トリック以外は物足りない、一発ネタ的ミステリ。ミステリ読み限定で、必読作品
前おき
この時つけた評価を見ると、少し今の感覚と違うものもありますが、概ねこの通りです。
今回は個人的には低評価の『アクロイド殺し』のあらすじ雑解析をしました。
(オリエント急行・ナイルに死す・そして誰もいなくなった、の3作も今後やる予定)
ちなみに、本作はポワロシリーズの3作目。
3作目にして既にポワロは引退を決意し、ワトソン役を務めていたヘイスティングスはアルゼンチンに追いやられています。
恐らく、クリスティも最初の「スタイルズ荘の怪事件」では、クラシックなホームズスタイルを模倣して、ポワロ&ヘイスティングスというペアを登場させましたが、2作目の「ゴルフ場殺人事件」で既にヘイスティングスの存在なしでも、作品が書ける事に気づいたのだと思います。
ヘイスティングスは最終作「カーテン」にも登場する、ポワロの親友ですが、驚くほど長編では登場が少ないですね。
登場人物まとめ
この小説にはたくさんの登場人物が出てきますが、あまりキャラが立っていないなどの理由で混乱してしまうので、先にまとめをつけます。
いきなりネタバレですが。
ミス・フェラ―ズ……シェパード氏を毒殺し、『謎の男』に恐喝されていた。ロジャー・アクロイドの恋人。
ロジャー・アクロイド……タイトルになっている通り、殺された人。アクロイド氏とのみ書いている場合は、彼を指す。
ラルフ・ペイトン……ロジャー・アクロイドの養子。イケメン。フローラの許嫁。ぶっちゃけ、クズ。
フローラ・アクロイド……ロジャー・アクロイドの姪。美人。ラルフと許嫁で、ポワロに事件を頼むことを言い出す。
セシル・アクロイド……フローラの母。ロジャーの弟(故人?)と結婚していた。ウザキャラ。
パーカー……アクロイド家の執事。最初に疑われる人物。
ミス・ラッセル……アクロイド家のメイド長。アクロイド氏と一時期いい関係だったっぽい。
アーシュラ・ボーン……アクロイド家のメイド。事件当日は休んでいた。
ヘクター・ブラント……アクロイドの友だち。フローラを密かに愛している(フローラとは年の差があるため、自分の出る幕ではないと思っている)。
キャロライン……噂好きのおばちゃん(?)。シェパード氏の姉。ミス・マープルの原型とされていた。
シェパード医師……語り手であり、犯人。
エルキュール・ポワロ……紹介するまでもない名探偵
他にもたくさんいますが、最小限に絞って紹介しました。
事件の真相
物語解析に入る前に、いきなり真相を書きます。
フェラ―ズ氏は1年前、フェラ―ズ夫人に毒殺されました。
それをシェパード医師が知り、フェラ―ズ夫人を恐喝していました。
フェラ―ズ夫人は耐えられなくなり、ロジャー・アクロイド氏に遺書の形で自分を恐喝していた人物への恨みを書きます。
シェパード医師は窮地に陥り、アクロイド氏を殺した。
まぁ、簡単に言っちゃえば、ケチなゆすり屋の犯罪で、
当時鮮烈だったトリックを除くと、あまり面白みがないと個人的には思います。
それが反映されての低評価になります。
再読してみると、フローラとブラントの歳の差カップルが一服の清涼剤となっているのと、ラルフが記憶以上にクズだったのと、そのクズに献身的なアーシェラの存在によって
D→Cに評価をあげてもいいかなと思います。
アクロイド氏が死ぬまで
語り手はシェパード医師の一人称。
キングズ・アボット村で、ある日フェラ―ズ夫人が亡くなった。
家に帰り、姉のキャロラインと食卓を共にする。
キャロラインは村の情報通で、ミス・マープルの原型とも思われる。
1年前にフェラ―ズ氏は死んでおり、その時はフェラ―ズ夫人が毒殺したとキャロラインは信じて疑わなかった。
夫を毒殺した良心の呵責により、フェラ―ズ夫人は自殺したのだとキャロラインは勝手に信じている。(前者は当たっている)
夫人は遺書を残してはいなかった。
キャロラインがうっかり真相を見破ってしまい、それを村中に吹聴したら、非常に困るとシェパード医師は感じた。
