2023年07月

「三国志6」207年馬騰プレイ中

200年の馬騰でもクリアしているのですが、200年と違うのは袁紹が消滅し、曹操が大勢力になっていることです。
200年では東の方で、曹操・袁紹・孫策が三つ巴のバトルを展開し、更に孫策と劉表が争っていたおかげで、意外と簡単に曹操を倒すことができ、サクサクとクリアできましたが今回はそうは行きません。
曹操は劉備を滅ぼし、孫権も滅ぼしてしまいました。
我が馬騰は曹操と同盟を結び、曹操との対決は最後まで避ける方針を取りました。と言うより、それしかない……。

何せ韓遂がゲーム開始後すぐに寿命で亡くなるため(なんでや、韓遂そこまで短命じゃないだろ!)、
軍師ホウトクという悲惨な有様。
まともな軍師が来たのは相当先の張松まで待たねばなりませんでした。
軍師なし、武も馬騰・馬超・ホウトクのいつもの3人組だけで張魯を倒し、その後南下、劉璋を倒します。
劉璋ですら格上でしたが、まぁなんとか倒しましたが、部下は張任・張松ぐらいしか増えません。
「三国志6」は「9」と違って全然部下が増えないゲームなのです。

で、その後劉奇・(孫権に既に滅ぼされていた韓玄以外の)荊州三英傑、シショウと南部に進出。
同時に、曹操に配下にされた旧劉備・旧孫権の武将を吸い上げたかったのですが
諸葛亮というスペシャルな配下以外は・劉備・黄忠・(やる気をなくした後の)徐庶・魏延しか配下になりませんでした。
それでもこれはかなりの戦力アップです。

一方呉勢は不調で甘寧がいったん来ましたが、曹操にかっさらわれていきました。
後は張昭くらいでしょうか。ほとんど曹操に吸収されていった感じです。

この時点で残った勢力は、馬騰兵士15万・曹操80万・公孫康3万。
ここから勢力を伸ばすには曹操と対決しなければならないのですが、現時点で開戦するのは現実的ではないので、しばらくは富国強兵に努めるしかないですね。

ただ、「信長の野望・創造」と違って、「三国志」は大勢力を崩すのはそこまでしんどくないです
(AIがバカなので、兵士の割り振りとかがおかしいのです。これを批判的に捉える感想もネットで見かけますが、AIが賢かったらクリアなんてできませんよ。
信長の野望でも、超勢力・羽柴秀吉を倒すのに15年戦争をする羽目になりましたし、あぁいう目に遭うのはたまらないです。AIは賢すぎるよりは、バカなぐらいでいいんです)

「三国志6」223年劉禅プレイ中

劉備・曹操が亡くなっている年代でやるのは初めてですが、武将不足が深刻ですね。
わが劉禅は、馬超・趙雲の二大エースと魏延・関興・張苞がおりますが、それぐらい。
文は諸葛亮・ショウエン・ヒイ・董允などがいるのですが。

まず、劉禅軍は史実どおり雍闓・孟獲を倒して南蛮を制圧。
……で、孟獲の能力値が高いww ついでに兀突骨も高いw
張苞・関興と並ぶ戦力になりました。

漢中方面から北伐し、長安・涼州を占領……しようと思ったら開始後1年でエースの馬超が寿命で死亡。
寿命との勝負がキツいので、電撃戦で侵略していきます。
凄い勢いで中原に進出し、曹丕をどんどん追いまくり魏を滅ぼしました。

その中で配下になったのは司馬懿・チョウコウ・徐晃・徐庶・夏侯覇あたり。
ただ、徐晃はいつ寿命が訪れるかわからないし、徐庶はすぐ不満を貯めるので、使いづらい……。
司馬懿が来てくれたのは、諸葛亮亡き後の軍師として、頼もしいですね。
ところで、姜維が来てくれないんですが、なんでや……。

曹丕を滅ぼし、公孫恭も滅ぼして、いよいよ孫権と劉禅で天下を二分状態。
劉禅30万・孫権60万という状況でしたが、さすがにキツいので、1年ほどかけてこちらも兵力を60万まで増やしました。

現在229年。
張苞や関興はいつ寿命が来るかわからないし、諸葛亮、魏延辺りも234年が目安だと思うので、
そろそろ開戦しないと危ない気がしますが……。

でもまぁ、この状況までくればクリアは確実だと思います。


「オリエント急行の殺人」雑解析感想

トリックが有名なので、ミステリー初心者にこそ読んでほしい良作。

ネタバレあり

## 前置き

今回も雑なあらすじ解析の記事になります。
備忘録的な記事であって、テーマに沿った感想記事ではないので質は低いと思いますが、よろしくお願いします。

初読時はかなり感動してS評価をつけたのですが、再読してみるとA評価まで下がってしまいました(汗)
記憶よりも、人間ドラマ部分が少なくて、こんなにトリック重点だったかなぁ、と。
とはいえ、名作だと思いますので、ミステリファンは必読の本だと思います。犯人に意外性があり、おまけにパロディ・本歌取り作品もありますので、むしろ犯人を知らない初心者のうちに読んでおきたい作品です。

☆登場人物(表)

オリエント急行乗客名簿

ラチェット(アメリカ)……アメリカ人の富豪。被害者。
ヘクター・マックイーン(アメリカ)……ラチェットの秘書。
ピエール・ミシェル(フランス)……車掌。
エドワード・マスターマン(イギリス)……寡黙なラチェットの召使。
ハバード夫人(アメリカ)……騒々しいおばちゃん。
グレタ・オルソン(スウェーデン)……羊に似た弱々しい宣教師。
ドラゴミロフ侯爵夫人(ロシア)……リンダ・アーデンの親友。ソニアの名付け親。
ヒルデガルト・シュミット(ドイツ)……ドラゴミロフ侯爵夫人のメイド。
アンドレイニ伯爵(ハンガリー)……外交官。
エレナ・アンドレイニ伯爵夫人(ハンガリー)……アンドレイニ伯爵の妻。
アーバスノット大佐(イギリス)……インドで従軍していたイギリス人。ミス・デヴナムと親しいが、それを隠そうとしている。
メアリ・デヴナム(イギリス)……アーバスノット大佐と仲が良い。
サイラス・ハードマン(アメリカ)……ピンカートン探偵社の探偵。
フォスカレッリ(イタリア系アメリカ人)……車の営業マン。
ブーク……オリエント急行の重役。ポワロの助手的役割を務める。
エルキュール・ポワロ(ベルギー)……名探偵。

