2020年12月

筒井康隆「虚航船団」ネタバレ感想

1章 文房具たちの狂気

本書は、確実に『人を選ぶ』作品です。

内容は、文房具VSイタチの戦争物語。
全3章構成で、章を追うごとにハードルが上がります。

1章では、狂騒的な文房具たちがひたすら奇行を繰り返します。

数を数える事だけが生きがいで、数字の桁(999999→1000000)が上がる瞬間に爆笑する『ナンバリング』。

天皇を自称し、取り次ぎなしでは会話をしない『消しゴム』。

エロい事しか考えられない『糊』に、相手に必ず喧嘩腰で突っかかる『ホチキス』。
その他、『雲形定規』や『三角定規兄弟』など、愉快で頭のおかしな文房具仲間たちが、宇宙船内で大騒ぎ。

まず、この不条理ギャグの嵐が笑えないと、読んでいてつらいと思います。
①不条理ギャグが笑えるかどうか。これが最初のハードルです。

2章 酸鼻なイタチ族の歴史(前)

2章では、約200ページにわたり、イタチ族の歴史が壮大なパロディによって綴られます。
現実の西洋史(たまに日本史)のパロディが200ページも続くので
これがわからないと、読み進めるのは難しいと思います。

『イタチの最後っ屁』に引っ掛けて、『おなら』ネタが非常に多いのも特徴で、(まぁ、多分大丈夫だとは思いますが)おならネタが極度に嫌いな人にもつらいと思います。
少なくとも食事中に読みたい本ではないw

本を読むにあたり、前提となる世界史知識があるかどうか。これが第二のハードルです。

イタチ族は近隣の種族との政略結婚を重ね、
親戚同士、兄弟同士、親子同士が骨肉の争いを繰り広げていきます。
中世ヨーロッパで行われていた残虐な処刑法なども(イタチに形を変えて)表現されます。
まさに共食い種族としか言いようがないほど、イタチ族は殺し合いますが、
これは、実際に人類が辿ってきた歴史に他なりません。

やがてイタチの間に宗教が生まれ、宗教対立・宗教戦争も行われます。
移民・難民のスカンク族(ロマ+ユダヤ人)による売春なども行われるようになります。
屁農(農奴)解放運動なども起こります。

やがて時代は、レオナルド・ダ・ミンク(もちろんダ・ヴィンチ)やゾリランジェロ(ミケランジェロ)などが活躍するルネッサンス期へ。
このような感じで、歴史上の人物パロディが多数(おそらく100人近く)登場するので、元ネタがある程度わからないとポカンとなってしまうでしょう。
学生時代、世界史が大好きだった私は大丈夫でしたが、そうでない方がついていけるか、正直自信がありません。

身内同士でのおぞましい戦争・暗殺・謀略が繰り広げられるタイラ王朝は、やがてより残虐なオコジョ王朝へと繋がっていきます。
オコジョ王朝最後の王、ブル5世は明確にフランスのルイ16世を指しており、市民革命によってブル5世と皇后マリーは処刑されます。

この混乱期では次々にイタチが処刑されていき、彼ら彼女らは、処刑台の前で踊り、泣き、放屁し、脱糞します。
美人イタチの処刑が行われると、群衆はその下半身を持って帰り、
知名度の低いイタチの処刑には群衆が集まらないなど、この辺のブラック・ユーモアも切れ味がありますね。
やがて、クズレオン・ポナクズリ(ナポレオン・ボナパルト)の登場により、イタチ族の歴史は現代史へと突入していきます。

2章 酸鼻なイタチ族の歴史(後)

ナポレオン以後の歴史については、本書オリジナル展開もそこそこあるので、世界史知識をもってしても、少し混乱するところがあります。
以下、それぞれの国についてまとめます。

ドストニア→フランス+ソ連です。
ナポレオン(面倒なので、本書での名前ではなく実在の人物表記で行きます)登場後、ナポレオン3世が後を継ぎます。
やがて、カール・マルクスの社会主義思想が根付き、レーニンやトロツキー、そしてスターリンが登場します。

世界大戦(この世界では世界大戦は一度だけです。第一次大戦と第二次大戦のエピソードが、混在して描かれています)
後はスターリンの独裁が続き、数多くのイタチが処刑されます。

グリタイジョ合鼬国→アメリカです。
フランクリン・ローズベルト+トルーマンをモデルにした大統領が、マルタ会談で死亡した後、赤狩りが起こります。
暗殺をからくも逃れたケネディ大統領は長期政権を築き、ウォーターゲート事件などもありましたが、なんとか政治生命を繋いでいます。
ドストニアと激しく軍拡競争を行ないます。

メスカール→イギリスです。現代史ではあまり存在感がありません。チャーチルの後は、サッチャーらしき人物が後を継いだようです。

エコノス→日本+ナチス・ドイツです。
ヘド(江戸)幕府が倒れた後、アラマヒト(昭和天皇)の下で総統ヒドラ(ヒトラー)の独裁が始まります。
ヒトラーはその優勢思想から、劣等民族であるスカンク(ユダヤ人)絶滅計画を立て、大陸を侵攻していきます。

戦争末期になると、『屁風特攻隊』も登場

『「屁風」とは、たとえ燃料がなくとも、屁の勢いだけで飛んでいこうとする精神主義による命名であり、未熟な下士官のみによって屁風特攻隊なる自殺部隊も作られていた』

五年も前から敗戦が決定的でありながらその事実を王にも国民にも隠していたヒドラに対しアラマヒトは約二時間半にわたって大声で罵倒し、最後にはヒドラの顔を押さえつけその鼻さきを自分の肛門に押し込んで肛門腺分泌液を噴射した。ヒドラは胸を搔きむしりながら弱々しく「大君の屁にこそ死なめ」と呟いて息絶えた

といった、壮絶な展開により遂にエコノスは降伏します。
この辺りのシーンは出色でしたので引用させていただきましたが、2章のノリは全編こんな感じなので、この引用を読んで嫌気が指した方も、本書は読まない方が良さそうです……。

クスクス→朝鮮+ベトナムです。

資本主義陣営のアメリカと社会主義陣営のソ連が、代理戦争を行ないます。

というわけで、フランク王国あたりから現代までのおならにまみれた鼬族の歴史が描かれるのが、第二章となります。

終わりに

そして、第三章では鼬族と文房具がいよいよ戦争に突入するわけですが、個人的に、この部分についてはあまり書くことがありません。
作者の筒井先生まで登場し、これでもかとメタフィクションを強調している第三章に関して、
筒井先生が何を表現したかったのか、ちょっとよくわからなかったからです。

ただ、私はこの本を通して、神経症的な文房具たち一人ひとりの愚かさに、
人類の愚かさを見るような気がいたしました。

また、残虐で共食いばかりするイタチ族の歴史にもまた、絶望的なまでの人類の醜さを見るような気がいたしました。

余談(この部分については、コメントがついても反応しません)

あまり政治的な話を書くと気分を害される方もいらっしゃると思いますが、少しだけ。(嫌な方はここで読むのをおやめください!)