今回の被害者アクロイド氏は、村の金持ちであり、たくさんのクラブに加入し、村の中心的存在である。
アクロイドは以前結婚していたが、妻はアルコール中毒で亡くなり、以後結婚していなかった。
アクロイドには、25歳のラルフ・ペイトンという義理の息子(妻の連れ子)がいる。
ラルフ・ペイトンとフェラ―ズ夫人は、夫人が亡くなる前日、内緒話をしていたのだった。
アクロイドと、フェラ―ズ夫人は非常に仲が良く、村人たちの噂ではデキていると思われていた。
フェラ―ズ夫人が来るまでは、ミス・ラッセルというメイド長とデキていると噂されていた。
アクロイドの家には、セシル・アクロイドという義妹と、その娘(姪)のフローラが居候している。
シェパード医師は往診中、アクロイド氏と出会った。
「恐ろしい事が起きた。すぐに話し合いたい」とアクロイド氏。
隣の家に、最近外国人が引っ越してきた。カボチャ栽培をしているポロット氏という男だそうだ。
シェパードが庭いじりをしていると、ポロット氏のカボチャが飛んできた。
これが、シェパードとポワロの出会いだった。
ポワロは探偵稼業に嫌気が差して、田舎に隠遁したのだが、事件から離れてみるとまた事件が恋しくなったのだという(この時、シェパードはポワロを理容士だと信じていた)。
ポワロは、旧友ヘイスティングスを懐かしんでいた。アルゼンチンに行ってしまったようだ。
シェパードは、1年前遺産を相続したのだが、無茶な投資をしてしまい、結局再び医者の仕事に戻ったのだった。
ラルフ・ペイトンと、フローラ・アクロイド(アクロイド氏の姪)が結婚することを、
アクロイド氏は喜んでいたそうだ。
ラルフは、早くアクロイド氏が死ねば遺産が手に入るのになぁと、誰かと話していたとキャロラインは言った。
ラルフがシェパードに相談に来た。「自分一人で何とかやらなきゃいけないんだ」とラルフは言った。
(『アクロイド殺し』があまり得意でないのは、主要人物以外の村の人々が多すぎて、
一人ひとりのキャラが弱いからだったりする。
僕の好きな『終わりなき夜に生まれつく』『五匹の子豚』『葬儀を終えて』『ナイルに死す』などのクリスティ作品は、キャラが絞られていて感情移入しやすいのである)
夕食が終わり、シェパードはアクロイド氏に呼び出された。
フェラ―ズ夫人に、フェラ―ズ氏の毒殺を告白されたというのだ。
そしてアクロイド氏は、フェラ―ズ夫人が殺人者だと知ると、結婚する気をなくしてしまったのだ。
「一人の人物が全てを知っていて、フェラ―ズ夫人を脅迫し、大金を巻き上げていた」のだった。
シェパードはフェラ―ズ夫人とラルフが親しそうに話していたのを思い出した。
シェパードは一瞬不安を感じた。しかしその後、ラルフが親しそうに対応してくれたのを思い出し、不安を打ち消した。
「その者の名は言おうとしなかった」とアクロイド氏は言った。
アクロイド氏は、恐喝者が自分の家庭内にいるんじゃないかと心配しているようだった。
告白された瞬間、アクロイド氏はフェラ―ズ夫人を告発すべきか、黙っているべきか非常に迷っていた。
そして、迷っている間にフェラ―ズ夫人が自殺してしまったことで、アクロイド氏は非常に苦しんでいるのだった。
(完全に後出しジャンケンでこの解析を書いていますが、こうしてみると確かに伏線は張られていますね。普段のテキトー読みでは流してしまうところですが)
アクロイド氏は、フェラ―ズ夫人を強請っていた者を絶対に許しちゃおけないと言った。
そして、フェラ―ズ夫人が遺言を絶対に残しているはずだと言った。
シェパードとアクロイド氏が話していると、そこに手紙が届いた。
フェラ―ズ夫人が亡くなる前に投函した手紙だった。
「これは、私一人で読みたいんだ」とアクロイド氏は言った。
結局、シェパードが帰宅するまで、アクロイド氏は手紙を読まなかった。
シェパードの帰宅中、謎の男から「ファンリーパーク(アクロイドの家)はこっちかね?」と聞かれる。
シェパードが帰宅すると、アクロイド氏の執事パーカーから電話がかかってきた。
アクロイド氏が殺された、というのだ!
