著者はアーウィン・ショー。評価はA。
ある3兄弟の子供時代から、大人になり自分の人生を見つけていく物語。
とにかく、3兄弟のキャラクターに圧倒的なリアリティがあり、読むことで彼らの人生を共に歩むことができる。
特にスリルやサスペンスがあるわけでもないが、2日で1200ページを読みきってしまった。
長男のルドルフは一家の出世頭。人間的魅力に溢れ、仕事も熱心で能力も高く、名誉と大金をつかむ。ほとんど完璧人間。両親からも溺愛され、良い人々にも囲まれている。
ただ、私としては、完璧なために逆に魅力を感じにくかった。
溺愛という名の母の呪いのためもあるだろうが、
どうしてそこまでイエスマンなんだろう?
どうしてそんなに仕事人間なんだろう?
という根本的な疑問が残った。
妻のジーンのアル中は、彼が政治家になったことと無関係じゃないと思う。
長女のグレッチェンは、性生活を楽しみながらも勉学に励もうとしたり、仕事もこなす、この小説では一番「普通」のキャラクター。
ヒステリックな母の「貞操」教育のため、性に関しては歪まされてしまったが、それ以外に関してはまともと言える。
明らかに母親が悪いよなぁ、という典型。ちょっと男と遊んだくらいで「淫売」だのなんだのと罵ったため、大人になって本当の尻軽女になってしまった。
余談だが、この母親は本当にクソババァ。父親もかなり微妙だが、この母親のせいで3兄弟全てが多大な迷惑を蒙ったと思う。
愛を一身に受けたルドルフでさえ、嫌われることを極度に恐れるという形で歪みが出ている。
次男のトマスが、この小説の裏・出世頭だと思う。幼年時代はどうしょうもないクソガキで、青年時代も同じく。本人は根はまともなのか、何度も更生しかかるのだが、そのたびに本人のこらえ性のなさと周囲のDQNによって生活を破壊される。元々DQNを呼び寄せやすい生活をしていたとも言えるが、幼年時代から冷遇され続け、運を全部ルドルフに吸い取られてしまった印象。
ルドルフの助けもあって、船乗りとしてようやく完全に更生したのもつかの間、ルドルフの妻を助けようとしてDQNに殺されてしまう。
しかし、一番「成長」したのは間違いなく彼であり(もっとも、出発点が低かっただけかもしれないが)、クソガキだった彼がラストでは一番、魅力的になる。
マザーグースからとって、富めるもの貧しきものというタイトルだが、どちらかというと「持てるもの持たざるもの」といったほうがより近い気がする。
そして、「持たざるもの」のトマスが、ハンディを乗り越えて一人前の大人になることに、希望を与えられたと思う。
唯一の欠点らしい欠点は、「3兄弟以外の人間の魅力の乏しさ」。
3兄弟に全精力を注ぎ込んだためか、他のキャラクターの描写はだいぶ見劣りがする。
特に配偶者関係に顕著で、グレッチェンの夫のアボットやバークもぴんと来ないし(だから、なぜアボットと離婚したがったのかイマイチわからない。単に飽きただけ?)。
ルドルフの妻のジーンも、魅力は描かれず、単なるアル中女にしか思えないのが痛い。トマスの嫁もケイトはまだいいものの、前妻のテレサなんてひどいもんだ(まぁ、テレサに関してはこれでいいかもしれないが)。
付け加えるなら1200ページも読んだんだから、最後くらい「ハッピーエンド」にしてほしかったという個人的な希望はあるけれど、そんな些細なことで評価は下がらない。
満足のゆく読書体験ができた。
・レス
> 痴人が被害に
拍手ありがとうございます。
知人の間違いでしたw
まぁ、痴人でもあったんですけど(笑)。
谷崎潤一郎の「痴人の愛」のせいで、こんな変換をしてしまったんですね、きっと。