https://modernclothes24music.hatenablog.com/entry/2023/11/15/212523
とても嬉しい記事で私に触れていただいたので、調子に乗ってSFのお薦め本を書きたいと思う。
ただ、この記事は非常に対象読者が不明瞭。
100%残響さんに向けて、というわけではないし、かと言ってかなり【寄せている】のも事実。
まぁ、あまり考えずに書いていきまShow。
氏とはブラッドベリ「火星年代記」、「太陽の黄金の林檎」を一緒に読書会した仲。
他にも「ラブラブル」、「つよきす」、「まじこい」の読書会をしているので、多少は……ほんの多少は彼の好みを知っている……いや、それは言い過ぎかな。
ただ、SFについてわかっていることといえば、
・1『ループものが苦手』ということ
・2『動物萌えには特に興味がない』ということ
・3『僕』と『残響さん』とでは好みの作品が違うのはともかくとして、『読みやすい文体』もだいぶ違うということ。
・4、一緒に読書会した2作と、『渚にて』、『ハーモニー』、『虐殺器官』は読みたいと仰っているので、この辺はとりあえず外しましょうか。
また、それとは別で『SF』と『ファンタジー』の境界線がごく曖昧な事。
特に『時間』を扱った作品や『遠未来』を扱った作品において、これは『SFと言っていいのかな、ファンタジーと呼ぶべきかも』という疑問も生まれます。
まぁここは『俺がSFと思ったんだから、それでいいじゃねぇかよ!!』ということで貫かせていただきます。
数字は、順位ではなく、ただ何作紹介したかを記録するためだけにつけます。
☆ まずは知っている作者から
一緒に読んだブラッドベリから、1『刺青の男』、2『十月はたそがれの国』は良作短編集です。
『十月はたそがれの国』の方が、怪奇色が強いですね。
☆ 世界終末小説
クリフォード・シマックの3『都市』は、人類が滅んだ後の地球を舞台にし、『犬』が人類の後を継いで地球の支配者になっています。その『犬』もまた、種族のピークを過ぎ……静謐な終末世界を味わえるしみじみとした作品です。
ロジャー・ゼラズニイの4『地獄のハイウェイ』は、人類が衰退した後、薬を求めて長大な距離をバイク旅する物語です。冒険小説的ではありますが、見過ごせません。
グレッグ・ベアの5『ブラッド・ミュージック』は、人類滅亡テーマと、人類変容テーマ(クラーク『幼年期の終わり』など)の良いとこどりをした作品。
海外版『パラサイト・イヴ』といった趣で、
まぁせっかくだからその6瀬名秀明の「パラサイト・イヴ」も紹介しておきましょう。
スティーブン・キングの7「ザ・スタンド」とラリー・ニーヴン&ジュリー・パーネルの8「悪魔のハンマー」は、どちらも人類崩壊後の新しい世界をめぐって、【科学技術】を継承していくのか、それとも捨て去ってもう一度文明を始めていくのか、といったテーマを突き付ける作品。
お互いの主張が真逆なので、それも含めてとても面白い作品です。ただ、どちらもページ数が長いのだけがお薦めする際に躊躇われます。
崩壊後の世界で、『世界最大の図書館』を目指し旅を続ける、筒井康隆の33『旅のラゴス』も静謐な終末を味わえる名作です。番号が33なのは、後から追記したからですw
ロベール・メルルの38「マレヴィル」は、古城に入った若者たちを除いて地球が核で汚染された終末世界を描いた破滅テーマの作品。読ませるのだが、ハードカバー二段組なのがネック(気にしない人はいいだろうけど。文庫化してください)
☆残響さんがお好きなラブクラフトと、村上春樹(確か好きと言っていましたよね?)から
コリン・ウィルソンの9『精神寄生体』は、オーガスト・ダーレスの挑戦に応えて書かれた、クトゥルフストーリー。人間の脳の可能性と、超能力、なぜ天才は心を病みやすいのか、そんな真面目な論文調で書かれるぶっとびストーリーで中二病SFの最高峰。
村上春樹が影響を受けた作家として挙げられるカート・ヴォネガットからは、10「スローターハウス5」を。
村上氏が多用する「やれやれ」(世間に対する姿勢に見える」に対して、ヴォネガットはSo it goes(そういうものだ)で答えます。
どこに影響を受けたのかは全くわかりませんが、ジョージ・オーウェルの11「1984年」はディストピアSFの最高傑作。残響さんに限らず、全人類に読んでもらいたい作品です。「1984年」はちょっと大変だな、と思われる方は強度が少々落ちるものの、入門編の12「動物農場」で済ませても構いません。
☆(こういう言い方は好きではないが)ロボット好きなら必読ですよ!
