★イントロダクション
1冊1冊の感想はその都度書いているのだけれど、もっと大きな括り。
作家全体についてはブログで書いたことがないので、書いてみようと思います。
いつ挫折するかわかりませんが……。
取り上げる作家については、
①僕が好きな作家
②10作以上読んだ作家
③直近半年以内に読む予定のない作家
④未読の方のために、可能な限りネタバレを避けつつ面白さを伝える
というスタンスでやっていきます。
↑ここまで前回記事のコピペ。
では、書いていきましょう!
★本文
好きな作家を語るこのコーナーは今回が第二回。ディック・フランシスの登場です。
第一回でご紹介したアガサ・クリスティと違い、「誰?」と感じる方も多いかもしれません。
ディック・フランシスはイギリス『冒険小説』の中で、僕の最もお気に入りの作家。
特に『主人公への感情移入を促す』手腕は比類のないものがあります。
★ 競馬にまつわる物語を描き続けるフランシス
と書くと、「競馬? 興味ないねそんなの!」という声が聞こえてきそう。
でもご安心、そんな人でもフランシス作品は全く問題なく楽しめます!
だって、この記事を書いている私自身が、競馬にはちっとも興味がないんですもの(競馬ファンの方、すみません)。
だからね、「競馬に興味がない」と言って読まないのは勿体ないです!
さて、まず一番最初にフランシスを知らない皆さんが、誤解をしそうなポイントを訂正しておきます。
それは、フランシス作品は競馬に『まつわる』物語を描いているのであって、
『ギャンブル小説ではない』ということ。
たとえば、「不正レースをするため、何者かが馬に興奮剤をもった! 犯人を捜せ!」(「興奮」)とか、
「競馬記事を書いていた記者が自殺した! 彼を追い詰めた犯人は?」(「罰金」)
といった具合。
前半ミステリ、後半は犯人との対決といった具合の「サスペンス小説」であって、
業界用語が沢山出てきて主人公が競馬で儲けるようなお話ではありませぬ。
それでいて、馬への愛情だとか、芝の匂いが香り立つような厩舎の描写などは、
さすが騎手出身の小説家だなぁと唸らされるわけですが。
★主人公の抱える内面と敵キャラの嫌らしさ
フランシス作品の主人公は、基本的に似たような人々です。
それは、『勇気があり、大胆で、正義感溢れる好人物。人付き合いが悪いわけではないが、やや思索的で内に篭る性質があり、身近な友人を大切にする。しかし心の奥底に弱さ、葛藤も抱えている』。
やや陰性のヒーロー、完璧なる英国紳士ですが、『弱さ、葛藤も抱えている』というのがミソで、
読者がググッと感情移入しやすい、絶妙なバランスの英雄に仕上がっているんですなぁ。
そこを持ってきてまた悪役が嫌らしいのなんの。
くっそー、よくもやってくれたな! と憤りを覚えながら、いつの間にか主人公を応援しまくっていること間違いなし。
誤解され、周囲から主人公が蔑まれれば読み手も悔しさを感じ、主人公が認められれば胸がすっとする。
フランシス作品は完全に、『感情移入型。主人公没入型』の物語なのであります。
良くも悪くもパターンが決まっており、たいていの作品で、悪役は卑劣。
主人公は悪役に追い詰められるも、不屈の闘志で乗り越えて、遂に悪役を倒す。
と、こういう物語が展開されます。
★ではまず、どの作品から読むべきか?
