「リストカット」

踏みしめた土の感触が 罪を刻みつけていく
金星の影が横切る夕べに 先鋭な硝子が朱を流す

車のクラクション 無機質な雑踏の中で
自分の形が薄まっていく

月に照らされ 砕け散ってしまえ
あたしの核が形をなくすまで
流れる血の温もりなど 要らない
ただ 欲しいのは赦し


吐息が全てを汚していくようで 呼吸をするたび怯えていた
穢れた血が染み渡り 咎が身体を這い回る

痛みで心を満たしても 自分で自分を裁いても
あたしが息をするだけで いつも誰かを傷つける

刃先を沈めて 抉りとれ
あたしの核が流れきるまで
モルタルを穢れが覆い尽くすとき
罪もまた浄化されるから


あらゆる肉体が 罪で汚されていく
魂だけでも 守れますように
かみさま かみさま かみさま

あらゆる命が 罪を持ち生まれゆく
豊穣な大地が無限に若葉を芽吹かせるように
かみさま どうしてあたしを造った?


踏みしめた熱砂の痛みが 魂に焼き鏝を当てる
金星の影が横切る夕べに 何度目かの試みを始める


だいじょうぶ 罪が全て流れきったら
きっと綺麗な あたしに戻れるから
流れる血の温もりが今は 愛しい

肉体は残され 魂は消える
罪が赦され あたしは消える





むしゃくしゃして書いた。後悔はしていない。