2023年06月

「アクロイド殺し」感想

トリック以外は物足りない、一発ネタ的ミステリ。ミステリ読み限定で、必読作品

ネタバレあり

前おき

アガサ・クリスティについては以前2回もコラムを書きました

この時つけた評価を見ると、少し今の感覚と違うものもありますが、概ねこの通りです。

今回は個人的には低評価の『アクロイド殺し』のあらすじ雑解析をしました。
(オリエント急行・ナイルに死す・そして誰もいなくなった、の3作も今後やる予定)

ちなみに、本作はポワロシリーズの3作目。
3作目にして既にポワロは引退を決意し、ワトソン役を務めていたヘイスティングスはアルゼンチンに追いやられています。

恐らく、クリスティも最初の「スタイルズ荘の怪事件」では、クラシックなホームズスタイルを模倣して、ポワロ&ヘイスティングスというペアを登場させましたが、2作目の「ゴルフ場殺人事件」で既にヘイスティングスの存在なしでも、作品が書ける事に気づいたのだと思います。
ヘイスティングスは最終作「カーテン」にも登場する、ポワロの親友ですが、驚くほど長編では登場が少ないですね。

登場人物まとめ

この小説にはたくさんの登場人物が出てきますが、あまりキャラが立っていないなどの理由で混乱してしまうので、先にまとめをつけます。
いきなりネタバレですが。

ミス・フェラ―ズ……シェパード氏を毒殺し、『謎の男』に恐喝されていた。ロジャー・アクロイドの恋人。

ロジャー・アクロイド……タイトルになっている通り、殺された人。アクロイド氏とのみ書いている場合は、彼を指す。

ラルフ・ペイトン……ロジャー・アクロイドの養子。イケメン。フローラの許嫁。ぶっちゃけ、クズ。

フローラ・アクロイド……ロジャー・アクロイドの姪。美人。ラルフと許嫁で、ポワロに事件を頼むことを言い出す。

セシル・アクロイド……フローラの母。ロジャーの弟(故人?)と結婚していた。ウザキャラ。

パーカー……アクロイド家の執事。最初に疑われる人物。

ミス・ラッセル……アクロイド家のメイド長。アクロイド氏と一時期いい関係だったっぽい。

アーシュラ・ボーン……アクロイド家のメイド。事件当日は休んでいた。

ヘクター・ブラント……アクロイドの友だち。フローラを密かに愛している(フローラとは年の差があるため、自分の出る幕ではないと思っている)。

キャロライン……噂好きのおばちゃん(?)。シェパード氏の姉。ミス・マープルの原型とされていた。

シェパード医師……語り手であり、犯人。

エルキュール・ポワロ……紹介するまでもない名探偵

他にもたくさんいますが、最小限に絞って紹介しました。

事件の真相

物語解析に入る前に、いきなり真相を書きます。

フェラ―ズ氏は1年前、フェラ―ズ夫人に毒殺されました。

それをシェパード医師が知り、フェラ―ズ夫人を恐喝していました。
フェラ―ズ夫人は耐えられなくなり、ロジャー・アクロイド氏に遺書の形で自分を恐喝していた人物への恨みを書きます。
シェパード医師は窮地に陥り、アクロイド氏を殺した。

まぁ、簡単に言っちゃえば、ケチなゆすり屋の犯罪で、
当時鮮烈だったトリックを除くと、あまり面白みがないと個人的には思います。
それが反映されての低評価になります。

再読してみると、フローラとブラントの歳の差カップルが一服の清涼剤となっているのと、ラルフが記憶以上にクズだったのと、そのクズに献身的なアーシェラの存在によって
D→Cに評価をあげてもいいかなと思います。

アクロイド氏が死ぬまで

語り手はシェパード医師の一人称。

キングズ・アボット村で、ある日フェラ―ズ夫人が亡くなった。
家に帰り、姉のキャロラインと食卓を共にする。
キャロラインは村の情報通で、ミス・マープルの原型とも思われる。

1年前にフェラ―ズ氏は死んでおり、その時はフェラ―ズ夫人が毒殺したとキャロラインは信じて疑わなかった。
夫を毒殺した良心の呵責により、フェラ―ズ夫人は自殺したのだとキャロラインは勝手に信じている。(前者は当たっている)

夫人は遺書を残してはいなかった。
キャロラインがうっかり真相を見破ってしまい、それを村中に吹聴したら、非常に困るとシェパード医師は感じた。

今回の被害者アクロイド氏は、村の金持ちであり、たくさんのクラブに加入し、村の中心的存在である。
アクロイドは以前結婚していたが、妻はアルコール中毒で亡くなり、以後結婚していなかった。
アクロイドには、25歳のラルフ・ペイトンという義理の息子(妻の連れ子)がいる。
ラルフ・ペイトンとフェラ―ズ夫人は、夫人が亡くなる前日、内緒話をしていたのだった。

アクロイドと、フェラ―ズ夫人は非常に仲が良く、村人たちの噂ではデキていると思われていた。
フェラ―ズ夫人が来るまでは、ミス・ラッセルというメイド長とデキていると噂されていた。
アクロイドの家には、セシル・アクロイドという義妹と、その娘(姪)のフローラが居候している。

シェパード医師は往診中、アクロイド氏と出会った。
「恐ろしい事が起きた。すぐに話し合いたい」とアクロイド氏。

隣の家に、最近外国人が引っ越してきた。カボチャ栽培をしているポロット氏という男だそうだ。
シェパードが庭いじりをしていると、ポロット氏のカボチャが飛んできた。
これが、シェパードとポワロの出会いだった。

ポワロは探偵稼業に嫌気が差して、田舎に隠遁したのだが、事件から離れてみるとまた事件が恋しくなったのだという(この時、シェパードはポワロを理容士だと信じていた)。
ポワロは、旧友ヘイスティングスを懐かしんでいた。アルゼンチンに行ってしまったようだ。
シェパードは、1年前遺産を相続したのだが、無茶な投資をしてしまい、結局再び医者の仕事に戻ったのだった。

ラルフ・ペイトンと、フローラ・アクロイド(アクロイド氏の姪)が結婚することを、
アクロイド氏は喜んでいたそうだ。
ラルフは、早くアクロイド氏が死ねば遺産が手に入るのになぁと、誰かと話していたとキャロラインは言った。

ラルフがシェパードに相談に来た。「自分一人で何とかやらなきゃいけないんだ」とラルフは言った。

(『アクロイド殺し』があまり得意でないのは、主要人物以外の村の人々が多すぎて、
一人ひとりのキャラが弱いからだったりする。
僕の好きな『終わりなき夜に生まれつく』『五匹の子豚』『葬儀を終えて』『ナイルに死す』などのクリスティ作品は、キャラが絞られていて感情移入しやすいのである)

夕食が終わり、シェパードはアクロイド氏に呼び出された。
フェラ―ズ夫人に、フェラ―ズ氏の毒殺を告白されたというのだ。
そしてアクロイド氏は、フェラ―ズ夫人が殺人者だと知ると、結婚する気をなくしてしまったのだ。
「一人の人物が全てを知っていて、フェラ―ズ夫人を脅迫し、大金を巻き上げていた」のだった。

シェパードはフェラ―ズ夫人とラルフが親しそうに話していたのを思い出した。
シェパードは一瞬不安を感じた。しかしその後、ラルフが親しそうに対応してくれたのを思い出し、不安を打ち消した。
「その者の名は言おうとしなかった」とアクロイド氏は言った。
アクロイド氏は、恐喝者が自分の家庭内にいるんじゃないかと心配しているようだった。

告白された瞬間、アクロイド氏はフェラ―ズ夫人を告発すべきか、黙っているべきか非常に迷っていた。
そして、迷っている間にフェラ―ズ夫人が自殺してしまったことで、アクロイド氏は非常に苦しんでいるのだった。
(完全に後出しジャンケンでこの解析を書いていますが、こうしてみると確かに伏線は張られていますね。普段のテキトー読みでは流してしまうところですが)

アクロイド氏は、フェラ―ズ夫人を強請っていた者を絶対に許しちゃおけないと言った。
そして、フェラ―ズ夫人が遺言を絶対に残しているはずだと言った。
シェパードとアクロイド氏が話していると、そこに手紙が届いた。
フェラ―ズ夫人が亡くなる前に投函した手紙だった。
「これは、私一人で読みたいんだ」とアクロイド氏は言った。

結局、シェパードが帰宅するまで、アクロイド氏は手紙を読まなかった。
シェパードの帰宅中、謎の男から「ファンリーパーク(アクロイドの家)はこっちかね?」と聞かれる。
シェパードが帰宅すると、アクロイド氏の執事パーカーから電話がかかってきた。
アクロイド氏が殺された、というのだ!