2020年は全世界にとって試練の年でした。

アメリカでは、白人警官が黒人を射殺するという事件が相次ぎ、
『アメリカファースト、白人ファースト』で国民を分断するトランプ大統領の醜悪な姿勢が、非常に目につきました。

全世界はCovid-19の危機に瀕していますが、とりわけ非科学的なマスク軽視の姿勢を貫いた、アメリカ・イギリス・スウェーデン・ブラジルといった国はとても高い代償を支払いました。
100年前のスペイン風邪の時代から、『反マスク連盟』なる集団は存在しましたが、過去の歴史から全く学ばず、人は愚行を繰り返します。

日本でも、観光業界の利権に塗れたGotoなる愚かな政策もあり、着実に感染者を増やし続けています。
(そんなお金があるのなら、医療や介護、低所得世帯への直接給付、検査拡充、消費税減税など、いくらでもお金をかけるべきところはあるでしょうに)

ウイルスを封じ込め、徹底してゼロ・コロナを目指したニュージーランドや台湾、アイスランドなどでは経済も順調に回復しているというのに、
経済再開を焦って感染者を増やし続ける愚かな国の政府は、
自らの愚かさにも気づかず、無策な『ウィズコロナ』を唱えながら、
どう考えても不可能な『マスク会食』なるパワーワードなどを散りばめて、
『感染者は国民の自助努力不足のせい』にしたい様子です。

『10万人あたりの感染者が0・5人』という非常事態宣言時の基準はいつの間にか忘れられ、『重症者が多くなければ大丈夫』『病院が逼迫しなければ大丈夫』、『重症者の定義を変えてみたので、まだ大丈夫』といった、
末期的な『何もしない言い訳・先延ばし楽天主義』が日本全土を覆い、
救世主ワクチンを待つだけの無様な状況。
おうちで読書を心がけ、なるべく外出はせず……そうは言ってもやはり外出は必要で、もはや、いつ、どこで感染してもおかしくない状況の中、
多くの人々は『コロナなんて見ない振り』をして、生活しています。

『虚航船団』に描かれたイタチと文房具の愚かさに包まれた世界で、
私たちは今日も生きていきます。
『自分にとって都合の良い切り取り方ではなく』・『多角的に、さまざまな情報を取り入れながら』総合的に判断していく。
私たち自身が、イタチや文房具にならないようにするには、そうする他にはありません。
そんな事を考えながら、暗澹たる年の瀬を迎えることになりますが、
皆さまぜひ、よいお年をお迎えください!

あ、最後に。
記事にはしませんでしたが、筒井先生でしたら

旅のラゴス

旅のラゴス著者: 筒井 康隆

出版社:新潮社

発行年:2014

Reader StoreブックパスAmazon

が実に面白かったです。ぶっちゃけると「虚航船団」よりこちらの方が好きです(笑:じゃあ記事にしろよ、と突っ込まないでくださいw)

ドラゴン麻雀ダークネス クリア(雑感想)

71点。

Splush Waveさんのドラクエ麻雀シリーズももう6作目。

「いつものドラクエ麻雀。その中ではあまり出来は良くないが、無難に楽しい」。
わかる人にはこれだけで伝わってしまいそう。
ドラクエ麻雀については、攻略法・紹介ともども以前書いているはずなので、
今回は本作のみの感想を箇条書きで書きます。

(いないとは思いますが、もし紹介・攻略などで質問があればコメントください。きちんと答えます)




・やはり結婚システムがないのは寂しい。その意味で「ドラゴン麻雀3・三部作」は神だった。

・序盤の難易度はやや高め。ギラ、イオ無双なこのゲームだが、ギラ、イオ共に使える魔法使い系のキャラが序盤は仲間にならないため。逆に表ボスのオルゴ・デミーラは弱い。

・僕の育て方が悪かったせいか、人間キャラの前衛キャラが不足していて、モンスターの方が強かった。
(普段はなるべく人間キャラでクリアするという謎のこだわりがあるんだけど、今回の前衛は配合を繰り返したキングヒドラに任せた)

今回は拍子抜けするほどエロテキストが淡白で、「お礼をさせてください」→「エッチ」→「おまんこ見られるの恥ずかしい」と、どのキャラでも大体この流れなのはちょっと……。前からこんなだっけ???
そんなわけで全然抜けなかった。

今回はシナリオがかなり雑。ドラクエ7が一応ベースっぽいのだけど、あまりうまくいってはいない。

・『ダークネス』部分はまぁ、これはこれであり。

なんだかんだ言って、やめ時が見つからないぐらいには面白かった。
ただ、「ドラゴン麻雀3部作」、「ドラゴンアカデミー3」、「究極幻想麻雀」ほどではなかったかな……。

2020年に読んだ本



S→味わい深く、いつまでも心に残りそうな作品

旅のラゴス/筒井康隆……
舞台は地球文明が崩壊した後の、どこか。
ラゴスは旅に出る。古代文明の知識を求めて、旅に出る。
まだ知らない何かを探して、これから出会う人を探して、
そうして過去に置いてきた大切な人を探して、旅に出る。
困難も多かったが、行く先々でラゴスは記憶され、愛される。
10代だったラゴスは60代で最後の旅に出る。
かつて愛した女性と再会するために。

ロマンチックで、抒情的な、素敵な人生の物語。
こんな人生を歩めたらいいのにな、と強く感じた。


再起/ディック・フランシス……
Aに近いS。
フランシス86歳でも衰えず、内向的だが熱い情熱を持つ主人公が攻撃を食らい、そこから仲間の助けを借り、不屈の闘志で立ち上がる競馬シリーズの醍醐味は健在。
シリーズ内でも上位レベルで面白いが、唯一の不満点としては『いつも通りすぎる』ところか。
考えてみればこのシリーズ、主人公も敵も必ず男性であり、最後は1対1の決闘である。それ自体が悪いことではないが、今回は共犯に女性がいたのだから、どうせなら悪女キャラをもっと際立たせても良かったのでは?
やはり英国紳士に女は殴れないのだろうか。

間違いなく良作だが、シッド・ハレー4部作(「大穴」→「利腕」→「敵手」→「再起」)の中では、
最高作「利腕」と2位「敵手」に比べてやや劣るのでSをつけるのは甘い?
いやでも面白いしな。良作!

