まずは点数から。
シナリオ 115/150 キャラ115/150 絵80/100 音80/100 システムその他 80/100
合計 500/650 (65位/約170ゲーム中) ESにつける点数 82
☆前置き
本作で印象に残ったテーマは「努力」と「才能」。
服飾という華やかな舞台と百合女装という演出こそあるものの、内容は熱血スポ根系統の作品に近い感じに仕上がっていると思います。
他の方の評価を拝見しても「ルナとユーシェだけをやればいい」という意見が多いようですが、ご他聞に漏れず僕も2強2弱だと感じました。
なのでこの2ルートだけをやればいいと言いたいところですが、湊ルート(の前半)には見るべきものがあると感じているので、お時間に余裕があれば(あまり面白いとは言えないけれど)湊ルートもやると良いんじゃないかなと思います。
☆ ルナ√ 評価 A-
デザイナーとしての「才能」に溢れるルナと、パタンナーとしての「才能」に溢れる遊星。
そして遊星の決死の「怒力」が、衣遠のさもしい妨害を打倒するというルートです。
本シナリオの前半は、努力と才能よりも「女装モノ・百合モノ」としての色合いが強く、
百合好きなプレイヤーならニヤニヤしながらプレイする事ができるでしょう。
朝日を同性だと信じているルナの戸惑いや、女性同士の恋愛に生ずるゾクゾクするような背徳感は、朝日の女の子らしさもあって、とても楽しく読むことができました。
また、ルナというキャラクターはとても魅力があり、その包容力と強さが存分に発揮される
衣遠との対決シーンは大きな見せ場だったと思います。
初めはネタだと思っていた「ありがとうございます、お優しいルナ様」が、
プレイ後には本音で言えてしまうぐらい、ルナの優しさや器の大きさは印象的でした。
(瑞穂の反応と比べることで、ルナの包容力は際立ちますね)
一方で残念だったのは衣遠でしょうか。
「才能至上主義」という鋼鉄の芯を持っていたと評される彼ですが、遊星への憎悪と偏愛という個人的感情に流されて「盗作」を行い、しかもそれを悪びれもしないというのはクリエイターとして、人間として非常に凡俗と言わざるを得ませんし、結局「才能」よりも「私情」を優先する人間にしか見えず、およそ芯と呼べるものが見当たりません。
自分の作品を見せて客を大いに満足させるというクリエイターとしての「誇り・プライド」を全く感じることができず、包容力のあるルナの遊星への「愛」と比べると、いかにも卑小な人物だなと。
作中でも書かれていましたが、彼は彼なりに遊星のことを気にかけているように感じます。
気にかけているというよりは、自分に隷属する人間として「愛している」のでしょう。
現実でも、奥さんを家から外には出さず、DVなどをして自分に服従させるというやり方で
妻を「愛する」人がいますが、まさにあんな感じではないかなと思いました。
まぁ人間くさいと言えばあまりに人間くさいですし、悪役としてはあれでいいかなとは思うのですが、そんな彼への制裁が一切なく、今後も学院長を続けると思われるあの結末には正直肩すかしを覚えました。
個人的確執(瑞穂ルートでの遊星への嫌がらせなど)は水に流すのもありですが、いくらなんでも「犯罪」の事実は水に流せないでしょう。
また、よく考えてみると桜小路本家に関しても何の解決もしていないような気がしており、ルナと遊星の二人ならそれらを乗り越えていけるという確信は抱けたとはいえ、もうちょっとスカっとさせてくれてもいいのにと感じました。
後述するユルシュールルートと同じ評価A-ですが、
○「やや背徳的でニヤニヤできる百合描写」
○「ヒロインの包容力」の二点においてはルナシナリオの方に軍配が上がり、
●「読後の爽快感」
●「ヒロインへの共感」
の二点においてはユルシュールシナリオの方が好みでした。
☆ ユルシュール√ 評価 A-
努力の積み重ねで天才を倒す。
そんな王道展開を見せたユルシュールルートの見所は、ルナに敗れた後のユーシェの独白にあるのではないでしょうか。
何度やってもルナに勝てないという、彼女の無力感、悲しみ、悔しさがダイレクトに伝わり、読んでいるこちらの胸まで苦しくなりました。
物語自体は、土壇場ラストで大逆転という展開まで王道中の王道を突っ走るため、先が読めてしまうことは確かです。内容自体も、親の会社が倒産するような悲劇には見舞われず、「せいぜいがルナに勝てない」というくらいのものですが、きちんとした描写と筆力があれば、大仰な仕掛けを作らなくても読み応えのある物語が出来ることを、このユーシェルートは表しているように思います。