5年前に起きたアームストロング事件の関係者

デイジー・アームストロング……殺された幼児。
カセッティ……デイジー殺害犯。
ソニア・アームストロング……デイジーの母。事件の影響で流産し、死亡。
アームストロング大佐……軍人。妻と娘を失い、自殺。
リンダ・アーデン……名女優。デイジーの祖母。ソニアの母。
スザンヌ……フランス人メイド。デイジーの子守り。冤罪を受け、自殺。

作中で共有されている国籍偏見について

イギリス人……内気で、打ち解けるまで時間がかかる。忍耐強く、頑固だが誠実。

アメリカ人……陽気で、単刀直入で、すぐに打ち解ける。アメリカは人種のるつぼのため、色々な国の外国人を雇うのはアメリカぐらいだという。

イタリア人……カッとなりやすく、すぐにナイフを持ち出す。

当時の状況について

オリエント急行の殺人は1934年の作品。
モデルになった「リンドバーグ愛児誘拐事件」は1932年。

ナチス・ドイツの誕生は1933年。
1939年から始まる第二次世界大戦に少しずつ近づいている時期だが、まだ5年の歳月があり、欧州では恐らくまだナチスへの警戒心は強くないと思われる。

ロシアは1917年にソ連へと生まれ変わったが、ドラゴミロフ伯爵夫人は老人で、ソ連の思想にかぶれている様子は全くないこと、ソ連を構成する国の一つとしてロシア共和国があるため、作中表記のままロシア人とした。

インド……当時イギリスの植民地。(アーバスノット大佐やアームストロング大佐がいたのは、そのため)

イラク……1932年、イギリスから独立したが、実質イギリスの影響下にあった(ミス・デヴナムがバグダッドで家庭教師をしていたのはそのため)

アガサ・クリスティは1928年に離婚し、中東を旅をし、1930年に考古学者のマローワンと再婚。
(マローワン氏と結婚してから、クリスティの作品にはナイル・メソポタミア・オリエント急行など異国での事件や、人間ドラマに深みが出来たように思う)

序章

タウルス急行のアレッポ駅(現シリア)で、フランス軍絡みの事件をポワロは解決した。
ポワロはこの後、イスタンブール(トルコ)に滞在し、観光することにした。
バルカン地方は大雪だとのことだが、大雪さえなければ明日にはイスタンブールに着くとのことだ。

メアリ・デヴナムはろくに眠れなかった。しかし、ポワロの滑稽な姿を見ると、少し愉快になった。
乗客はほとんどいなかった。
バグダッド(イラク)から乗ったメアリと、インドにいたアーバスノット大佐という2人のイギリス人、それにポワロだけだった。
メアリは有能そうな20代後半の女性だった。
アーバスノット大佐は40代くらい。
「おはよう、ミス・デヴナム」「おはようございます、アーバスノット大佐」とあいさつをする2人。
二人はイギリス人同士、(外国人の)ポワロを無視し、お互い、共通の知人がいることが判明し、会話が打ち解けていくようだった。
アーバスノットはデヴナムに気があるな、と観察してポワロは愉快になった。
「素晴らしい景色だわ……できれば……心から楽しめればいいのに」とデヴナムは言った。
このようなことに、あなたを巻き込みたくなかった」とアーバスノット。
そして、ポワロの存在に気付き、話を変えた。
ミス・デヴナムは家庭教師をしているようだった。

その夜、大佐とミス・デヴナムは停車駅に出た。
アーバスノット「メアリー……」
メアリー「ダメよ、今はまだダメ。全てが終わってから、全てが終わってから」と二人の雰囲気はすっかり恋人のようだった

翌日の昼、列車が急停車した。
「列車が遅れてしまったら大変! イスタンブールに行って、そこからオリエント急行に乗るの。時間に遅れたらオリエント急行に乗り遅れてしまう!」とミス・デヴナムは落ち着きがない。
幸い、彼女の心配は杞憂に終わった。

ポワロに電報が届き、イギリスでの仕事が舞い込んだためイスタンブールでの観光を諦め、ポワロはオリエント急行を予約した。
駅で、ブークという電車会社の重役に出会った。

レストランに行くと、30歳ぐらいの感じの良いアメリカ人と、60代とおぼしき男がいた。
60代の男からは、奇妙な悪意と緊張を感じた。
若い男はマックイーン、60代の男はラチェットといった。
「60代の男からは、まるで猛獣のような印象を受けました。外見は立派なのですが」とポワロは言った。

この真冬に、一等寝台も二等寝台もほとんど全てふさがっているとコンシェルジュは言った。
団体客ではなく、たまたまだそうだが、オフシーズンにこれだけ客が入るのは前代未聞だった。
二等寝台の7号室、イギリスのハリスという男性がまだやってきていないので、そこにポワロが入る事になった。
7号室には既に先客がいた。先ほど、ラチェットと同席していたアメリカ人のマックイーンだった。
結局、マックイーンと相席することになった。
オリエント急行は発車した。

1、オリエント急行、発車

ここにいるあらゆる階級・あらゆる国籍の人々は、3日の間ずっと一緒に過ごす。
そして、この列車を下りれば二度と会う事はないだろう。

乗客には、
とてつもなく醜く、逆に惹きつけられてしまう老貴婦人、ロシアのドラゴミロフ侯爵夫人。
別のテーブルにはミス・デヴナムもいた。
アーバスノット大佐はミス・デヴナムの後ろ姿をじっと見ていた。