VA文庫版 Planetarian―ちいさなほしのゆめ―/涼本悠一

人口過剰問題解決のために、宇宙へと乗り出した人類だったが、それも廃れた。
『スノーグローブ』では、昔は大人気だったデパート屋上のプラネタリウム。今は客がほとんど来ないそこで、少年との再会を待ち続けるロボット、ほしのゆめみの姿が描かれる。やがて第三次世界大戦が起こり、人類世界は壊滅的な打撃を受けた。

人類を破壊へと導いたのは大量の核兵器、そして自らが作り出した、
シスター服の戦闘用ロボットたちだった(『エルサレム』)。

時は過ぎ、人類は地中世界に潜って生息していた。
星を見る事もなく育つ地球人たち。
シスターの女神像(ロボット)が見守る集落に、一人の旅人が訪れる。彼は、手作りのプラネタリウムを子供たちに見せた。
子供たちの心には、今はもう見る事の出来ない星々が強く焼き付いた(『星の人』)

月に、チルシスとアマントというAIの双子がいた。
チルシスは言葉を覚え、すくすくと育ち、アマントは『船』を作った。
やがてチルシスは、言葉を伝えるため、地球へと旅立った(『チルシスとアマント』)

全体を通して言えることは、『終末モノSF』+『(アシモフの)ロボット』+『キリスト教』の3点がモチーフになっていること。
海外SFで言えば、アイザック・アシモフのロボット三原則をベースに、
レイ・ブラッドベリの終末観を味わえる、しみじみものSF。


はじまりはセントラル・パークから/アーウィン・ショー……幸福に暮らしていた一家が、子供が巣立っていき、パパとママのやりたい事も変わっていって愛情はありながらも離れていく、しんみり系作品。
何とも言えない余韻。

三国志/北方謙三……記事はこちらに書きました。

インフェルノ/ダン・ブラウン……記事はこちらに書きました。

ありふれた祈り/ウィリアム・ケント・クルーガー……
90点を超える勢いだった中盤までと比べ終盤少し失速した感はあるが、
年間トップ10には入るであろう作品。
特に、前半の幸せだった家族、父と、姉のアリエル、主人公、弟のジェイクの5人の関係性が暖かい(母も一応入れてもいい)。
また、目の見えないエミールと耳が聞こえない自閉症のリーゼ、
そしてエミール以外にリーゼが唯一心を許す、どもりのジェイクの関係も良い。酒に溺れながらも優しいガスが新たな幸福を掴み立ち直っていく姿や、一度は崩れかけながらも再び取り戻した父母の絆も非常に暖かく、繊細で読ませる。
やや気になるのは後半。
町で次々と人が死に、姉のアリエルも犠牲となってしまう。
この物語のテーマは、キリスト教的な『人を赦すこと』にあると思う。
母は父を赦したし、ジェイクはリーゼを赦した。
しかし、父はエミールを赦せたのか、主人公や母はエミールとリーゼを赦せたのか。
もし赦せないのだとしたら、果たして『罪』が誰にあったかを明示する意味があったのか
(エミールの罪は、明かさずとも読めばわかるようになっている。リーゼはわからないが、果たして裁くことも赦すこともできないのならば、
『犯人を見つける必要があったのか』)。興味がある
割と急いで読んじゃったせいもあり、ぼくの読解力不足もあって
その辺がなんだかしっくりこずにモヤモヤが残った。
とはいえ、読み終えた後、主人公が過ごしたニューブレーメンの一夏が、読者の心に香るような素晴らしい作品でした。11歳のジェイクが、神。主人公はヘタレ。


ナイチンゲールの沈黙/海堂尊……
前作「チームバチスタの栄光」が、ミステリという枠組みの中での論理的美しさを表現していたのに対し、
作者は本作で、ミステリという枠組みに頼らずとも詩的物語の美しさを表現してみせた。
個人的には奇策(一発屋ともいう)である「バチスタ」の方が印象深いけれど、逆に本作では奇策に頼らずとも面白い作品を生み出せる事がわかり、作者への信頼感が増した。
瑞人と由紀、そして小夜の関係性。小夜の歌に乗せて、由紀が海辺に舞うシーンが殊更印象深い。
次作も読みます。

マンスフィールドパーク/ジェイン・オースティン……
貧乏な家から裕福な親戚の家(マンスフィールドパーク)に引き取られた、内気な主人公ファニー。環境の激変に戸惑うファニーを支えてくれたのは、従兄のエドマンドだった。
という感じで始まるラブストーリー。

『田舎の優雅なお館』感がすごく居心地が良かったです。
「田舎に引きこもって、大好きな人とずっと一緒に年を重ねる幸せ」というのは、なんだか少し物足りないような気もするけれど、
それで幸福を感じるファニーの心境に癒されました。

詳しい感想はこちら


吉永さん家のガーゴイル11巻/田口仙年堂(再読)……
再読のつもりじゃなかったんだけど、このブログを検索したら9年前(!?)に一度読んでたわ……。
まぁとにかく、面白かったし癒されたのでおk。
バカ騒ぎの中にも優しさが混じるこのシリーズは、心の清涼剤ですね