また、ファッションにもイラストにも造詣の深くない僕ですが、金髪のユーシェには青いドレスがよく映えていました。最優秀賞をとったと聞かされても納得のデザイン、CGだったと思います。
なお、一応テーマをわかりやすくするため、「努力の積み重ねで天才を倒す」と書きましたが、
努力を積み重ねることができるというのは一つの才能だと僕は思っています。
また、ユーシェは本国では優秀な生徒だったようですし、フィリア女学院でもルナには及ばないものの
それに次ぐ(瑞穂との力関係はわかりませんが)実力ということなので、
彼女自身もまた、「天才」なのではないかと感じました。
☆ 瑞穂√ 評価 B-
……これは本当に、やらなくてもいいです(汗)
出来はそこまで悪くはありませんし、百合好きの方ならば、ある程度ニヤニヤできるのではないかと思います。
なのでやって損はないと思うのですが、本作のテーマである「努力と才能」には全く踏み込まないため、
このルートをプレイしてもルナルートやユーシェルートの面白みが増すわけではない、完全に独立した内容になっていると思います。
肝心の瑞穂ルートの内容ですが、男嫌いの瑞穂に女装がバレてしまったら?というもの。
恋愛モノとして、百合モノとして見ると中の中~中の下ぐらいの内容で、やっていて投げ出すほど糞な内容ではありません。
ただ、瑞穂の男嫌い自体は割とどうでもいい内容ですし、突然アイドル押しが始まる展開は少々急ですし、
(これは湊シナリオでもそうですが)*共通ルートとの矛盾もありますし、何よりルナルートである程度の百合分は補給できるので、それら全てを考慮に入れると、あまりお薦めしたいとも思いません。
お時間に余裕があれば~ぐらいでいいと思います。
*共通ルートで「一度辞退したらもうチャンスはない」と言われながらも辞退したクワルツ賞を、何故かルート終盤で受賞している。
☆ 湊√ 評価 C
本作は複数ライターによる作品ですが、湊ルートの前半を担当したライターと後半を担当したライターは、十中八九別人だと思われます。
勝手な妄想で申し訳ありませんが、前半は恐らくルナ&ユーシェルートを書いた方でしょう。
後半は……誰かは知りませんが、ちょっと酷いですね……。
本作のテーマは繰り返しになりますが、『努力と才能』だと思います。
ルナは10の才能と9の努力を。ユーシェは7の才能と10の努力を、
遊星は(パタンナーとしての)8の才能と8の努力を(ルナ√では10の努力を)行ってきた人間です。
ルナルートでは、ルナのデザイナーとしての溢れる才能と遊星のパタンナーとしての才能、そして努力が報われて衣遠の姑息な妨害を打ち倒し、ユーシェルートでは、彼女の10の努力が報われて天才ルナを打ち破るという展開で、カタルシスを得ることができました。
翻って、湊は5の才能と4の努力を行ってきました。
湊の態度は、普通の高校生としてはこんなものだと思うのですが(授業は一応受ける、それ以外は適当)、
ルナやユーシェと比べるとその熱意はいかにも足りず、まるで怠け者代表のようにすら見えてしまいます。
そんな湊が勉強から取り残されていくのはある意味当たり前と言えます。
周囲にいたのがルナやユーシェ、瑞穂と才能豊かな人間ばかりだったのも痛かったのでしょう。
彼女は周囲の人間と比較し、卑屈になっていきます。
そこに追い討ちをかけたのがイジメ問題で、まるで怠け者である湊に天罰を下すかのように、彼女は悲惨な境遇に落ち込んでいきます。
アイドルのように扱われ多くの人々に囲まれる地元での描写と、場違いなところにやってきてしまい、周囲から迫害を受け、自信をなくしていく都会での描写のコントラストもよく、
過酷な状況へとヒロインを追い込む筆致はなかなか迫力があり、胸糞は悪いもののよく描けていると感じました。
ところが、です。
湊がメイドになったあたり、あるいは滋賀へと帰ったあたりから、物語の展開が怪しくなっていきます。
バイトをすれば初日からチヤホヤ。まぁこれは、地元アイドルとしてアリっちゃアリなんですが、
突然メイド喫茶のメイドとして大活躍、東京に出てそこでも大活躍~って一体何事でしょうか。
努力によって勝利を掴む、硬派で熱血なユーシェルートやルナルートに比べ、
努力でも才能でも二人に及ばない湊は、だからこそ上述のように落ちこぼれ、
(怠けていたからではありませんが)いじめにもあい、とうとう専門学校をやめて実家に帰ったわけです。