ラチェットがポワロの向かいに腰を下ろした。
「あなたはエルキュール・ポワロさんでしょ? あなたに仕事を頼みたい。
莫大な金を払います。私は命を狙われている」と言ったが、ポワロはその提案を断った。
「2万ドルなら引き受けるかね?」とラチェットは言ったが、ポワロは
こんな失礼な事を言うのも気が引けますが、あなたの顔が気に入りません」と言ってポワロは出て行った。
(失礼すぎて草wwww)

列車の旅は2日目になり、乗客同士打ち解けてきた。
アーバスノット大佐はマックイーンと話をしていた。
おしゃべりで騒々しいハバード夫人が、羊に似たスウェーデンの女性宣教師グレタを気遣っている。
ハバード夫人はラチェットの隣の寝室なので、とても不気味だと言っていた。
ポワロとハバード夫人は別れ、お互い自分の部屋に戻り灯りを消した。

夜中、どこかでうめき声がしてポワロは目覚めた。午前0時37分だった。
ヴィンコビチ駅(=現クロアチア・当時ユーゴスラビア)で停車していた。
車掌がラチェットのドアをノックしたが、「何でもない、間違えたんだ」と男の声がした。フランス語だった。
ポワロがミネラル・ウォーターを頼むと、ミシェル車掌は、
「『ハバード夫人が同じ寝室に男がいる!』と言ってきかないのだ」、と困り顔でポワロにぼやいた。
雪だまりに突っ込んで、列車は止まっていた。
赤ガウンの女の後ろ姿が目についた。

それからポワロは朝まで眠った。
朝9時45分に起きても、雪で列車は止まったままだった。
「ここに何日いるのかしら!」とハバード夫人は憤っていた。
「自分もミラノに商用がある」とイタリア人のフォスカレッリも怒っていた。
「妹が待っているんです」とグレタが涙声で言った。
ミス・デヴナムは予想に反して、あまりいらだっていないようだった
以前はあれだけ取り乱していたというのに。

ブークに呼ばれポワロが行くと、「ラチェットが死んでいる」と言うのだった。
推定死亡時刻は午前0時から2時の間。
0時37分に、ラチェットの声が聞こえたのが最後ということだった。
死体は12か所も刺されていた
「そういう刺し方をするのは女だけだ」とブークは言った。
傷のうち、1か所か2か所は強烈な一撃で、冷静な犯行ではなさそうだ。出鱈目に好き勝手に刺した感じで、ナイフが逸れてかすり傷のようになっているものもある」とのことだ。

ギャングの犯行ではないかという意見も出たが、どう見てもプロの犯行ではない。
ブークから、この事件の解決をポワロは依頼された。

犯人は、イスタンブール~カレー(フランス)間の乗客に絞られる、とブークは言った。
雪に足跡はなく、誰も外に出た様子はないようだった。

捜査開始

まずはラチェットの秘書、マックイーンから事情を聴くことにした。

マックイーンはペルシャ(イラン)でラチェットと出会った。
仕事がなくて困っていたので、ラチェットの秘書になった。
あちこち旅行をして回る事になった。
「ラチェットというのは多分本名ではなく、あちこち旅行をしているのもアメリカにいられなくなって、逃げている」からではないか、とマックイーンは言った。

最初の脅迫状が来たのは2週間前だった。
「お前を捕まえてやるぞ、ラチェット。お前を始末してやる、もうじきだ、いいな」という手紙だった。
この手紙は2人以上の人物が書いている、文字や単語を各自が1つずつカッチリした活字体で書かれたものだった。

「ラチェットに好意は持っていなかった。ぼくは、あの人が嫌いだったし、信用してもいなかった。残酷で危険な人だった。根拠はないんですけどね。ただ、ラチェット氏とはとてもうまくいっていましたよ」
と、マックイーンは言った。
ゆうべの22時頃にラチェットを見たのが最後だという。
マックイーンは冷静な人物で、12か所もめった刺しにするような行動はとてもとりそうにない人物だった。

死体は12か所刺されていて、致命傷と言える傷が3か所あるとのことだ。
既に死亡した後にも刺されていた。
また、右手ではつけられない傷も残っている。
2人か、複数の人間が刺したのだろう。

犯人は怪力であり、非力であり、右利きであり、左利きであり、男であり、女である。話にならん!」とポワロは苛々してきた。
しかも被害者は無抵抗のまま刺されている。

捜査中、『R』のイニシャルが付いたハンカチが落ちていた。
被害者の胸ポケットには、ひどくへこんだ金時計が入っていた。
午前1時15分で止まっている。
1時15分が犯行時刻だ、と医師は言う。

犯人は男なのか、女なのか。
犯人を男性だと見せかけるために、わざとパイプクリーナーを落としていったのか、
犯人を女性だと見せかけるためにわざとハンカチを落としていったのか、
男女の犯人が、2人ともそそっかしくてお互いに自分のものを落としていったのか。

平べったいマッチ。これだけは犯人のものだと思われる。
証拠の手紙を燃やすために、使われたのだろう。
紙片を復元していくと、『小さなデイジー・アームストロングの事を忘れ……

これでラチェットの本当の身元がわかった。
カセッティ。
アメリカで起きた、『アームストロング誘拐事件』の犯人だった。

アームストロング事件

アームストロング大佐はイギリスとアメリカの混血で、大佐の妻はソニア。
その母親が女優のリンダ・アーデンだった。
アームストロング大佐とソニアの間には娘のデイジーが生まれたのだが、3歳の時にカセッティに誘拐され、莫大な身代金を要求された。
身代金を渡したにもかかわらず、デイジーは殺された。
ソニアは妊娠中だったが、ストレスで早産してしまい、母子ともに死亡。
更にアームストロング氏も絶望のあまり自殺した。
また、フランス人メイドのスザンヌは冤罪を受け、身を投げて自殺してしまった。
カセッティは金を積んで、無罪放免となった。
その後アメリカを離れ、ラチェットと名乗り外国で暮らしてきたという。