文学少女と飢え渇く幽霊/野村美月……
まず、この作品はエミリー・ブロンテの『嵐が丘』のオマージュ作品である。二次創作、と言っても良いぐらい、『嵐が丘』の魅力に頼っている部分がある。そこを割り引くかどうかが難しいけれど、作者は明確に『嵐が丘』のオマージュであると明示しているので、パクリではない。
現代日本を舞台に、『嵐が丘』で描かれた、狂おしく鮮烈な愛憎を見事に再現し、更に一ひねり加えた
『ライトノベル版 嵐が丘 ver1.5』。
古典名作でありながらややとっつきにくい『嵐が丘』の猟奇的な狂愛そのままに、魅力を更に加える事に成功したと感じた。ただし、全300ページ中、面白くなるのは200ページ以降とスロースタートなのはネック。
殺して、犯して、吐いて、拒んで、奪い尽くす愛。
叩いて、縛って、鎖を打って、刺して、憎む、愛。
邪魔する者を全て殺して、
時を戻して、親族全て殺し、結婚さえも利用して、
ただ、相手の心に憎しみを刻みつけることで、
自分を覚えていてほしい、
そんな愛の物語ですね。

文学少女と慟哭の巡礼者/野村美月……感想はこちらで


文学少女と繋がれた愚者/野村美月……
このシリーズの特徴でもある、クライマックスの盛り上げ方、遠子先輩の口を通じて語られる作者の『魂の叫び』は必読。
過去の失敗に『繋がれ』て進めなくなったすべての『愚者』への、エール。
『どんな時も、心に理想を掲げる愚か者であって。失敗を恐れず行動する愚か者であって』。

一方、武者小路実篤の『友情』を『恋と再生の物語』と読み解くことはもちろん可能だけれど、前作の『嵐が丘』ほどの近接性はないような気がした点。
あまりにも小西さんがかわいそうで、結ばれて欲しかったという気持ちが1点で、ちょっとモヤッた。
けど、やっぱりこのシリーズ大好き。3作読んで全部85点以上なので、残り5冊大切に読みます。


クレイジーフラミンゴの秋/誼阿古……
中学1年生の女子、晴の初恋が描かれる作品。
「クレイジーカンガルー」と並んで、いやぁな感じのリアリティが強い作品だけど、
「カンガルー」の男子学生生活は全くなじめなかったのに対し、
こちらの「フラミンゴ」の方が心情的には共感できた。
同年代の男子の『ガキ臭さ』と、自らもまた『オトナとコドモの中間にいる、女子主人公』。
そして、年上の男性に感じる憧れと恋。
切なくて、良い作品ですね。
誼阿古はこの2作しか出してないけど、売れなかったのかなぁ。
明らかに売れそうな作風じゃないけど、『フラミンゴ』の方は良かったのでまた書いてほしい

A→読んで良かったと思える作品

日本アパッチ族/小松左京……記事を書きました。

虚航船団/筒井康隆……記事を書きました。

五番目のサリー/ダニエル・キイス……
堅物で何もできないオドオド系のサリー、
みんなのまとめ役デリー、
知的で芸術を愛するノラ、
奔放でエッチ大好きなベラ、
乱暴で暴風のように物を破壊しまくるジンクス。

一つの身体に5人がいる、そんな物語。
ラスト、1人の人間になったサリーだけど、後ろ盾がいなくて本当に1人で生きていけるのか少し心配……

緋色の記憶/トマス・クック……感想はこちら

わたしの本当の子供たち/ジョー・ウォルトン……
パトリシアの『選択』(マークと結婚するか、しないか)が世界の運命を変えた理由を、【カオス理論】で説明するのはさすがに乱暴すぎやしないか?と思うので、SFというよりファンタジーと考えるべき作品かなと思った。マークとの結婚を選べば、悲惨な家庭生活が待っているし、マークとの結婚を選ばなければ大切な人を手に入れ、そして失う未来が待っている。
前者の人生はくすんではいるが、離婚後は概ね平穏で、
後者の人生は輝いてはいるが、大切な人々は次々に死んでいく。
この、ヒロインの人生選択において、
世界の変動は(核兵器使用による)『甲状腺がんの多発』という事象以外に特に変動はないため、
ヒロインの人生選択で、世界の歴史まで変える意義が個人的には見いだせなかったのは
僕が『世界平和』にほとんど興味がなく、『個人の幸福』を願う人間だからだろうか

作品内では『個人の幸福』と『世界の幸福』が対比されているように感じるけど、
どう考えても『個人の幸福』にしか興味がないので、
そこは対比にならないんだよなぁって。
しかし、本当にくすんで冴えない結婚生活が、『不幸な人生』なのかはちょっとわからないところはある。

どちらのルートをたどっても、最終的には認知症になって老人ホームに入れられてしまう。
まぁ、それが人の一生というものなのかもしれない。


鳥の歌、いまは絶え/ケイト・ウィルヘルム……
個性を殺し、均一化したクローン人類は、突発的な環境変化についていけず、やがて滅びていく。というお話。
面白いんだけど、やってることの割にどぎつくないのは、良し悪しかな。もっと抉っても良かった。
たとえば、クローンを大量に作って奴隷のように働かせるシーンとか、人体実験に使うシーンとか、繁殖用(!)の女性を麻薬付けにするシーンもあるんだけど、かなりさらっと書いてあるので、全然メンタルには来ない。
まぁそれでいいんだけど、突き詰めても良かった気もする。

人間の個性を認めず、一つの指標として見ると、こういうふうに命を大事にしない世界になる。
クローンでたくさん作れるし、みんな同じかおしてるから、使い捨て、みたいな。
クローン技術自体は良いんだけど、クローンで作られた「人間」にも「感情」はあるので。
それは、使い捨てされていく、私たち現代日本人にも言えることですが。

産霊山秘録/半村良……

人々の祈りを集める産霊山と、その秘密を知り、超能力が使える『ヒ』の一族
明智光秀として、坂本龍馬として、新選組として、彼らは日本の歴史に干渉してきた
信長の延暦寺焼討からタイムスリップして、東京大空襲の日に出現した『ヒ』の若者の数奇な人生も面白い。
何が凄いって、前半は歴史小説みたいな感じで、信長~家康の時代を描き、
新選組の天然理心流VS竜馬の北辰一刀流みたいなチャンバラが描かれるのに、
後半はB29の東京大空襲や、ピストルを使った暴力団抗争やら、挙句の果てには月へワープしたりと、一つの作品にこれだけの要素が詰まっている。
そして、それがギリギリのところで破綻していない、見事な力作だと思う。
まぁページ数の都合か、明治以降の「ヒ」の一族についての描写がないのは残念だし、明治維新あたりも駆け足だったりするし、
ハッタリがちょっと説得力に欠けたりはするけれど(ハッタリの説得力不足が主な減点要素)。
オシラサマはどうなったのか、坂本竜子(竜馬の嫁)はどうなったのか、海外の『ヒ(エ)の一族』は誰がいるのかなどなど、気になる事はあるし、
更に言うなら、月面『産霊山』は誰がなんの目的で作ったのだろう?というのもあるけど、後者に関しては、
「神が作った」でいいのかもしれない。

