【メインヒロイン5ルート+リュウゼツラン+サブヒロイン3ルートのみクリア】


ESにつける点数は68。
この数字からもわかるように、かなり辛口でたたいているので、ファンの方は読まない方が良いかもしれません。

 

クリアした順番に感想を書き、最後に【細かい部分】に触れます。


☆百代ルート 評価 B-


モモ先輩は、パッケージイラストを見たときから「こりゃ、嫌だな」と感じていました。
その割に、プレイを始めてみると、良い先輩だったのは嬉しい発見でした。


また、『高嶺の花のヒロイン』を、主人公が頑張って振り向かせるというストーリーラインは、
『ヒロイン全員が主人公を大好き!』というハーレムゲーに食傷気味だった僕には、新鮮に感じられました。


一方で、不満点もあるにはあります。


モモ先輩の抱える弱みは、『戦闘狂』だという部分。
その弱点を解消するために、大和は漫画やゲームなどの娯楽をモモ先輩にあてがいます。
そしてとうとう、金魚の飼育にモモ先輩が興味を示し、自発的に飼育本を読むようになります。


ところが、物語後半に『川神大戦』なるバトルイベントが勃発すると、この件はうやむやになってしまうのです。
最後には『大和とエッチしてたら、バトル意欲が解消されたぜ』という、取ってつけたような終わり方。
率直に言って、なんじゃそりゃ!? と。


また、川神大戦にも、幾つか不満がありますが、これについては後述することにします。



☆まゆっちルート 評価 D+


これは、酷いです。
とんでもない駄シナリオでした。


まゆっちは、『友達が出来ない』少女です。
自然に考えれば、『友だちを作る』というのが物語のテーマになるはずでしょう。
同時に、彼女の心の弱さが生み出した『松風』からの『卒業』も重要なポイントになるはずです。


物語序盤は、まゆっちが『伊予』という女の子と、何とかして友だちになろうと頑張る姿が描かれます。
ここは良い。
うまくいかず河原でたそがれていると、某麻生太郎氏にしか見えない総理(以下、麻生氏と呼ばせていただきます)と友達になります。


麻生氏に似せる意味がわからないが、いい味は出しています。
また、『世代の違う友達と語り合う』というのも悪くないです。ここまでは僕もいいと思いました。
問題はその後です。


麻生氏はなんと、格闘大会(KOS)に出るというのです。
しかも、その政敵である野党幹事長も出場する。まゆっちは、『友だち(麻生氏)のために、KOSで闘う』のです。
このKOSのシーンが、ストーリー上で果たす機能はたった一つ。
『友だちのために、まゆっちが闘う』。この一点のみです。



しかしこれも、終盤『伊予のため、武蔵小杉と戦うまゆっち』のシーンがある以上、テーマの重複にしかなりません。
良いテーマは何度繰り返しても良いものですが、1時間以上も無駄なバトルを描く必然性は皆無です。


このKOSのルールも、シャレになっていませんが、これについては後述します。


ただ一つ言いたいのは、『そもそも、格闘大会の勝ち負けで、首相の支持率が上下するほど、国民はバカなのか?』と。
敵役となる野党幹事長とやらも、話にならないほどのバカ者で、テレビ中継されている前で、生身の人間にミサイルを発射しているのです。
たとえ勝負に勝っても、誰もそんな野党に投票したいとは思わないでしょう。


こうなってくると、首相の顔が麻生氏そっくりなところも引っかかります。
首相が完全に架空っぽい人物ならばまだいいのですが、要は自民党が正義で、野党(社民や共産かもしれないけど、これは民主っぽいかな?)幹事長が悪役、というふうに思えてしまいます。
政治批判をするなとは言いませんが、あまりにも軽率だと感じるし、この手の軽率さは後述するが他のシーンでも見受けられます。



話を戻すと、KOSのシーンは、徹頭徹尾、くだらなかったです。
こんなシーンを入れるくらいなら、まゆっちと伊予の友情話をもっと入れても良かったのではないでしょうか。
まゆっちが、2-Fの、たとえば千花や真与あたりと友だちになる話を入れても良かったし、他に書くべきことがいくらでもあったはずです。


