2020年10月

マンスフィールドパーク感想+ジェイン・オースティンについて

優しい田舎で、いつまでもずっと (オースティン作品についてのオマケ付き)

イントロ

貧乏な実家から裕福な親戚の家(マンスフィールドパーク)に引き取られた、主人公ファニー。
環境の激変に戸惑う彼女を支えてくれたのは、従兄のエドマンドだった。

ジェイン・オースティンは『少女漫画』だ、と思う。

『高慢と偏見』、『分別と多感』のようなタイトルや、
純文学にジャンルされている事から、何となく難しそうと敬遠する方もいるかもしれませんが、実にもったいない。
お嬢さま主人公が繰り広げる恋の、人生の一幕。
最後は必ず結婚をして、ハッピーエンド。
結婚の後が大変なのでは?とか、そんなことは言いっこなし。
『主人公たちはいつまでも幸せに暮らしました。めでたし、めでたし』。

のんびりと紅茶でも啜りながら、19世紀イギリスへ思いを馳せる読書の旅は、世知辛い現実を忘れさせてくれる、極上のヒーリング・タイムをお約束します……。

絶賛現実逃避中の私は今、*オースティンの一気読みをしている最中で、本作『マンスフィールドパーク』には、とりわけ癒されました。

主人公ファニーについて

巻末の解説によれば、どうも好き嫌いが分かれるようですが、
個人的には、女主人公のファニーがお気に入りです。
この本の癒しの大部分は、彼女の確固たる『道徳観』によるものでした。

確かに、少しお堅すぎるかなと思う部分はあります(不倫を題材にした演劇への批判など)

しかし、『結果を得るためには手段を選ばない・実用性・数字』ばかりが重視される現代で忘れられがちな、
『人と人との絆、相手を思いやる気持ち、優しい性格』といったものを体現してくれるファニーの存在には、大いに癒されました。
時の止まったような田舎のお館で、大好きな人と結婚し、ゆっくりと過ごしていく……。
捉え方によっては、閉塞感を覚える、ただ老いていくだけの退屈な人生にも思えますが、ファニーはそれで満たされている。
そうしたもので満たされるファニーのような人になりたいと、憧れを抱きながら読みました。

考えてみれば、この作品の内容はそこまで明るいわけではありません。
むしろファニーにとっては、つらいシーンも多かったと思います。
家族以外にロクな友だちもいないし(ミス・クロフォードはぼくの感覚では友だちではない)。

しかし、読んでいる最中からずっと感じていたのは、『居心地の良さ』。
ファニーを中心とした、『マンスフィールド・パーク』に、ずっと滞在していたい、ずっと読み続けていたい。
そんな読書時間を過ごせました。

おまけ 個人的 オースティン作品ランキング(S~E)

A+ 高慢と偏見
 マンスフィールドパーク
A- 説得
B+ 分別と多感 エマ
B  ノーサンガーアビー

これから エマ(読み終わったらリストに入れます)

『高慢と偏見』のみ、ずいぶん前に読んだ作品。
初オースティンでもあり、ドラマ版、映画版共に見てかなりハマりました。
ドラマ版のダーシーがめちゃくちゃカッコいい!

残りの作品は全て今年読んだのですが、その中では『マンスフィールドパーク』がトップです。
作品の面白さもさることながら、オースティン作品の場合、『主人公&ヒーロー』の2人をどこまで好きになれるか、で自分の評価が決まっているような気がしますw

19-20 個人的 ALL NBA

長かった19-20シーズンもようやく終わりました。
まずはロサンゼルス・レイカーズの優勝、おめでとうございます!