あなたの魂に安らぎあれ/神林長平……
ディック的世界を完全に継承した、和製ディックとも呼ぶべき作品。
が、最後の4分の1にすっきりとしたカタストロフが用意されており、もやもや感が残るディックとは異なる読後感になっている。
最初の語り手だったみつよしが、突然スイッチが入ったように頭がおかしくなったのは驚いたw



四日間の奇蹟/浅倉卓弥……
知的障碍者の千織と、過去の悔恨を抱え続ける元ピアニストの如月。
2人がある日訪れた施設(重度障碍者居住ホーム)は、慈しみに満ちた真理子たちスタッフが運営する、楽園だった。
そこで起こった、四日間の優しい奇蹟の物語。「いい話だなぁ」と思うし、ディテールもきちんと描かれていて心に残りそうな作品なのだけど、
読者が『奇蹟』を無条件に受け入れられるかどうかで判断が分かれそう。
個人的には、「そんな事があってもいいんじゃない?」とも思う一方で、童話のハッピーエンドのような釈然としない気持ちも残る。
あと結局、最後、千織はどうなったん? 障碍者じゃなくなったってことでいいの?

文学少女と穢名の天使/野村美月……

文学少女と月花を抱く水妖/野村美月……

夏服を着た女たち(短編集)/アーウィン・ショー……
生々しくも、うまくいかない恋愛模様が多い短編集。
正直、(恋愛相手としては)ロクな女性が出てこないので、読んでいて厳しかったw
恋愛なんてするもんじゃないですね、と思ってしまったw

吉永さん家のガーゴイル12巻/田口仙年堂……
いつまでも時が止まっているかのような、愉快な御式町商店街にも、季節の移り変わりはある。
何より吉永家の長男、和巳が高校を卒業し、晴れて大学生になるのだ。
今まで相思相愛ながらも、『何となく』付き合ってきた後輩、片桐桃とも一波乱が起きたが、晴れて告白し、結ばれる。
「ガーゴイル」全15巻、時が動き出した12巻。

12巻単独の感想を書くなら、恋物語として悪くないと思うけれど、サイドエピソードとして流れる『チャック』の物語はインパクト不足、かなって思った。
和巳と桃の恋愛模様の話としては満足です。

月と六ペンス/サマセット・モーム……
型破りな天才画家、ストリックランドの人生を描いた作品。
40歳で一旗あげて、タヒチまで行って天才画家に!という人生自体には感銘を受けたけど、
ストリックランドの人格に嫌悪感が強くてちょっと辛かった(ストルーヴェさんがかわいそうすぎた)
ストリックランドさんの人格はさておき、
『責任』とか『良心』とか『しがらみ』とか『失敗への恐怖、挑戦への恐怖』とか、
そういったもの全てから【自由】になれれば
人生もまた【自由】に思いのままにデザインできるのかなと思った

復讐法廷/ヘンリー・デンカー……
娘をレイプし、殺した相手は法の穴を突いて無罪放免。
父親はレイプ殺人犯を撃ち殺し、自首をした。
父親の「意思」で、「故意に」撃ち殺した。法律の条文どおりならもちろん有罪。
しかし法の穴を突く凶悪犯は無罪とされ、父親は有罪。それで本当に良いのだろうか?
という物語。

何の役にも立たない「法律」は「変える」べきである。
誰にとっても有害な「ルール」に従うべきではない。
しかしそれと同時に、守るべきと定められたルールを各々が勝手に破るのも、それはそれで危ういとも思う。

「ルールで決まっているから」を思考停止の道具として採用し、冷酷に、機械のように人を裁く『法』の在り方と、
「明らかにルールが間違っている!」と『個人が判断する』ことの危うさとどちらが危険だろうか。
ただ、この父親が無罪になったのは、良かったと思う。
フィクションとしてみるならば。あるいは、特例・個別ケースとしてみるならば。


異邦の騎士/島田荘司……
面白かったんだけど、終盤、「今まで信じていたものは全部嘘だった!」的な、いわゆる「ドンデン返し」が起こります。起こるんですが、ドンデン返し前の方が面白かったんだよなぁ。
あと、割と救いがないのもちょっと悲しい。面白かったですけどね。

ラブコメ今昔(短編集)/有川浩……
Bに近いA。自衛官をモデルにした恋愛短編集。
表題作「ラブコメ今昔」、3番目の「広報官走る」、6番目の「ダンディライオン」は面白かったし、
2番目の「軍事とオタクと彼」や5番目の「秘め事」あたりは正直あまり面白くなかったので評価に困るけど、読みやすいしいいんじゃないかな?

赤い予言者/オーソン・スコット・カード……
精神的なインディアン的世界観と、物質的な西洋白人の相容れない世界観の対立を、実際の史実を基に描いた歴史ファンタジー作品。
最後30ページ、無理やり駆け足で物語を締めた感じが拭えないのが残念だけど、そこまでは面白かった。

密封/上田秀人
……徳川家基の怪死と田沼意知暗殺事件をベースに、その闇を探る歴史ミステリ+バトルもの。
徳川一族の系譜が頭にないと、本気で混乱するので、家系図をつけてほしかった。面白いけど、江戸時代の知識がないと読みづらい。バトルはどうでもいい。

国禁/上田秀人
……1800年代初頭、徳川家斉の時代を舞台にした歴史陰謀もの+チャンバラな小説。
歴史陰謀部や江戸時代の蘊蓄が面白い。
主人公の人間関係とか、アクションシーンなどのエンタメ部分は小説としてはあまり面白くないけど、江戸時代のお勉強的な意味では面白いので続きを読むかどうか迷う。