館に急行したが、パーカーはそんな電話を掛けた覚えはないという。
アクロイドの部屋に駆け込むと、アクロイド氏はやはり死んでいた。
背後から短剣で刺されていたのだ。
シェパード氏はやるべきことをこなし、帰宅した。
☆前半
警察の捜査が色々と行なわれる。
シェパードは21時15分には家に帰っていたが、21時30分にアクロイド氏が誰かと話しているのを聞いたと、館の執事レイモンドが答えた。
漏れ聞いた声によると、「最近とても物入りなので、あなたの要求に応じる事はできかねる」。
つまり、誰かが金の無心をアクロイド氏に行い、アクロイド氏が断る声を聞いたということだ。
アクロイド氏を刺した短剣は、チュニジア製の短剣という珍しい骨董品だった。
椅子の位置が引き出され、いつの間にかまた戻されていた(シェパードの仕業)
21時15分にフローラがアクロイド氏と話し、『アクロイド氏は以後誰とも話したくない』とパーカーに言ったそうだ。
シェパードが帰宅した後に、フローラがおじのアクロイドにお休みのあいさつをしたとのことだ。
アクロイドの死去をフローラに伝えたのは、アクロイドの旧友ブラントだった。
そのフローラを部屋に通し、フローラが去る時に声をかけたパーカーが怪しい、というのが警察の最初の見立てだった。
シェパード氏が家に帰ると、キャロラインは『パーカー犯人説』をバカにして一刀両断する。
フローラ・アクロイドが家にやってきた。
ここで、シェパードはポロット(ポワロ)が名探偵だという事を知る。
シェパードは、ポワロを事件に引き込まない方が良いと反対する。
ラルフは夜9時から、失踪していた。21時25分にアクロイド邸の近くで目撃され、それ以降誰も彼を見ていない。
そのため、警察はラルフを疑っていた。
フローラは、恋人のラルフが疑われているので焦っていた。
フローラに頼まれ、ポワロは事件に乗り出した。
シェパードは昨夜、ラルフにも会いに行ったのだった(既に読者に情報を隠している)
ポワロは「事件の当事者全てが何か隠し事をしている」という。
警察が作ったアリバイリストでは、メイドのアーシュラ・ボーン以外はアリバイがきちんとあるようだ。
そのため、犯人はラルフ・ペイトンにほぼ絞られた。
ポワロは助手として、シェパードと行動を共にする事となった。
フローラ・アクロイドが一人でいるのを目撃する。
叔父が死に、恋人が容疑者な割には楽しそうだった。
フローラとブラントが会話をしていた。
「そのうち上等な毛皮を、あなたに届けましょう」とブラントが言うと、フローラは喜んだ。
そろそろアフリカへ戻る時が来たと語るブラントに、
フローラは「すぐにはいなくならないでください」と頼んだ。
「私たちみんながあなたにいてほしい」と語るフローラに、
「あなたの気持ちを聴いているんです」とブラントが言った。
「私も、あなたにいてほしいです。あなたと話すと、心が慰められる気がします」と言うと、
ブラントは「それならば、留まりましょう」と話した。
そして、ブラントは「ラルフが犯人ではないよ」とフローラを慰めるのだった。
フローラが楽しそうな理由は、アクロイド氏が2万ポンドも遺産を残してくれたからだった。
これで自由になる、これでお金の心配をしなくてもすむようになる、嘘をつかなくてもすむようになる、とフローラは言う。
「何をするのも、何をしないのも、自由」だとフローラは言った。
(何をしない=財産目当てに、ラルフと結婚しないで済む、の意味です)
フローラは、ラルフについては心配していない、ポワロに頼んでいるからと語った。
池の中に光るものを見つけ、ポワロは泥だらけの池から光るものを取り出した。
池の中に落ちていたのは女性用の結婚指輪。『Rより』
