シナリオ120/150 キャラ115/150 絵75/100 音90/100 システムその他80/100 お気に入り35/50

合計515/650(39位/150ゲームくらい)。 ESにつける点数 84。



このゲームでとりわけ感心したのが、キャラ立ての巧さ。
メインキャラはもちろんだが、やられ役といってもいい光念兄弟や、『おっちゃん』、鴉など、
ほとんどのサブキャラを好きになることができたのは、それだけキャラがしっかり描きこまれていたということ。
あれだけ多くのキャラクターがいながら、捨てキャラがほぼおらず、誰もが一度は輝いている。

虎太郎先生の闘う理由(「飼い猫」のエピソード)や、おっちゃんの娘のエピソードなど、
簡潔でありながら、見事に読者の同情を引き寄せる手腕は、さすがと言える。


個人的には、九鬼先生、光念兄弟が一番好きだが(男ばっかりw)、女性陣も、
ラストルートで素晴らしい健闘を見せた美羽やさくら、ヒロインで言うなら刀子や薫など、
皆、愛着を持つことができた。
名前を挙げなかったキャラにしても、(ヤタガラスがちとウザかったが)嫌いなキャラは、敵味方問わずいない。


癇癪持ちで独占欲が強いすずは、いつもの僕ならかなりウザさを感じるタイプのキャラなのだが、
回想シーンで、双七との強い結びつきをあれほど見せられては、大目に見ざるを得ないところ。


【各ヒロインシナリオについて】

個人的に刀子ルートがやや劣るように感じた。
このゲームで欠点と感じた部分は2つだけ。
そのうちの一つが、刀子ルート前半のストーカー騒動である。

この『あやかしびと』というゲームは、全編を通して、とにかく丁寧に物語を作っている点に好感を抱いたのだが、
このストーカー騒動は、ライター東出氏らしからぬミスだったように思う。


すずの言霊を、ストーカー女に憑かせれば一発で解決することなのに、何故そうしないのか、
正直理解に苦しんだ。
もしどうしてもあの展開がやりたいならば、ストーカー女は耳が不自由という設定にするとか
(すずルートでこのネタは使われてしまってはいたが)、何かしらやりようはあったはずだ。


付け加えていうなら、個人的にストーカー被害を間近で見たことがある経験上、
『恋人の振りをする』など下策も下策。
むしろ、激昂するだけというのは火を見るよりも明らかだった。


ストーカー女の改心も、あんな簡単に改心するような人はストーカーにはならないと
思わずにはいられなかったが、いつまでもあのエピソードを続けられる方が苦痛だったので、
まぁそれは良しとしたい。


続けて言えば、東出氏は恋愛を描けないライターなのかな、とも感じた。
トーニャルートに続いてこのルートをプレイしたのだが、
『恋人の振りをしていたら、いつの間にか好きになっちゃった』というネタを
2回も見せられるとは思わなかった。


余談だが、せっかく『一つの身体を二人で使う』という美味しいキャラなのだから、
エッチシーンの最中に変身してしまった(アッー)とか、
「何を言っているのか、わからねぇだろうが、刀子さんと手をつないで歩いたと思ったら、いつのまにか会長と手を繋いで歩いていた」
みたいな展開をちょっと期待した。
完全に俺得で、ブーイングの方が明らかに多そうなので、無理に入れろとは言わないが、
せっかく美味しい設定なので、間違った方向に期待しすぎてしまった。


薫ルートは、『再会した薫と双七が、ちっとも恋人同士に見えない』という点を除いては
特に不満のない出来。
敵地での3Pが、一部識者の不評を買っているようだが、選択肢を間違えたせいか
僕の双七君は3Pなどという、不埒でうらやましい行為は残念ながら行なってくれなかった。
後で、シーン回収にて拝見したが、このようにワンクッション置いていたので特に不満は抱かなかった。
おっぱいでいっちゃう薫さんエロいです。
ただ、零奈さんの喘ぎ声がちとわざとらしすぎやしませんかね。
 

このシーンに限ったことではないが、『あやかしびと』は意外にエロかった。
3Pも多いし、結構満足しました。はい。


トーニャルートは、本線から外れた話のため、あまり重きを置くのも個人的にはどうかと思っている。
どちらかというと、ifルートな感じ。
ただ、『手紙』のエピソードではしんみりと泣けたし、九鬼先生とのバトルも割と熱かったし、
高品質なのは間違いない。



ラストのすずルートは、前半85~90点、ラストバトルが-10点で、結局は75~80点という感じ。


ラストバトルに至るまでの、すずルートの流れはかなり良かったように思う。
九鬼先生VS美羽、バイクで疾走しながらのバトル、刀子VS一兵衛と、
3つも心を燃えたたせてくれるシーンがあった。

この「あやかしびと」が『燃えゲー』なのかどうかはわからないが、
燃えた回数だけでいうなら、すずルートの3回がトップなのである。


ただラストバトルは……策士策に溺れるというか、奇をてらいすぎて外してしまったな、と。

1、強さをインフレさせすぎたことにより、今までのようにきちんと文章で表現しきれなかった。
2、ラストバトル故、敢えて違いを生み出すべく、変わった表現法に挑戦したかった。


1なのか2なのか、それとも他の理由かはわかりませんが、ドラクエのウィンドウのような
(マーニャはメラゾーマを唱えた。おにこんぼうに182のダメージ。のような)文章を延々読んでも仕方がないし、
ラストバトル終盤に、文章がオートになるに至っては、そもそも早すぎてまともに読めないし。


本来、物語における文章とは、書かれ、そこに秘められた意味を読みこんでいくものですが、
読み手の時間を調節するために書かれることもあります。
長々とした描写を敢えて入れることにより、読み手をじらしてみたりと、そういう用途にも使うことができるのです。


してみると、ラストバトルでの表現方法は、文章自体を記号とし、
とにかく『クリックさせる→クリックをし、文字が読まれている間、バトルが行なわれている』という以上の意味はなかったように思います。


もはや、ヒトでなくなってしまった九鬼と双七。
物語の機能として、二人が、『人間であることを、辞める』ことは、『あやかしびと』というゲームに必要不可欠ではありますが、
バトルによって交わされる熱い想いなどもなく、単なる力比べと化したあのバトルは、どうしても赴きに欠ける。


しかし、ラストバトルでもあることだし、あまりに呆気なく勝負をつけてしまうと、今まで読んでくれた読者に申し訳ない。
そんなジレンマに陥ったライターが、
「とにかく派手な戦いを、長時間やってたよ!」ということをアピールするために、苦し紛れに紡いだ文章。

まぁ、不評でも仕方はないかなと。


そんなわけで、ラストバトルには不満がありましたが、それを差し引いても
面白かった、満足した、と言えるゲームだったと思います。