侵触/上田秀人
……相変わらず、
江戸時代の陰謀→奥右筆が狙われる→ボディガードの主人公がバトル
→倒す
の公式で済まされる話ではあるけど、江戸時代の豆知識部分が面白いのが魅力。
しかし、江戸時代って本当に身分に強く縛られていて、皆が『家』の『禄』(お給料)や『家格』を少しでも上げよう上げようとし続けているのが息苦しいなぁ、という感想は変わらず。
というかそういう時代だったんでしょうね、多分。平和な時代で大きな変動が起こらなかったため、身分も固定され、先祖代々の『家柄』や『功績』で給料が決まり、生き方が固定される時代。
たぶん、黒船が今後襲来したり、大きな争いが起こるとはまだ誰も思っていなかった時代だとそうなるのかなぁ。『今』がずっと続く事なんて絶対ないのに、人間は、『今の社会体制』がずっと続く事を前提で、考えるものだなぁと思いました。

竜の卵/ロバート・L・フォワード……
地球人の100万倍、時間が流れるのが早い星に住む、
アワビ型生命体チーラ。
地球時間にして2日の間に、彼ら、彼女らの文明には宗教が生まれ、科学技術が生まれ、発展していく。地球人とチーラのコンタクトが始まり、やがて、チーラは人類を追い越していく。

圧倒的スケールで描かれる『チーラ』の歴史、習性などが大変面白い作品だが、面白くなるまでにかなりの時間がかかった(最初の150ページはしんどかった)。
そこを超せば面白い。


B→暇つぶし以上の有益な何かを得た作品

太陽の簒奪者/野尻抱介……
異星人とのファーストコンタクトに生涯を捧げた主人公、白石亜紀。亜紀の、異星人とのディス・コミュニケーション、そして人間同士のディス・コミュニケーションが描かれている。
誰とも触れ合えない亜紀の一生は寂しい気もするが、一つの目標に向かって突き進む彼女の生き様は眩しい。

さよならジュピター/小松左京……
面白かったけど、最初の『ナスカの地上絵』の伏線は結局回収されないままでしたね💦
主人公と、テロリストである恋人マリアのメロドラマはなかなか甘ったるくて嫌いじゃないけど、主人公は恋人を選んだ方が良いとも思いました💦
太陽系を救うために木星を破壊するお話。

第四間氷期/安倍公房……
海面上昇による陸地水没の未来に備えるため、中絶胎児を買い取り水棲人として育てるアイディアと、未来予知機の組み合わせはグッド。
ただ、予言内容が「物語ではなく説明」になってしまっているのが残念

マリオネットの罠/赤川次郎……赤川次郎らしからぬ(??)割と重たい雰囲気。サスペンススリラーとしてさすが赤川さんと思わせる出来だけど、最後のどんでん返しは要らないし、ヒロインはひたすら気の毒だし、まぁ何というか(彼の中での)異色作だなぁと
しかしこれがデビュー作ですか

消滅の光輪/眉村卓……
政治的駆け引きの多発する、統治機構の物語。
説明が丁寧で細かいのは良いんだけど、細かすぎて1000ページになっちゃったの、もう少し情報刈り込んでも良いのにな、と思いました。
雇われ外食店長みたいな話でした。

ソラリス/スワニスラフ・レム……
SF的謎としては面白い(謎の海)けど、まぁっていう。
「人間の尺度で、物事を考える事の無意味さ」というのは、その通りだよなとは思う

エマ/ジェーン・オースティン……
独善的でお節介焼きな女主人公エマは、数々の失敗を繰り返すうちに過去を反省し、成長していく。
そんなエマを時に厳しく叱りながらも、ずっと見守ってきたナイトリー氏。エマはナイトリー氏こそが、本当に大切な相手だと気づき、二人は結ばれるのでした。
最初は読んでいて本当にイライラしたけど、
エマがだんだんまともになっていくのでよかった。
しかし、ナイトリー氏はよくエマを見捨てなかったな……。

あと、『身分』が重視されていて、『紳士階級(?)』は紳士階級同士、町人階級は町人階級同士の結婚こそふさわしい、って発想が少し引っかかった。


灼熱の小早川さん/田中ロミオ……
汗フェチの、汗フェチによる、汗フェチのための作品。

非常にリアルでいやぁ~~~な『空気・同町圧力』が立ち込める1-B。それを是正しようとする、痛々しい女子高生、小早川さん。
やる気が空回りして、どんどん堕ちていく小早川さんが遂にエロ自撮りに走ったシーンは、図らずも興奮した。
小早川さんが脱いだYシャツの脇の部分がちょっと湿ってた、って話でええんか??


ジェネラル・ルージュの凱旋/海堂尊……「ナイチンゲールの沈黙」の裏にあたる物語だけど、
個人的に好きなキャラがいなかったせいか、ちょっとけん引力に欠けたかな。つまらなくは、なかったけども。救急病棟、小児科病棟の慢性赤字体質の話。

ロケットガール1 女子高生リフトオフ/野尻抱介……
宇宙に行くまでがひたすら長いが、宇宙でのシーンは読ませる。想像以上にSFしている。
ただ、地上の人間たちが好きになれないし、まぁ続きは読まなくてもいいかなって感じ。

マリア様がみてる リトルホラーズ/今野緒雪……
リトルホラーと銘打っているように、奇妙で不思議で宙ぶらりんな話が集まっている。
『ワンペア』が怖くて、『ハンカチ拾い』がロマンを感じて良い。
ただ、良くも悪くも宙ぶらりんなのと、最後の『胡蝶の夢』(&【糊付け部分の、リトルホラーズ】)が一番つまらないため、読後感はちょっとしっくりこなかった。
また、祥子様たちが卒業してしまい、代わりに入ってくる新入生もまだいないので、物足りなさもあった。



アリアドネの弾丸/海堂尊……
前半は「イノセント・ゲリラ」に引き続きAi推進派 VS Ai拒絶派の論戦に終始し、退屈。
中盤以降事件が動きミステリとしては面白いものの、被害者・加害者共に魅力はなく、(加害者は不気味ではあるが)、ミステリとしても人間ドラマとしても最高峰の「チーム・バチスタ」や
、詩情イメージの美しさが印象深い「ナイチンゲール」にはだいぶ落ちる。

リオノーラの肖像/ロバート・ゴダード……時が過ぎ、少女は大人になる。
庭園を去り、新しい住人が庭園に住み、そして新しい物語を、繰り返された物語を。役者を変えて再演される物語。
過ぎ去りし過去は、夢幻のように揺らめき、いつかそこで起こった事実も、時の中に忘れられていく。

