「この青空に約束を」コンプしました。
まずは点数から
話 105/150 人 110/150 絵 80/100 音 80/100 その他システム 80/100 印象 30/50
合計 485/650 ESにつける点 79
「ヤンキーたちに残された、最後の1年」。
まずは点数から
話 105/150 人 110/150 絵 80/100 音 80/100 その他システム 80/100 印象 30/50
合計 485/650 ESにつける点 79
「ヤンキーたちに残された、最後の1年」。
敢えて擬人化すれば、「ダメだけど、かわいい」ゲーム。
雰囲気の良さが、多々ある不満点を際どいところで覆い隠してくれる良質の萌えゲー。
雰囲気の良さが、多々ある不満点を際どいところで覆い隠してくれる良質の萌えゲー。
【前置き】
全7ヒロインルート中、良かったのは海己と凛奈だけ。
約束の日はまぁいいけれど、共通ルートとなるACT1.2もあまり面白くない(特にACT1はぶっ叩きたい)。
その割に満足度はそこそこ高いという不思議なゲーム。
細かい粗が非常に多いのだが、その粗が、後々、妙な味を出してしまったりもするので安易に叩くこともできず、
どう評価していいのか判断しにくいという、実にレビューの書きにくいゲームとなりました。
とりあえず、クリア順に感想を書き、最後に総評を書きます。
(前半は叩きが多いので、ファンの方は一番下の【総評】を読んでいただければと思います)
【ACT1】
心を閉ざした凛奈という少女に積極的に働きかけ、彼女がつぐみ寮の一員となるまでの物語。
率直に言って、酷い導入部だった。
開始3分で、『食事を待つヒロイン達』の描写が描かれるのだが、
静の行儀の悪さは異常で、早くもキレ気味(え、こいつクリアすんの?)。
食器で音を立てる彼女を、誰も注意しようとしない寮メンバー。
「お腹すいたー」を連呼するさえちゃん。
「全員が集まってから食べましょう」という、率直に言ってウザったい規則を押し通す海己。
(「僕は今手が離せないので、先に食べ始めててくださいよ!」)
もうこの時点で、モチベだだ下がりです。
話が始まると、「誰とも仲良くしたくない」(?)凛奈を仲間に引き入れようとする航たちの図。
『結果オーライ』なので構わないのですが、『寮に暮らしているから』という理由だけで強引に仲間に引き込もうとするのは、
端的に言ってウザいかなと。
「誰とも仲良くしたくない」は虚勢であって、実は誰かと仲良くしたいのは確かでしょうが、
それは何もつぐみ寮のメンバーじゃなくてもよく、凛奈の方にも友達選択の自由くらいはあるはず。
もし僕が凛奈なら、たまたま住んでいる場所が同じだという理由で仲間に誘ってくる人たちではなく、
自分の目で確認して、信頼できそうなグループに入りたいと思います。
そして、その凛奈に対してマラソン大会で勝負を挑む航の、あまりにも下品な下ネタにもドン引きと、序盤はまさにクソゲーを地で行く低評価ぶりでした。
そして極めつけが「マラソン大会」。
まず、教頭&学園長の陰謀のレベルが低すぎます。
生徒同士の賭け(口約束)を鵜呑みにして動く大人が、どこの世界にいるというのでしょう。
航がバックレてしまったら、凛奈が「やっぱり賭けは延期にしてあげるよ」と言えば、それだけで崩れてしまうような陰謀ですよ。
ナンセンスにも程があります。
余談ですが、この教頭&学園長は物語上「いなくても良かった」ような気がしています。
確かに、学園生活に緊張感を走らせるスパイス程度の役には立っているのですが、スパイス以上の存在にはなれていません。
どちらにしろ、1年後に廃寮になる(約束の日)のだから、こんなにも焦る必要はないし、
焦っている割に、やり口が常軌を逸しているレベルで拙すぎると思います。
また、マラソン大会で『ズル』をしてまで勝とうとする航には心底あきれ果てました。
(そして、停学処分に対して「なんでだよ」と不満を漏らす航にも)
この勝負は何のために行われているのか。それは、凛奈の心を掴むためでしょう。
仲間として、凛奈を迎え入れるためでしょう。
別に、勝負自体に意味はないのです。
凛奈が欲しいのは、『足の早い友達』ではなく、『自分を裏切らない、信頼できる友達』なはずです。
凛奈は何故、心を閉ざしていたのか。
それは、「新しい恋人を見つけ、しかもそれを凛奈に黙っていた、パパのズルさに傷ついた」からではなかったでしょうか?
