2022年12月

決勝 フランスVSアルゼンチン

       フランス  3-3     アルゼンチン
 PK          2-4
試合内容 S
個人的MOM FW キリアン・エムバペ(フランス)

GK ロリス 8・5      エミリアーノ・マルティネス 6・5
DF ヴァラン 6      ロメロ 5・5          
  ウパメカノ 6・5     オタメンディ 5
  テオ 3        モリーナ 5
  クンデ 6       タグリアフィコ 5
MF ラビオ 4・5       エンソ・フェルナンデス 5・5
  チュアメ二 5      デ・パウル 6
FW グリーズマン 4・5  MF マク・アリステル 6・5
   デンベレ 4      ディ・マリア 8
   エムバペ 10   FW  メッシ 10 
   ジルー 4       アルバレス 5・5

監督 デシャン 7      スカローニ 6・5

欠場者(フ)DFリュカ(負傷・大会絶望)
      DFパバール(監督との確執)

交代(フ)
     デンベレ→テュラム 4・5
     ジルー→コロ・ムアニ 6
     グリーズマン→コマン 6
     テオ→カマビンガ 5・5
     ラビオ→フォファナ 5・5
     ヴァラン→コナテ 5・5
     クンデ→ディザジ ?

  (ア)
    ディ・マリア→アクーニャ 5・5
    モリーナ→モンティエル 4・5
    デ・パウル→パレデス 5
    アルバレス→ラウタロ 6
    マク・アリステル→ペセーラ ?
        タグリアフィコ→ディバラ 5・5

      
開始から75分間はアルゼンチンの試合だった。
フランスの強力4トップに何もさせず、ディ・マリアが左サイドを切り裂き続け、
メッシが魔法のようなスルーパス、シュートで躍動
一方的な試合だった。
ただ一つの懸念点は、アルゼンチンが守りに入るのが早すぎたこと。
64分のディ・マリア→アクーニャの守備固めはいくら何でも早すぎる。

80分、偶発的なプレイからフランスがPKで追い上げると、突然目覚めたエムバペ・ショーが開幕。
立て続けにゴールを決め、試合を2-2の同点に。

延長に入っても、相変わらず中央からのスルーパスが冴えわたるアルゼンチンは、ラウタロのシュートのこぼれ球をメッシが決めて勝ち越し。
しかしここでもまだ時間が8分もあるのにアクーニャは露骨な時間稼ぎをし、相変わらずファウル要員のパレデスはラフプレーでイエローカードをもらいと、アルゼンチンの汚さが顔を出す。

そして、エムバペのシュートを肘で防いだ(正直、顔に向かってくるシュートに肘を上げてしまうのは無理もないと思うけど)モンティエルのハンドでPK。
これを決めたエムバペが、PK2本を含むとはいえハットトリックを達成。
ワールドカップ決勝でのハットトリックは、恐らく66年大会のジェフ・ハースト以来だと思う(調べてないけど)。

ただ、PK戦になればPKストッパー、エミリアーノ・マルティネスを擁するアルゼンチンが俄然有利。
今大会はアルゼンチンのマルティネス、クロアチアのリバコビッチ、モロッコのボノ、ポーランドのシュチェスニー(ポーランドはPK戦の機会はなかったが)が神PKストップ職人なのだが、やはりこうしたGKがいるチームが上位にやってくる。

その予測どおり、PK戦ではマルティネスが職人ぶりを見せつけ、アルゼンチンが、リオネル・メッシが悲願のワールドカップ優勝にたどりついた。

ただ、負けたフランスもグッド・ルーザーだった。

0-2の状況から、一見不可解と思われた(僕は思った)ジルーとグリーズマンの交代、代わって入ったコマンとコロ・ムアニが躍動した。
また、クンデは苦しい最初の75分間でほぼ唯一と言っていい武器として、果敢なオーバーラップを敢行。
あまりにもパフォーマンスの悪かったテオに代わる左サイドバックがおらず、カマビンガを無理やり入れる交代も、彼の頑張りにより事なきを得た。
大会前からの怪我人も含めれば、ポグバ、カンテ、ヌクンク、ベンゼマ、メニャン、リュカが怪我でいないこの状況で、魅力的なチームを作り上げ準優勝に導いたデシャン監督の凄さは決勝で改めて感じる事が出来た。

一方のスカローニ監督も、チームに団結力を植え付け、惨敗だった前回大会からチームを完全に立て直した功績をたたえて10点満点をあげてもいいのだが、
ディ・マリア→アクーニャの交代や、追いつかれた後にも攻撃の駒をほぼ入れなかった事
(ラウタロ投入は103分。というかそれ以前に、サイドアタッカーを入れて勝負に出てほしかった)などを考慮し、この試合の采配だけを考えればデシャンに差をつけられた印象。

とはいえ、メッシと並んで優勝の一番の立役者がスカローニ監督であることは疑いの余地はない。


(後、どうでもいいことだけどやっぱり本田さんの解説、あんまり好きじゃないです。
特に今回は僕がフランスを応援していたので、かなりウザかったです)

準決勝 フランスVSモロッコ

      フランス   2-0    モロッコ

試合内容 A₋
個人的MOM FW キリアン・エムバペ(フランス)


  GK ロリス 7        ボノ 5
  DF ヴァラン 6       サイス 3・5
    コナテ 6・5       エルヤミク 4・5
    テオ 7          ハキミ 6
    クンデ 6・5       マズラウィ 5
  MF チュアメ二 6・5     ダリ 5
    フォファナ 6    MF   ウナイ 7
  FW グリーズマン 7  MF   ブファル 6
    デンベレ 6        ジイェフ 5
    エムバペ 7・5      アムラバット 6
    ジルー 5・5    FW エン・ネシリ 4

監督  デシャン 7・5     レグラギ 4

欠場者 (フ)DF ウパメカノ(風邪)
       DF リュカ(負傷・大会絶望)
       MF ラビオ(風邪)

    (モ)DF アギエルド(怪我)


交代(フ)
   ジルー→テュラム 6
   デンベレ→コロ・ムアニ 6

  (モ)
   サイス→アマラ 5  
   マズラウィ→アラー 3
   エン・ネシリ→ハムダラー 4
   ブファル→アブクラル ?
   アマラ→アブデ ?