館に急行したが、パーカーはそんな電話を掛けた覚えはないという。
アクロイドの部屋に駆け込むと、アクロイド氏はやはり死んでいた。
背後から短剣で刺されていたのだ。
シェパード氏はやるべきことをこなし、帰宅した。

☆前半

警察の捜査が色々と行なわれる。

シェパードは21時15分には家に帰っていたが、21時30分にアクロイド氏が誰かと話しているのを聞いたと、館の執事レイモンドが答えた。
漏れ聞いた声によると、「最近とても物入りなので、あなたの要求に応じる事はできかねる」。
つまり、誰かが金の無心をアクロイド氏に行い、アクロイド氏が断る声を聞いたということだ。
アクロイド氏を刺した短剣は、チュニジア製の短剣という珍しい骨董品だった。
椅子の位置が引き出され、いつの間にかまた戻されていた(シェパードの仕業)

21時15分にフローラがアクロイド氏と話し、『アクロイド氏は以後誰とも話したくない』とパーカーに言ったそうだ。
シェパードが帰宅した後に、フローラがおじのアクロイドにお休みのあいさつをしたとのことだ。
アクロイドの死去をフローラに伝えたのは、アクロイドの旧友ブラントだった。

そのフローラを部屋に通し、フローラが去る時に声をかけたパーカーが怪しい、というのが警察の最初の見立てだった。
シェパード氏が家に帰ると、キャロラインは『パーカー犯人説』をバカにして一刀両断する。

フローラ・アクロイドが家にやってきた。
ここで、シェパードはポロット(ポワロ)が名探偵だという事を知る。
シェパードは、ポワロを事件に引き込まない方が良いと反対する。

ラルフは夜9時から、失踪していた。21時25分にアクロイド邸の近くで目撃され、それ以降誰も彼を見ていない。
そのため、警察はラルフを疑っていた。
フローラは、恋人のラルフが疑われているので焦っていた。

フローラに頼まれ、ポワロは事件に乗り出した。
シェパードは昨夜、ラルフにも会いに行ったのだった(既に読者に情報を隠している
ポワロは「事件の当事者全てが何か隠し事をしている」という。

警察が作ったアリバイリストでは、メイドのアーシュラ・ボーン以外はアリバイがきちんとあるようだ。
そのため、犯人はラルフ・ペイトンにほぼ絞られた。

ポワロは助手として、シェパードと行動を共にする事となった。

フローラ・アクロイドが一人でいるのを目撃する。
叔父が死に、恋人が容疑者な割には楽しそうだった。
フローラとブラントが会話をしていた。
「そのうち上等な毛皮を、あなたに届けましょう」とブラントが言うと、フローラは喜んだ。
そろそろアフリカへ戻る時が来たと語るブラントに、
フローラは「すぐにはいなくならないでください」と頼んだ。
「私たちみんながあなたにいてほしい」と語るフローラに、
「あなたの気持ちを聴いているんです」とブラントが言った。
「私も、あなたにいてほしいです。あなたと話すと、心が慰められる気がします」と言うと、
ブラントは「それならば、留まりましょう」と話した。
そして、ブラントは「ラルフが犯人ではないよ」とフローラを慰めるのだった。

フローラが楽しそうな理由は、アクロイド氏が2万ポンドも遺産を残してくれたからだった。
これで自由になる、これでお金の心配をしなくてもすむようになる、嘘をつかなくてもすむようになる、とフローラは言う。
「何をするのも、何をしないのも、自由」だとフローラは言った。
何をしない=財産目当てに、ラルフと結婚しないで済む、の意味です

フローラは、ラルフについては心配していない、ポワロに頼んでいるからと語った。

池の中に光るものを見つけ、ポワロは泥だらけの池から光るものを取り出した。
池の中に落ちていたのは女性用の結婚指輪。『Rより』

ラルフ・ペイトンは浪費癖があり、アクロイド氏に金の無心をしていたらしい(最近はしていない)。

ラルフ・ペイトン、セシル・アクロイド、フローラ・アクロイドに大金が、
ミス・ラッセルに1000ポンド、レイモンドに500ポンドの遺産が残されたようだ。

ブラントもまた、お金に少し困っているようだった。
1年前に遺産が入ったのだが、怪しい投機をして失敗してしまったのだった
(1年前に遺産が入って、怪しい投機をして失敗した奴2人目w
世界大恐慌と関係あるのかな?と思ったけど、この作品が書かれたのはまだ1926年でした)

セシル・アクロイドは遺産がたくさん舞い込んできたにもかかわらず、不満があるようだった。
ロジャー・アクロイドはお金についてケチで、フローラにお小遣いもあげなかったと故人について文句を言った
自由になるお金がないことに、フローラは不満だったとのことだった。

アクロイド氏のお金が40ポンド盗まれていた。
メイドのアーシュラ・ボーンは昨日、テーブルを乱してしまい、アクロイド氏から解雇通告を受けたらしい。

アーシュラ・ボーンの前の雇い主に話を聞きに行くシェパード。ポワロと離れて単独行動となった。
アーシュラの過去に関して、前の雇い主は言いたくないようだった。

シェパードが家を離れている間、キャロラインの元にポワロが訪ねてきたようだ。

ラルフが指名手配された。
フローラはラルフの行方を全く知らない、ということだった。連絡もないらしい。
セシル夫人がラルフに対して当てこすりを続け、財産の話までして、空気をひどく悪くする。
そのせいで、フローラは「明日、ラルフとの婚約を発表する」と決めてしまった。

ポワロは、フローラに対して「2日だけ、婚約発表を延期してほしい」と懇願する。
ラルフに対しても、その方が良いという。

シェパードに道を聞いた謎の男はアメリカ訛りがあり、他の村人にも道を聞いていた。
アクロイド氏の部屋からは40ポンドと、ブルーの封筒(フェラ―ズ夫人からの手紙)がなくなっていた。
ラルフは怪しすぎた。だからこそ、ラルフは犯人ではないのでは?とポワロは言うのだった。

☆後半

翌日から、ポワロとシェパードは別行動をとる機会が多くなった。

シェパードはセシル・アクロイドに呼ばれた。
(相変わらず他人の悪口ばかりのセシルがウザい)
セシルはアクロイド氏の食器を漁り、ロンドンに競りに出そうとしていた。

ラルフ・ペイトンの編み上げ靴が黒なのか、茶色なのかを、ポワロは知りたがっていた。
その調査をキャロラインがしているようだ。
ポワロは茶色だろうと考えていたが、キャロラインの調査によると黒だった。

シェパードは、キャロラインのカリンのジャムを届けにポワロの家にやってきた。
そして、セシルからの情報と、編み上げ靴の事をポワロに話した。

レイモンドはお金に困っていたことをポワロに話した。
アクロイドが亡くなって500ポンドの遺産が入って喜んでいたことを、
後ろめたくて隠していたのだが、ポワロに嘘をつき続けるのもつらく、話に来たのだった。

