評価はS

以前見た映画版の感動を、そのまま味わえるノベライズ。
新海さんはあくまでも映像作家であり小説家ではないので、文章面を心配していたのですが、
全く問題ありませんでした。
描写がしっかりしていて(ちょっと大仰に頑張っているかなと感じた部分はあるにせよ、十分許容範囲)、
きっちりと描き込まれた優れたノベライズですね。


映画版、小説版に共通して言えるのは
どれだけ人を大切に想っても、その気持ちを時間が変質させ、やがて人と人とは離れていく。
そんな諦観と切なさ、 幼き日の大切な初恋と相まって素晴らしい作品だったということ。


それにしても貴樹にとって、明里のような素敵な子を初彼女に持ったことは
とても幸せで、とても哀れなことだったんじゃないかと感じます。


忘れられない大切な人。逢いたくてももう会えない人。
この作品を読むとその人のことを、その人と過ごした楽しかった記憶を、どうしても思い出してしまいます。
貴樹と同じ境遇ではなくとも、今までの人生で通り過ぎていった大事な恋人、大事な友人。
けれど人も、人と人との距離もきっと、変わってしまうのだなぁと。


しかしそうして過去を大切にしすぎるのではなく、今いる大切な人にも目を向けなくてはいけませんね。