あまり教養主義的な事を言うのは気が引けるのですが、やっぱり抑えておいてほしい作品というのはあるんですよ。
特にミステリには、多いです。ですが、SFというジャンルは比較的少ないと思います。
というわけで、アシモフの13「わたしは、ロボット」は抑えてください、お願いします!
別に教養云々じゃなくて、単純に面白いので。
『ロボット三原則』という、ロボットに対する原則の中で、ロボットが奇妙な行動をとります。
なぜ、ロボットがそんな行動をとってしまうのか、考えながら読んでもミステリ的に楽しいし、考えずに読んでも楽しいです。
もしこの作品が気に入ったら、14「鋼鉄都市」、15「はだかの太陽」とお進みください。
教養主義的な、という意味でもう一つお薦めなのがメアリー・シェリーの16「フランケンシュタイン」。
被創造物が創造物を脅かす、というテーマが全て凝縮された、SFの祖といってもいい作品だと思います。純粋に面白いです。
☆小難しいのは苦手だよ、「ドラえもん」のワクワクを思い出そう!
というわけで、SFはなんか苦手だけどドラえもんで育った少年少女は大勢いると思うんですよ。
そんなあなたにおすすめなのが、H・G・ウェルズの17「タイムマシン」。
壮大なスケールで描かれる未来の物語。過去を変えると、未来も変わる。
読み口は映画版ドラえもんのように楽しいです。
入門者に薦めたいのは星新一。彼の場合あまりに作品数が多くて何とも言えないのですが、とりあえずは18「ボッコちゃん」をお勧めすることにしておきます。気に入れば、どんどん星新一の世界を楽しんでください。何せ何十冊もありますからw
ドラえもん的ワクワクといえば、クリフォード・シマックの19「愚者の聖戦」もお薦めです。
テーブルの表面が、ある日宇宙空間と繋がって……そこからやりとりされるプレゼントたち。
ほっこりしますね。
☆SFならではの、壮大なスケール!
12億年先の未来で出会うとか、銀河の果てへ超えていく、
そんな壮大さはやはりSFならではの醍醐味でしょう。
アシモフの20『永遠の終わり』はタイムパトローラーとして、億年規模で繰り広げられる歴史の改竄と、ラブロマンス。
ポール・アンダースンの21『タウ・ゼロ』では太陽系世界の崩壊までを、その目で目撃する、そんなスケールに圧倒されていきましょう!
☆ディザスターとディストピア
災害小説として外せないのが小松左京の22「日本沈没」。難民はどうするのか、経済はどうなるのかなど、ドキュメンタリーチックで読ませます(少し、「シン・ゴジラ」を思い出した)。
最強のディストピアは前述の「1984年」として、ハリィ・ハリスンの23「人間がいっぱい」も見逃せません。こちらは、人口があまりに増えすぎた未来を描いた作品です。
☆(僕の好みではないが)残響さんにこそぶつけてみたい、この作家
サミュエル・ディレイニーは僕にとって極めて難解な作家です。
イメージ重視の作風で、読んでいるだけで極彩色の世界に瞼がチカチカするほどです。
ミュージシャンでもある彼の、言語SFとして24「バベル17」は、ディレイニーの中では比較的読みやすい部類。
また、ディレイニー作品は隠喩が多用され、『英語で読むと、二重の物語が展開されている』とも言われておりますが、日本語しか読めない僕にはとてもとても。
英語も読める(?)残響さんにはぜひ、25「ノヴァ」あたりを読んで、二重の物語を僕に教えてほしい><
☆コミュニケーションとジェンダー
一緒に対談した際、異星人と心を通じさせるシーンに残響さんが感銘を受けていた記憶があります。
となれば、コミュニケーションSFの最高峰、オーソン・スコット・カードの26「死者の代弁者」を挙げずにはいられません。
全く文化の違う生命体同士が、誤解し、反目し、やがて理解に達する過程が描かれた名作です。
「死者の代弁者」が本命ですし、単体で読めますが、
前作に当たる27「エンダーのゲーム」もコミュニケーションSFとして良作。
「マブラヴオルタネイティヴ」にパクられ、魔改造された「エンダーのゲーム」、
スコット・カードファンの私はガチギレしていますよ!!