なのにここに来て、大した努力もせずの大出世。意味がわかりません。
湊が別の道で成功を収めるのは構いませんが、天才のはずのルナだって努力をして成功を掴んでいるのです。
そんなルナ、ユーシェ達の反面教師として湊ルート前半の悲惨な流れは位置づけられるように思いますし、
そこにこそ、このルートの意義があったように思います。
しかし後半の意味不明なメルヘン展開により、その軸はブレにブレてしまいました。
非常に残念です。
湊ルートを徹底したバッドエンドルートとして描ききる、もしくは後半湊が(別の道で。メイド喫茶でもいいですが)努力奮起する、あるいはアクセサリ作成の技術だけはトップレベルということなのでそちらで大活躍する。
そういった展開が見られれば湊ルートだけでなく、「月に寄りそう乙女の作法」というゲーム全体の評価も更に上がったと思っているだけに……。
余談ですが、僕自身も才能はないのに努力も大してせず、ダラダラとやっている夢のようなものがありまして、
湊の態度には色々とツッコミたい一方で、モヤモヤとするところはあります。
☆まとめ
ルナシナリオとユーシェシナリオは楽しめただけに、これと肩を並べるだけのシナリオが湊にも用意されていれば、85点以上も狙えたのにと思うと残念でなりません。
もっとも物足りなさはあれど、楽しめたのは確かです。
次にプレイする「乙女理論とその周辺」に期待しつつ、ここで筆を置かせていただきます。
長文乱文をお読みいただき、ありがとうございました。
シナリオ 115/150 キャラ115/150 絵80/100 音80/100 システムその他 80/100
合計 500/650 (65位/約170ゲーム中) ESにつける点数 82
☆前置き
本作で印象に残ったテーマは「努力」と「才能」。
服飾という華やかな舞台と百合女装という演出こそあるものの、内容は熱血スポ根系統の作品に近い感じに仕上がっていると思います。
他の方の評価を拝見しても「ルナとユーシェだけをやればいい」という意見が多いようですが、ご他聞に漏れず僕も2強2弱だと感じました。
なのでこの2ルートだけをやればいいと言いたいところですが、湊ルート(の前半)には見るべきものがあると感じているので、お時間に余裕があれば(あまり面白いとは言えないけれど)湊ルートもやると良いんじゃないかなと思います。
☆ ルナ√ 評価 A-
デザイナーとしての「才能」に溢れるルナと、パタンナーとしての「才能」に溢れる遊星。
そして遊星の決死の「怒力」が、衣遠のさもしい妨害を打倒するというルートです。
本シナリオの前半は、努力と才能よりも「女装モノ・百合モノ」としての色合いが強く、
百合好きなプレイヤーならニヤニヤしながらプレイする事ができるでしょう。
朝日を同性だと信じているルナの戸惑いや、女性同士の恋愛に生ずるゾクゾクするような背徳感は、朝日の女の子らしさもあって、とても楽しく読むことができました。
また、ルナというキャラクターはとても魅力があり、その包容力と強さが存分に発揮される
衣遠との対決シーンは大きな見せ場だったと思います。
初めはネタだと思っていた「ありがとうございます、お優しいルナ様」が、
プレイ後には本音で言えてしまうぐらい、ルナの優しさや器の大きさは印象的でした。
(瑞穂の反応と比べることで、ルナの包容力は際立ちますね)
一方で残念だったのは衣遠でしょうか。
「才能至上主義」という鋼鉄の芯を持っていたと評される彼ですが、遊星への憎悪と偏愛という個人的感情に流されて「盗作」を行い、しかもそれを悪びれもしないというのはクリエイターとして、人間として非常に凡俗と言わざるを得ませんし、結局「才能」よりも「私情」を優先する人間にしか見えず、およそ芯と呼べるものが見当たりません。
自分の作品を見せて客を大いに満足させるというクリエイターとしての「誇り・プライド」を全く感じることができず、包容力のあるルナの遊星への「愛」と比べると、いかにも卑小な人物だなと。
作中でも書かれていましたが、彼は彼なりに遊星のことを気にかけているように感じます。
気にかけているというよりは、自分に隷属する人間として「愛している」のでしょう。
現実でも、奥さんを家から外には出さず、DVなどをして自分に服従させるというやり方で
妻を「愛する」人がいますが、まさにあんな感じではないかなと思いました。
まぁ人間くさいと言えばあまりに人間くさいですし、悪役としてはあれでいいかなとは思うのですが、そんな彼への制裁が一切なく、今後も学院長を続けると思われるあの結末には正直肩すかしを覚えました。