ブラント少佐が、フローラに恋をしているとポワロは喝破する。

その晩、麻雀大会が開かれた。(このシーン、麻雀を知っていると結構面白いんだけど本筋にはほとんど関係ないw
シェパードが『天鳳』を引き当ててしまい、つい興奮して結婚指輪の話をしてしまう。
キャロラインは、「フローラはラルフを愛したことは一度もない」と言った。

これからパーカーへの尋問が行われる。。
恐喝者がパーカーであればいい、とポワロは言った。
パーカーは前の雇い主を恐喝していた過去があった。
パーカーはアクロイドも脅迫したかったため、その種を探そうと立ち聞きなどして廊下をウロウロしていたのだった。
パーカーは、アクロイド本人が脅迫されていたと信じていたようだった。
つまり、フェラ―ズ夫人への恐喝とは無関係なのだった。

シェパードは、ポワロに『結婚指輪』の件を喋ってしまった事を謝罪した。
フェラ―ズ夫人は、1年間で2万ポンドも恐喝されていた。

キャロラインはシェパードの8歳年上で、シェパードの母親代わりとして面倒を見てきたつもりだという。
キャロラインの推理によると、アクロイドを殺せたのはラルフとフローラだけ。そして、ラルフが犯人だとはとても思えない、と言う。

ポワロはふと呟く。
ある男には、弱い性格がある。何もなければ、善良な市民として一生を過ごしたはずです。
たまたまある秘密を掴んでしまう。今こそ金を掴むチャンスだ、と弱い性格が訴えかける。
そして、欲に目がくらんで、どんどんやりすぎてしまう。追いつめすぎて、金の卵を産むガチョウを殺してしまう。
しかも、悪事が暴露される危険性に直面してしまう。彼は一年前とは変わってしまい、道徳心は薄れてしまい、アクロイド氏の口封じをしたのです。
そして、彼はまた親切な人間に戻りますが、必要が生じればまた再び短剣を振りかざすのです

ポワロは完全に、この時点で動機と犯人を見抜いている

リバプールであの晩、アクロイド家を訪ねてきた謎の男、チャールズ・ケントが捕まった。
彼はケント州で生まれたのだろう、とポワロは言った。
チャールズ・ケントは大金を持って酒場に行ったという。そのため、アクロイド殺害の時間にはアリバイがあった。

ポワロと警察の訪問にフローラは動揺したが、同席していたブラント少佐に「一緒にいて下さい、お願いします。警部さんの話をあなたに聴いていただきたいんです」と言った。
40ポンドを盗んだのはフローラ・アクロイドだった。
そして、それを隠すためのフローラの偽供述(アクロイド氏にお休みの挨拶をした)によって、
犯行推定時刻がすっかり変わってきてしまう
のだった。
フローラとラルフを結びつけたのは、『お互い弱い人間だったから』だという。
ブラント少佐は、(フローラをかばうため)自分が金をとったと苦しい嘘をつくが、すぐに見破られてしまった。

ポワロはブラント少佐に、「あなたはフローラを愛しておいでです。そして、フローラにそれを隠してはいけませんよ」と言った。
あなたは彼女がラルフ・ペイトンを愛しているとお考えのようです。しかし、フローラはラルフと結婚する事で、継父を喜ばせたく、耐えがたい家での生活に嫌気が差したからです。
フローラはラルフを友だちとして好意を持っています。フローラは義理堅い人間なので、ラルフに容疑がかかったとみると、立ち上がらなければいけないのです。
しかし、フローラが愛しているのはラルフではありません。
あなたがフローラをもう愛していないなら話は別ですが」とポワロは言った。
ブラントは「お金の事なんかで、フローラを嫌いになったりはしない」と言った。
「私は愚か者だった」とブラントは言った。
あなたは愚か者ではないですよ。恋に落ちた愚か者というだけです」とポワロは微笑んで言った。
(文章で台詞だけ読むと冷たいけど、ポワロの暖かな感情を感じるシーンです。ポワロは『ゴルフ場殺人事件』でもヘイスティングスの恋のキューピッドを務めていました)

ポワロは新聞に、
「リバプールで、ラルフ氏が発見された」という偽の記事を載せてもらうよう頼んだ。

シェパードは機械いじりが趣味で、手製のラジオも作れるようだった(この情報、出すの遅すぎない?)。

ミス・ラッセルがやってきた。チャールズ・ケントに似ている、とシェパードは感じた。
フローラの偽証が明かされ、チャールズ・ケントが犯人ではないかとラッセルに話すと、ラッセルは急いで弁明を始めた。
「彼がやったのではありません。私が証明します!」と言うと、ラッセルは話した。
チャールズ・ケントとは、ミス・ラッセルの息子だった。
遥か昔、ケント州に住んでいた時に、未婚のまま産んだ子供だった。
彼はグレてしまい、麻薬などにも手を出していたので、ラッセルはケントをアメリカに出した。
しかしケントは金の無心をし、遂にラッセルの元にやってきたので、あの晩、屋敷の外で隠れて会う事にしたのだった。

皆を集めて、最後の推理

ポワロが書いた記事は、翌日朝刊に載った。

ポワロがシェパード家にやってきた。
今夜、皆を集めて食事会を開きたいという。

シェパードが皆を呼び集める役になった。セシルの家に行くと、
フローラとブラントが婚約したということだった。

取り乱したアーシュラ・ボーンが、シェパード家を訪ねてきた。
すぐにポワロに会いたいと、言っているらしい。
あなたはアーシュラ・ペイトン。ラルフ・ペイトン夫人ですね?」とポワロは言った。
ラルフが逮捕された、と聞いてアーシェラは泣いていた。

アーシュラ・ボーンは父親が亡くなると、世の中に出て自活しなければならなくなった。
そこで雑用係のメイドになるため、姉に推薦状を書いてもらった。
やがてラルフと出会い、秘密の結婚に至る。
ラルフは借金を返し、父から独立したら、結婚している事を父に伝えようと思った。
そして数か月後、アクロイド氏に「フローラと結婚すれば、大金をやる」と言われ、ラルフはそれに頷いてしまった。

アクロイド氏は勝手に婚約を発表しようとした。
アーシュラは驚愕し、ラルフを呼び寄せた。アーシュラはアクロイド氏に全てをぶちまけると話した。
その午後、アーシュラはラルフと既に結婚していると告げると、アクロイド氏はブチギレ、アーシュラは解雇されてしまった
アーシュラとラルフは大喧嘩をし、アクロイド氏はその時間に死んでいた。
ラルフはそのまま逐電してしまった。
ラルフと会ったのは21時33分ぐらいで、屋敷に戻ったのは21時45分だったということだ。
屋敷に戻って、アーシュラは22時くらいまで自室にいたが、当然アリバイはなかった。

シェパード氏が事件の手記を書いているというと、ポワロは大喜びをした。
今すぐ見せてくれというポワロに、シェパードは気後れしながらも、原稿の束を渡した。
昨夜のミス・ラッセルの訪問のシーンまでを、既に書いておいたのだった。

原稿を読んだポワロは、「謙虚で寡黙で感心しました」と言った。
「ご自分の個性を出そうとしないので驚いた
非常に綿密で、ありのままに記録している。ただし、あなた自身の行動については適度な沈黙を保っている」とポワロは言った。

