2021年09月

司馬遼太郎作品を読んでます

まずは報告から

8月から、にわかに司馬遼太郎ブームが自分の中で到来し、立て続けに作品を読んでいます。

項羽と劉邦 上

項羽と劉邦 上著者: 司馬 遼太郎

出版社:新潮社

発行年:2005

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『関ヶ原』(「関ヶ原」というタイトルの本が多すぎて、本引用できませんw)

燃えよ剣 上

燃えよ剣 上著者: 司馬 遼太郎

出版社:文藝春秋

発行年:1980

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世に棲む日日 1 新装版

世に棲む日日 1 新装版著者: 司馬 遼太郎

出版社:文藝春秋

発行年:2003

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の4作を一気読みしました。
「義経」、「覇王の家」も積んでいて、近々読むのでその時にまとめて感想を書いても良かったのですが、先走って感想を書いてしまいます。

以前、「国盗り物語」と「最後の将軍」を読んでいるので、現在で6作読んだことになります。

司馬遼太郎作品の特徴

まだ6作しか読んでいないので精度は低いかもしれませんが、雑感を。

共通して言えるのは

当たり外れが少ない

ということです。年間ベストを出したくなるほどの作品はあまりないのですが、どれを読んでも「面白かった。読んで良かった」という感想になるので、安心して手に取れてしまいます。
そんな理由で、2021年読書ランキングのベスト10は、司馬遼太郎がずらっと並びそうな予感がします。

あまり情感を込めては書かない

ここが、個人的には少し物足りない部分になります。
感動できそうなシーンがあって、ここを盛り上げてくれたら泣くかも、というところで
『余談だが~』のように話の腰を折る癖(?)があり、素直に感動させてくれないのですw

余談が多い

ここも、個人的にはちょっと評価が下がるポイントです。
歴史物語世界に没入したいのに、作者の司馬先生が出ばってきて、『現在の地名では●●であり、そこは博物館になっている』というように時空まで超えてしまうので、
どうも『歴史の先生の講義を聴いているような』気持ちになります。
ただ、この余談が好きな方もいるんでしょうし、作者の味でもあると思うので、否定してはいけないのでしょうね。

「項羽と劉邦」の感想

集中的に読んだ4作の中で、淡白なのが「項羽と劉邦」です。
役所に行って昼寝をするわ、役人とチャンバラごっこをして相手を斬りつけて逃げ出すわ、無銭飲食をするわのむちゃくちゃな男、
劉邦が遂に天下を取るというのは実に愉快であり、劉邦のキャラクター性が楽しく読めるのですが、それ以外にあまり魅力的なキャラクターがいませんでした。
劉邦は、良いヒモになれそうな人ですねw

『三国志』についてはそれなりに知っているつもりなのですが、この『秦末~前漢』の時代については全く知らなかったので、*勉強になりました(?)
『三国志』に比べると、諸侯の粒が小さく、秦・項羽・劉邦・韓信ぐらいしか勢力がいないのが地味ですね。
斉の田氏など、小さい諸侯はたくさんいたようなので、その辺についても書いてほしかったです。
また、韓信がこの作品では魅力に乏しかったのも残念でした。

*あくまでも歴史『小説』なので、全てを鵜呑みにするつもりはありません。この後も、こういう表現を書きますが、そこはご了承ください。

「燃えよ剣」の感想

土方歳三を主人公にしたこの作品ですが、新選組に関しては以前にも触れた事があるので、大きな発見はありませんでした。
一方で、以前にも触れていた題材だっただけに、とても読みやすかったです。
当たり前の事ですが、『知らなかった時代・人物を知りたい』と思って読むと、勉強になるぶん読むのが大変で、『ある程度知っている時代・人物』を読むと、読むのは楽だけど、知的好奇心はあまり満たされないということですね。

土方歳三と沖田総司が印象的でした。
あと、近藤勇に若干『劉邦み』を感じました。
リーダーはデンと構えて、副官がしっかり行動するというのが、鉄則の一つなのでしょうか。

「関ヶ原」の感想

4作の中では一番、没入度の強かった作品です。
石田三成に感情移入しながら読んだので、徳川家康のいやらしさが半端なかったです。
悪役(?)家康もそうですが、なによりも福島正則や加藤清正のような、家康に操られる単純バカ(注:作中人物の事です。リアルのお二人についてはわかりません)には本当に腹を立てて読みました。

人としては家康よりも石田三成の方に親近感を抱いてしまうのですが、
客観的に言えば徳川家康に敵うわけがないよなぁ、とも。
厭らしさも含めて、ちょっと格が違うな、と。

