著者はクリフォード・シマック。評価は A


6作の短編を収録した短編集。
ハズレが1作もなかったのが素晴らしい。


6編を大まかに分類すると、『皮肉が効いているブラックユーモア』な作風のものと、
『しみじみ切ない感動路線』の作風のものに分けられる。
個人的に、今までシマックらしいと感じる際は後者を思い浮かべていたし、それを求めて彼の作品を読んでいる節もあるが、前者についてもなかなか面白かったのは新しい発見だった。


順に見ていく。
 

「ほこりまみれのゼブラ」 評価 A- 

ネタを割ってしまうと、星新一の「おーい、でてこーい」と完全にネタがかぶっているが、シマックの方が先である。
言語が通じない中で、テーブルを通しての物々交換が面白い。 
しかし……相手の宇宙人は詐欺師じゃなかろうかw

「カーボン・コピー」 評価 A-

これまた、詐欺師な宇宙人が登場する。
それにしても『幸ノ台』という訳語は素晴らしい。
シマックの作風にピッタリの、どことなく昭和な感じのニュータウンといった風味が出ている。

 
「建国の父」 評価 A

長編『中継ステーション』の良いところを凝縮したような短編。
仲間たちに囲まれた暖かさと、そこから離れてしまう孤独。
この設定はさすがシマック。


「愚者の聖戦」 評価 A-

愚者に見せかけた智者、と見せかけてやっぱり愚者だったでござるの巻。
知恵遅れのキャラクターを聖人として描くのはよくあるパターンだけど、
聖人どころかえらく困ったチャンに描いたもんだなぁ……


「死の情景」 評価 A-

ほのぼのとした中に、漂う寂しさはさすがの一言。
最後の一日をどう過ごすかというお話。
まぁ、SF設定を出さなくても描けたよねとは思うけど、SF設定を出しちゃいけない理由にはならないし
いいんじゃないかな。

「緑の親指」 評価 S

これはアカン……。
ドラえもんの「さらば、キー坊」とかが好きな人は絶対お薦め。
植物型異星人との交流がとても暖かく、切なく、あぁもう語彙の乏しさが悔やまれる。
最高でした。



というわけで、本当に良い短編集でしたわ。

この短編集が気に入った方は、長編「都市」もお薦め。
「都市」が気に入った人は、この短編集もお薦めって感じです。


シマックは、知名度はないとは言わないけれどあまり高くないと思うので、
ひとりでも多くの人に知ってもらいたい作家ですね。

個人的にはSFではブラッドベリと並んで、「あぁ、肌に合うなぁ」と感じる作家さんです。