★グループG

ドイツ    80%
ポルトガル 60%
ガーナ   40%
アメリカ  20%

4カ国すべてが前回大会ベスト16に進出している、ハイレベルなグループだ。
それでもなお、優勝候補にあげられるドイツがここで敗退することはほぼないだろう。

近年、欧州最強の呼び声も高いドイツだが、欧州選手権を含む主要大会では
2006年ベスト4、08年準優勝、10年ベスト4、12年ベスト4と、後一歩が越えられない。
(08年は除くが)06年以降、いずれもファンを楽しませるスペクタクルな攻撃サッカーで、
素晴らしい試合内容を披露しているだけに、ここ一番での勝負弱さだけが足を引っ張っている印象だ。
06年と12年はイタリアに、08年と10年はスペインにと、特定の強豪チームに敗れている点も気になるところで、
しかも負け方も悪かった。
大会期間中、ずっと素晴らしい試合を見せているのに、負けた試合だけはスイッチが切れたように無気力な感じで負けてしまうのだ。
本大会でも上に行けば行くほど、イタリアやスペインとぶつかる可能性は高くなる。
逆に06・10年とアルゼンチンに連勝してはいるのだが。

ドイツもまたスペインと似たような長所・欠点を持っている。
中盤のタレントはシュバインシュタイガー、ケディラ、ミュラー、エジル、ロイス、ゲッツェなど多士済々で、
有に2チームが作れてしまうほどの豪華さだ。
一方、FWはスペイン以上の人材難であり、FWのエントリーメンバーはなんと一人だけ。
36歳のクローゼは、今も変わらず偉大なストライカーであり続けているが、
36歳の選手一人、控えが全くいないというのは大いに不安だ。
恐らく有事の際には中盤の選手をFWとして起用する(ゲッツェ、ミュラー、シュールレ、ポドルスキと候補はいくらでもいる)のだろうが、セスクをFW起用して成功を収めたスペインに続けるだろうか。

DFラインは穴こそないものの、『スペシャル』なタレントはラームとGKのノイアーぐらい。
とはいえ、全国的にDFにタレントの少ない今大会。2人もいればいい方ではある。


死の組で2番手につけるのは、2012欧州選手権ベスト4のポルトガルだろう。
アルゼンチンのメッシと並ぶ、世界最高の二大スター、クリスチアーノ・ロナウドを擁するチームだ。
そのポルトガルのメンバーはEuro12のころと全く変わらない。
パトリーシオ、ぺぺ、ブルーノ・アウベス、ジョアン・ペレイラにコエントランのDFラインは固く、
潰し屋ヴェローゾにコンダクターのモウチーニョ、ダイナミズムを持つメイレレス、
サイドにロナウドとナニを擁し、両翼の破壊力も素晴らしい。
問題は最後の1枚、ストライカーがいないこと。
ポスティガ、アウメイダといずれもワールドクラスからは遠く、チャンスは作っても決めきれないのが
古くからのポルトガルの悪癖だ。


近年アフリカで最も安定した成績を収めているのがガーナだ。
タレントが豊富かと聞かれるとそういうわけでもないのだが、組織力が郡を抜いており
アフリカによく起こる内紛などとも無縁。
監督の指示を忠実に守る、ブラックアフリカの身体能力に規律が上乗せされたその実力はなかなかのものだ
(正直、マジメすぎて面白みに欠けるところはあるのだが)。

かつてのアフリカ最高MFエッシェンは衰えを見せているものの、相棒のムンタリ、
攻撃的な中盤のプリンス・ボアテンク、唯一ファンタジアを見せるサイドアタッカーのアンドレ・アユーなど
中盤はアフリカ屈指の陣容だ。
前線には前回大会悲運の人となったアサモア・ギャンが今回も得点源としてチームを引っ張る。
ドイツ、ポルトガルと相手が悪いが、彼らとしても簡単にガーナを破ることはできないだろう。


最も苦しいのはアメリカ。
ただでさえ酷いグループに入ったというのに、移動距離は32カ国中ワーストの14326kmもの移動……。
その上、クリンスマン監督が不可解な理由で大エースのドノバンを選出外とするなど、
(一説には、クリンスマンの息子とドノバンの仲が悪いとか)、聞こえてくるのは悪いニュースばかりである。

2010年大会ではそのドノバンとアルティドール、ブラッドリーなどが溌剌としたプレイを見せ、
多くのサッカーファンを虜にしたアメリカ代表だが、今大会でその再現を期待するのは難しいだろう。


グループGを突破すれば、トーナメント1回戦の相手はグループH。
ベルギー、ロシア、いずれもドイツやポルトガルから見れば勝って当たり前のチームだし、
ガーナやアメリカだって、ベルギーやロシア相手なら互角の闘いができることだろう。

この死のグループを突破すれば、ベスト8の座は約束されたようなものだ。


★グループH

ベルギー   75%
ロシア     65%
韓国     30%
アルジェリア 30%

2中2弱のグループ。欧州2チームが優勢だが、その差は絶対的なものではない。


最も突破に近いのはベルギーだろう。
2002年以来、豊富なタレントを揃えながらも何故か大舞台には縁がなかった彼ら。
そんな『希少価値』も加わって、「是非観たい! これだけの選手が揃っているのだから、素晴らしいサッカーをするに違いない!」と期待も膨らむ一方だった彼らだが、いざチェックしてみると……期待ほどのチームではなかったようである。
そうは言ってもやはりタレントは素晴らしく、GKクルトワを筆頭に、コンパニ、ヴェルトンゲンなど計算できる守備職人たちを最終ラインに並べ、中盤には強豪チェルシーのエース、アザールと
今シーズンこそ本調子になかったものの、昨シーズンエバートンで大活躍を見せたフェライニ。
前線には今シーズンそのエバートンを引っ張ったルカクなど、豪華な顔ぶれである。

問題はチームとしての組織力、殊に攻撃のアイディア不足にあり、せっかくのタレントが活きていない。
大会が始まるまでにその辺りをどこまで詰められるかだろう。


ロシアもまた、印象としてはベルギーに近い。
近年のロシアは、アイディア溢れる中盤と、エースアルシャビンを中心にする魅力的な前線に代表される
攻撃サッカーを展開する反面、『気分屋』的な側面があり、つまらないミスなどからあっけなく敗れ去ることも多かった。
そこで就任したのがカペッロ新監督。
守備マインドを植え付ける手腕に長けたこの監督のもと、アルシャビンを外し、中盤にもデニゾフに代えて
より堅実なファイズリンを起用するなど、チーム全体を守備的に改革。
守備力は向上したものの、今度は攻撃力が失われてしまった印象だ。
攻撃陣にもタレント自体はいるだけに、後はバランスの問題なのだが……。


2010年大会ではアジアレベルを超えた中盤を擁しベスト16に進出した韓国だが、
近年はどうも元気がないようだ。
現時点で彼らに期待するのは少々難しい。


アルジェリアもまた、歴史的に縁のあるフランスから大量の選手を帰化させているが、
悪くいえば「フランスで代表に入れなかった選手たち」である。
北アフリカ特有のテクニックはあるものの、ブラックアフリカのような身体能力はもちろんなく、
小さくまとまったチームという印象が拭えない。


このグループを突破した後、トーナメント1回戦で当たるのはドイツ、ポルトガル、ガーナ、アメリカのグループG。
残念ながら、グループHの4カ国が、ドイツやポルトガルに勝利するのは至難の業だろう。