ラルフ・ペイトンは浪費癖があり、アクロイド氏に金の無心をしていたらしい(最近はしていない)。
ラルフ・ペイトン、セシル・アクロイド、フローラ・アクロイドに大金が、
ミス・ラッセルに1000ポンド、レイモンドに500ポンドの遺産が残されたようだ。
ブラントもまた、お金に少し困っているようだった。
1年前に遺産が入ったのだが、怪しい投機をして失敗してしまったのだった
(1年前に遺産が入って、怪しい投機をして失敗した奴2人目w
世界大恐慌と関係あるのかな?と思ったけど、この作品が書かれたのはまだ1926年でした)
セシル・アクロイドは遺産がたくさん舞い込んできたにもかかわらず、不満があるようだった。
ロジャー・アクロイドはお金についてケチで、フローラにお小遣いもあげなかったと故人について文句を言った。
自由になるお金がないことに、フローラは不満だったとのことだった。
アクロイド氏のお金が40ポンド盗まれていた。
メイドのアーシュラ・ボーンは昨日、テーブルを乱してしまい、アクロイド氏から解雇通告を受けたらしい。
アーシュラ・ボーンの前の雇い主に話を聞きに行くシェパード。ポワロと離れて単独行動となった。
アーシュラの過去に関して、前の雇い主は言いたくないようだった。
シェパードが家を離れている間、キャロラインの元にポワロが訪ねてきたようだ。
ラルフが指名手配された。
フローラはラルフの行方を全く知らない、ということだった。連絡もないらしい。
セシル夫人がラルフに対して当てこすりを続け、財産の話までして、空気をひどく悪くする。
そのせいで、フローラは「明日、ラルフとの婚約を発表する」と決めてしまった。
ポワロは、フローラに対して「2日だけ、婚約発表を延期してほしい」と懇願する。
ラルフに対しても、その方が良いという。
シェパードに道を聞いた謎の男はアメリカ訛りがあり、他の村人にも道を聞いていた。
アクロイド氏の部屋からは40ポンドと、ブルーの封筒(フェラ―ズ夫人からの手紙)がなくなっていた。
ラルフは怪しすぎた。だからこそ、ラルフは犯人ではないのでは?とポワロは言うのだった。
☆後半
翌日から、ポワロとシェパードは別行動をとる機会が多くなった。
シェパードはセシル・アクロイドに呼ばれた。
(相変わらず他人の悪口ばかりのセシルがウザい)
セシルはアクロイド氏の食器を漁り、ロンドンに競りに出そうとしていた。
ラルフ・ペイトンの編み上げ靴が黒なのか、茶色なのかを、ポワロは知りたがっていた。
その調査をキャロラインがしているようだ。
ポワロは茶色だろうと考えていたが、キャロラインの調査によると黒だった。
シェパードは、キャロラインのカリンのジャムを届けにポワロの家にやってきた。
そして、セシルからの情報と、編み上げ靴の事をポワロに話した。
レイモンドはお金に困っていたことをポワロに話した。
アクロイドが亡くなって500ポンドの遺産が入って喜んでいたことを、
後ろめたくて隠していたのだが、ポワロに嘘をつき続けるのもつらく、話に来たのだった。
ブラント少佐が、フローラに恋をしているとポワロは喝破する。
その晩、麻雀大会が開かれた。(このシーン、麻雀を知っていると結構面白いんだけど本筋にはほとんど関係ないw)
シェパードが『天鳳』を引き当ててしまい、つい興奮して結婚指輪の話をしてしまう。
キャロラインは、「フローラはラルフを愛したことは一度もない」と言った。
これからパーカーへの尋問が行われる。。
恐喝者がパーカーであればいい、とポワロは言った。
パーカーは前の雇い主を恐喝していた過去があった。
パーカーはアクロイドも脅迫したかったため、その種を探そうと立ち聞きなどして廊下をウロウロしていたのだった。