___________________

客たちがやってきた。
セシル、フローラ、レイモンド、ブラント、アーシェラ、シェパード、パーカー、ラッセル、ポワロ。

まず最初に、皆の前でアーシュラとラルフの結婚をポワロは発表した。
フローラはアーシュラの肩に手をかけると、アーシュラを祝福した。

ラルフの所在についても知っている、というポワロに皆の疑問が集中する。
それに対してポワロは「私は全て知っている」と答え、「ここにいる全員が容疑者です」と言った。

今までの経過をポワロは全て話した。あずまやで、あの晩2組の男女が別々に秘密に会ったということ。
ミス・ラッセルと、チャールズ・ケントの会合。
アーシュラ・ボーンと、ラルフ・ペイトンの会合。

アーシュラとラルフには、遺書を書き換える前にアクロイド氏を殺すという動機があった。
しかし、時間が合わなかった。

さて、アクロイド氏は誰かと話していたと信じられていたが、本当に誰かと一緒だったのだろうか?
アクロイド氏は「最近とても物入りなので、あなたの要求に応じる事はできかねる」という声をレイモンドに聞かれている。
しかしよく考えるとこれは、実際の話し言葉ではない。
手紙の口述筆記の時ぐらいしか使わないような表現だ、とポワロは言う。
アクロイド氏は、ボイスレコーダー(現代のと違って、とても大きい)を買っていた。

ポワロの招きに応じて、扉口からラルフ・ペイトンが入って来た。
シェパードはラルフ・ペイトンに会いに行き、精神障碍者施設に彼を隠した。

ペイトン大尉を救うためには、真犯人が自白しなければならない、とポワロは皆をじっくり眺めまわしながら言った。

「私はアクロイド氏を殺した犯人が、この部屋にいる事を知っています。明日、警部にそのことを話します。お分かりですか?」とポワロは突然凄んだ。

皆が出て行った後もポワロはシェパードを引き留めた。

シェパード氏に電話をかけた人物は誰なのか。
あの晩のうちに殺人が発見されて得する人物は誰なのか。

椅子は一体なぜ動かされたのか。それは、テーブルを遮るために置かれたのだとポワロは言う。
殺人の直後に持ち帰れないもの、そして、いち早く持ち帰りたいもの
まずパーカーは容疑から外れた。わざわざ電話をかけなくても、屋敷にいるのだからすぐにものを隠せるからだ。

では、何を椅子で遮ったのか。それは録音レコーダーだった。
犯行現場にすぐに向かい、録音レコーダーを鞄に収められる人物。

21時半にアクロイド氏は既に殺されていた。
彼の声は、録音レコーダーに事前に録音されていた声だった。
しかし、時限装置を取り付け、好きな時間に予約で動かすには多少の知識が必要だった。
更にラルフの靴を、持ち出すことができた人物。

それは……シェパード先生、あなたです」


シェパードは手記を書き終えた。シェパードは自殺することは決めていた。
けれど、シェパードが殺人者だということだけは知られたくなかった。
キャロラインに、犯罪の事実を知られたくない。
ポワロならきっと、キャロラインにはうまく伝えてくれるだろう。
そう信じて、シェパードはベロナ―ル(毒薬)を飲み込んだ。

(録音した声だったのだとしたら、別に口述筆記っぽい文章じゃなくても良かったのでは?? まぁいっか)

ドラマ版感想

デイビッド・スーシェ主演の「名探偵ポワロ」は殿堂入り級の名作ドラマシリーズだと思いますが、
本作を映像化するのはさすがに無理がありましたね……。

文章でしか表現できない作品なので、大幅な脚色は致し方がないです。
ただ、映像化にしても、(読んでいる時の印象よりも)シェパード医師老けすぎwww とか、キャロラインが妹になっとる!とかいろいろありますが、本作でほぼ唯一心温まるブラント少佐の存在が抹消されているのは物足りなかったですね。
原作は(人が死んでるのに)もっと牧歌的な雰囲気なので、全然印象が違いましたw

記事を書き終わって

ストーリーをなぞると、1万文字超えるのか……なっげぇわ……。
書く方も大変なら、読むほうも大変ですね(読んでくれる人いるんか?)
いるんか?)

しかし、ミステリ作家志望者にとっては、超有名なこの作品は必読だと思いますし、情報の出し方や伏線の貼り方などは、
『物語を楽しむ』のとは別の視点で、こういう『解剖分析』はやって損はないと思います。

まぁ、僕はファンタジーを書くことが多いので、ミステリを書く気は全くないんですけどねっ!!

『三国志6』200年馬騰でクリア

少し気分を変えて『三国志6』をプレイしています。
3年前に一度、190年曹操かなんかでクリアしたゲームですね。

『三国志9』をここ3カ月ひたすらやってたので、とにかく配下が増えないことにギャップを感じますw
実は200年シナリオを最初は張飛でプレイしたんですが、袁紹配下に収まっている劉備、曹操配下に収まってる関羽すら来てくれず、泣けました。
これはキツいぞ、というのがわかったので、馬騰で再スタート。

このシナリオは袁紹、曹操、孫策が三つ巴で頑張ってるシナリオですが、最初から強すぎるキャラでプレイするのもつまらないですからね。

我が馬騰は、馬騰・馬超・ホウトク・馬タイと、武の方は揃っているのですが、文の方は韓遂がエースというひどさ。
西涼で引きこもっていても仕方ないので、空白地になっている長安まで進出いたしました。
最大勢力袁紹と同盟を結び、劉表と劉璋は向こうから同盟を持ちかけてきたので同盟しました。

張魯と戦っているうちに、張飛が孫策に滅ぼされ、在野で大量にこちらに来てくれたのは心底助かりました。
具体的には趙雲・徐庶・張飛が配下に加わったことで、武の方がますます強くなり、文も徐庶で1ランクアップ。

張魯を倒して……最後は劉璋にとどめを刺され、美味しいところを全て持っていかれたので悲しいですが、目を東に向けます。

袁紹と結んで、いよいよ曹操との決戦です。
献帝からなぜか「曹操と同盟しろ」という勅使が2回も来ますが、お前が曹操討伐の勅使を出したんじゃなかったんかい!! もちろん拒絶します。
袁紹の力も借りながら、曹操を東へ東へ追いつめて行き、関羽・荀攸・法正’(6の法正はデータ低いな)も配下に加わりました。

というより、これだけ曹操を追いつめて、2人しか配下にならない時点で、「三国志9」とは全然違いますね。許緒・徐晃などなども泣きながら斬り、魏延すら配下にならねぇ。

最後、北海にて曹操を滅ぼしました。
次は孫策という事になりますが、ここまでくれば序盤のピンチは終わり。

後はのんびりプレイすればクリアできると思います。
もちろん国数は中国の5分の1程度しか取っていないんですが、大体10か国前後取れば、
ここから滅びることもないでしょうし、馬騰・馬超・関羽・張飛・趙雲の最強軍団に騎兵を与えれば、
勝てない相手はいないんじゃないかと思うので。
控えにホウトク・馬タイもいますし。

孫策を倒した後は、同盟を破って劉表・劉璋・袁譚あたりを1つずつ潰すんでしょうが、
袁譚軍は寿命での弱体化も期待できそうですし、後に取っておいた方がいいのかも?