☆フランス人の車掌ミシェルの証言

夕食のすぐあと、ラチェットはベッドに入った。
その後、召使とマックイーンがラチェットの部屋に入っているが、それ以外の入室者は知らないという。
0時40分頃、ベルが鳴らされた。駆けつけると、「間違えたんだ!」とフランス語で声がした。
ハバード夫人が何度もベルを鳴らしていたのに対処し、ポワロにミネラルウォーターを渡し、
マックイーンの部屋にベッドメイクをしに行った。アーバスノット大佐が一緒にいたようだ。
アーバスノットはベッドメイクが終わるころに、自室に戻った。2時前だった。
その後は、朝まで自分の席にいた。
ご婦人が一人、車両の向こう側のトイレに行ったようだった。後ろ姿しか見えず、龍の刺繍がある真っ赤なガウンを着ていた。
その頃、ポワロも一瞬顔を出した。
大きな音に関しては、ミシェルは聞かなかったとのことだった。
ラチェットの部屋をノックしているとき、ドラゴミロフ侯爵夫人の部屋からベルが鳴った。
メイドを呼んでほしいとのことだった。

秘書マックイーンの証言

ラチェット=カセッティだということを知ると、マックイーンは激怒した。
もし知っていたら、あいつなんかの秘書になるわけがなかった、という。
マックイーンの父は検事で、あの事件にかかわっていたという。
マックイーンは昨日の事をポワロに回顧した。

ベオグラード駅(現セルビア・当時ユーゴスラビア)では寒くてすぐに列車に戻った。
イギリス人のアーバスノット大佐と話し中にポワロが通りかかった。
ラチェットのところに行き、手紙の口述筆記をし、お休みのあいさつをした。
その後、またアーバスノットを誘い、お酒を飲みながら語り合った。
車掌がベッドメイクをしている間、煙草を吸い、その後ぐっすりと眠った。
アーバスノット大佐と、ヴィンコブチという駅に降り立ったが、あまりに寒かったのですぐ車内に戻った。
通路を一度車掌が通った。それから反対側から女性が一人歩いて行った。
真っ赤な服を着ていたのをちらっと見た。
戻ってくる姿は見ていない、という。
煙草を吸うときは、パイプは使わない。

召使マスターマンの証言

ラチェットの召使マスターマンから話を聞くことになった。
ゆうべは、ラチェットの服を畳んだり、ハンガーにかけたり、入れ歯を水につけたりした。
ラチェットは手紙を読んで、神経をピリピリさせていたようだった。
睡眠薬を飲んで、寝たようだった。
「気前のいいかたでした。ただ、アメリカ人はどうも苦手と申しますか……」とマスターマンは言った。
アームストロング誘拐事件を「何ともいたましい事件でした」と言ったが、
ラチェットが主犯だと聞くと、「到底信じられません」と彼の言葉に熱が入った。

ラチェットの寝室を出た後はマックイーンに連絡をし、その後は自室で本を読んでいた。
同室者はフォスカレッリだった。
フォスカレッリが寝たがっているので、自分も寝る事にしたが、歯が痛くて眠れなかった。
自分は全然眠れなかったが、フォスカレッリはずっと寝ていた。
パイプは吸わない、とマスターマンは言った。
「差し出がましいかもしれませんが、アメリカの年配のご婦人が興奮しているようです」とマスターマンは言った。

ハバード夫人の証言

興奮していたのはハバード夫人だった。
「犯人は私のコンパートメントにいたんです!」と彼女は取り乱していた。
「ベッドに入って、ふと目が覚めたら、コンパートメントに男がいました。もう怖くて怖くて、悲鳴もあげられなくて、怯えていました。
どうにか気力を振り絞ってベルを何度も鳴らしたのに、車掌が来てくれなくて本当に怖かったし、電車は止まったままだったし。
ドアにノックが響いて本当にほっとしました。
そうしたら、なんとコンパートメントには誰もいなかったんです。
男がいたことを車掌に話したんですが、全然信じてもらえませんでした。
私は妄想を抱くような人間ではありません!
隣の部屋との扉の閂が外れていたので、車掌に閂をかけてもらって、スーツケースも立てかけておきました。

男がいた証拠として、ボタンを取り出した。車掌のボタンだった。
ミシェルは閂をかけたけれども、窓の側には一度も行っていない。
けれど、車掌のボタンは窓のところに置いてあったという。
グレタに閂がかかっているかを確認してもらったら、かかっていると言われたので、閂はかかっていたと思うと言う。
グレタはアスピリンをもらいに来たのだった。

グレタは一度間違えて、ラチェットの部屋を空けてしまい、笑われたらしい。
「私 間違いします あの人いい人じゃないです 『私じゃ歳をとりすぎです』 言われました」とのこと。

殺されたのがカセッティだったと知ると、ハバード夫人は興奮した。
真っ赤な絹のガウンは持っていないと、ハバード夫人は言った。
真っ赤なガウンの女は自分の部屋に入ってはこなかった、と言う。
となると、ラチェットの部屋に入ったのだろう。
ハバード夫人が出ていくタイミングを見計らって、ポワロはハンカチを渡した。
しかし、『R』イニシャルのついたこのハンカチは、ハバード夫人のものではないと言った。

スウェーデン人女性グレタの証言

グレタ・オルソンは、羊みたいに大人しそうな女性だった。
フランス語はできるので、フランス語でやりとりをした。
イスタンブールで寮母をしていて、看護師の資格を持っているという。

うっかりラチェットの部屋を開いてしまい、謝ってドアを閉めたら、笑いながら下品な事を言われたという。
生きているラチェットの姿を見た最後の人間はこの時のグレタだった。