競馬シリーズ。
シリーズ、と名前がついておりますが、ごく一部の作品を除いて、作品相互の関連性はありません。
シッド・ハレーものという主人公が共通するシリーズはありますが、(「大穴」→「利腕」→「敵手」→「再起」)
これはほぼ例外ですし、話も一話完結なのであまり順番は気にしなくても構いません。
何せ僕自身、これがシリーズものだということを知らずに、「利腕」→「大穴」と遡って読みましたが、
全然問題なく、大いに楽しめましたから。
というわけで、どれから読んでも問題なしのシリーズですが、これから読む方には、
どの作品からお薦めすればいいかを考えてみます。
候補としてまず思いつくのが『興奮』。
日本で初めて訳されたフランシス作品であり、評価も高い作品です。
ここから入るのがまぁ無難ではないでしょうか。
ただ、僕自身の『興奮』の評価はそこまで高くありません。
面白くなるまで時間がかかる作品だと思うんですよ、これ。
では僕ならばどの作品をお薦めするか。
ズバリ『利腕』です。
この作品は、僕が読んだ競馬シリーズの中で、最高傑作だと思います。
男らしさというものに価値を置かない僕のような人間でさえも虜にする、
主人公シッド・ハレーの、その男らしさ、男故の辛さ、繊細さ、傷つきやすさ、そして勇気。
悪役との対決もさることながら、妻とのすれ違いも非常にセンチメンタルに描かれており、泣かせます。
もう、僕が間にたって和解させてあげたいと思うくらい。
基本、順不同のシリーズだと思いますが、敢えて順番を気にする向きには
『利腕』を楽しむために、同じくシッド・ハレーが登場する『大穴』から読むのもアリでしょう。
こちらも(『利腕』ほどではないと思いますが)非常に素晴らしい作品で、お薦めしやすいです。
★その他、僕の好きなフランシス作品
ドギツい悪役の存在感がものすごい、『度胸』は良くも悪くも忘れられない作品。
ちょっと僕の趣味からすると悪役が邪悪すぎて、血管切れそうになったので再読はしたくないんですけど、
そのインパクトで、忘れられない作品ではあります。
シッド・ハレー三度登場の『敵手』は、『度胸』とは正反対で安心して読める作品。
悪役は適度にウザいですが、それほどストレス無く爽快に勧善懲悪が楽しめます。
『利腕』でもすれ違いを繰り返した妻とのあいだですが、『敵手』を読めば
「やっぱりこの奥さん、ハレーのこと大好きなんじゃん」と思えます。
なのに、やっぱりすれ違ってしまう二人……うーん、恋愛小説ではないはずなのに、切ない……。
親からの自立をテーマに、息子たちの成長を描く『骨折』も忘れられない作品。
フランシスは心理描写もうまいし、人間関係の描写も暖かく、
最初はワガママで鼻持ちならなかったバカ息子が、段々主人公に心を開いていく様子、成長していく様子が
読んでいて気持ち良いんだなぁ。
何作も連続して読むと、「またこのパターンかw」と思うこともありますが、触れたことのない方は一度
読んでみることをお薦めします。
読了したフランシス作品(S~E)
「利腕」 S
「大穴」 A
「骨折」 A
「敵手」 A
「興奮」 A
「罰金」 B
「重賞」 B
「査問」 C
「暴走」 C
「反射」 D
「追込」 D
「血統」 D
44作(かな?)中12作しか読めていません。
死ぬまでには全作制覇できるかな?
1年に1冊、毎年●月の第●日曜日は「競馬シリーズの日」と決めて、読破していくのも楽しそう♪
一気に読むよりも、末永く付き合っていきたいなぁと感じるシリーズでもあります。
1冊1冊の感想はその都度書いているのだけれど、もっと大きな括り。
作家全体についてはブログで書いたことがないので、書いてみようと思います。
いつ挫折するかわかりませんが……。
取り上げる作家については、
①僕が好きな作家
②10作以上読んだ作家
③直近半年以内に読む予定のない作家
④未読の方のために、可能な限りネタバレを避けつつ面白さを伝える
というスタンスでやっていきます。
↑ここまで前回記事のコピペ。
では、書いていきましょう!
★本文
好きな作家を語るこのコーナーは今回が第二回。ディック・フランシスの登場です。
第一回でご紹介したアガサ・クリスティと違い、「誰?」と感じる方も多いかもしれません。
ディック・フランシスはイギリス『冒険小説』の中で、僕の最もお気に入りの作家。
特に『主人公への感情移入を促す』手腕は比類のないものがあります。
★ 競馬にまつわる物語を描き続けるフランシス
と書くと、「競馬? 興味ないねそんなの!」という声が聞こえてきそう。
でもご安心、そんな人でもフランシス作品は全く問題なく楽しめます!
だって、この記事を書いている私自身が、競馬にはちっとも興味がないんですもの(競馬ファンの方、すみません)。
だからね、「競馬に興味がない」と言って読まないのは勿体ないです!
さて、まず一番最初にフランシスを知らない皆さんが、誤解をしそうなポイントを訂正しておきます。
それは、フランシス作品は競馬に『まつわる』物語を描いているのであって、
『ギャンブル小説ではない』ということ。
たとえば、「不正レースをするため、何者かが馬に興奮剤をもった! 犯人を捜せ!」(「興奮」)とか、
「競馬記事を書いていた記者が自殺した! 彼を追い詰めた犯人は?」(「罰金」)
といった具合。
前半ミステリ、後半は犯人との対決といった具合の「サスペンス小説」であって、
業界用語が沢山出てきて主人公が競馬で儲けるようなお話ではありませぬ。
それでいて、馬への愛情だとか、芝の匂いが香り立つような厩舎の描写などは、
さすが騎手出身の小説家だなぁと唸らされるわけですが。
★主人公の抱える内面と敵キャラの嫌らしさ
フランシス作品の主人公は、基本的に似たような人々です。
それは、『勇気があり、大胆で、正義感溢れる好人物。人付き合いが悪いわけではないが、やや思索的で内に篭る性質があり、身近な友人を大切にする。しかし心の奥底に弱さ、葛藤も抱えている』。
やや陰性のヒーロー、完璧なる英国紳士ですが、『弱さ、葛藤も抱えている』というのがミソで、
読者がググッと感情移入しやすい、絶妙なバランスの英雄に仕上がっているんですなぁ。
そこを持ってきてまた悪役が嫌らしいのなんの。
くっそー、よくもやってくれたな! と憤りを覚えながら、いつの間にか主人公を応援しまくっていること間違いなし。
誤解され、周囲から主人公が蔑まれれば読み手も悔しさを感じ、主人公が認められれば胸がすっとする。
フランシス作品は完全に、『感情移入型。主人公没入型』の物語なのであります。
良くも悪くもパターンが決まっており、たいていの作品で、悪役は卑劣。
主人公は悪役に追い詰められるも、不屈の闘志で乗り越えて、遂に悪役を倒す。
と、こういう物語が展開されます。
★ではまず、どの作品から読むべきか?