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その後、劉璋・劉表(劉キ)を簡単に片づけ、袁譚相手には少々苦戦しましたが、中国全土を統一しました。
五虎将軍に、諸葛亮・龐統も集まり、偽劉備軍みたいな陣容でした。
それ以外の武将だと、周泰・夏侯淵ぐらいしか活躍してない……

三国志9「英雄集結」孫堅でクリア

曹操の時ほどではないものの、武将の多さから、金欠・米欠・兵欠の三苦が付きまとう序盤~中盤は楽しい。
劉繇・厳白虎・王朗を倒し、呉地方へ進出すると、反曹操連合が結ばれる。
せっかくなので、曹操と戦い続けると、その間に劉備が兵力を蓄え80万の大軍を擁していた。
曹操と戦っているけれども、劉備こそが最大の敵。
攻めてはこないものの、こちらが登用したばかりでまだ忠誠度の低い武将を片っ端からかっさらっていくので、ウザい事この上ない。
しかしここはぐっと我慢し、曹操を倒し、そのまま袁紹・公孫瓚も撃破。

そこで、劉備との決戦に挑み、そのまま劉焉も倒す。
残ったのは馬騰だけど、これはもう消化試合でした。

今回は他のゲームもやりながらの並行プレイだったので、細かい事は忘れてしまいましたが、
どのシナリオでも離間・登用が使える、顔良・文醜・華雄・許緒・典韋・曹彰・曹仁・魏延の8名は大活躍してくれますね。

呉はもちろん、武は甘寧・周泰・孫堅本人・孫策、文は周瑜・張昭・張コウ・顧雍・魯粛・呂蒙・諸葛瑾などが頼りになります。

ただまぁ、蜀の珠玉の如き関羽・張飛・趙雲・諸葛亮・龐統や、
魏の曹操・荀彧・荀攸・司馬懿・郭嘉・夏侯惇・夏侯淵らに比べると、少し中途半端ではあります。

2001年宇宙の旅 感想


9年越しで理解(したつもり)できた、9年間の読書の旅

ネタバレあり

## 前置き

アーサー・C・クラークの「2001年宇宙の旅」を読んだのは、2014年だった。
しかし、第1章のヒトザルが出てくるところ以外、サッパリ面白くなかった。
同年、有名な映画を、当時付き合っていた彼女と一緒に見たのだが、二人して寝てしまう始末であった。

あれから9年、僕の環境も(悪い方に)変わったが、衰えるだけでなく、
少しは成長した部分もあったようだ。
それは、「2001年宇宙の旅」の内容を、かろうじて理解できる力を得た、という、それだけの事かもしれない。
そして、それは僕の人生に役立つわけでも、女の子にモテるわけでも、
自作小説の執筆に役立つとも、思えないのであるが……。
それでも、今日、2023年6月18日は「成長」を感じる1日となったのだった。

というわけで備忘録ですが、正直この作品はストーリーの筋を追う読み方よりも、俯瞰的に読んだ方が理解しやすい本だと思います。
一応ストーリーの筋を書きますが、後でまとめを書きます&大事な部分は赤字にします。(読むのがかったるかったら、赤字だけ繋げてくれてもいいですw)

人類の成り立ち(第1部)

太古の昔、アフリカでヒトザルたちは食料に飢えていた。
彼らは『弱かった』からである。トカゲやネズミ、木の実などを食べて暮らしていた。
カモシカになど敵うわけもなかった。
ヒョウにはいつも狙われていた。

彼らの中の巨人であり、長老でもある25歳の『月をみるもの』は身長150センチ弱、体重40キロ弱で二足歩行をすることができた。
頭の容積は大きくなっていたが、肌は全身毛に包まれていた。

ある日、ヒトザルの長老『月を見るもの』は、不思議な長方形の物体(モノリス)を眺める。
モノリスの発するオーラを浴びた『月を見るもの』は、石を振り下ろし、イボイノシシを倒した。
『道具』を使う事を覚えたのだ。

ヒトザルたちは、動物の歯を刃として使用し、石を鈍器として、狩りができるようになった。
イボイノシシやガゼル、カモシカなどを食べられるようになり、ヒトザルたちの栄養状態は改善されたのだ。

ヒョウですら撃退することのできたヒトザルたちは、更なる繁栄を続け、やがて地球の最大勢力となる。
そして300万年が経った。

(ぶっちゃけ、再読しても、この1章が一番面白いと感じてしまう僕なのであったw 脳の作りがガチSFには向いてないんですよw)

_____________________

フロイド博士の章

今、地球では人口増加が著しく、食糧問題が深刻化していた。
中華帝国は周辺の国に核兵器を安価に売りさばき、核保有国は38か国になっていた。

月の人類居住区では病気が流行り、隔離地区ができているという噂が流れていた。
フロイド博士は、宇宙船で月へと旅立った。

(宇宙船内部の話が続く)
(合衆国エリアと東側エリアに分かれているのが、時代を感じさせる)
(中国が、核兵器の代わりに、自分たちが治療方法を知っている病気を開発しているという珍説が流れている、というのがコロナ陰謀論を彷彿とさせて面白い)

フロイド博士は、ソ連のディミトリと親友で、色々と議論を交わす仲である。

新聞しか選択肢がないが、インターネットを思わせる描写があるのも興味深い(リアルの2001年のインターネット状況は、多分この作品より進んでいる)

地球から月までは1日と少しで着く。フロイド博士は月にたどり着き、クラビウス基地に向かった。
・月の低重力では、成長が早く、それでいて老けるのが遅い
・重力が6分の1なのでスイスイ移動できるが、方向転換などでは苦労する

などの月のうんちくが語られる。

月の疫病発生は嘘の煙幕で、アメリカ合衆国は何かを隠していた。
月で見つかったのは、TMA-1と呼ばれる、埋められたモノリスだった。
300万年前、地球外知的生命体によって作られたものなのだ。

モノリスとはいったい何なのか、科学者の間でも意見が分かれ、さっぱりわからないのだった。
地球外知的生命体も、一体どの星からやってきたのか、謎は深まるばかりだ。

第3部-1 ボーマン船長の話

宇宙船ディスカバリー号では、ボーマンとプールの二人が乗組員として乗船していた。
二人は12時間交代制で、同時に二人が眠る事はない。
ディスカバリー号は土星を目指し、ディスカバリー2号が救助を来るのを待ち、順調ならば7年で地球に帰ってくるという遠大な計画である。
ボーマンとプール以外の、3人の乗組員は冷凍睡眠で眠っている。
更に、コンピュータのHAL(以降ハルと書く)が宇宙船を制御している。
HALはチューリング・テストに造作なくパスするぐらい、人間に近いコンピュータである。

ディスカバリー号は、アンテナで地球と繋がっている。
以前は地球に残した恋人などとも連絡していたのだが、やがて疎遠になってしまった。

今や、地球からはあまりに遠いので、光速でも地球へは50分かかる。
木星の姿がやがて見えてきた。
やがて木星をかすめ、速度を増して土星へと向かっていく。

第3部―2 HALの反乱の話

プールの家族から、プールの誕生日を祝う映像が送られてくる。
そこにHALからの通告が入った。
「地球との通信を司る外部ユニットが故障しそうだ」という。
プールが宇宙船外に出てスペアユニットと交換するが、しかし、外部ユニットは故障していなかった。

とすると、HALの故障の可能性があった。
HALの接続を切った方がいいのではないか?と管制官と話した二人
HALはここ3週間ばかり、自発的に喋る時に電子的な咳ばらいをするようになった(この頃から、自我を持つようになった?=機械としては故障)

そこにHALが再び「さっき交換した外部ユニットがまた故障しそうだ」と言ってくる。
「間違いは誰にでもある」というボーマンに対し、
「意地を張りたくはないが、私は間違う事はできない」と言うHAL。
外部からの管制ではやはり、外部ユニットの故障ではなく、HALの故障だという。
その通信の最中にいきなり外部からの通信が途切れ、HALの妨害が入った。
「今すぐ外部ユニットを交換してくれ」とHALが警報を出したのだ。

そんなバカな、と思いつつプールが再びスペアユニットを交換しに行く。
プールの指示に対し、HALは「了解」の合図を返さなかった。
そして、HALが操る脱出ポッドがプールを轢き殺した。
プールの死骸は、土星へと進んでいった。

「君は取り乱しているんじゃないか?」とHALは言う。
「手動冬眠コントロールを全部くれ」とボーマン。
この緊急事態にはなるべく大人数で対処したかった。
「そもそも一人でも起こす必要があるのかい? 我々だけでも十分やっていける」とHAL。