さて、この記事では今シーズンの、個人的NBA選手ベスト5と、
印象に残った選手について書いてみたいと思います。



PG ジェームズ・ハーデン(ロケッツ)
SG  ジミー・バトラー(ヒート)
SF レブロン・ジェームズ(レイカーズ)
PF アンソニー・デイビス(レイカーズ)
C  二コラ・ヨキッチ(ナゲッツ)



ファイナルMVPであるレブロンと、その相棒デイビスは外せない!
ハワードも加えたこの3人は、まさに『サイズの暴力』。
Cにはミラクル・ナゲッツの万能型センター、ヨキッチ
残りの2人は、ヒートをファイナルまで導いたバトラーと、シーズン得点王のハーデンを選出した。




★記憶に残った選手たち

PF ヤニス・アデトクンボ(バックス)
C  ブルック・ロペス(バックス)


プレーオフでは残念だったが、東地区のレギュラーシーズンを引っ張ったバックスからはこの2人。
アデトクンボはフリースローさえ改善できれば、圧巻のドライブ力でインサイドを制圧できる。
ブルック・ロペスは、改めて『3が打てるセンター』の貴重さを知らしめた。


SG マーカス・スマート(セルティックス)

着実に成長を遂げるテイタムやブラウンも捨てがたいが、セルティックスからはハッスルプレーでおなじみのスマート。
プレーオフでは自らが得点源になる試合もあり、セルティックスに活力を与えていた。


PG ジャマール・マレー(ナゲッツ)
SG ドノバン・ミッチェル(ジャズ)
C ルディ・ゴベア(ジャズ)


今プレーオフで素晴らしいファイトを繰り広げたナゲッツVSジャズ。
マレーVSミッチェルの点取り合戦は、胸を熱くさせてくれた。
コロナ感染第一号として不名誉な意味でも印象に残ったゴベアだが、ナゲッツ戦ではヨキッチとの対決に見ごたえがあり、試合を盛り上げた。

PG ルカ・ドンチッチ(マーベリックス)
PG ディミアン・リラード(ブレイザーズ)


驚異の2年目ドンチッチは、将来NBAナンバー1選手になる日も近い。
ロゴ・スリーに代表されるクラッチ・タイムのリラードは、昨シーズンに引き続き鮮烈なインパクトを与えてくれた。


★MIP・若手枠

C バム・アデバヨ(ヒート)
SG タイラー・ヒーロー(ヒート)


シーズン前はそこまで注目していなかったにもかかわらず、シーズンが始まれば大きく飛躍を遂げたこの2人が、ヒート躍進の原動力となった。ケンドリック・ナンも入れてもいいかもしれない。

SG ルーゲンツ・ドルト(サンダー)

まさかのハーデンストッパー。ゲーム7では得点まで量産した、驚きの2way

★再評価・ベテラン枠

PG ケンバ・ウォーカー(セルティックス)
PG カイル・ラウリー(ラプターズ)
PG ラジョン・ロンド(レイカーズ)
PG クリス・ポール(サンダー)

アービングの抜けた穴がウォーカーで埋まるのか? と思いきや、セルティックスのチーム・バスケをスムーズに回し、アービングを超える貢献度を見せたウォーカー。
昨季はレナードの引き立て役として渋い活躍を見せたが、今シーズン、テイク・チャージ職人としても輝いたラウリー(オールスターのテイクチャージは忘れられない)。
レブロンの負担を軽減した名PGロンドも渋い活躍。
再建モードを一掃するリーダーシップを見せたクリス・ポールは、ロケッツをあわや1回戦敗退まで追いつめた。


以上、プレーオフに進んだチームの中から20人について触れてみました。
もちろん、ジャ・モラントやザイオン・ウィリアムソンなど、プレーオフ外で活躍した選手もいましたが、やはりプレーオフで活躍してこそかなって。

残念な結果に終わったクリッパーズからも選べませんでした。
レギュラーシーズンだけなら、レナードやハレル、ルー・ウィリアムズなども選びたかったけど。


にわかNBAファンなので、まだよくわからない事も多いですが、来シーズンも楽しみです。


最後に、コロナ禍の中で、無事感染者を出さずにシーズンを完遂させたNBA関係者全員に、
そして、天国で見守っているコービー・ブライアントとディアナさんに、
この記事を捧げます。

トマス・クックの「緋色の記憶」(重バレ感想)