パーカーは、アクロイド本人が脅迫されていたと信じていたようだった。
つまり、フェラ―ズ夫人への恐喝とは無関係なのだった。
シェパードは、ポワロに『結婚指輪』の件を喋ってしまった事を謝罪した。
フェラ―ズ夫人は、1年間で2万ポンドも恐喝されていた。
キャロラインはシェパードの8歳年上で、シェパードの母親代わりとして面倒を見てきたつもりだという。
キャロラインの推理によると、アクロイドを殺せたのはラルフとフローラだけ。そして、ラルフが犯人だとはとても思えない、と言う。
ポワロはふと呟く。
「ある男には、弱い性格がある。何もなければ、善良な市民として一生を過ごしたはずです。
たまたまある秘密を掴んでしまう。今こそ金を掴むチャンスだ、と弱い性格が訴えかける。
そして、欲に目がくらんで、どんどんやりすぎてしまう。追いつめすぎて、金の卵を産むガチョウを殺してしまう。
しかも、悪事が暴露される危険性に直面してしまう。彼は一年前とは変わってしまい、道徳心は薄れてしまい、アクロイド氏の口封じをしたのです。
そして、彼はまた親切な人間に戻りますが、必要が生じればまた再び短剣を振りかざすのです」
(ポワロは完全に、この時点で動機と犯人を見抜いている)
リバプールであの晩、アクロイド家を訪ねてきた謎の男、チャールズ・ケントが捕まった。
彼はケント州で生まれたのだろう、とポワロは言った。
チャールズ・ケントは大金を持って酒場に行ったという。そのため、アクロイド殺害の時間にはアリバイがあった。
ポワロと警察の訪問にフローラは動揺したが、同席していたブラント少佐に「一緒にいて下さい、お願いします。警部さんの話をあなたに聴いていただきたいんです」と言った。
40ポンドを盗んだのはフローラ・アクロイドだった。
そして、それを隠すためのフローラの偽供述(アクロイド氏にお休みの挨拶をした)によって、
犯行推定時刻がすっかり変わってきてしまうのだった。
フローラとラルフを結びつけたのは、『お互い弱い人間だったから』だという。
ブラント少佐は、(フローラをかばうため)自分が金をとったと苦しい嘘をつくが、すぐに見破られてしまった。
ポワロはブラント少佐に、「あなたはフローラを愛しておいでです。そして、フローラにそれを隠してはいけませんよ」と言った。
「あなたは彼女がラルフ・ペイトンを愛しているとお考えのようです。しかし、フローラはラルフと結婚する事で、継父を喜ばせたく、耐えがたい家での生活に嫌気が差したからです。
フローラはラルフを友だちとして好意を持っています。フローラは義理堅い人間なので、ラルフに容疑がかかったとみると、立ち上がらなければいけないのです。
しかし、フローラが愛しているのはラルフではありません。あなたがフローラをもう愛していないなら話は別ですが」とポワロは言った。
ブラントは「お金の事なんかで、フローラを嫌いになったりはしない」と言った。
「私は愚か者だった」とブラントは言った。
「あなたは愚か者ではないですよ。恋に落ちた愚か者というだけです」とポワロは微笑んで言った。
(文章で台詞だけ読むと冷たいけど、ポワロの暖かな感情を感じるシーンです。ポワロは『ゴルフ場殺人事件』でもヘイスティングスの恋のキューピッドを務めていました)
ポワロは新聞に、
「リバプールで、ラルフ氏が発見された」という偽の記事を載せてもらうよう頼んだ。
シェパードは機械いじりが趣味で、手製のラジオも作れるようだった(この情報、出すの遅すぎない?)。
ミス・ラッセルがやってきた。チャールズ・ケントに似ている、とシェパードは感じた。
フローラの偽証が明かされ、チャールズ・ケントが犯人ではないかとラッセルに話すと、ラッセルは急いで弁明を始めた。