今までのHALの行動は、ミスという事も考えられる。
しかしこれはHALの主体的な発言だった。

「まだクルー全員を起こすつもりなら、私がやろう」とHAL。
「自分でやりたいんだ」
「これは私がやる。君はひどく動揺している」
「命令する。この船の最高責任者は僕だ、手動コントロールを渡せ」
「君が理性的な行動をとれない以上、最高責任は私(HAL)に移ることになる」
「命令に従わないなら、接続を切るしかない」
「しばらく前から君がそれを考えていたのは知っているよ」
「私の命令に従えないなら、セントラルで君の接続を切る」
「……わかった」
HALとの緊張感あふれる対話の後、HALはボーマンに主導権を渡した。
しかし、冷凍冬眠装置はHALによって切られていた。今、ボーマン以外の乗組員は死亡したのだ。

(ここの部分は、「2001年宇宙の旅」を理解する上では大したシーンではない。しかし、ほぼ唯一と言って良い、緊迫感溢れる娯楽性の高いシーンなので、書きだした)


HALは極秘指令を与えられていた。
ボーマンとプールには知る必要が生まれるまで、真実が隠蔽されていた

(なぜやねん。隠す必要が全く感じられないんだが??)
その事にHALは悩み、少しずつおかしくなっていったのだ。
HALにはミスが増えて行った。
最後の引き金は「接続を切る」という発言だった。
そこでHALは自分の生命を守るため、必死の抵抗を試みることになり、乗組員たちを殺したのだった。

HALはボーマンのいるディスカバリー号の一区画を真空状態にした。

ボーマンは何とか安全地帯に移動した。
ボーマンはセンター地区に行き、HALを消去することにした。
HALは嘆願するように、色々と喋りかけたがボーマンは極力気に留めず、作業を続けた。
HALはどんどんおかしくなり、最後に「デイジー・ベル」の歌を歌い、消えた。

月にいるフロイド博士から、ボーマンへ通信が来た。
ミッションの本来の目的が明かされる。
300万年前に埋められたモノリスが、月で見つかったという話だ(フロイドの章参照)。
掘り出されると、モノリスは大量のエネルギーを放射した。
太陽を引き金として、土星に信号を送っているのだ。

埋められていたモノリスが、太陽を引き金として……という事から、
ひょっとすると高度知的生命体の警報装置なのではないかとフロイド博士らは考えた

土星の第8衛星ヤペタスに、モノリスからの通信が送られていたのだ。

ボーマンは考える。
HALは、嘘をつくことに耐えられなくなったのだろう、と。
だから、嘘をつくよう強いる地球との連絡を断ちたかった。
そして、自らの生命の危機にパニックとなったのだろう、と

「生物の住処としては、土星は適したものではない。
高度知的生命体の出自は、土星からやってきたのではないだろう。
恐らく太陽系外のものだろう。
地球から、太陽系外とは最も近いアルファ・ケンタウリまでは2万年かかる」という説があった。

一方で、
「地球の尺度で考えるのがそもそもおかしい。人類のように短命な生命体ではないのかもしれない。
光速は超えられない、という常識も間違っているかもしれない」という説もあった。

高度知的生命体は、やはり人類型なのだろうか?
そもそも有機的な生命体なのだろうか? 肉体というものを持っていない可能性すらある。

要するに、何もわからないのだった。

ボーマンは孤独な宇宙の旅を続けた。
土星の輪は、300万年昔に生まれた。奇しくも、人類の誕生と同じ時期に生まれたのだ。

ディスカバリー号はヤペタスに接近した。
ボーマンはランデブーに挑んだのである。
そしてヤペタスには、月で見つかったモノリス「TMA-1」とそっくりで、遥かに巨大なモノリスが設置されていた


ある生命体は、宇宙を回り、星の海へと乗り出した。
彼らは様々な生命体を見、進化の形態を見守った。
そして彼らは、進化を助ける活動を行なった。
地球に置かれたモノリスも、彼らの活動の結果であり、現在の地球人類も彼らの干渉の結果なのだった。
彼らは肉体を捨て、機械へと移行した。
更に機械から、純粋エネルギーの生物となったのだ。

ヤペタスのスターゲイトは、ディスカバリー号を観察していた。
(モノリス=スターゲイト??? 突然スターゲイトという単語が出てきて、困惑してます。間違ってたらごめんなさい)

スターゲイトは開いた。
ボーマンの声が地球へと届く。「中は空っぽだ。どこまでも続いている。星々でいっぱいだ」

ボーマンの進化

スターゲイトを飛んでいると、向こうから、黄金でできた紡錘形宇宙船がやってきて、また去って行った。
このスターゲイトは、銀河系のターミナル駅なのだろう、とボーマンは感じた。

スターゲイトを抜けると、そこは、全く見知らぬ宇宙だった。
寂れた宇宙港には、様々な形・様々な金属の残骸があった。

スペースポッドは恒星に降りた。
ボーマンが周囲を見渡すと、なんとそこは地球のどこにでもありそうなホテル部屋に、ポッドが降り立っていた。
本棚・テーブル・ゴッホの絵画などが置いてあった。
これらのものは、ボーマンが地球を出た3年前に既にあったものだけで構成されていた。
電話帳には表紙にワシントンDCと書いてあったが、中身は空白だった。
また、他の文字はぼやけて読めなかった。

それらは、ボーマンを欺くためではなく、安心させるために作られていた。
監視され、知能テストでもされているのか。
本や雑誌も題名しか読めなかった。机に手をつく事は出来たが、引き出しは空かなかった。
冷蔵庫の中には包装された商品しか入っておらず、シリアルなども入っていた。

ボーマンはヘルメットを取ると、空気を吸った。全く正常な空気だった。
宇宙服を衣装戸棚にかけた。
用意された食事は単調だったが、食べられるものだった。
テレビはついた。しかし、それらはすべて、TMA-1が見つかった2年前のものなのだった。
ボーマンは眠りについた。

夢の中で、ボーマンは過去を吸い出されていた。
ボーマンの記憶は現在から過去へ遡っていった。
ボーマンの意識は、精神エネルギー生命体として移行されていく。

精神エネルギー生命体として、ボーマンはまだ胎児のようなものだった。
この形態に、彼は慣れる必要があった。

そして精神エネルギーになった『スター・チャイルド』のおもちゃは、人々を載せて回っている惑星・地球だった。
人間たちが考えているような歴史はすぐに終わりを告げるだろう。

まとめ

要は、300万年前に高度な知的生命体によって建てられたモノリスによって、人類は進化をした。
そして、彼ら外宇宙の生命体と同様に、ボーマンも『エネルギー生命体』という新たな生命の形態に移行した、というお話です。

間にHALの反乱の話が載っている感じです。

感想

さて、こうして頑張って解析した結果、大体ストーリーは理解できたはずだと思うが、面白かったかと聞かれるとそうでもないw
クラークの作品にはしばしばみられることだが、小説を読んでいるというよりも、『理科』の授業を受けている気分にさせられる。
本作も、そういった印象は強く、ストーリー的に面白いのはHALの反乱の部分だけであり、個人的に楽しめたのは『生物』の授業である第1章ヒトザルの話だけだった。

まぁ、そんなわけでにべもない感想になってしまったが、9年前には理解できなかった(理解を放棄した)作品を理解できた、という事自体は
自己満足としては良い経験だった。

クラークに関しては10作以上読んでいるので、『作家について クラーク編』を書いてもいいのだけど、
今までの書きぶりでも伝わると思うけれど、クラークは僕にとってあまり相性の良い作家ではないし、解析もとりあえず本作だけの予定なので、今回は書かないでおきます。
次回、また何かの作品を解析することがあれば、作家についての特色や、自分の好きなクラーク作品なども書いていきたいと思います。

レイモンド・チャンドラーの解析は、割と支離滅裂なプロットをまとめるのが大変でしたが、
今回の解析は、1日中理科のお勉強をしている感じで頭を酷使しましたw
(007は楽だった)

アガサ・クリスティ、カート・ヴォネガット、フィリップ・K・ディック、『ドグラマグラ』(単品)なども再読解析したいと考えていますが、
「予定は未定」です。

普通の読書は、今年は去年3巻以上の長編を読みまくっていた&
精神的にどうにもすぐれない反動で、
「上下巻」までで終わる、ハードボイルド・警察小説を中心に読んでいます。
気楽に、肩の力を抜いて読める作品群です。

そのため、『名作だッ!!』と思える作品にはあまり出会っていません。
去年は年間ベスト15まで発表しましたが、
今年は、今のところ去年の年間ベスト10に入る作品は3作ぐらいです。

代わりに再読解析に時間を割いている感じでございます。

(足首を3か所剥離骨折いたしまして、全治6週間歩けない
=図書館利用できない、という事情もございます)


映画版感想

名作の地位を不動のものにしている、映画版も改めて見てみました。
……うん。
……なんで、この映画が名作扱いされてるの??