夏の日の声/アーウィン・ショー……面白いんだけど、感想に困る。
今は50代になった主人公が、近くの公園(学校?)で行われている息子の野球試合を見ながら、
自分の半生を思い出す、そういうお話。
サッコ&ヴァンゼッティ事件、世界大恐慌、第二次世界大戦があった主人公の人生、
子供の頃の野球の思い出、野球の試合のメモをひたすら取っていた父親の思い出、
サマーキャンプの思い出、弟との友情(兄弟の場合友情っていうのかな?)
奥さんとうまくいかず不倫をし、不倫相手にガチ恋をしたけれど、やがて奥さんを再び愛するようになる、そういった色々なことが主人公の人生を流れていったけれど、
次代は変わり時が流れ、少年は父親になり息子を設けた。
そして今日も少年は野球をし、父は息子を見守るのだった。

説得/ジェイン・オースティン……
周囲の反対で別れた元カレと8年ぶりの再会。から始まる恋物語はさすが少女漫画の祖オースティン。
面白かったんだけど、山場をもう少し盛り上げてほしかったところ。

分別と多感/ジェイン・オースティン……

狭き門/アンドレ・ジッド……
とりあえず、コンプレックスをこじらせまくって、信仰と自罰に逃げた女の話、だとしか思えなかった。主人公はジュリエットを選んでおけば良かったのに。

ダフニスとクロエ―/ロンゴス……
海と牧場と初々しい恋と爽やかなハッピーエンド。たまにはこういうのもいいね。

剣の名誉/エレン・カシュナー……Cに近いB。キャラクターの恋愛模様などがとても面白かったけど、
悪役が中途半端すぎて、そちら方面ではイマイチ。同性愛全開でちょっと驚きました。

殺意/フランシス・アイルズ……嫌な奴しか出てこない、嫌キャラ王者決定戦。個人的には最ウザのマドレインは死んでほしかった(酷い感想)
あと、ネタバレだけど(反転)
最後の2ページ絶対要らないでしょ。悪人に裁きがくだらないとまずい、というためだけに付け加えられたような唐突なエンドだけど……。
奇跡の輝き/リチャード・マシスン……
感動系小説かと思ったら宗教小説だった。まぁ、それはそれでいいけど。
天国が本当にあるといいですね。

奇跡の少年/オーソン・スコット・カード……
えーと、これは完全にシリーズの第1巻ですね。続きが気になりますね。
続きが気になるんですが、これの次の2巻(赤い予言者)までしか翻訳されていません!
酷いです(😢)

シカゴブルース/フレドリック・ブラウン……
ブラウン好きだしこの作品も悪くないけど、そこまででもないかなぁ。青春ミステリ。


アドレナリンの匂う女/ジェームズ・ケイン……
悪女サスペンスなんだけど、悪女に魅力を感じないとつらいところがあった。

刃傷/上田秀人…… 今回は(今まで単なる守られ役だった)併右衛門の活躍と、法廷モノにも繋がるような裁判(??)シーンが見所。 あと、主人公の衛悟とヒロインの瑞樹が結ばれて、良かったね!ただ、毎回何かというと変な輩に囲まれる『安定(マンネリ)』のシリーズ展開や、単に続刊が手元にない事も含めて、このシリーズはここまででいいかとも思う。
毎回チャンバラがあるのに、悪役の魅力がないのは厳しいよなぁ (最近は伊賀忍者とよく戦ってるけど)

罪と罰/ドストエフスキー……感想キャスはこちらです

創竜伝1/田中芳樹……
真面目で優しい頼れる長男、クールで毒舌ホスト系の次男、
やんちゃで元気な三男、おとなしいけど怒ると一番強い四男。
ドラゴンの血をひくこの四兄弟が、暴れまわるエンタメバトル。
キャラクター小説として四兄弟に魅力があるので、そこを楽しむのがお薦め。悪役がネット右翼な言動を繰り返したり(作者はネトウヨ大嫌いだと思われる)、
クレーマーみたいな読者から来たファンレター(というか中傷メール)を公開したりと、色々とやりたい放題かましているので、
そういうのが苦手な人は注意ね。
ぼくはまぁ、「作者、楽しそうだなwww」って思ったけど、
割と危ういバランスというか、もう少し踏み外すと途端に嫌になると思う。

クレイジーカンガルーの夏/誼阿古……
田舎に住む中学生のもとに、東京から「異分子」の少年がやってくる。父母の離婚問題で、彼は一時的に預けられたのだ。
母親に会うために、田舎町から東京に電車を乗り継いで向かう、昭和版スタンドバイミー。
リアリズム溢れる昭和の田舎描写は善し悪し。
まるで作者の少年時代をそのまま振り返ったような、『ホントっぽさ』が、逆に『田舎のいやぁ~な、湿った夏』を思わせる。
それがリアルで良いとも思うけれど、
『機動戦士ガンダム(初代)』の話が頻繁に出てきたり、富野由悠季と宮崎駿とはっぴぃえんどhttps://youtube.com/watch?v=DpnSNRvG6rw
とに彩られた男子学生の青春に、
懐かしさを感じられるかどうか、と言われると「わからねぇ……」ってなってしまう。
あと、男なら「『あげる』じゃなくて『やる』といえ」とか、男が台所に上がるのは恥ずかしいとか、なんか色々、昔の人って何考えて生きてたんだろなぁってなった。

死のある風景/鮎川哲也……
相変わらずマニアックな時刻表トリック。めちゃ面白いわけでもないけど、安定の鮎川さんでした。

脂肪の塊/モーパッサン……
ドイツに占領されたフランス。
フランス人の娼婦はドイツ人に抱かれるのを断るが、
自分たちが酷い目に遭いたくない『同胞』のフランス人が、娼婦をドイツ人に差し出す。
帰ってきた娼婦は、ドイツ人に抱かれた女だとバカにされるのだった

ノーサンガーアビー/ジェイン・オースティン……
平凡な娘が、誠実な貴公子と結婚してハッピーエンド、というのはいつものオースティン印だけど、
こんなにも能天気な作品は珍しい。ジョン・ソープといういけ好かない嘘つきが、ひたすら物語を引っ掻き回すけれど、逆に言うとそれぐらいしか障害がない。
まぁ、平和でのんきで良いのかな。