その後、ハバード夫人の部屋に行き、アスピリンを分けてもらったという。
ハバード夫人の部屋の閂を確かめ、アスピリンを飲んで自室でベッドに入った。
しばらくの間、眠れなかった。ウトウトしていたとき、どこかの駅に停車したという。
同室者はイギリス人の若い女性、ミス・デヴナムだ。
デヴナムは部屋を出て行ってはいないという。
グレタ本人も部屋を出ていない。真っ赤なガウンは持っていない。
ミス・デヴナムも真っ赤なガウンを持っていない。

アメリカに行った事はない、とグレタは言った。
アームストロング誘拐事件についても知らなかった。
説明を受けると、グレタは激怒した。
「世の中に、そんな悪魔のような男がいるなんて。胸が痛みます」と涙しながら出て行った。

この時点での時刻表

21:15 ベオグラード発車
21:40 マスタートン、睡眠薬を置いてラチェットの部屋を出る
22:00 マクイーン、ラチェットの部屋を出る
22:40 グレタ、間違えてラチェットの部屋を空ける。生きている姿が見られたのはこれが最後。
0:10 ヴィンコビチを発車
0:37 列車、雪だまりに突っ込み停車
0:40 ラチェットの部屋のベルが鳴る。「何でもない、間違えたんだ」とフランス語の声がする。
1:00 ハバード夫人、「部屋に男がいる!」と車掌を呼ぶ

車掌ミシェルの証言その2

ミシェルにボタンを見せたが、ミシェルのボタンはすべて揃っていた。
私は無実です!とミシェルは言い張った。
ラチェットが死んだ時間、同僚の車掌と話していたという。
同僚の車掌にも聞いてみたが、ミシェルといたとのことだ。
同僚の車掌もボタンをなくしてはいなかった。

ロシア人ドラゴミロフ侯爵夫人の証言

次の証言者は、ナタリア・ドラゴミロフ侯爵夫人。

「食事がすむとすぐにベッドに入り、23時まで読書をし、0時40分にメイドを呼んでマッサージをしてもらい、本の朗読をしてもらいながら眠りました。
列車は既に止まっていました。音は何も聞いておりません。
メイドはヒルデガルデ・シュミット、15年来のメイドです。
アメリカには何度も行きました。
アームストロング一家とは親しくしておりました
夫人のソニア・アームストロングの名付け親で、デイジーの祖母リンダを崇拝して、親しくしておりましたソニアの妹は生きていますが、イギリス人の誰かと結婚したことしか覚えていません。夫の名字も忘れました」。

今回の被害者がカセッティだと聞くと、「まぁ……」とドラゴミロフ侯爵夫人はため息をついた。
「でしたら、今回の殺人はまことにあっぱれですね」と言った。
夫人のガウンの色は、ブルーのサテンだった。

「エルキュール・ポワロ……こうなる運命でしたのね」とドラゴミロフ侯爵夫人は言った。

ハンガリー外交官・アンドレイニ伯爵&伯爵夫人の証言

被害者がカセッティだと聞いても、アンドレイニ伯爵は目を少し丸くしただけだった。
熟睡していて、何も知らないという。
伯爵は、妻には証言させたくなさそうだったが、しぶしぶ譲歩した。

つぎに伯爵夫人が呼ばれた。
夫人の旧姓はエレナ・ゴールデンバーグ。

「眠っていましたので、何も聞いておりません。
一年前に結婚したばかりです。
夫は紙巻き煙草を吸います。
私のガウンは黄色です。
英語は ほんの少し できます」

アーバスノット大佐の証言

「ミス・デヴナムは立派な淑女だ、この事件の犯人だなどとくだらん」
とアーバスノット大佐は言った。
ゆうべはマックイーンと話をしていた。
この列車の旅で、意気投合したのだ。
インド情勢やアメリカの経済情勢、世界情勢全般について意見を戦わせていると、いつのまにか1時45分になっていた。
その後、自室に戻ってベッドに入った。
アーバスノットはパイプをくゆらせ、マックイーンは紙巻きたばこを吸っていた。
「女が通ったような気がする」とアーバスノットは言った。
「衣擦れの音と香りがしただけだ」という。
果物のような香りだった。
アームストロング家とは直接のかかわりはなかったという。

極悪人が当然の報いを受けただけだろう、ただ、法廷で有罪になるべきだったと思うが。という。
ミス・デヴナムが犯人でない事は、私が保証する、とアーバスノット大佐は言った。

ハードマン氏の証言

騒々しいアメリカ人の大男がハードマン氏だ。
職業は営業マンだということになっていたが、実はマクニール探偵社の私立探偵だった。
ラチェットは、ポワロの前にハードマン氏にもボディガードを依頼していたのだ。
小柄な男で、肌が浅黒く、女のような声をしている」人物を、ラチェット氏は襲撃者の特徴だと語っていたらしい。

ラチェット=カセッティだと知ると、ハードマンは「まいったなぁ」と言った。
昨夜はコンパートメントから見張っていたが、誰も通りかからなかったという。
ハードマンは、マックイーンとは顔を合わせたことがあると言った。
ハードマンはパイプはやらないそうだ。

イタリア人フォスカレッリの証言

「同室のマスターマンとはほとんど話さなかったが、歯が痛いようで、うめいていました。
部屋を出てはいないと思います」

ミス・デヴナムの証言

同室のグレタのガウンもデヴナムのガウンも赤ではなかった。
真っ赤で龍の刺繍をされたガウンを着ている女性は見たが、後ろ姿しか見ていない。
背が高くて、ほっそりしていて、頭にターバンを巻いていた。
グレタは一度、アスピリンをハバード夫人にもらいに行ったが、数分で帰ってきたとのことだった。

ドイツ人メイド、ヒルデガルトの証言

彼女のガウンも赤ではないようだった。
夜中に、ドラゴミロフ侯爵夫人に呼ばれて、マッサージや朗読をした。
退室する時に車掌を見たというが、ミシェルではないという。
小柄で、肌が浅黒くて女性のような声の車掌だった。
アームストロング事件の話をすると、「とてもひどい事です」と涙を流した。
ハンカチはヒルデガルドのものではないと言ったが、顔を少し赤く染めた。
このハンカチは身分が高い人のものだという。

証言をまとめると、ハードマンは恐らく本物の探偵である。
『小柄で、肌が浅黒く、女性のような声の男』の話は、ハードマンとヒルデガルドの証言がある。
ミス・ハバードの部屋にボタンがあるが、ミシェルらのボタンはなくなっていない。
「偽の車掌がいた」という話、しかし本当にそんな車掌がいたのだろうか?