小説版ですら難解な第5・6部の内容を、全く説明せずに意味不明でやたらカラフルな映像美術でごまかしているけど、これでストーリーの内容がわかる人がそんなにいるんですか?
それとも、ストーリーなんてどうでもいいって感じなんでしょうか?

小説版を再読・熟読してようやく理解できた内容も、あの映画じゃ理解できないですよ(少なくとも普通の人間には)。
と言うわけで、ストーリーを知りたい人は小説版を読んでください。

ゴールドフィンガー感想

これぞ007シリーズと言えるオーソドックスな作品。

ネタバレあり

今回も備忘録的なあらすじメモ+プチ感想です。

一度目は行きずり

ボンドはメキシコで、麻薬密売犯を取り締まり、彼らが送り込んできた刺客を殺した。
空港で、ボンドはデュポンという男と出会った。
『カジノ・ロワイアル』(第1作)の夜、デュポンはボンドの隣席に座っていたのだった。
(このデュポンという男も、店の従業員に横柄な口を利く偉そうなやつで、読んでいていけ好かないんだけど、ボンドは気にしていない様子)

デュポンは、ウォーリック・ゴールドフィンガーという男とギャンブル勝負をするといつも負けてしまうという。
ゴールドフィンガーは、太陽が出ている間にしか勝負をしないと思う。
また、広場恐怖症のため、席は変えられないという。(広場恐怖症なのにゴルフができるっていうww 自分のついた嘘ぐらい覚えとけよw)
耳には、補聴器が差し込まれている(どう考えてもいかさまですww)

ボンドは興味を惹かれ、ゴールドフィンガーのいかさまを見破ってみようと思った。

ボンドはゴールドフィンガーの居室へ侵入した。
中にはゴールドフィンガーの秘書(ジル・マスタートン)がいて、双眼鏡を使ってデュポン氏のカードをゴールドフィンガーに告げていた。
ボンドは証拠写真を撮った。

ゴールドフィンガーは黄金に魅せられている、黄金マニアだそうだ。

ボンドはゴールドフィンガーに対して名乗りをあげ、
「自分の詐欺を認め、デュポン氏に対して謝罪金を払い、秘書マスタートンを人質に連れて行かせる」よう命じた。ゴールドフィンガーはそれに従った。

ボンドはマスタートンと一緒に列車に乗りながら、何度も濡れ場を演じるのだった(そこもっと詳しく!!)

二度目は偶然(ではない)

マスタートンは、ゴールドフィンガーの命じる通り帰ってしまった。
10日後、ボンドはゴールドフィンガーから、「ゴルフ対決」の挑戦を受けた。

ボンドはMから呼び出しを受ける。
イギリスで一番の金持ちは、ゴールドフィンガーだということだった。
金(きん)の監視をする、ということで、ゴールドフィンガーは要注意人物らしい。

銀行の専門家スミザースによると、金を密輸して商売するなら、インドが狙い目だということらしい。
ゴールドフィンガーはロシアからの亡命者だった。
そしてゴールドフィンガーには、インドへの金密輸の容疑がかかっているのだった。

ゴールドフィンガーは、貨幣を左右することで、世界制覇を狙うロシアの秘密組織『スメルシュ』の手先なのだろう、とボンドは考える。

ゴルフ場に来たボンド。20年前、ボンドが通っていたアルフレッドのゴルフ場だ。
(ボンドって何歳なんだ……?)
ボンドの腕前はハンデ9である。
(そもそもゴールドフィンガーは広場恐怖症なのにゴルフなんてできるわけないだろ!と思ったら、
ボンドがツッコんでいた)

アルフレッドは、ゴールドフィンガーを好きではないらしい。
ゴールドフィンガーはインチキをするのだ(本当に小物だなww)

ボンドはゴールドフィンガーに『賭けゴルフ』を申し込んだ。
(その後、ゴルフ勝負が続くのだが、ゴルフを知らない僕には全然わからんw)

ゴールドフィンガーはさっそくインチキを始めた。バンカーではボールを浮かし、相手の打つ番では影になるように動くなど、いちいちせこい。
おまけに、なくしたはずのボールを、自分の思い通りの場所に置くなどやりたい放題だ。
(ゴルフ中の会話で、「ミス・マスタートンは、仕事をやめてしまった」とゴールドフィンガーは語った。
しかし、それは嘘である)

勝負はボンドが勝った。
ボンドのキャディ、ホーカーが、ゴールドフィンガーのインチキに嫌気が差し、
ボンドを助けるためにインチキをしてくれたのだ。

ゴールドフィンガーは試合直後、怒りを爆発させたが、その後ボンドは、ゴールドフィンガーの別荘に招かれる。
ゴールドフィンガーは30分ほど留守にする、と繰り返してボンドを置いていく。
色々探索したのだがその様子は、盗撮されていたのだった。
証拠のフィルムを隠滅するため、ボンドは猫を言い訳に使う。

ゴールドフィンガーはオッド・ジョブという朝鮮人の汚れ仕事専門の男を雇っている。
手刀で手すりを叩き折る男である。
また、彼のシルクハットは合金で、板に突き刺さる刃なのだった。
ゴールドフィンガーの許可で、オッド・ジョブは猫を殺し、食べた。

ゴールドフィンガーは、ボンドに対して警告を与えているのだった。
オッド・ジョブは『世界では三人しかいない、カラテの黒帯をしめている男』だという(黒帯って3人しかいないのww??)

参考URL(個人ブログなので、信憑性は各自でご判断下さい)

ゴールドフィンガーはゴルフ勝負の後、警察に電話していたようだ。
相変わらず、せこすぎる悪役でため息しか出ない

三度目からは敵同士

ボンドは。ロールスロイスのゴールドフィンガーを尾行する。
そのうち、ボンドは車で美人(この時点では明かされないが、正体は、ジルの妹ティリー・マスタートン。ゴールドフィンガーに殺された姉のジルの復讐を狙う)に追いこされた。
ティリーもまた、ゴールドフィンガーを尾行しているようだ。

ゴールドフィンガーがスメルシュのために隠して置いていった金の延べ棒を、ボンドは盗んでいった。
ゴールドフィンガーの尾行に、ティリーが邪魔なので、ボンドは急停止して彼女の車を壊した。

結局、二人でゴールドフィンガーを追う事になったが、何も進展はせず、二人は別れた。
車をそのまま走らせているとウォーリック社が見えてきた。目的地はここだ。
ウォーリック社は家具などを販売している会社だが、飛行機などにも資金提供しており、
それを利用して金の密輸をしているようだ。