結果だけを見れば順当だけれど、モロッコの大善戦がやはり印象に残った。

残念だったのは、レグラギ監督の【恩情采配】。
ここまでチームを引っ張ってきたキャプテンのサイスを外しづらいのは人情的にはわかるが、
そのために今までうまくいっていた4バックを5バックに代え、ジルーにすら走力で負ける状態のサイスを先発させた結果、フランスに前半4分で先制点を奪われたのは明らかに采配ミス。

前半20分にサイスが交代するまで10人で戦っていたようなもので、強豪フランスを相手に
10人で戦うハンディを背負っては勝てるわけがない。
4バックに戻した後は、互角にフランス相手にやれていただけになおさら残念な気持ちになった。



準決勝 クロアチアVSアルゼンチン

    クロアチア   0-3    アルゼンチン

試合内容 B₋
個人的MVP FW フリアン・アルバレス(アルゼンチン)


GK リバコビッチ 6・5       エミリアーノ・マルティネス 6・5
DF ロブレン 5         ロメロ 5・5
  グバルディオル 5・5       オタメンディ 6・5
  ソサ 4・5           モリーナ 6
  ユラノビッチ 5        タグリアフィコ 6
MF ブロゾビッチ 5        パレデス 6
  コバチッチ 6・5         デ・パウル 6・5
  モドリッチ 5・5         マク・アリスター 6
FW クラマリッチ 4      MF エンソ・フェルナンデス 6  
   ペリシッチ 4・5      FW アルバレス 8
   パシャリッチ 4        メッシ 7・5

監督 ダリッチ 5          スカローニ 7


欠場者(ア)DF モリーナ(出場停止)
      DF アクーニャ(出場停止)
交代(ク)
   ソサ→オルシッチ 4
   パシャリッチ→ヴラシッチ 4
   ブロゾビッチ→ペトコビッチ 5
   クラマリッチ→リバヤ ?
   モドリッチ→マイェル ?

  (ア)
  パレデス→リサンドロ・マルティネス 5・5
  デ・パウル→パラシオス 5
  アルバレス→ディバラ ?
  モリーナ→アンヘル・コレア ?
  マク・アリステル→フォイス ?


アルゼンチンの完勝だった。
勝利の殊勲者はメッシの分まで走り続け、先制のPK奪取&2ゴール(自ら得たPKを決めていればハットトリック)のアルバレス以外に考えられないだろう
メッシもここぞという場面では違いを作りだしていた。

後半のクロアチアは、45分間全く良さが出なかった
オルシッチ、ヴラシッチといったサイドアタッカーを入れ、ペトコビッチというターゲットマンを入れたにも拘らずクロスが全く上がらず、中央突破に固執した結果、再三アルゼンチンのカウンターを食らったのだ。
ブラジル戦の延長後半にできていた事がなぜできなかったのか、正直よくわからない。
また、もう一人のターゲットマンであるブディミルをなぜ投入しなかったのかもよくわからない。

何にせよ、クロアチアはベスト4に進めただけでも立派だった。
それだけに散り際が呆気なかったのは残念でならない。




ベスト8敗退国

☆ ブラジル代表  3勝1分1敗 8得点3失点

  攻撃 S 守備 S 面白さ S
  個人的MVP FWヴィニシウス(ブラジル)

これ以上、完璧なブラジルは見たことがない
ネイマールが悪目立ちせず、トップ下で攻撃陣を操縦。
両翼のヴィニシウス、ラフィーニャ、最前線のリシャルリソンのカルテットが織りなす美しいサッカーは、サッカー王国の復活を予感させた。
長らく失われてきた「美しいブラジル」を現代に復活させたチッチ監督の手腕も大きい。

私がワールドカップを見始めたのは1994年からだが、その前の1990年も含め、「美しいブラジル」など一度も見たことがない
(1998年は多忙だったため、あまり観れなかったのだが)。
2002年の3Rは前線の3人に全てを託すようなチームだったし、2006年も似たようなものだ。
2010年代に入るとFWにタレントを欠き、ルイス・ファビアーノやフッキといった2線級がCFを務めた大会が続いた。

しかし、長き時を経て、見るものを虜にする「美しいサッカー」をチッチ監督は復活させた。
最前線からの即時奪還、『攻撃し続ければ、失点もしない』という大原則は
セルビア戦、スイス戦2試合あわせて枠内シュート0本に抑える堅守という形でも現れた。
主力を休ませたカメルーン戦は参考にならず、韓国戦は枠内シュートを6本も打たれるなど、韓国の素晴らしい挑戦が光ったが、試合自体は4-1と余裕の快勝。


そして最後のクロアチア戦も、120分を通して枠内に許したシュートはわずか1本だった。

この敗戦は、事故のようなものだ。
老練なクロアチアの戦いぶりにはシビれたが、敗北が決まった今ですら、こう思う
2022年の最強チームは、ブラジル代表だった、と。




☆ オランダ代表 3勝2分 10得点4失点

  攻撃 B+ 守備 A₋ 面白さ B₋
  個人的MVP コディ・ガクポ


くじ運に恵まれたオランダは、大会前からベスト8がノルマと言われていた。
そして、その通りのベスト8敗退ということで、ある意味予想どおりの結果に終わったと言える。

今大会のオランダ攻撃陣は小粒で、エースがデパイという時点で優勝候補とは到底言えないわけだが、
2列目にも最前線にも対応する、新星ガクポの得点力はチームを助けた。
最終ラインのファン・ダイクはさすがの存在感を発揮したが、
ビッグネームではフレンキー・デ・ヨングは今大会も黒子に徹し、ドゥムフリースは波が激しかった。

「美しく勝つ」オランダは今大会も封印され、もはや過去の遺物。
オールドファンの記憶の中にしか既に存在しない代物となりつつある。
ただしこのタレント力で、手堅く勝つファン・ハール監督の手腕は健在で
戦術面で相手を完全にハメたアメリカ戦、
5バックから4バックへ移行し、戦術戦では明らかに優位に立っていたアルゼンチン戦と、
好き嫌いはともかくとして、さすがの名将ぶりを見せてくれた。


☆ポルトガル代表 3勝2敗 12得点6失点
 攻撃 A 守備 B+ 面白さ A₋
個人的MVP MF ブルーノ・フェルナンデス


大会前はノーマークだったポルトガルだが、予想していた以上には面白いチームだった。
フェルナンド・サントス監督を侮っていたとも言える。

ベルナルド・シルバこそ黒子に徹していたが、柔のジョアン・フェリックス、剛のブルーノ・フェルナンデスがチャンスメイクとフィニッシュに精力的に絡み、小気味良い連携を実現していた。
そして、最前線にはいるだけで怖いクリスチアーノ・ロナウドや、スイス戦で突如ブレイクしたゴンサロ・ラモスが現れた。
中盤に攻撃的な駒を並べた反動か、サイドバックのオーバーラップは自重気味ではあったが、そこでバランスを取り、サントス監督は攻撃的なタレントを多くそろえながらも、大崩れしないチームを作り上げた。