物語終盤で、まゆっちは『伊予のために闘い、松風とお別れする』。
だが、ボリュームはKOSの4分の1もなかったと思います。
一体、何が大事で、何が大事ではないのでしょうか。
タカヒロ氏の構成力に大きな疑問を抱いたシナリオでした。



☆ 京ルート 評価 B+

京ルートに関しては、納得しています。

唯一不満があるとすれば、『ストーリーの都合上、無理にキャラにしゃべらせた』ような台詞が、少々見受けられる程度で、他に不満はありません。
(「今いてくれないような奴は、仲間じゃない」、だったかな。唐突すぎるように思いました。ちなみに、共通ルートでの、クリスの「こんな秘密基地必要ないだろ」発言もわざとらしすぎると思いました)。


共通ルートでの、あの衝突は、色々と衝撃的なシーンでした。
他レビュアーさんの感想を拝見しても、嫌悪感を示している方が何人もいて、僕自身もそうでした。


クリスのKY発言もいくらなんでもありえないし、かと言って、勝手に基地に連れてきて罵倒し出す連中も調子に乗りすぎだし、
何よりとばっちりを受けたまゆっちが可哀想だし。
そのシーンの直前、『仲間に入れるべきかどうかを、(まだクリスやまゆっちが参加の意思を表明もしていないのに)陰で話し合う風間ファミリー』の時点で
既に気分が悪かったですし。


ただ、(嫌悪はしても)、あの衝突シーンは京ルートでの伏線や、ラストのリュウゼツランシナリオにおける伏線として機能していることがわかったので、
胸のもやもやが晴れたような気はしました。
ライター自身が、『主人公たちの閉鎖性を強調するために』設定したイベントだったなら、とやかく言うことはないや、と。


京シナリオ後半での衝突も、割と身につまされるものがありました。


これは、大なり小なり体験している方は多いことと思いますが、『友だち集団』の多くは、いつしか疎遠になっていくものです。
もちろん、年に一度くらいは会って遊んだりもしますが、毎週毎週遊ぶというわけにもいかなくなってくる。
風間ファミリーは皆、同じ高校に通っており、部活らしき部活をしているキャラもほぼいないので、
集まるのは容易なはず。
ですが、進路がバラバラになれば、新しい人間関係もあり単に時間も合わなくなり、住む場所も変わりで、なかなか会えなくなります。


そこで機能するのが、『強制的な規律』。
『金曜日にはやむを得ない事情を除いて、全員集合』という約束事を決めていたおかげで、風間ファミリーは今まで強固な結束を保ってこれたのだと思います。
ところが、環境の急変により、出席率が著しく低下し始め、京が規律を強化しようとします。
それに一子やガクトが反発する。


こういった摩擦がリアルに描けている点に感心しました。


『参加を強制』されるのは息苦しい。でも、そうでもしないと人が集まらない。
どちらの立場も、理解できてしまうんですよね。


論自体は一子たちに理があると思うのですが、
『ケニアの挑戦者と2ヶ月後に闘うために修行したいから、それまでは参加するか微妙』とか、
『どう見ても脈がない相手にアプローチをかけたいから、それまでは参加するか微妙』とかは、端から見るとちょっとなと思いました。


それも、個人の自由なので、他人が強制したり、とやかく言う権利はないのですが、
『金曜集会』はそんなものよりも優先順位が下なのか、とは思っちゃいましたね。
『格闘チャンピオンを決める世界大会への参加』だとか、『試合一週間前』とかならわかりますし、
『素敵な女性とラブラブ』でもまぁいいのですが、そういうわけではないですしね。



一方で、たとえばまゆっちは夏休み中の金・土が忙しい~ということなのだから、
集まる曜日を夏休み中は代えてあげても良かったんじゃないかと思います。
そうすれば、少なくとも参加者が一人は増えるのですから。


あるいは、皆の中で優先順位が下がっているなら、『集まりは一ヶ月に一回。その代わり強制参加』みたいにするとか。
その辺の処理は大事かなと思ったのですが、残念ながら、京の『他者への依存の克服』にテーマが移り変わり、
グループ論の話は「京、焦りすぎ」という結論のまま、脇道にそれていきます
(現実には、あのまま自然消滅するパターンの方が遙かに多く、京の焦りは根拠のないものではないと思う)。


