まずは報告から
8月から、にわかに司馬遼太郎ブームが自分の中で到来し、立て続けに作品を読んでいます。
『関ヶ原』(「関ヶ原」というタイトルの本が多すぎて、本引用できませんw)
の4作を一気読みしました。
「義経」、「覇王の家」も積んでいて、近々読むのでその時にまとめて感想を書いても良かったのですが、先走って感想を書いてしまいます。
以前、「国盗り物語」と「最後の将軍」を読んでいるので、現在で6作読んだことになります。
司馬遼太郎作品の特徴
まだ6作しか読んでいないので精度は低いかもしれませんが、雑感を。
共通して言えるのは
当たり外れが少ない
ということです。年間ベストを出したくなるほどの作品はあまりないのですが、どれを読んでも「面白かった。読んで良かった」という感想になるので、安心して手に取れてしまいます。
そんな理由で、2021年読書ランキングのベスト10は、司馬遼太郎がずらっと並びそうな予感がします。
あまり情感を込めては書かない
ここが、個人的には少し物足りない部分になります。
感動できそうなシーンがあって、ここを盛り上げてくれたら泣くかも、というところで
『余談だが~』のように話の腰を折る癖(?)があり、素直に感動させてくれないのですw
余談が多い
ここも、個人的にはちょっと評価が下がるポイントです。
歴史物語世界に没入したいのに、作者の司馬先生が出ばってきて、『現在の地名では●●であり、そこは博物館になっている』というように時空まで超えてしまうので、
どうも『歴史の先生の講義を聴いているような』気持ちになります。
ただ、この余談が好きな方もいるんでしょうし、作者の味でもあると思うので、否定してはいけないのでしょうね。
「項羽と劉邦」の感想
集中的に読んだ4作の中で、淡白なのが「項羽と劉邦」です。
役所に行って昼寝をするわ、役人とチャンバラごっこをして相手を斬りつけて逃げ出すわ、無銭飲食をするわのむちゃくちゃな男、
劉邦が遂に天下を取るというのは実に愉快であり、劉邦のキャラクター性が楽しく読めるのですが、それ以外にあまり魅力的なキャラクターがいませんでした。
劉邦は、良いヒモになれそうな人ですねw
『三国志』についてはそれなりに知っているつもりなのですが、この『秦末~前漢』の時代については全く知らなかったので、*勉強になりました(?)
『三国志』に比べると、諸侯の粒が小さく、秦・項羽・劉邦・韓信ぐらいしか勢力がいないのが地味ですね。
斉の田氏など、小さい諸侯はたくさんいたようなので、その辺についても書いてほしかったです。
また、韓信がこの作品では魅力に乏しかったのも残念でした。
*あくまでも歴史『小説』なので、全てを鵜呑みにするつもりはありません。この後も、こういう表現を書きますが、そこはご了承ください。
「燃えよ剣」の感想
土方歳三を主人公にしたこの作品ですが、新選組に関しては以前にも触れた事があるので、大きな発見はありませんでした。
一方で、以前にも触れていた題材だっただけに、とても読みやすかったです。
当たり前の事ですが、『知らなかった時代・人物を知りたい』と思って読むと、勉強になるぶん読むのが大変で、『ある程度知っている時代・人物』を読むと、読むのは楽だけど、知的好奇心はあまり満たされないということですね。
土方歳三と沖田総司が印象的でした。
あと、近藤勇に若干『劉邦み』を感じました。
リーダーはデンと構えて、副官がしっかり行動するというのが、鉄則の一つなのでしょうか。
「関ヶ原」の感想
4作の中では一番、没入度の強かった作品です。
石田三成に感情移入しながら読んだので、徳川家康のいやらしさが半端なかったです。
悪役(?)家康もそうですが、なによりも福島正則や加藤清正のような、家康に操られる単純バカ(注:作中人物の事です。リアルのお二人についてはわかりません)には本当に腹を立てて読みました。
人としては家康よりも石田三成の方に親近感を抱いてしまうのですが、
客観的に言えば徳川家康に敵うわけがないよなぁ、とも。
厭らしさも含めて、ちょっと格が違うな、と。
石田三成も項羽も『人の好き嫌い』が激しいのに対し
徳川家康や劉邦は『好き嫌いではなく、人材をどう役立てるか・利用するか』を冷徹に見ている感じがします。
僕は人の好き嫌いが激しい側なので、いかんともしがたいのですが、
天下を取るには後者の方が有能なんだろうなぁ、とは思いますw
「世に棲む日々」の感想
「最後の将軍」や「燃えよ剣」など、幕府側から見た幕末作品は以前から読んでいて、歴史の授業も合わせて長州藩はかなり『嫌い』な藩でした
(薩摩はそうでもありません)。
今回、長州藩の吉田松陰&高杉晋作を主人公にした作品を読んでみて、どうなったかというと、やっぱり長州藩は嫌いですw
多分、これは『関ヶ原』の福島&加藤が嫌いなのと同じで、よくわかりもせずに攘夷だと言って切りかかったり、それに反対する人を見ると『売国』などと言って、暴れたりする人たちが大嫌いなんだと思います。
特に長州藩の過激派浪士は、なんだか今のネット右翼みたいな頭の悪さ(失礼)を感じました。ついでに言えば、第二次大戦中の日本みたいな感じもしますし、『テレビを消せばコロナも消える』な人たちにも通じるものを感じます。
つらいです。
プラスすると、どうも自分は『滅びゆく体制側』に感情移入をするようで、
『関ヶ原』では徳川家康が嫌いだったのに、幕末では幕府の方に感情移入してしまうんですよね(汗)
長州藩の中では、井上馨と伊藤博文が魅力的でした。
また、この頃の長州藩の複雑かつ不可思議な動きがよくわかっていなかったのですが、毛利敬親の『部下任せの日和見主義』の元で、
藩内が真っ二つに分かれ、権力争いをしていたということで何となく理解しました。
しかし、『関ヶ原』ぐらいまでの時代なら大昔の事なので、無責任に発言できるのですが、
幕末ともなると現代と地続きの時代なので、どうしても現代の事を考えてしまい、感想を書きづらいところがありますね。
というわけで今回はここまで。
しばらく司馬遼太郎作品を読む一方で、
スティーブン・キングも何作かまとめて読んでいる、
そんな最近の読書状況でした。