残念だったのはやはりクリスチアーノ・ロナウド、もしくはそのパートナーだ。
代表の勝利よりも、自らのエゴを最優先するこのスーパースターは、所属していたマンUと同じく、
ベンチスタートに不満を漏らし、チームの空気を悪くしてしまった。
ウルグアイ戦でのブルーノ・フェルナンデスのゴールを、手柄を横取りするかのように喜んだシーンも含め、正直見苦しさを感じた。
このような振る舞いをしている限り、彼を獲得するビッグクラブは現れないだろう。


イングランド代表 3勝1分1敗 13得点4失点
 攻撃 A₋ 守備 A+ 面白さ B₋
個人的MVP FW ブカヨ・サカ


サウスゲイト監督のイングランド代表は、今大会も低重心でしっかり守備を固め、
両翼のスピードを活かしたカウンターサッカー。
マグワイアを中心としたセットプレイも非常に強く、大きな穴のないチームを大会に送り出してきた。
特筆すべきは若手の多さで、フォデン、サカ、べリンガム、マウントと20代前半の選手を攻撃陣に多く抱えていた。
その走力でサイドからカット・インし、多くの選手が複数ゴールを決めて見せた。
ケインばかりがクローズアップされがちだが、MVPには黒子に徹してアシストを量産したケイン、
サカ、ラッシュフォード、中盤の軸であるべリンガムなど、誰にするか迷ったほどだ。

ただし、個人的にイングランド代表のリスクを取らないサッカーは正直見ていて面白くはない。
こればかりは好みの問題になってしまうが、列強国の中で一番つまらないのがイングランド代表で、
これは20年前のエリクソン監督からカペッロ監督に続き、今のサウスゲイト監督まで受け継がれている。
敢えてリスクを取る必要がないのかもしれないが、小国ならまだしも、強豪国なのだから強豪に相応しい戦いを見せてほしい、と思ってしまう。

プレミアリーグは世界一エキサイティングなリーグで、
個人的にはここ数年のマンC、リバプール。
去年あたりからのアーセナル、ブライトンのサッカーは見ていてワクワクするのだが、イングランド代表にはそれがない。

どうもネットを見ていると、
「プレミアリーグファン=イングランド代表ファン」
「スペインリーグファン=スペイン代表ファン」な人が多いようだけども、
何故そうなるのか僕には正直よくわからない。
(バイエルンファン=ドイツ代表ファン、はわかる気がする)

プレミアリーグの2強(マンC、リバプールでも、マンC、アーセナルでも良い)が表現しているような美しさは、この代表にはないからだ。

2022年に読んだ本


S→味わい深く、いつまでも心に残りそうな作品

11/22/63 スティーブン・キング……

歴史改変SFにして、上質なタイムトラベル・ロマンス。
特に、生徒との絆や、時空を超えて出会う恋人との生活が描かれる中巻が素晴らしい。
ラストもとても良かった。
ホラーもいいけど、こういう作品もキングはもっと描いてほしい。


ジョイランド/スティーブン・キング……

レイ・ブラッドベリが描きそうな、カーニバルの原初的な恐怖と高揚を背景に、遊園地の職員として過ごした21歳の青春を瑞々しいタッチで描く。大切な人との出会いと別れ。
女性陣がカッコいいのも特徴で、探偵娘エリンとのその後の関係や、
狙撃手アニーのその後が気になった。
本当はアニーと結ばれてほしかったけど、それもまた苦く甘い青春の味か……。

わたしを離さないで/カズオ・イシグロ……
ヴェールに覆われた、ありふれた少女時代から、
ヴェールから残酷な現実が垣間見える思春期。
自分の運命からは抗えないと知る成年期。
特殊な状況で生まれ育った3人の幼馴染たちの、三角関係・悲恋物語だけれども、
これは多分、誰にでもあること。
人間はいつか死ぬ、それが遅いか早いかの違いだけ。


君の膵臓を食べたい/住野よる……
このジャンルの中では、市川拓司の「いま、会いにゆきます」以来の感動。
登場人物が極度に絞られているからこそ、主人公と、彼女の人柄、二人の関係性の変化が非常に丁寧に描かれており、むず痒い青春恋愛から別れまで、全く飽きずに読むことができた。
彼女の人柄を表す「うわははっ」という笑いもいいですね。これが彼女の一つの魅力だと思う。

ららのいた夏/川上健一……

↑の住野よるの「君の膵臓が食べたい」系の話で、こういうのが大好きな人には100%お薦め。
甲乙つけがたいけど、スポーツ描写も迫真性があるぶん、僅差でこちらの方が好きかな……互角ぐらいかな……。




火花/又吉直樹……

『自分なりのお笑い』を突き詰めて考えた結果、どんどん世間とズレていってしまう天才芸人の神谷は、どんどん借金も膨らみ、恋人(愛人?)の家を転々とするが一向に芽が出ず、それでも芸人への夢にとり憑かれ、試行錯誤をした結果、超えてはならない一線を超えてしまう。

語り手の主人公は、10年間お笑いをやったのち、「中の下」の芸人にしかなれない自分の限界を悟り、
お笑い芸人という一度はかなえた夢を、諦め、去っていく。

どちらが幸せなのだろうか。自分はどちらに憧れるのだろうか。
僕は、神谷に憧れてしまう。どうしょうもなさを、突き詰める神谷に。
誰からも評価されず、誰からも笑ってもらえなくなってもなお、夢を捨てられない神谷に。


空色勾玉/荻原規子……
イザナギ・イザナミの日本神話をベースにした、壮大なスケールの和製ファンタジー。
闇(くら)の血を引く少女、狭也(さや)は孤児となり、輝(かぐ)の村で育つ。
恋の歌を交わし合う村祭りの日、狭也を見初めたのは月代王(つきしろのおおきみ)だった。

月代王の弟、雉羽矢(ちはや)と出会った狭也は、輝(イザナギ)と闇(イザナミ)の闘争に巻き込まれ、
両親(イザナギ・イザナミ)も成し遂げられなかった、黄泉の国からの帰還を果たす。
ジャンル的には少女向けライトノベルだと思うけど、ファンタジーを愛する全ての人へお薦めの良作。


薄紅天女/荻原規子……
第1作「空色勾玉」に並ぶ良作。
更級日記をモデルにした、奈良時代→平安時代の移り変わりの時期を描いたファンタジー。

最後の大団円も素晴らしい(結ばれて良かった☺☺)


