評価はD+。


 小説で気に入った(S評価)「きみの友だち」の映画版を見たんだけど、酷い出来でした。
酷いというか、完全に作戦ミスだと思います。
作戦ミスだと感じたのは主に2点。


まず1点目から行きます。
「きみの友だち」は10編の連作短編集なんですね。
そのうち5編が、恵美と由香を中心とした女性サイドのお話。
4編が恵美の弟のブンとモトくんを中心とした男性サイドのお話で、
1編は後日談的な、大人になった恵美のお話。


で、10編を全部、2時間の映画でやろうというのは無茶なんですよ。
 なので必然的に10編のうち幾つかを切り捨てることになったわけです。
この作戦自体は間違いではないです。
問題はどの短編を切り捨てるかなのですが、切り捨てた短編のセンスが悪すぎました。


異論はあるかと思いますが、「きみの友だち」は恵美と由香&その周囲を描いた
女性サイドの短編の方が出来が良いんですね。
映画のポスターなどを見ても、恵美と由香推しなのは間違いないと思います。


であれば、恵美と由香だけに焦点を絞り、丁寧に描けば良かったと思うのです。
ところが、何故か始まるや否や、映画は後日談からスタートします。
この後日談が、一番どうでもいい短編なのに、一番長い。
男性に見せる恵美のツンデレっぷりは可愛いですけど、この作品は恋愛映画ではなく、「友情映画」だと思うので、優先するところはそこではないと思うのです。
で、ようやく過去編が始まったな と思ったら、頻繁に現代(後日談)に飛ぶし、
挙句の果てにブンちゃんの短編が2つも入れられているのです。


おかげで恵美と由香の短編は3つのみ。それも、『出会い』、『1つ短編』、『別れ』。
由香が亡くなるシーンで泣けと言われても、これじゃあ泣けないですよ。
5つの短編を通して、恵美と由香の絆をこれでもかと見せつけられた上で、由香が亡くなるから泣けるわけで。
出会って、一つ仲良いシーンがあって、すぐ別れちゃって、これでどうして泣けます?


こういうことをするから、『みんな、が嫌い』についての言及もできないし、何がしたいのか本当に中途半端な映画になってしまいました。
 

もう一つのミスは、極力モノローグを排したこと。
小説版では、「台詞」と「台詞」の間に、丁寧な心理描写があって、キャラクターの心の声が聞こえてくる。
そうやって読んでいると、どんどん感情移入が出来る仕組みになっています。


この映画版では、映像だけで何とかしようとしています。
心理描写が排されている(音声という形では表現されていない)のです。
映像だけできちんと伝わるなら、上品だと思うし、良いとは思います。
ただ、これは僕と相方の感受性の不足なのかもしれませんが、全然伝わっていません。
これは好みの問題かとは思いますが、小説版が大好きだった僕には、何度も泣きそうになった僕には、
映画版は全く楽しめませんでした。


良かった点はほとんどないんですけど、主演の二人はとても可愛かったです。
特に恵美はイメージぴったりでしたね。それくらいです、ほんとに。