真っ赤なガウンを着た女、偽の車掌、この2人の共犯なのだろうか?
しかし多数の人間に見られているにもかかわらず、みな、後ろ姿ばかりで、ロクに顔を見られていない。

ミス・ハバードの悲鳴が聞こえた。
ミス・ハバードの鞄から血塗られた短剣が発見されたというのだ。

皆の荷物検査が始まった。
アーバスノット大佐の持っているパイプクリーナーは、事件現場に残されていたものと同じ種類のものだった。

ポワロはミス・デヴナムに、アーバスノット大佐との関係について改めて尋ねる。
「今はダメ、今はダメ、全てが終わってからよ」とはどういう意味かと尋ねられ、
デヴナムは回答を拒否した。

ではなぜ、タウルス急行遅延の際に、オリエント急行に乗り遅れないかどうかあれだけ心配していたのに、今はなぜそんなに落ち着いているのか、とポワロは追及する。

ヒルデガルトの鞄から、車掌の服が発見された。
車掌の服に動揺しているヒルデガルトに、ポワロは「あなたは料理が上手ですね?」と尋ねると、
誇らしげにヒルデガルトは「ええ!」と答えたが、急に怯えたように口をつぐんでしまった

そして真っ赤なガウンは、ポワロの持ち物から発見された。
犯人からの不敵な挑戦だとポワロは感じた。

ポワロの推理

ラチェットはフランス語が話せなかったはず。
にもかかわらず、ラチェットは「間違えたんだ」とフランス語で車掌に返した。
これは、明らかにおかしい。ラチェットの声のはずがない。

オフシーズンにオリエント急行が満員なのも偶然なのだろうか?
ハンガリー外交官の妻のファーストネームの部分についていた油の染み。

『H』のイニシャルのハンカチは誰のものなのか。
『ヒ』ルデガルト・シュミット。
メアリー・『ハ』ーマイオニー・デヴナム。の2人はHのイニシャルだ。
しかし2人とも、高級ハンカチを持つような身分ではない。
手縫い・刺繍入り。そういうハンカチは上流階級の者しか持たない。

ファーストネームのイニシャルが油の染みで読めない、アンドレイニ伯爵夫人。イニシャルの頭がH、彼女の本名が『ヘレナ』だとしたら?

犯行計画では、ラチェットを殺した後、次の駅で降りた外部犯に見せかけたかった。
しかし、雪で列車が止まり、それができなくなってしまった。
ラチェットへの脅迫状に、幼いデイジーの名前を入れたのは、『自分がなぜ殺されるか』を被害者にわからせるため。
しかし、この脅迫状の処分に失敗し、事件がアームストロング家誘拐事件と結び付けられてしまった

リンダ・アーデンの名字はゴールデンバウム。
リンダ・アーデンの末娘、ソニアの妹はヘレナ・ゴールデンバウム。
そう、エレナ・アンドレイニ伯爵夫人
だ。

ポワロはアンドレイニ伯爵夫人にハンカチを渡した。
しかし、アンドレイニ伯爵夫人は否定した。
「あなたのイニシャルがついていますよ、Hという文字が」とポワロが言うと、
伯爵ははっと振り向いた。
「あなたの名前はエレナではない、ヘレナだ。ソニア・アームストロングの妹だ」
伯爵夫人は真っ青になった。

そして、口を開くと流ちょうな英語が飛び出してきた
「カセッティを殺してやりたいという動機が最も強いのは、私でしょうね」とヘレナは言った。
伯爵は、油の染みの細工を認めた。
彼女に罪が及ぶのを恐れたのだ。

しかし、「ヘレナは睡眠薬を飲んでおり、一歩も外に出ていない。妻の無実は私の名誉に、誓います」と伯爵は言った。
私のイニシャルは確かにHです。しかし、それは私のハンカチではありません」と伯爵夫人は否定した。
ヘレナとソニアの家庭教師は、赤毛のミス・フリーボディという年配の女性だった。

「私のハンカチをお持ちのようですね」とドラゴミロフ侯爵夫人がやってきた。
ナタリア・ドラゴミロフ侯爵夫人。ロシアのキリル文字では、エヌはHと書くのだ。

アーバスノット大佐の再尋問にとりかかる。
デヴナムとアーバスノットの会話について、彼にも質問をする。
ミス・デヴナムはデイジーの家庭教師だ。
それなのに、それを隠している
とポワロは言う。

ミス・デヴナムがその場に呼び出された。
アームストロング家に住み込んでいた事を隠していたのはなぜか、アメリカには行った事もないと言ったのはなぜか」というポワロの追及に、デヴナムは「バレてしまっては仕方ないわ」と答えた。

「殺人事件に巻き込まれた女を、家庭教師として雇おうとするでしょうか? だから隠したのです」とデヴナムは答えた。
アンドレイニ伯爵夫人が、ソニアの妹だということに気づかないはずがない、とポワロが言うが、
気づかなかったとデヴナムはいなした。
しかし次の瞬間、泣き出した。
デヴナムは逃げるように車両を出て行き、アーバスノット大佐は怒りながらそれを追っていった。

アンドレイニ伯爵夫人が、「大柄な赤毛の中年女性」と答え、「ミス・フリーボディ」と話した事から、ポワロはデヴナムだとわかったという。
ロンドンにデヴナム&フリーボディという会社があり、伯爵夫人が偽名をすぐに思いつけず、フリーボディと口走ってしまったのだ。