白銀のおか、玄の月/小野不由美……
シリーズ最終巻に相応しい圧倒的なボリュームと、良い意味で王道を行くファンタジー戦記でした。
残り100ページまで、これで本当にハッピーエンドに行けるのかハラハラしました。

割とトントン拍子にハッピーエンドに進んでいった最初の1000ページ。シリーズ最終作だけに、まとめに入るんだなぁと少し物足りなさを感じていたら、そこから怒涛のような逆境の連続。

次々と死んでいく仲間たち。
あぁ、そういえば小野さんって「屍鬼」の作者だったな、そんな甘い話を描く方じゃなかったな、と戦慄を覚える。
残り100ページでハッピーエンド(多分ハッピーエンドだと思うんだけど)にどうやってこぎ着けるのか、想像が難しい。単にシリーズをまとめるのではなく、クライマックスの盛り上げ方をよく知っていらっしゃる……。


ハゲタカ/真山仁……
日本人作家の経済小説で、初めて面白いと思った。

鷲津や芝野、貴子といったキャラクターの魅力にも支えられてると思うし、
日本の「時代遅れで閉鎖的」な企業体質・経営体質への批判というメッセージ性も感じられた。


のぼうの城/和田竜……
爽やか戦国歴史小説。
天下の豊臣軍が押し寄せる中、「(でく)のぼう様」を中心に団結する忍城主従(百姓含め)の絆が良い。
いつもぬぼーっとしている「でくのぼう」の成田長親。
不思議と領民から愛される忍城城主、長親(守兵500)の前に、秀吉軍2万3000が押し寄せる。
弱者に対して横柄な態度を取る長束正家に対して、
成田長親がついにキレた。「武ある者が武なき者を足蹴にし、才ある者が才なき者の鼻面をいいように引き回す。これが人の世か。
ならばわしはいやじゃ。わしだけはいやじゃ」

かくして、成田軍500VS豊臣軍23000の戦いが始まった。


破天の剣/天野純希……
九州統一直前まで行きながら、無残に秀吉に蹴散らされた島津4兄弟を、末弟家久の視点から語る名作。
自分だけ妾腹であるという事実、類稀な軍才を持ちながら、精神的にはいつまでも子供のまま。
沖田畷での圧巻の勝利と、卑劣な秀吉に毒を盛られて亡くなる最後が悲しい。
あと義久は無能……。家久の策を入れていればひょっとしたら……。


新史太閤記/司馬遼太郎……
コミュニケーションの天才、秀吉の前半生を魅力的に描いた作品。同著者の信長・家康よりも遥かに魅力的で、
山崎の戦いまでは文句なく面白い
終盤、小牧長久手の戦いになるとちょっと微妙になって、その後の秀吉の人生が描かれず、そこで終わっちゃうのが残念


天と地と/海音寺潮五郎……
上杉謙信の父、長尾為景の時代から、長尾晴景、そして謙信の第4次川中島の戦いまでを描いた作品

晴景時代が想像以上に長く(750/1500ページまで)
謙信がまだ32歳なのに作品があっけなく終わってしまったけど、この後の謙信は何もしてなかったんだろうか🤔?ともあれ、「自分の、心の中の正義」に殉じる謙信の生き様は共感しやすかったし、
後半出て来なくなっちゃったけど、松江のアネゴも良い味を出していて楽しめた。

ただ、欲を言えばこの後の謙信の活躍も書いてほしかったですね。



功名が辻/司馬遼太郎……
山内一豊という素朴で真面目な男と、それを支える妻、千代の物語。
他作品で描かれていない、秀吉の晩年や、徳川方から見た関ヶ原の話などが面白い。
一豊については、凡人が出世してのぼせ上がり、ただの勘違い男になってしまったラストは、
醜悪で惨めだった。

「一国一城の主になりたい」と思っても
主になって何がしたいのか、それをしたら本当に幸せなのか、ということまで考えずに、ただただ「異国一城の主になりたい」しか考えていないバカだった、という悲しい結末。

半身/サラ・ウォーターズ……
19世紀イギリスの監獄を舞台にした百合ミステリーにして、霊媒悪女の魅力が冴え渡る、どんでん返しモノ。
元カノが弟と結婚し、今また悪女の毒牙にかかった主人公の今後の人生が哀れでならない。
絶対うつ病まっしぐらだわ……。題材も似ている「女彫刻家」よりも個人的に上。
サラ・ウォーターズの別作品も読みたくなった。


甲賀忍法帖/山田風太郎……
10人の伊賀忍者と10人の甲賀忍者の、バトルロワイアル作品。
奇想天外な忍術で楽しませつつ、伊賀の姫と甲賀の主が想い合う悲恋要素・無常観もあるが、後年の作品に比べると切なさはやや弱めか。
とはいえ、シリーズ1作目にして既に面白さの骨子は出来あがっている。

個人的に本作の忍法MVPは「恋する吐息やHの息が、毒ブレスになる忍法」。
「魔界転生」に出てくる「ムラムラしてる時は超強いけど、射精した瞬間にクソザコになる坊さん」には負けるけど、それに次ぐ暫定第2位です。


自来也忍法帖/山田風太郎……
今回の忍法はかなりエロ寄りで、その奇想天外な変態忍法も読みどころだけども、メインカップルは純愛で、読後感が爽やかなのが凄い。

登場人物が少なく、ヒーロー「自来也」とヒロイン「毬姫」、「石五郎」のキャラが立っており、切ないながらも、忍法帖シリーズの中では比較的幸せなエンディングなのも特徴。
その分、いつもの無常ENDが好きな人には物足りないかもしれないが。

また、ヒーロー自来也の正体が最終盤まで明かされないため、犯人当て(自来也当て)ミステリーとしても楽しめる。
ライトでエンタメ性溢れる快作。


銀河英雄伝説外伝1 星を砕く者/田中芳樹……

物語は本編の少し前だけど、「0巻」として本編と併読すべき内容な気がする。
これぞ銀英伝とも呼べる艦隊戦、悪女シュザンナの強烈な陰謀、ミッターマイヤー&ロイエンタールの活躍と、完成度の高い作品。

時の番人/ミッチ・アルボム……

寿命を迎えてもなお生きることに執着するヴィクター老人と、クズ男にネットで晒されて自殺を選ぶ女子大生サラ。

二人の人生を振り返りながら、「時間」について綴った物語。
スタートダッシュが少し遅く感じたけど、終わってみればいつものアルボム節。「人々は絶えず効率を追求し、常に何かをして時間を埋めようとしています。
けれどそれでは人は満たされない。そんなことを続けても、もっと何かをしなければと思うだけなのです」