「彼がやったのではありません。私が証明します!」と言うと、ラッセルは話した。
チャールズ・ケントとは、ミス・ラッセルの息子だった。
遥か昔、ケント州に住んでいた時に、未婚のまま産んだ子供だった。
彼はグレてしまい、麻薬などにも手を出していたので、ラッセルはケントをアメリカに出した。
しかしケントは金の無心をし、遂にラッセルの元にやってきたので、あの晩、屋敷の外で隠れて会う事にしたのだった。
皆を集めて、最後の推理
ポワロが書いた記事は、翌日朝刊に載った。
ポワロがシェパード家にやってきた。
今夜、皆を集めて食事会を開きたいという。
シェパードが皆を呼び集める役になった。セシルの家に行くと、
フローラとブラントが婚約したということだった。
取り乱したアーシュラ・ボーンが、シェパード家を訪ねてきた。
すぐにポワロに会いたいと、言っているらしい。
「あなたはアーシュラ・ペイトン。ラルフ・ペイトン夫人ですね?」とポワロは言った。
ラルフが逮捕された、と聞いてアーシェラは泣いていた。
アーシュラ・ボーンは父親が亡くなると、世の中に出て自活しなければならなくなった。
そこで雑用係のメイドになるため、姉に推薦状を書いてもらった。
やがてラルフと出会い、秘密の結婚に至る。
ラルフは借金を返し、父から独立したら、結婚している事を父に伝えようと思った。
そして数か月後、アクロイド氏に「フローラと結婚すれば、大金をやる」と言われ、ラルフはそれに頷いてしまった。
アクロイド氏は勝手に婚約を発表しようとした。
アーシュラは驚愕し、ラルフを呼び寄せた。アーシュラはアクロイド氏に全てをぶちまけると話した。
その午後、アーシュラはラルフと既に結婚していると告げると、アクロイド氏はブチギレ、アーシュラは解雇されてしまった。
アーシュラとラルフは大喧嘩をし、アクロイド氏はその時間に死んでいた。
ラルフはそのまま逐電してしまった。
ラルフと会ったのは21時33分ぐらいで、屋敷に戻ったのは21時45分だったということだ。
屋敷に戻って、アーシュラは22時くらいまで自室にいたが、当然アリバイはなかった。
シェパード氏が事件の手記を書いているというと、ポワロは大喜びをした。
今すぐ見せてくれというポワロに、シェパードは気後れしながらも、原稿の束を渡した。
昨夜のミス・ラッセルの訪問のシーンまでを、既に書いておいたのだった。
原稿を読んだポワロは、「謙虚で寡黙で感心しました」と言った。
「ご自分の個性を出そうとしないので驚いた
非常に綿密で、ありのままに記録している。ただし、あなた自身の行動については適度な沈黙を保っている」とポワロは言った。
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客たちがやってきた。
セシル、フローラ、レイモンド、ブラント、アーシェラ、シェパード、パーカー、ラッセル、ポワロ。
まず最初に、皆の前でアーシュラとラルフの結婚をポワロは発表した。
フローラはアーシュラの肩に手をかけると、アーシュラを祝福した。
ラルフの所在についても知っている、というポワロに皆の疑問が集中する。
それに対してポワロは「私は全て知っている」と答え、「ここにいる全員が容疑者です」と言った。
今までの経過をポワロは全て話した。あずまやで、あの晩2組の男女が別々に秘密に会ったということ。
ミス・ラッセルと、チャールズ・ケントの会合。
アーシュラ・ボーンと、ラルフ・ペイトンの会合。
アーシュラとラルフには、遺書を書き換える前にアクロイド氏を殺すという動機があった。
しかし、時間が合わなかった。
さて、アクロイド氏は誰かと話していたと信じられていたが、本当に誰かと一緒だったのだろうか?
