姉妹編である「アマツツミ」に比べると、シナリオ↓ ヒロイン↓↓ エロ↓↓と、かなり見劣りする。
設定を大きくしすぎ、能力に頼りすぎ。感想は辛口なので、大ファンの方は読まないでください。
流されやすく、しょうもない主人公のフィリップが幸福を掴むまでの物語。
孤児で、足に障害を抱えたフィリップは、神学校でいじめに遭い、神への信仰を失ってしまいます。
会計士になるも長続きせず、絵画を習い始めるも自分で才能に見切りをつけ、医者の学校に入るも、株で大損をしてホームレスになってしまう。
そんな窮地を助けてくれたのが、アセルニー一家でした。
女性遍歴も振り返ります。
フィリップは学生時代、年上の女性ミス・ウィルキンソンに無情な振る舞いをして傷つけ、
その後、彼の人生にとり憑いて離れない悪女ミルドレッドに熱烈な恋をする。その過程で、自分を大事に思ってくれていたノラを傷つけてしまいます。
そして、最後にたどり着いたのがアセルニー一家の長女サリーへの愛でした。
遠い異国の地に憧れ、夢見ているばかりだったフィリップが、本当に欲しかったものは、孤児だった彼が持ったことのない『家庭』だった。
ここまで言うと言いすぎかもしれませんが、サリーとの結婚を通して、『信仰』を再び取り戻した、と言えるかもしれません。
全体のあらすじはこんな感じです。
ブラック・ユーモアがぴりりと効いたモームの事、辛辣ながらも、よく特徴を掴んだ人物描写も見逃せません。
主人公のフィリップはもちろんのこと、しょうもない人物が多数登場します。
陽光に照らされたミス・ウィルキンソンの唇の上に、汗の雫が丸々と繋がっていて興ざめしたり、下着姿の彼女の首の皺を見て幻滅する、しょうもないフィリップ君。
学生時代、同性の友だちに嫉妬して「情けない人間になってくれるなよ」と負け惜しみのセリフを吐いてしまう姿など、なかなかいたたまれないものがあります。
絵画学生時代に登場する、『他人の絵の批判は的確にするけれど、自分の絵は一向に完成しない』キャラクター(ドラムルだっけ?)なども、
「うわぁぁ」と思いました。
これは僕ではww ……自作執筆も頑張ります
そして最大のしょうもなエピソードはミルドレッドとの恋愛ですね。
この女が果てしなく、どうしょうもない。
そんなミルドレッドに執着するフィリップの姿も読んでいてしんどかったです。
個人的に、しょうもない女性に恋をした経験があるのであれですが、
ミルドレッドには人間的に尊敬できる、人格が素晴らしい、一緒にいて落ち着くなどの要素は一切ありませんし、
ならば『機知に富んだ楽しいおしゃべりができる』、『人を楽しませる術を知っている』ということもありません。
ならばセクシーなのか、美貌なのか、肉欲に溺れてしまったのか!
というと、そんな感じもしない。
何がいいのか、さっぱりわかりません。
ただ、それもまた人生の一シーン。
立派な人生、しょうもない人生、嬉しい事、悲しい事、苦しい事、それら全てが縦糸・横糸となって、
人生という名の絨毯を織っていく。
フィリップ君の今後を祈りつつ、本を置かせていただきます。
良い作品でした!
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