「終わりとは、過ぎ去った日々を表す言葉だ。決して、明日(未来)のことではないんだよ」
などの名言はさすがアルボム。
ただし、アルボムの名作「天国の5人」、「もう1日」と比べると1ランク落ちるので、
S₋、あるいはA+評価が妥当かもしれない。


ドラえもん のび太の鉄人兵団/瀬名秀明(藤子・F・不二雄)……

瀬名さんのしっかりした文章が紡ぐ、原作に非常に忠実なノベライズ。
映画版ドラえもんの中でも1、2を争う好きな作品の良さを十二分に表現できているという意味でも素晴らしいノベライズ。

子供の時は気づかなかったけど、
『皆が公平になったけど、競争心を失った社会(社会主義)』に絶望した博士が、
『強い競争心を植え付けたロボット』(アムとイム:アダムとイヴ)を作り、その結果が鉄人兵団として地球侵略を開始した事。
『奴隷ロボット』の廃止により、新たな労働力が必要となり、他惑星侵略へ進んでいく様子など、
19世紀末~20世紀初頭の帝国主義的世界観で面白い。

ただ、瀬名さんオリジナル要素を少しは入れても良かったかな、しょうもない作家がそれをやると大失敗するだろうけど、瀬名さんなら更に拡げられたんじゃないかな?と少しだけ思った。
だからこれをSにしても良いのかちょっと迷うけど、原作の素晴らしさも含めれば文句なしのS評価。
ノベライズの場合、評価が難しいですね。


A→読んで良かったと思える作品

乱鴉の饗宴/ジョージ・r.r.マーティン……
『繋ぎの巻』としては、最高峰の出来。
失政を重ねるサーセイと、共に裁判にかけられるマージェリー。
遠方で抵抗を続けるスタニスと、突如狂暴化したグレイジョイ家。そして海の向こうからウェスタロス奪還を狙うデナーリス。
続きが楽しみすぎる。


ぼくは明日、昨日の君とデートする/七月隆文……
最初の150ページくらいはつまらないけど、彼女の秘密がわかる(と言ってもタイトルがネタバレだけど)後半120ページはしっとりと読ませてくれるタイムトラベルロマンス。
こういうの大好きなので評価は甘め。
でもまぁ、良い作品でした。

サマー/タイム/トラベラー  新城カズマ……
主人公たちの住む辺里(ほとり)市の緻密な設定が、世界観をリアルに支えてくれる青春タイムトラベル作品。
後半、少しサスペンス色が強くなる。
悠宇を中心とした人間関係の方を深く描いてほしかった気がするけど、恋愛小説でもないしこれで良いのかもしれない。


一夢庵風流記/隆慶一郎……
最初から最後まで、人生を傾き倒した男として爽やかな読後感を覚える。
ただ、あまりに自分とは違うことと、(まぁ歴史小説じゃないからいいんだけど)前田慶次がスーパーヒーロー過ぎるのは少し違和感があったw

細川ガラシャ夫人/三浦綾子……
暖かかった明智家の家族を失い、狂愛の夫、細川忠興に嫁いだ玉子が、絶望の中でキリスト教に帰依していく物語。

明智光秀がカッコ良すぎたのと、光秀が亡くなるまでは歴史小説的な側面もあるけど、それ以降はクソみたいな夫、細川忠興との苦しい夫婦生活と、キリストへの帰依が描かれており、読んでいてしんどかった。

ただ、キリスト教作家であり、「苦しみから、キリストへ帰依する女性」を描いてきた三浦綾子作品だけに、むしろ下巻の方が書きたいテーマだったのかな。
個人的には上巻の方が2ランクぐらい面白かったけど。


元就軍記/桜田晋也……
幼い日の杉の大方(義母)や妻との絆が心に残る。
西の大内、東の尼子と二大勢力に挟まれながらも、生き延び、併呑していく毛利の活躍が楽しめる良作。


エス/鈴木光司……
続「らせん」というか「らせん」の後日談的な作品。
「ループ」ほどではないけど、ホラー要素はかなり薄め。
貞子の孫がヒロインで、かわいい。

唯一の不満点は、最後の20ページで突然、名探偵高山竜二がペラペラ情報を喋っちゃうところで、ミステリとして見ると悪手。

というか、ゲーム「Remember11」を思い出したわww
ミステリ・サスペンスとして素晴らしいんだけど、
突然謎の名探偵グラサン男がべらべら喋っちゃうやつwww
Remember11で通じるかわからないけど、R11が許せる(僕は好き)人なら問題なし!



永遠の0/百田尚樹……
宮部久蔵という一人の神風特攻隊員の眼を通して、太平洋戦争の4年間を描いた力作。
特攻隊員を美化しすぎな気はしないでもないが、兵士たちの、家族への想いに何度も胸を打たれた。
あと、人命軽視の上層部はマジでクズ。


あの日、少女たちは赤ん坊を殺した/ローラ・リップマン……
これは、アリスという邪悪な女の子が、ロニーというちょっと頭の足りない子をマウントする話だと感じた。
「おままごと遊び」の延長上で、少女たちは赤ん坊を誘拐し、「おままごと遊び」の延長上で、少女たちは赤ん坊を殺した。そして7年後、少年院で妊娠したアリスは、子供を取り上げられ、再び赤子誘拐事件を始める。
自分の赤子を取り戻すために。
そしてそれら全ての陰には、アリスをそんなふうに育ててしまった『大人になれなかった、子供のままの』母親ヘレンがいて、更にヘレンをそういうふうに育ててしまった祖母がいる。
ただ、問題解決部分がいきなり駆け足になる点、
7年前の赤子殺しと、7年後の赤子誘拐事件に共通するテーマがない点、
そしてやや唐突に感じるラストと、気になる点はそこそこある。
良作ではあるけど、名作ではなかったかな、という感じ。


火車/宮部みゆき……
個人的に好きなタイプの作品じゃないけど、素晴らしい作品だとは思う。
失踪人届を出せるまで残り3年なのに、第3の犯罪を犯す必要があったのかなぁ。いやまぁ、あったのかな。

2人を殺し、3人目を殺そうとした犯人の、たまに見せる人間味が何とも言えない感じでした。
個人的に、共犯の片棒を知らずにとはいえ担いでいた、片瀬とかいう奴がクズすぎるんだけど、さすがにこれは懲戒免職モノだよなぁ……。