☆恐竜は好きですか? ワクワクと危険の狭間で
残響さんの好みが掴めていないので、まぁ気にせず行きますが28マイクル・クライトンの『ジュラシック・パーク』は恐竜に対する憧れ、古代を復元する面白さと、それに対する科学技術への警鐘を同時に描いた、SFの名作だと思います。映画版も悪くないですが、科学技術への警鐘メッセージが弱いです。
ちなみに私、猿が大好きなんですよね。猿と鳥が戦争する29デイビッド・ブリン『知性化戦争』なんて大好きなんですが、残響さんの好みに合うかはあまり自信がありません。
まぁいいのです。この辺から、(残響さんに対する私信を込めつつも)自分の好きなSFにシフトしていきます。
意思を持ったナノマシンの群れに襲われるマイクル・クライトンの49「プレイ――獲物」なんてのもどうっすか? ドキドキサスペンスですよっ!
☆ジェンダー、ジェンダーレス
ジェンダーSFといえば、アーシュラ・K・ルグィン30「闇の左手」に勝るものはありません(たぶん)。
最近の作品ではルグィンを超え、もはや『性別という概念そのものすら不要でしょ』というところまで来ており、たとえばアーカディ―・マーティーンの31『平和という名の廃墟』。
あるいは、それとは対照的に女性ならではのハンディに負けず、男社会のNASAで宇宙飛行士を目指すメアリ・ロビネット・コワルの32「宇宙へ」という作品もあります。
(個人的に「平和という名の廃墟」はあまり楽しめなかったが、その実験自体は興味深く読んだ)
ジェンダーとは関係ないものの、「宇宙へ」繋がりで。
夢を諦めた59歳の元宇宙飛行士志望の男性が、一念発起し、再び夢に向かって動き出すフレドリック・ブラウンの46「天の光はすべて星」は涙なしでは読めません。
☆ここらでちょっと息を抜いて
たまには娯楽に振り切ったSFも読もうぜよ。
というわけで、映画に出演させるために原始人を過去から連れてきたことから始まる、珍騒動ハリィ・ハリスンの34「テクニカラー・タイムマシン」は捧腹絶倒コメディSF。
更に、死ぬ前に一度キリストを見てみたいとタイムマシンに乗った男が、キリストと出会う顛末を描いたマイケル・ムアコックの35「この人を見よ!」も見逃せません! (これがイスラム教だったら作者殺されてんぞ)
未来世界から、モノリス爆弾が投下されてくるロバート・チャールズ・ウィルスンの36「クロノリス」なんかも、頭を空っぽにして読める娯楽SFですねぇ。
抱腹絶倒繋がりですが、こちらは多少読むほうに歴史知識が必要な筒井康隆の37「虚航船団」は好き嫌いがハッキリ分かれる作品ですが、僕は好きです。
オナラシーンが多く、騒がしい(躁的な)奇人変人文房具たちVSイタチの物語ですが、ハマれば爆笑の渦です。
昭和天皇らしきスカンクが、ヘトラーに対して怒りのオナラを発射し、
「大君の屁にこそ死なめ」(軍歌:「海ゆかば」のパロディ)
ヘトラーが息絶えるシーンなんて最高ですね。
☆アフリカ!(見出しを思いつけない)
アフリカSFの嚆矢はマイク・レズニックの38「キリンヤガ」でしょう。
地球で居場所をなくした『キクユ族』が、独自の文化を守るため、無人惑星キリンヤガで、キクユ族の星を作ります。
「火星年代記」よろしく、その成長・興亡が描かれる名作です。
☆クローン、人間ドラマ
残響さんは多分あまり興味ないかもしれないけれど、僕が大好きなSFはやっぱりこの際紹介したいです。
ダニエル・キイス39「アルジャーノンに花束を」。泣けます。
カズオ・イシグロの40「わたしを離さないで」。泣けます。
この二作はマジで、SFとか関係なく泣ける作品が好きな人に読んでほしい。
異星人同士の純愛小説ではフィリップ・ホセ・ファーマーの41「恋人たち」が好きです。
純愛といえば、「沙耶の唄」よりこっちだろ……と虚淵ファンの私ですが、思います。
☆だからタイムトラベルものが大好きなんだって!
