭ったのはローズマリーがケネスを殺したかったからでは?
だって23歳も年下のローズマリーが、財産以外でケネスと結婚するわけないじゃん。
結婚して財産ゲットしたら、ケネスが死んでくれた方がいいに決まってる。
隣に独身(バツイチ)イケメンの男性が暮らしているし、ローズマリーはそっちを狙っているのでは?
すごく仲が良さそうよ。
でも大丈夫、兄さん(ケネス)は私、エセルが守ってあげるからね!
えっ、ローズマリーはそんな娘じゃない? 兄さんは何もわかっていないのね。
世間ではこんな事件はザラにあるわ。
ローズマリーが兄さんと結婚したのはまさか自分の魅力によるものだと思うの?
だって55歳まで童貞だった兄さんなのよ? お金目当てに決まってるじゃない。
お金をゲットしたら、次は楽しみたくなるに決まってる。
離婚を考えているか、もっと酷ければ兄さんを殺すかもね。
でも大丈夫よ、私だけはちゃんとそういうの解ってるから。
いやぁぁぁぁ、こいっつ読んでてほんっとつらいわ!!
僕の親戚に、こういう人いるんですよ……。
僕、その人の前だと自分が無力な幼稚園児になった気がするんです。
対等な立場というのが初めから望めず、「正論を言う親戚(エセル)」と「わがままを言う僕」という構図に何故かいつの間にかなっているんです。
僕(他人)がどう感じるかとかには興味がないのかなんなのかは知りませんが、僕はこの人とは、『邪悪だとは思わないけど、なるべく顔を合わせたくない』です。
というわけで癒されるどころか読んでいてしんどいですw
全然癒されねぇ~……。
そして哀れケネス君はエセルの言う事に『洗脳』されて、遂に自殺未遂を起こしてしまいます。
しかしそこで、ケネス君は毒薬をうっかりバスに置いてきてしまう……。
消えた毒薬を求めて、たまたまそこに乗り合わせたバスの運転手、女性看護師、金持ち老婦人、画家+主人公・ローズマリー・ポール(隣の家のイケメン)・ジニー(ポールの娘)などが集結。
団結して毒薬の探索を行うとともに、世の中そんな捨てたものじゃないということ。
ケネスとローズマリーにかけられた、エセルの『洗脳』をみんなが解いていくのです。
ケネスとローズマリーは心底、愛し合っていたのです。
それを惑わし、揺るがしたのはエセルの『自信に満ちた憶測』でした。
他にも運転手のリーと看護師のヴァージニアがこの一件で結ばれるエピソードがあるなど、なかなか心暖まる良い物語になっております。
[引用本文]
「なぜ人間は、誰かがいる場所に行きたがるのでしょう。それは、その誰かの見かけがいいからというだけでは説明できません。その誰かが若いからというだけでも説明がつきません。
何よりも大切な事は、どれだけの楽しみを共にするかってことです。お互いに一緒にいる事を楽しむという、それだけの事を言いたいんです。なぜみんなはこれはすてきなことだって言わないんでしょう。これはすてきなんです。とてもすてきなんです。世界中で一番すてきなことなんです」
ネット社会の今、ネガティブな情報は世の中に沢山存在しています。
テレビのニュースでも、新聞でも悲惨な話を次々と聞きます。
口さがない友人・隣人の口から聞かされることもあるかもしれません。
そういう『ネガティブな一般常識』に惑わされ、心を病んでしまう事のないように。
世界の『暗いところ』『悪いところ』だけに行きがちな目を、明るい方向へ見開けるように。
僕自身、周囲の『ネガティブな一般常識』に押しつぶされ、悲観的な気持ちになりがちだからこそ、
もっと明るく、もっと希望を信じて生きていきたいと思いました。