妖説太閤記/山田風太郎……
時勢柄、無謀な慶長・文禄の役を企てた秀吉が、プーチンに重なる。
次々と残虐に人を殺して行く秀吉晩年の所業は圧巻で、輝かしい前半生のみを描いた他作家の「太閤記」とは一線を画している。
信長以上に、魔王と呼ぶに相応しい本作の秀吉だった。


銀河英雄伝説外伝3 千億の星、千億の光/田中芳樹……
本編の直前(1年くらい前?)を描いた外伝。
リューネブルクという魅力的な悪役と、それと対立するシェーンコップ率いる『ローゼンリッター』。
また、戦場では無能ながら意外な切れ者曲者おじいさん、グリンメルヒハウゼンが印象的。

『誰かの優しい恋人の喉を銃剣でえぐり、誰かの愛する夫にビームを打ち込み、赤ん坊を抱き上げて頬ずりするであろう父親の脳天をトマホークで叩き割る。それが戦争である』
ぶれない銀英伝哲学だけど、同意。


銀河英雄伝説外伝4 螺旋迷宮/田中芳樹……
「銀英伝」らしい第二次ティアマト会戦の描写+主人公ヤンを探偵役にしたミステリーという、異色の作品。
これはこれで良くまとまっていて、面白かった。


行人/夏目漱石……
発達障害的なコミュニケーション障害と、神経質が昂じて精神病に罹った一郎。
うまくいかない妻と、弟の間を疑った事から、瓢箪から駒状態でますます泥沼に堕ちていく彼に未来はあるのか?

「門」のテーマを継承しつつ、「こころ」へと繋がる作品だが、「こころ」の方がテーマがシンプルなぶん、より心に響きやすいとは思う。

とはいえ面白かった。それにしても、主人公の二郎はしょうもない奴やな……。嫁の直さんもどうかとは思うが、メンヘラと結婚生活するのも大変だったんだろうな。


ローマ字日記/石川啄木……感想はこちらで


外道忍法帖/山田風太郎……
330ページのうちに47人も忍者を出して戦わせたのは無謀だし失敗だと思う。
一人ひとりがモブキャラのような感じで、全然愛着湧かないもん。
一人ひとりが繰り出してくる、わけのわからない忍術は面白いけど、それなら登場キャラは20人ぐらいにして一人ひとりをちゃんと描いて余った分の忍術アイディアは別の作品で使ってほしかったところ。
現在、誰が死んで誰が生き残ってるのかさっぱり把握できない。
次々に変な技で戦っちゃ死んでいくのを延々読んでいるだけで。

しかし、聖女マリアこそがラスボスであり、長崎への原爆投下で終わる結末は、『いつもの山田風太郎節』とはいえ鳥肌モノであり、ただの駄作ではないと思わせてくれた。
『信じていた上司』によって、忍者たちが殺しあい、無駄に命を散らせていくのは、
山田風太郎作品に一貫したテーマで、
これは、太平洋戦争時、無能な軍上層部によって次々と死んでいった日本人の無念さを表しているように思う。

そして、奇想天外で摩訶不思議な忍術合戦は、『戦争時独特の狂騒曲』を描いている。
しかし、祭りの後に残るのは『俺たちは、何のために多くの命を犠牲にして、戦っていたのだろう』という虚しさ・儚さのみ。

この荒涼とした読後感が、山田風太郎を単なる厨二病忍者作品の域を超えていると感じる、理由の一つ。元来、生とは無意味であり、バカな事をやり、誰かに操られ無残に殺されていく。
そうした諦観が、山田風太郎作品の根底には流れている。
そして、そうした諦観の上で、『バカ面白い忍術合戦』が光り輝く。


風林火山/井上靖……
川中島合戦までの武田家を、山本勘助の眼から描く。
スーパーヒーローみたいになってる山本勘助に若干違和感があるが、それもまた良し。
川中島合戦までなので、武田信玄の活躍はこの後も続くわけだけど、そちらは新田次郎「武田信玄」に譲るとして、キャラクター小説としての娯楽性で言えば、本作の方が遥かに面白かった。



武田信玄/新田次郎……
家督を継ぐ前から、信玄の死までを2000ページで描いた大作。キャラクター小説的にはやや地味であり、歴史好き以外の人に薦めるのは難しいが、信玄について知りたい人にはお薦め。
個人的には今川氏真が良かった。


黒田如水/吉川英治……
軍師、官兵衛が本格的に活躍する備中高松城攻め前の、
荒木村重に捕まっている間の話がメイン。

吉川先生にかかると、どんなに悲惨な状況でものほほんとしてしまうのだが、それもまた味といえば味かな……


四畳半神話大系/森見登美彦……
どの未来を選んでも2年間を無駄にしてしまう主人公の『私』を描いた物語だけど、なんだかんだで(冴えないとはいえ)青春してると思う。

内容はともかく、文体が超絶面白くて、何度も笑った。


四畳半タイムマシンブルース/森見登美彦
前作「四畳半神話大系」がほぼギャグに全振りだったのに対し、本作はギャグ色が薄まった一方、
主人公と明石さんとのラブコメ要素が強まっていて、これはこれで良い感じ。
また、「神話大系」最終話と若干矛盾すると思ったけど、最後に矛盾解消。



九月の恋と出会うまで/松尾由美……
ライトタッチで読みやすい、タイムトラベル・ミステリ。

なお、本の裏に書かれている『時空を超えた奇跡のラブストーリー』的な要素はあまり期待しちゃいけないw
あくまでもミステリとして読むべき。


茨の城/サラ・ウォーターズ……

この世界は「監獄」だ。
「監獄」とは、ある一定の【時間】、移動の自由を禁じられる事。

スーザンは、「極貧のロンドン」という「監獄」で生まれ、
モードは、「毒親(親戚)の館」という「監獄」で育った。
「監獄」を飛び出したかったモードは、スーザンを利用してロンドンへと羽ばたこうとした。
スーザンは深く考えず、金銭のためにモードを利用しようとしたが、これも「極貧」という「監獄」を抜け出すためだった。
この『化かし合い』は相打ちに終わり、スーザンは「精神病院」という「監獄」へと送られ、
モードは「詐欺師たちの巣」という「監獄」へと飛び込んでしまった。

世界はどこまで行っても「監獄」で、騙し合った二人は再会し、互いの「肉体関係」という「監獄」へと飛び込んでいく。


前作「半身」がシンプルな悪女物語だったのに対し、本作「茨の城」は様々なギミックや、込み入った筋立てのため長くなっているが、
正直に言えばシンプル・イズ・ベスト。
前作「半身」の方が好きでした。


