著者はアーサー・ヘイリー。評価はA-。

ヘイリーといえば、綿密な取材により業界の舞台裏を描く名人。
今作でも航空業界を、パイロットやスチュワーデスから空港で働く職員、密航者や爆弾魔といった旅客(?)から、騒音に悩まされる市民団体までを深く描いている。
それだけでなく、本作は今まで読んだヘイリーの作品(「自動車」「ホテル」「マネーチェンジャーズ」)に比べてよりサスペンス色が強く、後半はまさにハラハラどきどきしながら読むことができた。
サスペンス小説が好きな人なら、更に評価は高まるだろう。

一方で、この確立された芸風は見事ではあるのだが、毎度おなじみの構成で、他作品に似通った感じを受けるのも事実。
また、これは良いとも悪いともいえないのだが、「強く感情移入できるキャラ」がいないのも少し寂しい。こいつを応援したい、このキャラが好きというのがないのだ。
英雄的な活躍をするパイロットはかなり嫌な奴だし、特に成長したようにも見えない。空港長のメルが恐らく一番人気が出そうなキャラだが、それでも描き込みは薄い。爆弾魔を相手に奮闘する密航者も、これでお咎めなしでいいのか?って感じだし。


ラストも少し不満。キースが吹っ切れたのは良かったが、今までの奮闘から、その決断への繋がりがイマイチ読み取れず。
最も気になるヴァーノンとグレンのその後は完全にスルー。こいつらのその後が一番気になるところだと思うのに、なぜ。


今まで読んだヘイリーの4作品の中では最もハイレベルな作品だと思う。
とはいえ、好き嫌いで言えば「自動車」には劣る。

人物描写、共感力は「自動車」、
サスペンス、スリルは「大空港」

といったところだろう。この辺は、読者の好みが別れるところだと思う。
なお「マネーチェンジャーズ」や「ホテル」も含めて、業界小説としてはどの作品も超一流。
読んでいない作品はどうこう言えないが、何しろ芸風が確立しているため、恐らく彼の他作品、「ニュースキャスター」や「エネルギー」などもその点はブレないだろう。
差し当たって読む予定はなかったが、4作品全てが70~80点と、ホームランこそないものの安定してヒットを叩き出すヘイリーの作品を、もう少し追いかけてみてもいいかもしれないと思った。