ライト向けなら、古橋秀之の42「ある日、爆弾が落ちてきて」、高畑京一郎43「タイムリープ―あしたはきのう」なんて、手に取りやすくて楽しくて良いんじゃないでしょうか。
秋山瑞人の44「イリヤの空、UFOの夏」も名作ですねぇ。
新城カズマの49「サマー/タイム/トラベラー」なんかも青春していて、キュンキュンします!
そこからフィリパ・ピアスの45「トムは真夜中の庭で」、……これはSFと言っていいのか? ファンタジーじゃないか? まぁいいや。
そして、重量級になりますがスティーブン・キングの47「11/22/63」ですよ。
ほんとはこれに合わせてロバート・F・ヤングの「たんぽぽ娘」も紹介したいんだけど、まだ表題作しか読んでないんだよなぁ。でも、表題作は素晴らしかったよ。
あと、浅田次郎の「地下鉄に乗って」を積んでます。
☆その他
田中芳樹の48「銀河英雄伝説」は弱点を含めた民主主義の長所を描いた政治SFとしても読めるし、
まぁそう肩ひじ張らないで架空戦記の大作としてもとても面白い作品です。
ヤン・ウェンリー、ミッターマイヤー、ロイエンタールが好きだぜ!
人を狂わせる謎の詩とシュールレアリスムが邂逅する川又千秋の50「幻詩狩り」なんかも、たまらない作品ですぜ!
追記:
っと、まぁこんな感じでしょうか。
一発書きなので、
絶対後から「あれも入れておけばよかった、これも忘れてた!というのが出てきそうですし、
残響さん向けに書き始めて、途中から自分の趣味も出していくというスタイルなので、
どっちつかずになっている気がしないでもないですがw
SFについてあまり書く機会がなかった、と思うのでちょうどよかったです!
それでは改めて、お読みいただいた皆さん&記事に取り上げてくださった残響さん、ありがとうございました!
とても嬉しい記事で私に触れていただいたので、調子に乗ってSFのお薦め本を書きたいと思う。
ただ、この記事は非常に対象読者が不明瞭。
100%残響さんに向けて、というわけではないし、かと言ってかなり【寄せている】のも事実。
まぁ、あまり考えずに書いていきまShow。
氏とはブラッドベリ「火星年代記」、「太陽の黄金の林檎」を一緒に読書会した仲。
他にも「ラブラブル」、「つよきす」、「まじこい」の読書会をしているので、多少は……ほんの多少は彼の好みを知っている……いや、それは言い過ぎかな。
ただ、SFについてわかっていることといえば、
・1『ループものが苦手』ということ
・2『動物萌えには特に興味がない』ということ
・3『僕』と『残響さん』とでは好みの作品が違うのはともかくとして、『読みやすい文体』もだいぶ違うということ。
・4、一緒に読書会した2作と、『渚にて』、『ハーモニー』、『虐殺器官』は読みたいと仰っているので、この辺はとりあえず外しましょうか。
また、それとは別で『SF』と『ファンタジー』の境界線がごく曖昧な事。
特に『時間』を扱った作品や『遠未来』を扱った作品において、これは『SFと言っていいのかな、ファンタジーと呼ぶべきかも』という疑問も生まれます。
まぁここは『俺がSFと思ったんだから、それでいいじゃねぇかよ!!』ということで貫かせていただきます。
数字は、順位ではなく、ただ何作紹介したかを記録するためだけにつけます。
☆ まずは知っている作者から
一緒に読んだブラッドベリから、1『刺青の男』、2『十月はたそがれの国』は良作短編集です。
『十月はたそがれの国』の方が、怪奇色が強いですね。
☆ 世界終末小説
クリフォード・シマックの3『都市』は、人類が滅んだ後の地球を舞台にし、『犬』が人類の後を継いで地球の支配者になっています。その『犬』もまた、種族のピークを過ぎ……静謐な終末世界を味わえるしみじみとした作品です。
ロジャー・ゼラズニイの4『地獄のハイウェイ』は、人類が衰退した後、薬を求めて長大な距離をバイク旅する物語です。冒険小説的ではありますが、見過ごせません。
グレッグ・ベアの5『ブラッド・ミュージック』は、人類滅亡テーマと、人類変容テーマ(クラーク『幼年期の終わり』など)の良いとこどりをした作品。