「この列車の乗客は、全員が嘘をついているんでしょうか」とブークはぼやいた。

フォスカレッリを呼び出す。
あなたは、アームストロング家のお抱え運転手だったんですね?」と尋ねるとフォスカレッリは力なく認めた。
デイジーは、車の助手席に座って運転する振りをして遊んでいた。本当にかわいい子だった」と言うと、泣きながら車両を離れた

グレタ・オルソンを呼び出す。
あなたは、デイジー・アームストロングの乳母だった人ですね?」
「あの子は天使でした。人を疑う事を知らない、優しさと愛の他は何も知らない子でした」
泣きじゃくりながら、車両を出て行った。

グレタと代わりに入って来たのはマスターマンだった。
私は(第一次)大戦中、アームストロング大佐の従卒を務めておりまして、その後彼の執事になりました。フォスカレッリは実に優しい男です。小説に出てくるような、凶悪なイタリア人ではありません」と言った。

犯人はもうわかっています。これだけ明白なのに、なぜわからないんでしょうねぇ」とポワロが言うと、ハードマンもブークもきょとんとした。
「お手数ですが、みなさんにここに集まっていただけますか? この事件には二つの解決法があります。それを皆さんに示そうと思います」

ポワロ真相を解き明かす

全員が食堂車に呼び集められた。泣いているグレタをハバード夫人が慰めている。

「今朝、ラチェットが刺殺死体となって発見されました。1時15分で時計が止まっています。
ラチェットは何者かに命を狙われていました。
ラチェットをつけ狙っていた人物は、ヴィンコブチの駅で侵入し、あらかじめ車掌の服を用意しており、合いカギも用意してあったので簡単にラチェットの寝室に入れました。
ラチェットを刺し、犯行に使った短剣をハバード夫人の鞄に押し込み、制服のボタンを落としていき、
普通の服に着替えて、発車直前の電車を離れました」とポワロが第一の説を挙げた。

第二の説もご紹介します、とポワロは言った。

「ラチェットは枕の下に銃を置いていました。それなのに睡眠薬を飲んで寝ていたという。
睡眠薬を飲ませたのは誰か。秘書のマックイーンか、召使のマスターマンにしかできません。
ハードマン氏がラチェットを警護していたというのも嘘でしょう。何もしていないのですから。
アーバスノット大佐はミス・デヴナムをメアリーと呼んで親しくしているのに、数日前に出会ったばかりだといっています。
イギリス人紳士は、性急にものを運ぶことはしません。ですから、この2人は親しい仲なのに、何か理由があって他人の振りをしているのだと考えました。
また、ミス・デヴナムは『ロング・ディスタンス』というアメリカ英語を使っていました。アメリカには一度も行った事がないと言っていたのに。

ラチェットのポケットに時計が入っていたのも疑問です。第一寝にくいですし、時計をかけるフックがあるので、これは犯人のトリックだと気づきました。
この時計のトリックは、私(ポワロ)に対するブラフだとわかったのです。
ラチェットの部屋から悲鳴が起こり、フランス語が聞こえたのは、ポワロを欺く罠だったのです。
ラチェットが殺されたのは2時近くだと思います。

では、誰がラチェットを殺したのでしょう?」

全員が、関係しているのです。
アームストロング家に関係している人間が多数、偶然同じ列車に乗るとはとても思えない。
陪審員は12人です。乗客は12人、そしてラチェットは12か所刺されていました。
12人の人々が、死刑執行人となって、ラチェットを刺していったのです。

誰か一人に疑いがかかれば、複数の人間の証言によって、それが覆されるように計画されていたのです。
『小柄で、浅黒く、女のような男』というのも嘘でした。一人ひとりがハバード夫人の部屋から順番にラチェットの部屋に入り、ラチェットの胸にナイフを突き立てる

ラチェットの寝室に、アーバスノット大佐のパイプクリーナーと、ドラゴミロフ侯爵夫人のハンカチを証拠として敢えて残しました。
この2人には鉄壁のアリバイがあるからです。
真っ赤なガウンを着た謎の女、という偽の手がかりまで出てきました。
車掌のピエール・ミシェルも共犯です

13人の中で、一人だけがラチェットを刺していないという結論に達しました。
それは誰か。これは最も動機が深いと思われた、アンドレイニ伯爵夫人でした。
アンドレイニ伯爵が彼女の代理として参加したのです。
ミシェルは鉄道会社に長年勤務していました。自殺したフランス人メイド、スザンヌの父親です。
メイドのヒルデガルトは、アームストロング家の料理人でした。「料理はお得意なんでしょう?」と尋ねると、「これまで仕えてきた奥様にはとてもお褒めいただいておりました」と答えてくれました。

アーバスノット大佐は、アームストロング大佐の友人だったのでしょう。
ハードマン氏は、スザンヌの恋人だったのではないか、というのが私の予想です。
ハバード夫人は、ラチェットの隣の部屋にいる最も怪しまれる人物です。それを疑われないように、
演じられるのは名女優リンダ・アーデンしか考えられません

「何もかもお見通しなのね」。騒々しいハバード夫人が、急に落ち着いた声になり、リンダ・アーデンに変貌した。
「アームストロング大佐には、戦場で命を助けられたのです」とアーバスノット大佐は言った。
ヘクター・マックイーンはソニアに恋をしていました。
マスターマンとマックイーンをカセッティの元に送り込み、ミシェルに相談する事にしました。
カセッティがオリエント急行に乗るという情報がマックイーンから入り、ピエール・ミシェルも元々乗車していたので好都合でした。

発車間際になって貴方がいらしたのは不運でした。
もし、どうしても誰かを犯人にしたいのなら、私を犯人として突き出してください。
あの男のためなら、私1人で12か所を刺すことぐらい、造作もなくやってのけたのですから