石田三成も項羽も『人の好き嫌い』が激しいのに対し
徳川家康や劉邦は『好き嫌いではなく、人材をどう役立てるか・利用するか』を冷徹に見ている感じがします。

僕は人の好き嫌いが激しい側なので、いかんともしがたいのですが、
天下を取るには後者の方が有能なんだろうなぁ、とは思いますw

「世に棲む日々」の感想

「最後の将軍」や「燃えよ剣」など、幕府側から見た幕末作品は以前から読んでいて、歴史の授業も合わせて長州藩はかなり『嫌い』な藩でした
(薩摩はそうでもありません)。

今回、長州藩の吉田松陰&高杉晋作を主人公にした作品を読んでみて、どうなったかというと、やっぱり長州藩は嫌いですw

多分、これは『関ヶ原』の福島&加藤が嫌いなのと同じで、よくわかりもせずに攘夷だと言って切りかかったり、それに反対する人を見ると『売国』などと言って、暴れたりする人たちが大嫌いなんだと思います。

特に長州藩の過激派浪士は、なんだか今のネット右翼みたいな頭の悪さ(失礼)を感じました。ついでに言えば、第二次大戦中の日本みたいな感じもしますし、『テレビを消せばコロナも消える』な人たちにも通じるものを感じます。
つらいです。

プラスすると、どうも自分は『滅びゆく体制側』に感情移入をするようで、
『関ヶ原』では徳川家康が嫌いだったのに、幕末では幕府の方に感情移入してしまうんですよね(汗)

長州藩の中では、井上馨と伊藤博文が魅力的でした。

また、この頃の長州藩の複雑かつ不可思議な動きがよくわかっていなかったのですが、毛利敬親の『部下任せの日和見主義』の元で、
藩内が真っ二つに分かれ、権力争いをしていたということで何となく理解しました。

しかし、『関ヶ原』ぐらいまでの時代なら大昔の事なので、無責任に発言できるのですが、
幕末ともなると現代と地続きの時代なので、どうしても現代の事を考えてしまい、感想を書きづらいところがありますね。

というわけで今回はここまで。
しばらく司馬遼太郎作品を読む一方で、
スティーブン・キングも何作かまとめて読んでいる、
そんな最近の読書状況でした。

紙の上の魔法使い ネタバレ感想

81点
ビリビリ破いてしまいましょう。パチパチ焚(も)やしてしまいましょう。
なぜそうしないのか、疑問です。さすれば誤字も目立たないのに。
長文感想は夜子への愚痴が多いので、夜子ファンの方は回避推奨。







本作、「紙の上の魔法使い」は面白かった、とは思います。
しかし、私が好む物語傾向とは外れていたことも事実。
ここでは、その理由について書いていきます。


☆一本道シナリオのメインが、遊行寺夜子(クリソベリル)であることの辛さ


本作は、一般的な萌えゲー・キャラゲーではありません。
それは始める前からわかっていました。
人の暗い部分を描くため、ある程度ヒロインが『汚れ』役を被っても良いとは思います。
最後の最後で夜子が『告白』ができるくらいには成長するので、どうしょうもない少女の成長物語として、ある程度仕方のない面もあったのでしょう。

しかし……本作の遊行寺夜子へのストレスは強すぎました。


初対面の相手に対して「オマエ」と呼ぶ礼儀のなさ。
顔を合わすたびに「大嫌い・出ていけ」と瑠璃を口撃する品のなさ。
喧嘩をした後、自分が悪いと思っても瑠璃に謝れない幼稚さ。


遊行寺一族の排撃や、毒親である闇子さんが作り上げた、という意味で夜子もまた被害者だとは思いますが、
その闇子さんと、理想のメイドである理央に甘やかされて育った結果が、この無駄に偉そうな小娘、遊行寺夜子の現在です。

月社妃と四条瑠璃を殺し、日向かなたを4年もの間、不幸に陥れたのは夜子の故意ではありません。
夜子がもしも『いい子(注:feeが好む女の子)』だったら、「夜子の故意じゃないよ!」と擁護したかもしれません。
しかし、元々性格ブスな夜子が原因になってこのような悲劇が生み出された……のみならず、それがメインヒロインである(?)、という事実には、なかなか困惑させられました。

このような「汚れ」役を被せられるヒロインならば、せめて日常的にもう少し人好きのする性格に作ってほしかったな、というのが率直な感想になります。


また、最終章のクリソベリルにしても、彼女の悲惨な境遇は最後の最後で明かされますが、
正直『今更そんな事言われても』という気持ちが強いです。
今まで散々不愉快な思いをさせられてきた悪役に、「こういう事情があったんだ」と最終章で言われてもさぁ……。
せめてこのエピソードを中盤に挟むことはできなかったのでしょうか?
どう考えても、『魔法の本を破り捨てる』以外の選択は思いつきませんでした
(物語を読むために、仕方なく『破り捨てない』も選びましたが)




