著者はラリー・ニーヴンとジュリー・パーネル。評価はA。


この作品、とにかくスティーブン・キングの「ザ・スタンド」によく似ている。
「悪魔のハンマー」自体面白い作品だが、どうしても「ザ・スタンド」と比べると劣るなと感じた。

もっとも「悪魔のハンマー」は1977年、「ザ・スタンド」は1978年に書かれており、「悪魔のハンマー」の方が時期が早いのだから、文句を言うのはお門違いだが。
以下、比較。


☆物語の全体構造

「ハンマー(以下H)」、「ザ・スタンド(以下S)」共通


前半は世界が崩壊するまで。
後半は、崩壊後に生き残った人々が2つの陣営(「正義」VS「悪」)に分れて戦う。
共に大長編であり、登場人物も多い。

・崩壊理由

「H」→彗星の衝突と、それに伴う核戦争。

「S」→生物兵器の漏洩。


一応、人間の愚行が崩壊を加速させますが、「H」はあくまでも彗星がメインです。

・「正義」と「悪」

「H」→科学技術と文明を守る、正義陣営
        VS
    科学技術を壊す宗教家が率いる、悪の陣営

「S」→科学技術を放棄する宗教家が率いる、正義陣営
        VS
    科学技術を体現する悪魔の率いる、悪の陣営

完全に立場が入れ替わっています。この辺りは作者の思想も影響しているのかもしれません。


「総評」

どちらも、非常に面白い作品であることに代わりはありません。
しかし、物語としては「ザ・スタンド」の方が上だと感じました。
これはもちろん、私の好みですが。


まず、崩壊について。
単純に、「彗星が一発ドカンと衝突」する「H」よりも、「じわじわと人が病気で死んでいく」、「S」の方が、面白い…というか恐ろしいです。


また、崩壊理由ですが「S」の方は、世界崩壊の原因を、人間の愚行とし、「悪」を科学技術側とするのはつじつまがあっているように思います。
科学技術に頼りたいという気持ちもわかるし、それを完全に放棄して昔ながらの生き方を選ぶプロセスも理解できます。


それに対して「H」は、彗星が世界崩壊の原因だけに、人間には反省のしようもありません。そして、「科学技術を崩壊させる」という悪側の行動は支離滅裂であり、そこには「頭のおかしい宗教家」以外の要素はありません。

細かいことですが、「H」の減点理由は他にもあります。
それは、登場人物がわかりにくいこと。
上巻でたくさんの人物が登場しますが、下巻でも新しくたくさんの登場人物が現れます。
それでいて、下巻の「登場人物紹介」は明らかに上巻の流用。上巻で死んでしまったどうでもいいキャラが載っていて、下巻の重要人物が載っていないため、途中でわからなくなりました。

輪をかけて困るのが、登場人物名が似ていること。
ハーディとハーヴェイはどちらも重要人物ですが、名前が似ています。
ハリー・ニューカムというキャラとハリー・スティムズというキャラが出てきます。バリーというキャラもいます。
さすがに間違えないとは思いますが、アリスというキャラとアリムというキャラがいます。

世界崩壊後の登場人物の行動が皆似ていて、しかも男女ペアのため、どのカップルか一瞬わからなくなったりもしました。



しかし一方で、「S」よりも優れている点もいくつか見受けられます。
その中でも特に大きいのが「読後感」。
脱力感の漂うしょんぼりなラストだった「S」に比べて、期待通り、期待以上のラストを見せてくれた「H」。特に終わり間際のリック・デランティの演説には力がありました。
上では「H」を叩いているように感じると思いますが、それはあくまで名作である「S」と比べてのもの。
「H」単体で考えれば、十分に満足のいくエンターテイメント作品だったと思います。