個人的にはグループ論ももっと突き詰めてやってほしかったのですが、
依存症克服の方も重要なテーマだと思いますし、最後まで京の成長にフォーカスしたシナリオが展開されていました。
良シナリオだったな、と感じます。




☆クリスルート C

個別ルートに入ってからのクリスの可愛さはなかなかのものですが、ストーリー自体は、ごくごく平凡。


気になるのは一点。リアルPKのことですが、これも例によって後述します。



それ以外に関しては、『親バカで軍人なクリス父』、『頑固なクリス』と役者が来たら、当然こういう流れになるだろうという
流れどおりの展開を見せるので、意外性はないけれど、まぁこんなもんだろう、と。
クリス父が若返るシーンはツボりました。


どうでもいいことを言えば、台詞のところに『フランツ』表記と『クリス父』表記が混在していました。
途中から変わるのではなくて、本当に混在。誤字というわけでもないが、統一したほうが良かったかなとは思います。




【一子ルート】 B+

またも体育祭の競技(川神ボール)で白けたのですが、そこに目を瞑ればそれなりに良いシナリオだったと思います。

(一子のような努力はほとんどしていない。にも関わらず、実現が限りなく困難に近い夢を今でもダラダラと持ち続けている僕としては)
結構、胸が痛いシナリオではありました(苦笑)。


とことん空気が読めていないクリスといい、妹想いの百代といい(ちょっとしんみりきました)、男前な源さん&英雄といい、キャラが良い味を出していて
良かったですね。




【リュウゼツランルート】 B

基本的に性格の悪い大和ですが、このルートの大和は正直どうかと思いました。
とりあえず、これについては後述します。


この部分を除くと、割と普通のバトル系シナリオだったなと。


共通ルートから問題にされていた、『風間ファミリーの閉鎖性』ですが、こういう形でラストルートに持っていったのはさすがですね。
強調されていた、『閉鎖的なコミュニティ』というのは、風間ファミリーもそうですし、冬馬・準・小雪のトリオもそうだなぁと。


というか、このゲームに出てくるコミュニティは、割と(言ってはなんだが、気持ち悪い感じで)閉鎖的すぎるかなぁと思います。
このシナリオを読めば、それも狙ったものだったとわかるのですが、個人的にこのゲームを楽しむ上において
『風間ファミリーに混ざりたい』と、全く思えなかったのは、ちょっと痛手でした。



【細かいこと】

さて、一言感想にも書いたのですが、このゲーム、『細かいことで不愉快になる頻度』が異様に多かったです。
本筋に関係あるところについては、個別シナリオの感想でも触れましたが、『不愉快になった』シーンの大半は、『シナリオ上どうでもいい部分』でした。


たとえばバトル関係。


百代ルートの川神大戦や、クリスルートのリアルPKなどなどですが、
『こんな危険で乱暴なことを、学園主導でやっちゃっていいわけ?』と思います。


腕に覚えのある格闘家同士が、やり合うのは構いません。
モモ先輩VSまゆっち・揚羽といったあたりで、バトっているだけならば。


ですが、たとえば2-F委員長のように、あんなバトルに巻き込まれたら、下手すりゃ死ぬぞ……と思える生徒もゴロゴロいるのです。


自分が真与(モロでもいいし、千花でもいいし、ヨンパチでもいいし、誰でもいいよ!)の父兄なら、どう考えるでしょうか?
苦情が来ないほうがおかしいですし、参加しない生徒が出ないほうがおかしいです。


(注:私学なので、それも込みで入学してるよ、というご指摘には一理あると思っていますが)



たとえば川神大戦では、部外者を50名まで入れていいという。
現に大和は、不良を入れたりしていますし、Sクラスは軍人を入れたりもしています。
学校行事で、軍人やら不良やらと闘わされたら一般生徒はたまらないでしょう。