雪の女王/ジョーン・D・ヴィンジ……
元カレ(スパークス)がアリエンロードに奪われ、彼は『スターバック』として殺人者と化してしまう。
スパークスの元カノ、ムーンが、スパークスを奪い返し
彼を改悛(?)させ、『夏の女王』として新しい統治を始めるまでの冒険モノ。サブキャラの警官コンビや、喋るロボなどが魅力的。


オリジン/ダン・ブラウン……
『シンギュラリティ』(AIが人間の能力を超える転換点)を最大のテーマに、
科学と宗教の対立や、ガウディの宗教建築をモチーフにまぶした作品。
『黒幕』は意外な人物かつ、納得のいくものなので、ミステリとしては評価できるけど、最後の100ページ以外は微妙。

私本太平記/吉川英治……
全13巻分割本で読了。
8巻で鎌倉幕府を倒すまでは団結していたのに、9巻以降、過去同志だった者たちが争い始め、遂には足利兄弟同士の殺し合いにまで発展するのは悲しかったですね。

この時代について詳しくなかったけど、ある程度勉強になりました。足利弟が印象的。


B→暇つぶし以上の有益な何かを得た作品

豊臣秀長/堺屋太一……
秀長視点から見た秀吉の活躍という感じで、あまり秀長が主人公という感じではない。
ところどころ現代の会社に例えるのが引っかかるけど、まぁまぁ良作。
年代としては賤ケ岳の戦いまで。

ただ、信長―秀吉の物語は多くの作家が書いているので、新発見はあまりない。

バースデイ/鈴木光司……
「らせん」、「ループ」の前日談・後日談をまとめた作品で「リング」シリーズのファンなら。
正直、第1~3作の「リング」→「らせん」→「ループ」までが名作すぎて、それ以降は無理に追わなくてもいいと思った(「タイド」まで、全作読んだw)


きみがぼくを見つけた日/オードリー・ニッフェネガー……
タイムトラベルロマンスだけど、『甘さ』は薄い。
タイムトラベルという『非常に不幸で、厄介な症状』を抱えた主人公と、未来の奥さん(子供時代)との出会い。

は、良いんだけど奥さんになってからは、
子供ができない夫婦生活の苦悩や、やっと生まれた一人娘への愛など、まぁこれはこれでいいんだけど「タイムトラベル・ロマンス」というよりも、大変な夫婦生活のイメージが強かった。


きみ去りしのち/重松清……

一人息子を亡くした主人公夫婦が、そこから吹っ切れるまで(吹っ切れてるのか?)を描いた作品。
そんな物語なので、ひたすら陰鬱としているが、その中で先妻との娘、15歳の明日香がかろうじて作品を明るくしている。

夫婦お互いが寝ている間に息子が突然死したのはともかくとして、この作品では夫と妻それぞれが、
子供の異変に気づけなかった自分とお互いを責め、結婚生活すらうまくいかなくなるのだけど、
そういうものなのかなぁ?と思った。

うちも、父親が突然死してるんだけど、
「そんなの気づけるわけないやん!」と割り切ってしまった部分があったので、一緒に寝ている母親を責めるとかそういうのはゼロだったけどなぁ……。

まぁ、亡くなったのが親の場合と子供の場合じゃ違うのかもしれない。


白鳥異伝/荻原規子……
悪くなかったんだけど、前作の「空色勾玉」が素晴らしかったので、それに比べるとだいぶ落ちる。

というか、女性主人公の遠子よりもサブキャラの管流の方が活躍しているのが個人的に不満。


精霊の守り人/上橋菜穂子……
AとBの中間。
丁寧に作られた和製ファンタジー。
為政者の都合の良いように歴史が改変されていくなど、シリアスな部分も書かれつつ、バトルシーンはなかなかの迫力。
特に心を揺さぶられる部分がなかったのでこの評価だけど、ファンタジー好きには安心して薦められる作品。


日の名残り/カズオ・イシグロ……
感想はこちら


召抱/上田秀人……
ようやく物語が終盤に向かって動き出した。
怪しい仏僧との対決は新鮮だったし、かなり黒幕に近いと思っていた松平定信がついに失脚。
10巻へ続く。


伊達政宗/海音寺塩五郎……
前半3分の1は東北で頑張っている政宗君の活躍。
秀吉がやってきて秀吉に従ってからは、しょうもない事をしては殺されかけて助かったり
無実の罪で殺されかけては助かったりで、生存能力は高いけど、特に面白くはないというか……あんまりカッコよくないのねw


オレたち花のバブル組/池井戸潤……
銀行合併の後の、お互いの出身銀行に対する派閥・諍いがよく描けているのと、前作に比べて『悪役のムカつき度』が減ったので、メンタルには良かった
(物足りないと思う人もいるかもしれない)


下町ロケット/池井戸潤……

半沢直樹みたいな異次元的ヒーローのいない半沢直樹というか、
ムカつく大企業を相手に、地道な努力で頑張って見返して行く話。
「半沢直樹」よりも好きかもしれない。
ただ、ムカつく大企業を無視して外資に技術を売っても全然問題ない気がしたのだけが
ちょっと引っかかったかな。
国産ロケットに何か強いこだわりがありそうなんだけど、ムカつく日本人よりまともな外国人の方が良くない?
エピローグが良かったのと、殿村さんが素敵。


虞美人草/夏目漱石……

6人の男女の恋愛模様にして、意外なヒーローが活躍し、悪女が征伐されるエンタメ劇として、特に最後の100ページは一気に読める面白さ。記憶にも残りそうな作品です。

悪いところは、最初の100ページがつまらない上、ひたすら読みにくいところ。

漱石の作品中でもかなり『理解しやすいはず』のヒーロー小説なのに、漱石作品中でも『相当読みにくい部類』の文章というのは、どうなんだろう?