全力で凛奈と向き合い、誠実さをアピールする。気持ちの良い仲間として、凛奈に認識されれば、マラソンの結果自体は重要ではなかったはずです。
なのに航はズルをして勝とうとした。
そして、にも関わらず凛奈は航に心を許した。
『友達』との勝負において、最低のことを航はしたと僕は思うのですが、これでいいんですか?と。
もうね、ついていけないなという感じでして、ACT1だけを評価するなら、40点といったところです。
【ACT2】
ツッコミを入れたいのは、寮に蔓延している飲酒癖。
ビールと枝豆の味を語っちゃう高●生って……いったいどこのおっさんだよと。
監督責任のあるさえちゃん自身が、航に飲酒を勧めるに至ってはもう話になりません。
男1:女6で、飲酒が常態化しており、(これはエロゲだからいいけど)高校生の男女が一緒にお風呂に入り、カップルでのエッチも盛んな『つぐみ寮』は、
もはや生活の場というよりも、好き勝手遊べる、ヤンキーの溜まり場の様相を呈しています。
事実、寮にいる生徒の大半は、寮がなくても問題ない生徒たちばかり。
(静・凛奈は寮がないと辛い境遇ですが、虐待されているわけではないですし、それでも家庭に不和を抱えつつ通学している生徒は多いと思います。
本当に困るのは、島に家がない奈緒子くらいでしょうか)
南栄生島のリゾート開発だの何だのとぶちあげれば、さぞ学園側が悪のように錯覚してしまいがちですが、
普通に考えて、ここまでモラルが低下していれば『潰されて当然』だと思います。
学園側も、本気で潰したいならここを突くだけであっさり廃寮にできるはずで、「やる気がないんだな」と白けてしまいましたし、
学園側が手ぐすね引いて廃寮を狙っている状況下で、危機意識が足りなすぎでしょう。本当に寮を守りたいのか疑ってしまいます。
そもそも飲酒シーンなんてまるで必要なかったと思うのですが……。
【静・沙衣里・宮穂ルート】
まず静ルートから。
心と体の成長をリンクさせたこのシナリオは、エロゲーならではの工夫と言えそうです。
ただ、静をきちんとしつけるシーンが最後までなかったのは、ちょっといただけないかなと。
奈緒子がもっとガツンと言ってあげても良かった気がします。
沙衣里ルート。
ダメっ子ティーチャーなのは彼女の魅力なのだろうけど、それにしてもダメすぎます。
特に学園長と教頭に囲まれた際、航が庇っているにも関わらず自白しようとする彼女には愛想が尽きかけました。
個別ルート入口の、彼女と結ばれる流れが綺麗だったため評価が多少上がったのに、いろいろ台無しに。
なお、沙衣里自体は『約束の日』では良いところを見せていましたね。
宮穂ルート。
宮はかわいいです。萌えます。
ただ、シナリオはよくありません。
あの程度の口論で、「航に嫌われたと勘違いし、家に引きこもる」宮穂の行動は実に不可解ですし、
『結婚相手としてはダメだけど、セックス込みの恋人としてならOK』という滝村さんの立ち位置も不可解でした。
男と違って、女の子は妊娠のリスクが高いので(現に中出ししてるし)、後半あれだけ干渉してくるなら前半からもっと目を光らせてくると思うのですが……。
【奈緒子ルート】
『高嶺の花』の奈緒子ルートに関しては、正直に言って「失恋エンド」の方がより切なさが伝わって良かったのではないか、と感じた。
高嶺の花は、見上げているうちこそが華。航のレベルに自らを合わせてしまった奈緒子は、『可愛くて、少々性格に難のある普通の恋人』になってしまったような。
是が非でも主人公と結ばれないと嫌だ、と感じるプレイヤーが多いのかもしれないが、
『片思い』をこじらせている航の心情はなかなか切なくて良かったし、あぁいう想いをするのも恋の『楽しさ』だと思うのだけれど。
それと、奈緒子は2年前の方が可愛かったなぁ、と。
内面が2年前に比べて、あまり成長していないように感じられたのはマイナスかもしれません。
ちなみに、奈緒子は『女』としては魅力的だと思うけど、
好きではない男への対応があまりにひどいので、『人間(友達)』としてはあまり好きになれないです。
【凛奈ルート】
凛奈が南栄生島への想いをぶつけるシーンや、ピーターパンの演劇を通じて、
初めて皆の、『南栄生島』への想いに共感することができた、ある種ターニングポイントとなったシナリオでした。
南栄生島はネバーランド。
考えるまでもなく、初めから提示されていたはずなのに、実感を持ってそう感じたのはこのシナリオが初めて。
『大人になるまでのわずかな時間』を、
『子供』として精一杯楽しむ『今』がどれほど貴重で、どれほど素晴らしいものなのか。
どういうスタンスでこのゲームを楽しめばいいのかがようやくわかり、