目の前に広がる、自由な人生を夢見て

舞台は1920年代のアメリカ。
『閉塞的な村』に住む少年ヘンリーは、『自由な世界』を夢見ていた。

そこにやってきた、『アフリカ帰り』の美人教師エリザベス。
そして、バイロンを愛する国語教師のリード。
村に吹き込んだ、『自由』の風。
ヘンリーが見守る前で、二人のロマンスは緩やかに、じれったくなるほどにスローに育まれ、そして気づいた時にはなだれのように崩れてしまう。

エリザベスとリード、ヘンリーに想いを寄せる少女サラと、四人で雪山に登った日、それぞれの人生はキラキラと輝いていた。

輝いている、とヘンリーは感じた。

不自由な大人たち

リードには退屈な妻アビゲイルと娘のアリスがいた。
エリザベスとリードの愛は、赦されぬ不倫の愛だった。
二人の仲に、アビゲイルの存在が影を射す。

『自由』の象徴として、リードはボートを作り、エリザベス号と命名する。
世界を一周することもできる、どんな場所へも行ける、二人のためのボート。
二人の愛を、ヘンリーはロマンチックな恋物語として受け取り、応援した。

けれどエリザベスもリードも、『自由ではなかった』。
どんなに退屈な妻だったとしても、リードは妻子を棄てられなかった。
『自由』を夢見はするけれど、それは決して叶わない願いだと、リードの『理性』は訴えていた。

そして、そんなリードの心にエリザベスもまた気づいていた。
だから、エリザベスはリードに別れを告げた。
愛の炎は消えないままに、二人の仲は終わりかけていた。

このまま何事もなく、愛を冷ましていくことこそ、最も現実的で、退屈で、閉塞的ではあるけれど、誰もが深手を負わない最善の選択だった。
それがオトナの選択だ。
自由ではないけれど、責任を伴うオトナの、つまらなくとも道義的な選択だった。

自分で自分を裁くこと

けれど、ヘンリーはそうは思わなかった。
二人の『自由』を縛るリードの妻アビゲイル。
彼女さえいなければ、リードとエリザベスは『自由に』恋ができると、そう思ったのだ。
その結果、アビゲイルは死に、リードは死に、サラは死に、エリザベスは死んだ。

犯罪によって終わってしまう、『少年時代』の物語。
若さゆえの軽率さ。けれど、それだけでは片づけられない罪。
彼は終生決して人を愛さず、閉塞的な村に住み続けた。
彼の罪は誰も知らない。故に裁かれることもない。
けれど、罪の記憶は消せない。どこまでもどこまでも、己についてくる。

刑法による処罰は、実は救済なのかもしれないと思うことがある。
誰も罰してくれない罪こそが、人を破壊してしまうのではないかと思う。
犯罪者は定められた懲役期間をきちんと勤め上げる事で、初めて罪を償い、己の罪悪感から逃れられる。
罪を犯した者に対する復讐や見せしめではなく、実は犯罪者を救うために、刑罰はあるのだと、そんなふうにも思う。

誰も裁いてくれない罪は、ヘンリーの心を40年、50年と縛り続ける。

ラスト、年老いたヘンリーは、唯一の生き残りアリスに再会し、彼女の肩に腕を回す。
「すまない」とだけ告げるヘンリーに、「かまわないよ、そんなこと」と笑うアリス。
50年前と同じように星空は煌めき、物語は終わりを告げる。

犯罪によって引き裂かれ、少年が、少年でいられなくなる物語。
『ミスティックリバー』や『解錠師』、『ありふれた祈り』など、現代アメリカ・ミステリでよく描かれるタイプのストーリーではあるけれど、その一つひとつの物語は、やはり重い。


解錠師

解錠師著者: スティーヴ・ハミルトン/越前 敏弥

出版社:早川書房

発行年:2012

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(それにしても、なぜみんな少年主人公なのだろう。
少女主人公が過去を回想するタイプのミステリは、今のところ読んだ記憶がない……)

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