また、百代ルートには『捕虜への拷問は許されない』という条項がありながら、
『捕虜(心)へお尻ペンペンをして痛めつける』シーンがありますが、なぜこれが許されるのかも理解に苦しみました。
しかもやっているのは、敵ではなく、我らが主人公の大和君。 
こんなシーンはいらないし、もしどうしてもやりたいなら、『捕虜への拷問は許されない』なんて条項を作らなきゃいいのに、と思います。
実はこの辺りで、百代シナリオへの関心はガクっと落ちました。
 

クリスルートでは、(ルールも知らされずに選ばれた生徒たちが)、相手に蹴りを見舞いあうという競技が登場しますが、これなど言語道断だと思います。
武道の達人の蹴りを食らう一般生徒、それを見て沸き返る生徒たちの図を考えると、率直に言って「気持ち悪いな」と感じました。


付け加えて言えば、クリス√の体育祭ではS組対F組の対決が行われますが、他のクラスの生徒(&保護者)はどうしちまったんだ?というくらい、全く出てきません。
『女装対決』には1時間もの時間がかかっているようなのですが、その間、競技はストップされたままなのです。


仮にも体育祭であると言い張るならば、せめてその1時間の間は他の競技をやらせるべきだし(他のクラスの競技シーンを描写する必要はないが)、
どうしてもストップさせたいなら昼休みを使って女装の準備をするべきだと感じます。
ライターが、何も考えずにノリで書いてるんだなぁ、というのが透けて見えてしまって、読むテンションが著しく下がりました。


まゆっちシナリオのKOSのルールもいかにもおかしくて、銃にミサイル、ロボットなどなど何でもOK。
自由参加なので、参加した奴が悪いとも言えますが、モロのような一般市民レベルの人間が、ミサイルや銃撃にさらされるわけですし、
普通に考えて、死にますよね。


ここまでが、バトル関係の『細かいけれど、不愉快だった部分』。


他には、たとえばリュウゼツランルートなのですが、


大和が「賭場でイカサマを使って金を儲け」、「あいつらにはいい薬だろう」とうそぶき、文句をつけてきた下級生を、拳法家の友人(一子)に倒してもらう。
とどめに、「先輩には敬語が必要かな?」などとのたまう一連のシーンがあります。


これを読んで、大和という人間は、心底腐りきっているのだなと感じました。
「てめぇ、いい加減にしろよ」というのが率直な気持ちで、こんな人間を『軍師』だの何だのと持ち上げている周囲も、クズだらけなのかな、と。



他には、割とデリケートな問題を、軽いノリでぽろっと書いてしまう軽薄さも、地味に不快でした。


たとえばどこかのルートで、『死刑に賛成か反対か』という議論があるのですが、実は死刑反対派は(キモキャラの)羽黒しかいないんですね。
『死刑に賛成or反対』というのは、非常に難しいところで、軽々しく賛成とか反対と言えるものではないと思うのです。
きちんとした論を組み立てて主張するならまだしも(それにしても、このゲームのおバカなノリとは合わないと思いますが)、あんなスカスカな議論(笑)を書くくらいなら、
賛成派・反対派をもっとバランス良く割り振れないものでしょうか。
タカヒロ氏は死刑賛成なのかもしれませんが、あまりにも軽々しいな、と呆れました。



その他にも、この辺は突っ込むほどではありませんが、
一子ルートの武術大会で優勝すれば百代と手合わせできる~という設定が、一子が優勝できないとわかった途端に忘れられてしまったり、、
本当にいろいろ細かい部分のフォローがないなぁ、と。


【細かいこと】の項目で触れた内容は、はっきり言って、シナリオ上、何の意味もない部分だと思います。
だからこそ、もう少し配慮をしてほしかったですね。
本来、必要ない部分で、不快になる記述がこんなにもあるのですから。


細部を大事にできないシナリオでは、正直精読する気もなくしてしまいますし、
ライターが真面目に考えて書いているのかすら疑ってしまいます。



『こまけぇこたぁいい』。確かに、そういう作品なのですが、この作品には『細かいこと』があまりにも多すぎる。
そして、そのどれか1つでも、急所をつけば、プレイ意欲がガクっと下がってしまいます。


この作品を楽しむためには、数ある『細かいこと』の全てに目を背けるか、受け流すかしないとダメなんだろうな、と思いました。