オースティンの作品は、『19世紀、ヴィクトリア朝の庭園で、優雅に紅茶を飲むような』読書が味わえるけど、まさにそんな感じ。
気軽に読めるし楽しいけど、オースティン作品の中ではハズレだと思う。
ラストが無理やりすぎて、打ち切り漫画の最終回みたいになってるw

百億の昼と千億の夜/光瀬龍

C→暇つぶし程度にはなった作品

継ぐのは誰か?/小松左京……アマゾンの奥地に潜む電気人間の話。
アイディアは面白いと思うんだけど、素材をそのまま調理せずにゴロっと出された感じで、途中から『説明』になってるのがつらい。
1971年の作品でインターネットを出してるのは凄いけど。
ロマン溢れるマヤ文明好き。

砂漠の惑星/スタニスラフ・レム……
人間は、とかく自分の思考法を基に相手を理解しようとするけれど、絶対に理解できない相手もいるのだ。
という話。まぁ、レムらしい。
「自分の考え方を基に相手を判断・理解する事の愚かさ」については同意できるんだけど、
「絶対に理解できない相手もいるのだ」と言われてしまうと、「そうやな……」って感想しか出てこないのが率直なところ。

万物理論/グレッグ・イーガン
順列都市/グレッグ・イーガン
デミアン/ヘルマン・ヘッセ……自立して新しい世界を切り開きなさい、という超人思想的なお話、でいいのかな?
そうとしか読めなかったんだけど。

イノセント・ゲリラの祝祭/海堂尊……
本作で表現される、日本の官僚制度の腐敗や、医療現場の置かれた厳しい現実など、作者の想いが伝わってくる作品。
ただし、作者の熱意が強すぎるあまり、小説の体をなしておらず、これではほぼ論文のよう。
会議室という狭い世界での論絶バトルということもあり、法廷モノのような緊迫感を期待したが、それもなしで、氏の作品の中で初めて「あまり巧くないな」と感じた作品。
とりあえず1作のうち20回は「言い放つ」という単語を見たけど、そう使う単語でもないので、悪目立ちしている。

ポンスン事件/クロフツ……つまんない事を言うようだけど、卑劣な恐喝犯は死んでほしかったと思うの。

ダンシング・ベア/ジェイムズ・クラムリー……前作の「酔いどれの誇り」は名作だったんだけどなぁ。今回はただドンパチやってるだけだしなぁ。

結晶世界/バラード……
全てが結晶化されていく世界の物語。
『ハンセン氏病』と『結晶化』が対応しているのは何となくわかったけれど、そこにキリスト教神学と医師の問題や、『生でも死でもない、曖昧な生命状態』などが提示されるため、バカなぼくにはあまり理解できなかった。

秘闘/上田秀人……徳川家基暗殺事件は、1巻の「密封」でもう解決したやろ……? 何故もう一度出してきた??

隠密/上田秀人……上田秀人の「奥右筆秘帳」7巻『隠密』読了。69点。
今回は繋ぎの巻。
最後に主人公とヒロインとの仲を、ヒロインパパが認めてくれるところで終わるので「良かったのぅ」という気分にはなるが、
さて本編の内容が面白かったかと言われると うーーーーん、、、前巻ほど酷くはなかったけど……
シリーズ全体の特徴として、
何やら怪しげな陰謀により、奥右筆であるヒロインパパが襲われる(主人公が護衛)。
毎回チャンバラ! とこんな感じなんだけども、
人物描写に魅力が感じられないため、毎回襲ってくる奴が同じように感じてしまう。
辛うじて冥府防人だけは存在感を出しているけど、それ以外の甲賀忍者、伊賀忍者、お庭番、お山衆に個性を感じるかと言えば感じないし、それは津軽藩士や薩摩藩士、松平主馬守の部下なども同じ。
本当に全方面から命を狙われているんだけど、毎回同じことをしている感が付きまとう。
謎自体も、1巻で明かされる徳川家基暗殺事件が最大の謎で、3巻の大奥の物語も面白かったけど、それ以降はトーンダウンしているというか。

継承/上田秀人


コロナもあって、買っちゃった8巻までは読もうかなと思うけど、
読むのは3巻までで良かったかな、って思った。


D→自分には合わなかった作品

銀の匙/中勘助……

星界の紋章Ⅰ 帝国の王女/森岡浩之……

上中下巻の全3巻の作品を、上巻だけ読んで評価するようなものなので、正当な評価は不可能。
そのうえで、とてもじゃないけどしんどいのでここで離脱。

アーヴという『宇宙エルフ』のような存在が設定・容姿(イラストがあるので)ともに魅力的で、アーヴ社会についての考察が割と細かい。
そこが作品の魅力になってはいるのだが、アーヴという存在単体だけで読むにはあまりにもしんどいのが、ぼくの本音。
原因は漢字に振られた大量の『アーヴ語』ルビ(カタカナのルビ)。
架空言語はたまにファンタジーやSFで見るが、読みやすく処理できている作品もある中で、大半の作品は実に読みにくい代物になっている。
本作もその悪例。
ラフィールは確かにかわいいし、アーヴは魅力的。けど、ごめん、むり。

アイヴァンホー/ウォルター・スコット……
11世紀イギリスを舞台にした、騎士道物語。
なんだけど、全編に執拗なユダヤ教差別がねっとりと絡みついていて、しんどい。
また、
騎士→自分より弱い者を倒して、金品強奪する強盗
にしか見えない(イキりキングみたいな)ので、そういう意味でもマジつらい。

ただ、何というか『そういう事実があった』ということを後世に伝えるというのは大事な気もする
ユダヤ人差別があった、というのは有名なナチス・ドイツの反ユダヤ主義に代表されるように色々知識としては聞いていたけど
800ページもの小説でずーーーっとユダヤ差別を読まされると、身に染みるというか


E→プロ作品として見るにはつらい作品
 

ペルソナ×探偵NAOTO/間宮夏生

雑、の一言に尽きる。それ以上書く意味があるだろうか……。作者、推敲した?
誤字脱字も凄いし、論理の飛躍も酷いし、テーマの踏み込みもない。
評価ポイントは直斗の巨乳だけ。
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