海外版『パラサイト・イヴ』といった趣で、
まぁせっかくだからその6瀬名秀明の「パラサイト・イヴ」も紹介しておきましょう。
スティーブン・キングの7「ザ・スタンド」とラリー・ニーヴン&ジュリー・パーネルの8「悪魔のハンマー」は、どちらも人類崩壊後の新しい世界をめぐって、【科学技術】を継承していくのか、それとも捨て去ってもう一度文明を始めていくのか、といったテーマを突き付ける作品。
お互いの主張が真逆なので、それも含めてとても面白い作品です。ただ、どちらもページ数が長いのだけがお薦めする際に躊躇われます。
崩壊後の世界で、『世界最大の図書館』を目指し旅を続ける、筒井康隆の33『旅のラゴス』も静謐な終末を味わえる名作です。番号が33なのは、後から追記したからですw
ロベール・メルルの38「マレヴィル」は、古城に入った若者たちを除いて地球が核で汚染された終末世界を描いた破滅テーマの作品。読ませるのだが、ハードカバー二段組なのがネック(気にしない人はいいだろうけど。文庫化してください)
☆残響さんがお好きなラブクラフトと、村上春樹(確か好きと言っていましたよね?)から
コリン・ウィルソンの9『精神寄生体』は、オーガスト・ダーレスの挑戦に応えて書かれた、クトゥルフストーリー。人間の脳の可能性と、超能力、なぜ天才は心を病みやすいのか、そんな真面目な論文調で書かれるぶっとびストーリーで中二病SFの最高峰。
村上春樹が影響を受けた作家として挙げられるカート・ヴォネガットからは、10「スローターハウス5」を。
村上氏が多用する「やれやれ」(世間に対する姿勢に見える」に対して、ヴォネガットはSo it goes(そういうものだ)で答えます。
どこに影響を受けたのかは全くわかりませんが、ジョージ・オーウェルの11「1984年」はディストピアSFの最高傑作。残響さんに限らず、全人類に読んでもらいたい作品です。「1984年」はちょっと大変だな、と思われる方は強度が少々落ちるものの、入門編の12「動物農場」で済ませても構いません。
☆(こういう言い方は好きではないが)ロボット好きなら必読ですよ!
あまり教養主義的な事を言うのは気が引けるのですが、やっぱり抑えておいてほしい作品というのはあるんですよ。
特にミステリには、多いです。ですが、SFというジャンルは比較的少ないと思います。
というわけで、アシモフの13「わたしは、ロボット」は抑えてください、お願いします!
別に教養云々じゃなくて、単純に面白いので。
『ロボット三原則』という、ロボットに対する原則の中で、ロボットが奇妙な行動をとります。
なぜ、ロボットがそんな行動をとってしまうのか、考えながら読んでもミステリ的に楽しいし、考えずに読んでも楽しいです。
もしこの作品が気に入ったら、14「鋼鉄都市」、15「はだかの太陽」とお進みください。
教養主義的な、という意味でもう一つお薦めなのがメアリー・シェリーの16「フランケンシュタイン」。
被創造物が創造物を脅かす、というテーマが全て凝縮された、SFの祖といってもいい作品だと思います。純粋に面白いです。
☆小難しいのは苦手だよ、「ドラえもん」のワクワクを思い出そう!
というわけで、SFはなんか苦手だけどドラえもんで育った少年少女は大勢いると思うんですよ。
そんなあなたにおすすめなのが、H・G・ウェルズの17「タイムマシン」。
壮大なスケールで描かれる未来の物語。過去を変えると、未来も変わる。
読み口は映画版ドラえもんのように楽しいです。
入門者に薦めたいのは星新一。彼の場合あまりに作品数が多くて何とも言えないのですが、とりあえずは18「ボッコちゃん」をお勧めすることにしておきます。気に入れば、どんどん星新一の世界を楽しんでください。何せ何十冊もありますからw
ドラえもん的ワクワクといえば、クリフォード・シマックの19「愚者の聖戦」もお薦めです。
テーブルの表面が、ある日宇宙空間と繋がって……そこからやりとりされるプレゼントたち。
ほっこりしますね。
☆SFならではの、壮大なスケール!