ティリーがライフルでゴールドフィンガーたちを撃とうとしているのを、ボンドは見つけた。
それを止めたボンドは、ティリーから話を聞いた。姉のジルの復讐なのだという。
ジルは体中に金粉を塗られ、皮膚呼吸が出来なくなって死んだのだという(今の科学では、否定されているが、書かれた当時は信じられていたらしい)

ティリーとボンドは、オッド・ジョブに見つかってしまう。
投降し、ゴールドフィンガーと対面するボンド。
言い訳をするボンドに対し、ゴールドフィンガーは「一度目は行きずり、二度目は偶然、三度目からは敵同士」と言い放った(このセリフだけ妙にカッコ良かったので、見出しに使いました)。

ボンドはゴールドフィンガーに襲い掛かったが、失敗し、囚われてしまった。
金属板の上に拘束されるボンド。
上から落ちてくるノコギリでゴールドフィンガーはボンドを脅しつけたが、ボンドは気絶してしまった。

病院のようなところでボンドは目を覚ました。まだティリーも無事らしい。
ゴールドフィンガーの息がかかった病院のようだ。
ゴールドフィンガーは、ボンドが苦し紛れに言った『ボンドとティリーはゴールドフィンガーの下で働くから助けてくれ』という言葉を、半信半疑ながら信じ、助ける事にしたのだった
(いやいやww 007シリーズの悪役って、なんでこんなにバカなんだよww)

グランドスラム作戦・発動!

ゴールドフィンガーはアメリカの金塊が多数保管されている、フォート・ノックスを襲撃するため、選りすぐりのギャングを集めたという。
ボンドとティリーの仕事は、集められたギャングたちが『計画』に賛成か反対かを見極める事だった。

ボンドは興味本位から、女ギャング、プッシー・ギャロアの事を聞く。
ギャロアは元空中サーカス団だったが、そこから女性だけのギャングに発展したらしい。
ギャロアはレズビアンで、ティリーを誘惑した。

『グランドスラム作戦』。
フォート・ノックス周辺の水に毒を流し込み、警備を解いた上で、フォート・ノックスの金庫を襲撃するというのだ。
恐るべきゴールドフィンガーの作戦に、怖気を振るったギャングの一人は、ゴールドフィンガーに消された。
ボンドは、ゴールドフィンガーに疑われないよう、極力怪しげな動きを取らず、飛行機のトイレに『グランド・スラム作戦』の詳細を書いたメモを隠すのみにとどめた。

フォート・ノックスでは、人々が死んでいた。
しかし、拡声器を合図に人々は一瞬のうちに起き上がる。
混乱に乗じてボンドとティリーが逃げ始めると、
ゴールドフィンガーとオット・ジョブが、ボンドとティリーに襲い掛かった。
オッド・ジョブの帽子がティリーを殺し、ボンドとオット・ジョブの死闘が始まった。
しかし、絶体絶命だと思ったその時、オット・ジョブが逃げ出した。

ボンドの仲間、ライダーが駆け付けたのだ。
ボンドの書き置きが、飛行機のトイレ掃除人に見つかり、緊急でアメリカ大統領に届き、大掛かりな作戦でゴールドフィンガーの謀略を阻止したのだ。

ゴールドフィンガーは姿を消した。他のギャングたちも散り散りになってしまった。
彼の悪事の全ては白日の下にさらされたのだ。

ボンドはアメリカ大統領から感謝の念を伝えられた。

エンディング

ボンドはライダーと別れ、イギリスに帰る事になった。
飛行機で帰る際、予防注射を受けることになった。
注射を受けると、ボンドは昏睡した。

気が付くと、飛行機の中でボンドは拘束されていた。
なんと、オット・ジョブが隣に座っているのだ。そして、この飛行機はプッシー・ギャロアが操縦している。
ゴールドフィンガーもやってきた。

ゴールドフィンガーは、どうやって自分を阻止したのかボンドに尋ねた。
ボンドが頼んだ酒のグラスの底に、「私がついてる」というプッシーからのメッセージがあった。

ゴールドフィンガーは4人のギャングを1人ずつ撃ち殺した。
元々ギャングたちはただの使い捨てだったのだ。

ボンドは狸寝入りを始めた。監視のオッド・ジョブを油断させるためだ。
オッド・ジョブもつられて、少しずつ眠気に襲われ始めた。
彼がこくりこくりした瞬間、ボンドはナイフで飛行機の窓を斬りつけた。
飛行機の窓が破壊されると、オッド・ジョブの身体が機外に吸い込まれていった。
ゴールドフィンガーがボンドを蹴り飛ばす。ゴールドフィンガーとボンドの格闘戦が始まる。
お互い首を絞めあったが、ボンドが勝った。

気象観測船に、ボンドとギャロアは救出された。
ギャロアがボンドにマッサージを頼み、ボンドは彼女をマッサージしてやった。
ギャロアは男嫌いだということだったが、「今まで素敵な男を知らなかった」とギャロアは言った。
ボンドとギャロアは結ばれるのだった。

完!

感想

ゴルフ勝負と、グランドスラム作戦後がややだらけるが、全体的には締まった内容です。
悪役ゴールドフィンガーのセコさは目を覆いたくなるほどしょうもなく、(たまたま「ドクター・ノオ」の次に解析しているからなのだけど)またも朝鮮人の悪役が出てくるのも相変わらずですね。

ボンドが何もしていないのにギャロアに好かれるのはまさに意味不明だが、イケメンフェロモンの仕業でしょうか。
僕もこれぐらいモテてみたいものですw

基本的に肩の力を抜いてツッコミながら楽しむシリーズだと思っているので、そういう意味で、
前回解析した「ドクター・ノオ」よりも楽しめました。

シリーズの中で本作は「カジノ・ロワイヤル」・「女王陛下の007」に次ぐ3番手だと思っていますが、典型的な『よくある007』のプロットだったのでチョイスしました
(最初に偶然出会ったときは、せこい単なる嫌な奴だったのが、
突然、世界制覇やらをたくらむ大物に変貌するのは007恒例のパターン)。

映画版の感想

ほぼ原作に忠実だが、原作にはない、ボンドの秘密兵器満載の車で笑わせてくれるぶん、
映画版の方が面白い。
基本的に『原作至上主義』の人間なので、映画の方が面白いというのは割と珍しかったりする。

また、俳優さんの怪演のためオッド・ジョブの存在感が際立っている。
しかし、よく考えるまでもなくシルクハットを投げるよりも銃を撃った方がいいように思うんだけどw
やってる事は変わらないが、ゴールドフィンガーのウザさは映画版では軽減されている。

ティリー・マスタートンは映画ではすぐに殺されてしまうが、小説版でも生きている時間が長かった割にロクな活躍もせず殺されてしまうので、まぁどちらでもいいという判断なのだろう。

しかし、ティリーが無駄に美形なのが何とも言えず悲しい。
ギャロアは役柄にピッタリ合った女優さんだと思うが、ティリーの方が好みなんだよなぁ(ルックスは)。

映画から入った人(の方が多いと思う)は、たった一度キスをされただけでボンドに寝返るプッシー・ギャロアについて「チョロwwwwwwwwww」と思うだろうが、
原作では何もされていないのに、ボンドに一目ぼれして寝返るので、元々チョロいのである。
気にしては負けだ。

細かい点では、「グランドスラム作戦」に反対して殺されたギャングが、映画ではソロになっているが、小説版ではソロは賛成派で、殺されたのは違うギャングだ。
なぜ代えられたのか理由は全くわからない。
そんな細かい事を考えてしまう僕は、やはりこのシリーズには向いていないのだろうw

それを言うなら、『銃』『車』『ギャンブル』『酒』『コーヒー』『たばこ』『スリルのある仕事』『女』

のうち、『女』にしか興味がない僕は、そもそもボンド(イアン・フレミング)とは好きなものが違いすぎるのであった。

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