物語最序盤の宗近と甲野のやり取りなど、終盤になればあれほど輝く二人なのに、最序盤ではいかにも平凡。
面白くなるのは糸子と藤尾のバチバチ女戦争が始まるところぐらいから。

あと、なんで最後、藤尾死んだのwww?
突然すぎてビックリしたわww

それと、甲野と糸子が結ばれてほしかったな。改心したから良いのかもしれないけど、小野君も藤尾と同じくらいクズだと思いました。まぁ藤尾ママが一番クズだけど。
それに比べて、宗近兄妹のカッコよさは異常。甲野君も好きですね。


花神/司馬遼太郎……
対幕府戦争で、長州藩の総司令官を務めたコミュ障理系男、大村益次郎の生涯を描いた作品。

エンタメとしては、益次郎のキャラ自体が理解・共感できないため、なかなか厳しいが、明治維新にはこういう人も必要だったんだろうとは思った。

明治維新というのは元々、排外的な攘夷運動がエネルギー源であり、それを率先して唱えたのが水戸・長州藩。
その長州藩の益次郎が、薩摩の極右である海江田信義に殺されるのも皮肉というか。

で、薩摩藩は何をしたかったのかがイマイチわからないんだよな。薩摩視点の作品も読みたいと思った。

簒奪/上田秀人

決戦/上田秀人……
全12巻読んでおいてなんだけど。
上田秀人の「奥右筆秘帳シリーズ」、全12巻のうち3巻の「侵食」までで十分だと思う。
後は消化試合。


夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦……
『黒髪の乙女』が歩くと、そこでは奇妙なカーニバルが発生する。『不思議の国のアリス』ばりの童話的不条理ファンタジーとして楽しむ作品だと思う。
(けど、個人的にこういう作品はあまり得意ではなかったりする)


楽園/鈴木光司……
モンゴルを舞台にした第一部はめちゃ面白かった。
第二部以降は、サバイバル小説になっちゃって残念だった。


タイド/鈴木光司……
「リング」シリーズ内で一番評価が低い。
いくらなんでも設定をいじりすぎていて、理解が大変な上、内容自体あまり面白くない事もある。

第3作「ループ」の設定と微妙に矛盾している気もするし(ミスリードかもしれないが、第6作が描かれていない以上、想像と推測で考えると『矛盾と断定はできない』が、『矛盾しているような気がする。モヤモヤ感が残る』。

貞子のターゲットが最初から竜二個人にあったのだとしたら、「ループ」の設定は崩壊する。
貞子が嘘をついている・竜二が勘違いをしていると捉えれば矛盾はしないが。

また、「ループ」の記憶を持った竜二が、それを食い止めるために『今までとは違う選択肢を行なった』という事なら、その点をもっと強調して書いてくれないと伝わってこない。

ごくごく純粋なホラー小説として書かれた第1作「リング」に、バーチャルリアリティSFとしての設定を加味したのが第3作「ループ」。
ここからホラー色は薄くなり、純粋なSFになっていくのだけど、第5作「タイド」で今度は日本神話を持ってきて、正直詰め込みすぎじゃないかと……。


道草/夏目漱石……
しつこく金の無心に来る毒親に、ほいほいお金を渡してむしり取られ続ける話。
漱石の、毒親に対する恨み骨髄!といった作品だけど、
最初から金を渡さなきゃいいのにとしか思わなかった。「こころ」にも親戚に金をだまし取られる話が出てくるし、もう1作……「門」だったか「三四郎」だったか忘れたけど、そちらにもそんな親戚が出てきた気がするし、
漱石は心底、この義父&義母が嫌いだったんだろうなと思う。

この「道草」を読めば、そりゃ嫌うわ、とは思う。


銀河英雄伝説外伝2 ユリアンのイゼルローン日記/田中芳樹……
この本を単体として評価するならC評価なんだけど
この本は外伝であり、
銀英伝ファンに対するファンブック的な立ち位置だと思うので、そう考えればイゼルローン組の日常が垣間見れて良いんじゃないかな?

くノ一忍法帖/山田風太郎……
忍法帖シリーズのファンだけど、今回は外れ気味。
まず、キャラ数を絞っている割に、愛着が持てるキャラがいない。
あと、活躍するのが忍者よりも、怪力女性というのもどうなんだろう?

妊婦さんが戦いまくる話で、大丈夫なんか? と思った。
あと、歴史上の事実と整合性が取れないから仕方ないけど、
雑魚を倒す余裕があるなら春日局を殺せばよかったのに、と思った。


カジノロワイヤル/イアン・フレミング……
今まで読んだ007シリーズの中で一番面白かった。このシリーズでヒロインに魅力があったの、初めてな気がする。



サンダーボール作戦/イアン・フレミング……
やってる事はいつもの007だけど、悪役の規模が大きく、ヒロインの頑張りもあってシリーズ内では比較的良作だったんじゃないかと思う


C→暇つぶし程度にはなった作品

彼岸過迄/夏目漱石……
これは期待外れ。「行人」や「こころ」の下位互換というか、出来損ないみたいな感じ

墨痕/上田秀人……
松平定信はもう9巻(「召抱」)で十分書いたでしょ……。同じネタ2連続はキツいで。


フルメタルパニック2 疾るワン・ナイト・スタンド/賀東招二……
B級ハリウッドアクション映画感覚で、頭カラッポでいきましょう。
テッサちゃんはかわいいよ。

……全巻同じ感想になりそう



フルメタル・パニック! 4 終わるデイ・バイ・デイ 上/賀東招二……

銃撃戦がない方が面白いんだけどw


フルメタル・パニック! 5終わるデイ・バイ・デイ 下/賀東招二……

前半はまぁまぁ面白かった。
かなめが一人で頑張る部分の方が面白いんだよなぁ。


フルメタル・パニック! 6 踊るベリー・メリー・クリスマス/賀東招二……

前半は面白かった。ロボットが出てきてからつまらなくなったけど
敵役が魅力のない単なるキチガイなのはどうにかならねーのかな。


フルメタル・パニック! 9 つどうメイク・マイ・デイ/賀東招二……

ロボットとか銃撃戦とか興味ないんだよなっていうのと、悪役に魅力がないのがつらい。
前者は作品自体がそういうジャンルなので、そこに文句を言うのは間違ってるけど、後者はやっぱりつらい。

ロスジェネの逆襲/池井戸潤……
前2作と比べ、金融知識に興味がないとよくわからない。


女王陛下の007/イアン・フレミング……


D→自分には合わなかった作品

二百十日/夏目漱石


フルメタル・パニック! 3 揺れるイントゥ・ザ・ブルー/賀東招二

……B級アクション小説、はいいんだけど、
とりあえず敵が、ただの頭のおかしいだけの奴なのがしんどい(毎回そうっぽいけど)

あ、テッサちゃんはかわいいです

結局2巻と全く同じ感想ですね。
ちなみに2巻より劣るわけでもないんだけど、単に飽きてきただけです(全巻積んでるけどw)


フルメタル・パニック! 7 つづくオン・マイ・オウン /賀東招二……

銃撃戦はつまらないっすね


ダイヤモンドは永遠に/イアン・フレミング……

人種差別と性別差別が気になるのはシリーズ共通だけど、それでつまらないとなるとD評価になっちゃいますね。



E→プロ作品として見るにはつらい作品
 

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