ファンの方は読まないでください
前置き
ハードボイルド御三家と言えば、ダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラー、ロス・マクドナルドと呼ばれた時代があった。
また、多くの「作家志望者のための本」でお薦めされる作家No1は、僕の知る狭い範囲ではレイモンド・チャンドラーがNo1である。
僕が主に趣味で書いているのは少女向けファンタジーなので、
スペースオペラでもなければハリウッドの脚本でもないのだが、それはこの際どうでもいい。
こんなにあらゆる場所で『これを読め!』と推されている作家を、僕はチャンドラーしか知らない。
(次点でクリスティ)
僕は素直なので、レイモンド・チャンドラーの長編全てを旧訳で読んだ。
全く面白さがわからなかった。
「うふぅ」という謎のマーロウのため息にも辟易とさせられたし、なんだかよくわからない理由で「やぁ、息が臭いぜ!」とか言ってチンピラと殴り合うのも意味がわからない。
ハッキリ言って、チャンドラーのせいで、僕は「ハードボイルドというのは、僕には向かないジャンルなんだな」と思い込んでしまった。
ハメットもそこまで楽しめなかったし(チャンドラーよりはマシだが)、
何とか読めたのはロス・マクドナルドぐらいだ。
その後、生島次郎やディック・フランシス、ロバート・B・パーカーや、船戸与一あたりと出会って、
「はぁ? ハードボイルドって面白いんじゃん!」と気付いた。
その間10年はかかった。失われた10年である。
その後、村上春樹訳が出たのでもう一度読んでみた(「プレイバック」のみ再読はしていない)
しかし、やっぱり面白さがわからない。
作品の中で最もマシに思えるのは
これは何とかストーリーがつかめる。
2番手は水底の女だ。
これもまぁ何とかストーリーはわかる。
しかしそれ以外はきつい。
の2作は印象が似ているのでまとめて書いてしまおう。
この2作は序盤と終盤に読みごたえがある。
前者では8年前の元カノを慕う、へら鹿マロイの登場シーンとその最期。
後者はテリー・レノックスとの友情と、その終焉だ。
しかし……無関係な人間を求めて殺戮の限りを尽くすへら鹿マロイに感情移入をしろというのは無理な話だし、彼を応援するマーロウの心理もわからない。
テリー・レノックスとの友情と、その終焉はなるほど苦みを感じさせる両シーンだが、640ページの作品のうち40ページ程度ではないか!
2作ともそうだが、起承転結の『起』と『結』だけがあり、中身がスッカスカ……というか、マロイやレノックスとは関係ない暴力沙汰を起こしているだけなのである。
恐らく伏線のようなものもほぼない。ただ、最初と最後が独立しているのだ。
の2作もその傾向はあまり変わらず、
(再読したにもかかわらず)中身もごちゃごちゃになってしまっているが、
依頼人が実は悪者だった、みたいな話だった気がする。
結局、「起」&「結」と、「承」&「転」が繋がらないのは一緒である。
プロットが複雑で僕が読み解けていないだけの可能性もあるが、
たぶんそうではない。
ただ、勢い任せに作品を書きなぐっているだけにしか思えないのである。
そんなわけで、僕のチャンドラーの評価は相当低い。
そういう作家をこの特集で取り上げるのは、連載を立ち上げた趣旨に反しているし、ただいたずらにファンの方に喧嘩を売るようで心苦しいのではあるが、
ここは備忘録代わりに書かせていただいた。
チャンドリアンの方々、申し訳ない。
全作品評価 S~E
高い窓 C+
水底の女 D+
さよなら、愛しい人 D
大いなる眠り D
ロング・グッドバイ D₋
リトル・シスター E
プレイバック 再読していないのであれだが、以前の記憶ではE