☆各章と他ヒロインについて

2章の「ルビー」はやや退屈でしたが、他ルートに関しては全般的に引き込む力をもっていました。
非常にストレスが溜まる、胸糞な物語ではありましたが、最後までクリックする手が止まらずどんどん読んでしまいました。

個人的には最愛なる妹、月社妃ちゃんがイチオシです。惚れてしまって当然です。

1章では散々だった、日向かなたちゃんの後半の巻き返しにも驚きました。
終盤ではすっかり頼りになる相棒として、瑠璃を支えてくれました。
個人的な好みとして、かなたを異性として好きかと聞かれると難しいですが、背中を預けたくなる女の子です。

伏見理央ちゃんは、悲劇の女の子としてかわいそうでありました。夜子の忠実なメイドとして、どうしてもインパクトは薄くなってしまいますが、とてもいい子だったと思います。

……だから、この3人を抑えて、夜子を選ぶわけがないんですわ……。

家に引きこもって本を読むだけの行為を責めるのはさすがにあれだとは思いますが、
学校も遊行寺家の謎の力で進級できているという恵まれた(?)立場。
対人恐怖症はかわいそうですが、家庭教師なり通信教材なりで学力だけでも最低限保つことはできるでしょうに、それすらしない本の虫。
白髪赤眼の美貌はリアルなら神秘的でしょうが、金髪ヒロインや赤髪ヒロインが咲き乱れるギャルゲ世界ではルックスで他ヒロインの優位に立てるわけもなく。

それでいて瑠璃が好きとか、どうなってるんですか!?
瑠璃が好きなら、せめて愛想ぐらい良くしたらどうですか?
瑠璃はドМなので気にしていないようですが、
読んでいる僕は終始この小娘との会話は苛々させられました。

瑠璃に告白もしておらず、あれだけ感じの悪い小娘が勝手に嫉妬して、かなたや妃を不幸にしていたと考えると片腹痛いものがあるのですが。
最後の告白で、若干救われる部分があったにしろ、
プレイ時間にして何十時間も耐えた末にこの小娘の成長を見せられても……という気持ちです。
(それでも、成長したこと自体は嬉しかったです)


☆どうでもいいが、どうでもよくない誤字脱字

ver1.6のパッチを当てても、ざっと100個以上の誤字があったように思います。
バックログ6行の間に、複数の誤字が収まってしまう事すら2回はありました。

少々の誤字は多めに見ますが、この誤字の多さはプロの仕事だとは思えません。
自分が書いた作品を、書きっぱなしにするのではなく、きちんと推敲してください。
推敲までが、書き手の仕事です。
私ですら、エロゲの感想文(たとえばこの文章)は2回程度は推敲しています。
自作小説を書く際には4回は推敲しています。

自分が書いた文章にある程度の誇りを持ち、他人に読んでもらいたい、他人に伝えたいと思う気持ちがあれば、そのぐらいはしますでしょう?
ライターにとって、この作品は、twitterのツイートや友だちへのLineのような、推敲などせず気楽に書き殴れる程度の愛着しかないのかと、そんなふうに誤解(?)してしまいます。
もちろん、ライターじゃなく校正の方(絶対いなさそう)の仕事でもありますが、この誤字の多さはやはりライター自身が推敲を全くしていないのだと思います。
それは、文章を綴る人間として、あまりにも無責任な態度ではないでしょうか。



☆本に対する愛情が感じられない

僕は、本を読むのが好きです。
この作品を読んだ方も、本(ノベルゲームも、本にカウントします)を読むのが好きな方がほとんどだと思います。

しかし、本作を読んで『本っていいよなぁ』と思う事は一度もありませんでした。
ただひたすら迷惑で災厄をもたらす『魔法の本』によって、被害者が出続ける展開に、
そんなに迷惑な魔法の本は、全部燃やしちまえよ、と思いました(遊行寺汀の立場)

レイ・ブラッドベリの「華氏451度」をはじめ、ディック・フランシス「重賞」、スティーブン・キングの「ミザリー」などの読書を通じて、
本が焼かれるシーンのつらさ・苦しさを経験したことはありましたが、

『こんな本なら燃やしちまえよww』と思ったのは初めての体験でした。
ライター氏は本が嫌いなのでしょうか? そんな事はないですよね?
なんだか、それすら疑ってしまうぐらい、本に対するどす黒さ、底意地の悪さを感じたゲームでした。

良い作品だとは思います。
なにせ、とり憑かれたように、凄い勢いで読めてしまいましたから。

が、個人的にこの作品が好きかと聞かれると、好きにはなれませんでした。
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