アクロイド氏は「最近とても物入りなので、あなたの要求に応じる事はできかねる」という声をレイモンドに聞かれている。
しかしよく考えるとこれは、実際の話し言葉ではない。
手紙の口述筆記の時ぐらいしか使わないような表現だ、とポワロは言う。
アクロイド氏は、ボイスレコーダー(現代のと違って、とても大きい)を買っていた。
ポワロの招きに応じて、扉口からラルフ・ペイトンが入って来た。
シェパードはラルフ・ペイトンに会いに行き、精神障碍者施設に彼を隠した。
ペイトン大尉を救うためには、真犯人が自白しなければならない、とポワロは皆をじっくり眺めまわしながら言った。
「私はアクロイド氏を殺した犯人が、この部屋にいる事を知っています。明日、警部にそのことを話します。お分かりですか?」とポワロは突然凄んだ。
皆が出て行った後もポワロはシェパードを引き留めた。
シェパード氏に電話をかけた人物は誰なのか。
あの晩のうちに殺人が発見されて得する人物は誰なのか。
椅子は一体なぜ動かされたのか。それは、テーブルを遮るために置かれたのだとポワロは言う。
殺人の直後に持ち帰れないもの、そして、いち早く持ち帰りたいもの。
まずパーカーは容疑から外れた。わざわざ電話をかけなくても、屋敷にいるのだからすぐにものを隠せるからだ。
では、何を椅子で遮ったのか。それは録音レコーダーだった。
犯行現場にすぐに向かい、録音レコーダーを鞄に収められる人物。
21時半にアクロイド氏は既に殺されていた。
彼の声は、録音レコーダーに事前に録音されていた声だった。
しかし、時限装置を取り付け、好きな時間に予約で動かすには多少の知識が必要だった。
更にラルフの靴を、持ち出すことができた人物。
「それは……シェパード先生、あなたです」
シェパードは手記を書き終えた。シェパードは自殺することは決めていた。
けれど、シェパードが殺人者だということだけは知られたくなかった。
キャロラインに、犯罪の事実を知られたくない。
ポワロならきっと、キャロラインにはうまく伝えてくれるだろう。
そう信じて、シェパードはベロナ―ル(毒薬)を飲み込んだ。
(録音した声だったのだとしたら、別に口述筆記っぽい文章じゃなくても良かったのでは?? まぁいっか)
ドラマ版感想
デイビッド・スーシェ主演の「名探偵ポワロ」は殿堂入り級の名作ドラマシリーズだと思いますが、
本作を映像化するのはさすがに無理がありましたね……。
文章でしか表現できない作品なので、大幅な脚色は致し方がないです。
ただ、映像化にしても、(読んでいる時の印象よりも)シェパード医師老けすぎwww とか、キャロラインが妹になっとる!とかいろいろありますが、本作でほぼ唯一心温まるブラント少佐の存在が抹消されているのは物足りなかったですね。
原作は(人が死んでるのに)もっと牧歌的な雰囲気なので、全然印象が違いましたw
記事を書き終わって
ストーリーをなぞると、1万文字超えるのか……なっげぇわ……。
書く方も大変なら、読むほうも大変ですね(読んでくれる人いるんか?)
いるんか?)
しかし、ミステリ作家志望者にとっては、超有名なこの作品は必読だと思いますし、情報の出し方や伏線の貼り方などは、
『物語を楽しむ』のとは別の視点で、こういう『解剖分析』はやって損はないと思います。
まぁ、僕はファンタジーを書くことが多いので、ミステリを書く気は全くないんですけどねっ!!