12億年先の未来で出会うとか、銀河の果てへ超えていく、
そんな壮大さはやはりSFならではの醍醐味でしょう。
アシモフの20『永遠の終わり』はタイムパトローラーとして、億年規模で繰り広げられる歴史の改竄と、ラブロマンス。
ポール・アンダースンの21『タウ・ゼロ』では太陽系世界の崩壊までを、その目で目撃する、そんなスケールに圧倒されていきましょう!
☆ディザスターとディストピア
災害小説として外せないのが小松左京の22「日本沈没」。難民はどうするのか、経済はどうなるのかなど、ドキュメンタリーチックで読ませます(少し、「シン・ゴジラ」を思い出した)。
最強のディストピアは前述の「1984年」として、ハリィ・ハリスンの23「人間がいっぱい」も見逃せません。こちらは、人口があまりに増えすぎた未来を描いた作品です。
☆(僕の好みではないが)残響さんにこそぶつけてみたい、この作家
サミュエル・ディレイニーは僕にとって極めて難解な作家です。
イメージ重視の作風で、読んでいるだけで極彩色の世界に瞼がチカチカするほどです。
ミュージシャンでもある彼の、言語SFとして24「バベル17」は、ディレイニーの中では比較的読みやすい部類。
また、ディレイニー作品は隠喩が多用され、『英語で読むと、二重の物語が展開されている』とも言われておりますが、日本語しか読めない僕にはとてもとても。
英語も読める(?)残響さんにはぜひ、25「ノヴァ」あたりを読んで、二重の物語を僕に教えてほしい><
☆コミュニケーションとジェンダー
一緒に対談した際、異星人と心を通じさせるシーンに残響さんが感銘を受けていた記憶があります。
となれば、コミュニケーションSFの最高峰、オーソン・スコット・カードの26「死者の代弁者」を挙げずにはいられません。
全く文化の違う生命体同士が、誤解し、反目し、やがて理解に達する過程が描かれた名作です。
「死者の代弁者」が本命ですし、単体で読めますが、
前作に当たる27「エンダーのゲーム」もコミュニケーションSFとして良作。
「マブラヴオルタネイティヴ」にパクられ、魔改造された「エンダーのゲーム」、
スコット・カードファンの私はガチギレしていますよ!!
☆恐竜は好きですか? ワクワクと危険の狭間で
残響さんの好みが掴めていないので、まぁ気にせず行きますが28マイクル・クライトンの『ジュラシック・パーク』は恐竜に対する憧れ、古代を復元する面白さと、それに対する科学技術への警鐘を同時に描いた、SFの名作だと思います。映画版も悪くないですが、科学技術への警鐘メッセージが弱いです。
ちなみに私、猿が大好きなんですよね。猿と鳥が戦争する29デイビッド・ブリン『知性化戦争』なんて大好きなんですが、残響さんの好みに合うかはあまり自信がありません。
まぁいいのです。この辺から、(残響さんに対する私信を込めつつも)自分の好きなSFにシフトしていきます。
意思を持ったナノマシンの群れに襲われるマイクル・クライトンの49「プレイ――獲物」なんてのもどうっすか? ドキドキサスペンスですよっ!