最終的に79点という『中の上』にまで評価が改善されたのはこのシナリオのおかげです。
また、『合わせ石』の相手についても、ちょっとした仕掛けが施されており、「驚き」こそなかったものの好印象を受けました。
強いて言うなら、演劇シーンで三角関係の真似事をするのは、ちょっと調子に乗りすぎかな、とは思います。
僕が観客だったら、冷めていると思うので。
【海己ルート】
頑固で面倒な女ではありますが、海己はかわいい幼馴染です。
辛い境遇だったとはいえ、あそこまで心を病むかしら?というのは疑問ではありますが。
クライマックスの演説は、『つぐみ寮存続を訴えた』前半部分の出来が秀逸。
ディテール(例えば壁に刻まれた相合傘、例えば傾いたままのバスケットゴールなど)を具体的にきちんと描くことで、
お客さん(と読者)の胸を打った良いシーンだったと感じました。
一方、後半の『交際宣言』は、僕なら「さいですか」と思ってしまうかな。
事情を知らない人間からすれば、何を言っているのかわからない演説になっていると思うので。
(狭い島なので、事情を知っている人の方が多いかもしれませんが)。
いずれにせよ、海己かわいいな。海己を守りたいなと感じてしまった時点で、雰囲気づくりの勝利と言えるでしょう。
【約束の日】
短いけれど、最後を飾るに相応しいエンディングだったと思います。
卒寮式では、司会役(?)のさえちゃんが(ほぼ初めて)輝いて見えました。
エンディングの合唱は、泣いたりジーンとくるというよりは、痛さが転じて微笑ましい気分に。
感動・泣きを狙って入れたのだとしたら、僕には外れでしたが、暖かい気持ちになれたので結果オーライですね。
【茜ルート】
バッドエンドから繋がるので、ある意味仕方ないといえば仕方ないのだけど、
『約束の日』を読んだ後でないと読めないという攻略制限がついているため、実質的に最終ルート。
だとすると、ちょっと蛇足かなと感じました。「約束の日」で終わっておいた方が、読後感が良かったためです。
『つぐみ寮が壊された』背景シーンを見て、嫌な気持ちになったのは、良かったのか悪かったのか。
南栄生島の大切さは凛奈ルートの段階で実感できていましたが、つぐみ寮に関しては別段思い入れがないつもりだったのに、
いつの間にか思い入れが生まれていたのでしょう。
それ故の『嫌な気持ち』だったのであり、それに気がつけたことは自分の中では結構衝撃でした。
一方で、せっかく海己ルートでは存続しているつぐみ寮を、最後のルートで壊す必要はないじゃないかとも思いましたし、
航がおじいさんをひっぱりだして、南栄生島のリゾート化に待ったをかける、というシーンは正直白けてしまいました。
ラスト、合わせ石の相手が茜であったことはそれなりに感銘を受けましたが、まぁ他にいないよね、とも。
【総評】
想像はしていたが、案の定『叩き』成分が強くなってしまった。
冷静に書いてみれば、
・凛奈の入寮のいきさつ
・学園長たちのしょうもない陰謀
・つぐみ寮を守るべき大事な時期にも関わらず、飲酒三昧などのモラル低下(そもそもつぐみ寮は本当に必要か?)
と、物語の土台となる部分において、
ハァ?と感じる部分が多かったのは確か。
それでいて、不思議と読後感が悪くないのは、南栄生島をネバーランド、寮生たちをピーターパンに例えた、
『大人になる前の、楽しい共同生活』に、ある種の羨ましさと郷愁を感じることができたから。
羨ましい。僕もあんな生活がしたい。
そう思わされてしまったら、その時点で『萌えゲー』側の勝利、『粗探しプレイヤー(僕のことです)』側の敗北は決定したようなものでしょう。
粗に関しても、モラル低下は欠点と思いつつ、大人になる前の最後の期間、心残りのないよう「暴れ切った」感があって、
まぁいっかと思えてしまったり、
しょうもない陰謀を繰り返す学園長たちの存在は要らないだろうと思いつつ、「約束の日」での奈緒子の演説(「私たちはこの日まで寮を守りきった」みたいな部分)を読むと、
しょーもない敵がいたからこそ思い出が輝いたのかもと思えてしまったり、
そんな感じで、何となく許せてしまうのも事実。
終わってみれば、いろいろ言いたいことが多いけれど、プレイして良かったなという結論に落ち着いてしまいました。
もうちょっと深くやってみてください。やや無理に叩いてる感があります。
細かい粗が妙に魅力的に感じたのは、それ自体が丸戸氏の手法で狙いだったからだと思いますよ。
よく他の方なんかも指摘されている描写不足や、ここは描いていて欲しかったって部分は殆ど意図的なものだろうと思いますね。
そういう手法を取ると、プレイヤーの中でそのゲームの「世界」が広がりますからね。
だから、自分でも気づかないうちに「つぐみ寮の絆」に巻き込まれちゃうんですよね。