リンダ・アーデンはそう言った。

ポワロはブークに目をやった。
私の意見を言うならば、第一の外部犯説を信じましょう。警官にもそう伝えましょう」

ブークがそういうと、ポワロはゆっくりとうなずいた。

感想

乗客全員が犯人、という設定に初読ではぶっ飛んだ記憶があります。
ミステリとしては実に見事で、そこにアームストロング事件関係者という人間ドラマがうまく配合した素晴らしい作品だ、というのが記憶の中にありました。

今回再読してみると、初読時に感じたほど、アームストロング事件関係者の人間ドラマ部分には比重を割かれていない事に気づきました。
ミス・デヴナムとアーバスノット大佐の恋、それとドラゴミロフ侯爵夫人、リンダ・アーデン、グレタ・オルソンといったキャラは立っていますが、
ハードマン氏やマスタートンのように地味なキャラクターもいて、13人全員が生き生きと動いている、という印象は受けませんでした。
(まぁ、これだけの人数を全員、活き活きと描き分けるのは難しいですが)

そのため、評価が初読時より下がってしまいました。

余談ですが、クラシック・ミステリのあらすじを書きだすと、凄い文字数になってしまいますね。
情報をこちらで勝手に取捨選択をするのも難しいですし。
難解な作品を解析するのとは、また別の悩みがあります。

登場人物まとめ(裏)

ラチェット(アメリカ)……アメリカ人の富豪。被害者。
→カセッティ……連続誘拐犯の殺人鬼。

ヘクター・マックイーン(アメリカ)……ラチェットの秘書。
→ソニアに恋をしていた青年。

ピエール・ミシェル(フランス)……車掌。
→冤罪で自殺したスザンヌの父。

エドワード・マスターマン(イギリス)……寡黙なラチェットの召使。
→アームストロング家の執事。

ハバード夫人(アメリカ)……騒々しいおばちゃん。
→リンダ・アーデン……殺されたデイジーの祖母。死んだソニア・アームストロングの母。

グレタ・オルソン(スウェーデン)……羊に似た弱々しい宣教師。
→アームストロング家のメイド。

ナタリア・ドラゴミロフ侯爵夫人(ロシア)……リンダ・アーデンの親友。ソニアの名付け親。

ヒルデガルト・シュミット(ドイツ)……ドラゴミロフ侯爵夫人のメイド。
→アームストロング家の料理人。

アンドレイニ伯爵(ハンガリー)……外交官。

エレナ・アンドレイニ伯爵夫人(ハンガリー)……アンドレイニ伯爵の妻。
→ヘレナ・アンドレイニ伯爵夫人……ソニアの妹。デイジーの伯母。

アーバスノット大佐(イギリス)……インドで従軍していたイギリス人。ミス・デヴナムと親しいが、それを隠そうとしている。
→アームストロング大佐の戦友。

メアリ・デヴナム(イギリス)……アーバスノット大佐と仲が良い。
メアリ・ハーマイオニー・デヴナム→デイジーとヘレナの家庭教師。

サイラス・ハードマン(アメリカ)……ピンカートン探偵社の探偵。
→スザンヌの恋人。

フォスカレッリ(イタリア系アメリカ人)……車の営業マン。
→アームストロング家のお抱え運転手。

映画版(1974)の感想

かなり原作に忠実で、作品の良さを引き出した素晴らしい映画化。
作品トリックに関して、ドラマ版よりもしっかり描いている印象。
何よりOPで「アームストロング事件」についてバンッと出しているおかげで、ストーリーがたどりやすい。
一人ひとりの個性も立っていて、名画だと思う。
ただ、吹き替え版で見たせいなんですけど、ポワロがスーシェ版よりも遥かに下品で、「なんだこいつw」感が(実際のポワロもそうなのかもしれないけど、スーシェに慣れてるとww)

ラストのハッピーエンドも、まぁこれで良いとも思うんだけど、スーシェ版と比べると陽気な感じ。

ドラマ版の感想(デイビッド・スーシェ版)

原作や映画版にはなかった、『人が人を裁く事の是非』について掘り下げているのが好印象。
意外に能天気な原作版のラストよりも、ずっとシリアスですね。

一方で、事件自体をあっさりと終わらせた感はあります。
各キャラクターの紹介も比較的あっさり気味。
トリックが有名なこの作品ですが、さすがに現代の視聴者はもうトリックは知っているだろうという判断でしょうか。
人間ドラマも含めて、もう30分あれば完璧になった気がしますが、悪くない内容です。

めちゃくちゃ長い記事になってしまいましたが、最後まで読んでくれた方がいましたら、本当にありがとうございました!(いるのかな?)

「三国志6」184年孫堅でクリア

黄巾の乱のシナリオですが、驚くほど張角が弱くてびっくりしました。
まずは陶謙を倒し、張角と対決。
何進とは同盟関係にあるので、何進に隣接している地域は無防備にし、対張角戦線に全力を注入すると、
快進撃でどんどん張角を削っていけます。
同時に南にも進出し、空白地をとっていったんですが、これが失敗。
住民反乱が多発すると、人徳が減るんですねw 
確かに武将数が足りないので放置してたけど、別に悪政を敷いているわけでもないのに……。

張角を倒したのが188年末。続いて公孫瓚と劉虞を倒し、劉備三兄弟も配下になりました。
(劉備だけ忠誠度が低いんですが)。

次は丁原だ……というときに、突然歴史イベントが始まり、何進が十常侍に暗殺され、
董卓が勢力を完全吸収www
しかも董卓は何進と違って、同盟していないため無防備な都市を瞬く間に5~6個取られてしまいました。
孔宙もなぜか、董卓の眷属となってこちらに攻め込んでくるし!
しかし、董卓の快進撃もそこまで。
戦力を再配分し逆襲していくと、これまた大して強くもなく呆気なく滅亡に追い込みました。
残りのキョウボウと孔宙はもう簡単ですよね。

ちなみに、曹操は董卓の暗殺に失敗した後、どこかに行ってしまいましたwww
どうも、空白地がないと旗揚げできないんですね……。




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