競馬シリーズ。
シリーズ、と名前がついておりますが、ごく一部の作品を除いて、作品相互の関連性はありません。
シッド・ハレーものという主人公が共通するシリーズはありますが、(「大穴」→「利腕」→「敵手」→「再起」)
これはほぼ例外ですし、話も一話完結なのであまり順番は気にしなくても構いません。
何せ僕自身、これがシリーズものだということを知らずに、「利腕」→「大穴」と遡って読みましたが、
全然問題なく、大いに楽しめましたから。
というわけで、どれから読んでも問題なしのシリーズですが、これから読む方には、
どの作品からお薦めすればいいかを考えてみます。
候補としてまず思いつくのが『興奮』。
日本で初めて訳されたフランシス作品であり、評価も高い作品です。
ここから入るのがまぁ無難ではないでしょうか。
ただ、僕自身の『興奮』の評価はそこまで高くありません。
面白くなるまで時間がかかる作品だと思うんですよ、これ。
では僕ならばどの作品をお薦めするか。
ズバリ『利腕』です。
この作品は、僕が読んだ競馬シリーズの中で、最高傑作だと思います。
男らしさというものに価値を置かない僕のような人間でさえも虜にする、
主人公シッド・ハレーの、その男らしさ、男故の辛さ、繊細さ、傷つきやすさ、そして勇気。
悪役との対決もさることながら、妻とのすれ違いも非常にセンチメンタルに描かれており、泣かせます。
もう、僕が間にたって和解させてあげたいと思うくらい。
基本、順不同のシリーズだと思いますが、敢えて順番を気にする向きには
『利腕』を楽しむために、同じくシッド・ハレーが登場する『大穴』から読むのもアリでしょう。
こちらも(『利腕』ほどではないと思いますが)非常に素晴らしい作品で、お薦めしやすいです。
★その他、僕の好きなフランシス作品
ドギツい悪役の存在感がものすごい、『度胸』は良くも悪くも忘れられない作品。
ちょっと僕の趣味からすると悪役が邪悪すぎて、血管切れそうになったので再読はしたくないんですけど、
そのインパクトで、忘れられない作品ではあります。
シッド・ハレー三度登場の『敵手』は、『度胸』とは正反対で安心して読める作品。
悪役は適度にウザいですが、それほどストレス無く爽快に勧善懲悪が楽しめます。
『利腕』でもすれ違いを繰り返した妻とのあいだですが、『敵手』を読めば
「やっぱりこの奥さん、ハレーのこと大好きなんじゃん」と思えます。
なのに、やっぱりすれ違ってしまう二人……うーん、恋愛小説ではないはずなのに、切ない……。
親からの自立をテーマに、息子たちの成長を描く『骨折』も忘れられない作品。
フランシスは心理描写もうまいし、人間関係の描写も暖かく、
最初はワガママで鼻持ちならなかったバカ息子が、段々主人公に心を開いていく様子、成長していく様子が
読んでいて気持ち良いんだなぁ。
何作も連続して読むと、「またこのパターンかw」と思うこともありますが、触れたことのない方は一度
読んでみることをお薦めします。
読了したフランシス作品(S~E)
「利腕」 S
「大穴」 A
「骨折」 A
「敵手」 A
「興奮」 A
「罰金」 B
「重賞」 B
「査問」 C
「暴走」 C
「反射」 D
「追込」 D
「血統」 D
44作(かな?)中12作しか読めていません。
死ぬまでには全作制覇できるかな?
1年に1冊、毎年●月の第●日曜日は「競馬シリーズの日」と決めて、読破していくのも楽しそう♪
一気に読むよりも、末永く付き合っていきたいなぁと感じるシリーズでもあります。