☆ジェンダー、ジェンダーレス
ジェンダーSFといえば、アーシュラ・K・ルグィン30「闇の左手」に勝るものはありません(たぶん)。
最近の作品ではルグィンを超え、もはや『性別という概念そのものすら不要でしょ』というところまで来ており、たとえばアーカディ―・マーティーンの31『平和という名の廃墟』。
あるいは、それとは対照的に女性ならではのハンディに負けず、男社会のNASAで宇宙飛行士を目指すメアリ・ロビネット・コワルの32「宇宙へ」という作品もあります。
(個人的に「平和という名の廃墟」はあまり楽しめなかったが、その実験自体は興味深く読んだ)
ジェンダーとは関係ないものの、「宇宙へ」繋がりで。
夢を諦めた59歳の元宇宙飛行士志望の男性が、一念発起し、再び夢に向かって動き出すフレドリック・ブラウンの46「天の光はすべて星」は涙なしでは読めません。
☆ここらでちょっと息を抜いて
たまには娯楽に振り切ったSFも読もうぜよ。
というわけで、映画に出演させるために原始人を過去から連れてきたことから始まる、珍騒動ハリィ・ハリスンの34「テクニカラー・タイムマシン」は捧腹絶倒コメディSF。
更に、死ぬ前に一度キリストを見てみたいとタイムマシンに乗った男が、キリストと出会う顛末を描いたマイケル・ムアコックの35「この人を見よ!」も見逃せません! (これがイスラム教だったら作者殺されてんぞ)
未来世界から、モノリス爆弾が投下されてくるロバート・チャールズ・ウィルスンの36「クロノリス」なんかも、頭を空っぽにして読める娯楽SFですねぇ。
抱腹絶倒繋がりですが、こちらは多少読むほうに歴史知識が必要な筒井康隆の37「虚航船団」は好き嫌いがハッキリ分かれる作品ですが、僕は好きです。
オナラシーンが多く、騒がしい(躁的な)奇人変人文房具たちVSイタチの物語ですが、ハマれば爆笑の渦です。
昭和天皇らしきスカンクが、ヘトラーに対して怒りのオナラを発射し、
「大君の屁にこそ死なめ」(軍歌:「海ゆかば」のパロディ)
ヘトラーが息絶えるシーンなんて最高ですね。
☆アフリカ!(見出しを思いつけない)
アフリカSFの嚆矢はマイク・レズニックの38「キリンヤガ」でしょう。
地球で居場所をなくした『キクユ族』が、独自の文化を守るため、無人惑星キリンヤガで、キクユ族の星を作ります。
「火星年代記」よろしく、その成長・興亡が描かれる名作です。
☆クローン、人間ドラマ
残響さんは多分あまり興味ないかもしれないけれど、僕が大好きなSFはやっぱりこの際紹介したいです。
ダニエル・キイス39「アルジャーノンに花束を」。泣けます。
カズオ・イシグロの40「わたしを離さないで」。泣けます。
この二作はマジで、SFとか関係なく泣ける作品が好きな人に読んでほしい。
異星人同士の純愛小説ではフィリップ・ホセ・ファーマーの41「恋人たち」が好きです。
純愛といえば、「沙耶の唄」よりこっちだろ……と虚淵ファンの私ですが、思います。
☆だからタイムトラベルものが大好きなんだって!
ライト向けなら、古橋秀之の42「ある日、爆弾が落ちてきて」、高畑京一郎43「タイムリープ―あしたはきのう」なんて、手に取りやすくて楽しくて良いんじゃないでしょうか。
秋山瑞人の44「イリヤの空、UFOの夏」も名作ですねぇ。
新城カズマの49「サマー/タイム/トラベラー」なんかも青春していて、キュンキュンします!
そこからフィリパ・ピアスの45「トムは真夜中の庭で」、……これはSFと言っていいのか? ファンタジーじゃないか? まぁいいや。
そして、重量級になりますがスティーブン・キングの47「11/22/63」ですよ。
ほんとはこれに合わせてロバート・F・ヤングの「たんぽぽ娘」も紹介したいんだけど、まだ表題作しか読んでないんだよなぁ。でも、表題作は素晴らしかったよ。
あと、浅田次郎の「地下鉄に乗って」を積んでます。
☆その他
田中芳樹の48「銀河英雄伝説」は弱点を含めた民主主義の長所を描いた政治SFとしても読めるし、
まぁそう肩ひじ張らないで架空戦記の大作としてもとても面白い作品です。
ヤン・ウェンリー、ミッターマイヤー、ロイエンタールが好きだぜ!
人を狂わせる謎の詩とシュールレアリスムが邂逅する川又千秋の50「幻詩狩り」なんかも、たまらない作品ですぜ!
追記:
ジェフ・ライマンの51「エア」を入れておけばよかったと思いだして、追記。
インターネット未開の中国奥地の僻村に、ついにネット回線が繋がる。その『歴史的事件』を主人公のおばちゃんを通じて描いた、地味な作品なのですが。
氏が、技術に伴う生活の変容に興味があるなら、入れておくべき作品だった。
っと、まぁこんな感じでしょうか。
一発書きなので、
絶対後から「あれも入れておけばよかった、これも忘れてた!というのが出てきそうですし、
残響さん向けに書き始めて、途中から自分の趣味も出していくというスタイルなので、
どっちつかずになっている気がしないでもないですがw
SFについてあまり書く機会がなかった、と思うのでちょうどよかったです!
それでは改めて、お読みいただいた皆さん&記事に取り上げてくださった残響さん、ありがとうございました!