個人的確執(瑞穂ルートでの遊星への嫌がらせなど)は水に流すのもありですが、いくらなんでも「犯罪」の事実は水に流せないでしょう。
また、よく考えてみると桜小路本家に関しても何の解決もしていないような気がしており、ルナと遊星の二人ならそれらを乗り越えていけるという確信は抱けたとはいえ、もうちょっとスカっとさせてくれてもいいのにと感じました。
後述するユルシュールルートと同じ評価A-ですが、
○「やや背徳的でニヤニヤできる百合描写」
○「ヒロインの包容力」の二点においてはルナシナリオの方に軍配が上がり、
●「読後の爽快感」
●「ヒロインへの共感」
の二点においてはユルシュールシナリオの方が好みでした。
☆ ユルシュール√ 評価 A-
努力の積み重ねで天才を倒す。
そんな王道展開を見せたユルシュールルートの見所は、ルナに敗れた後のユーシェの独白にあるのではないでしょうか。
何度やってもルナに勝てないという、彼女の無力感、悲しみ、悔しさがダイレクトに伝わり、読んでいるこちらの胸まで苦しくなりました。
物語自体は、土壇場ラストで大逆転という展開まで王道中の王道を突っ走るため、先が読めてしまうことは確かです。内容自体も、親の会社が倒産するような悲劇には見舞われず、「せいぜいがルナに勝てない」というくらいのものですが、きちんとした描写と筆力があれば、大仰な仕掛けを作らなくても読み応えのある物語が出来ることを、このユーシェルートは表しているように思います。
また、ファッションにもイラストにも造詣の深くない僕ですが、金髪のユーシェには青いドレスがよく映えていました。最優秀賞をとったと聞かされても納得のデザイン、CGだったと思います。
なお、一応テーマをわかりやすくするため、「努力の積み重ねで天才を倒す」と書きましたが、
努力を積み重ねることができるというのは一つの才能だと僕は思っています。
また、ユーシェは本国では優秀な生徒だったようですし、フィリア女学院でもルナには及ばないものの
それに次ぐ(瑞穂との力関係はわかりませんが)実力ということなので、
彼女自身もまた、「天才」なのではないかと感じました。
☆ 瑞穂√ 評価 B-
……これは本当に、やらなくてもいいです(汗)
出来はそこまで悪くはありませんし、百合好きの方ならば、ある程度ニヤニヤできるのではないかと思います。
なのでやって損はないと思うのですが、本作のテーマである「努力と才能」には全く踏み込まないため、
このルートをプレイしてもルナルートやユーシェルートの面白みが増すわけではない、完全に独立した内容になっていると思います。
肝心の瑞穂ルートの内容ですが、男嫌いの瑞穂に女装がバレてしまったら?というもの。
恋愛モノとして、百合モノとして見ると中の中~中の下ぐらいの内容で、やっていて投げ出すほど糞な内容ではありません。
ただ、瑞穂の男嫌い自体は割とどうでもいい内容ですし、突然アイドル押しが始まる展開は少々急ですし、
(これは湊シナリオでもそうですが)*共通ルートとの矛盾もありますし、何よりルナルートである程度の百合分は補給できるので、それら全てを考慮に入れると、あまりお薦めしたいとも思いません。
お時間に余裕があれば~ぐらいでいいと思います。
*共通ルートで「一度辞退したらもうチャンスはない」と言われながらも辞退したクワルツ賞を、何故かルート終盤で受賞している。
☆ 湊√ 評価 C
本作は複数ライターによる作品ですが、湊ルートの前半を担当したライターと後半を担当したライターは、十中八九別人だと思われます。
勝手な妄想で申し訳ありませんが、前半は恐らくルナ&ユーシェルートを書いた方でしょう。
後半は……誰かは知りませんが、ちょっと酷いですね……。
本作のテーマは繰り返しになりますが、『努力と才能』だと思います。
ルナは10の才能と9の努力を。ユーシェは7の才能と10の努力を、
遊星は(パタンナーとしての)8の才能と8の努力を(ルナ√では10の努力を)行ってきた人間です。
ルナルートでは、ルナのデザイナーとしての溢れる才能と遊星のパタンナーとしての才能、そして努力が報われて衣遠の姑息な妨害を打ち倒し、ユーシェルートでは、彼女の10の努力が報われて天才ルナを打ち破るという展開で、カタルシスを得ることができました。
翻って、湊は5の才能と4の努力を行ってきました。
湊の態度は、普通の高校生としてはこんなものだと思うのですが(授業は一応受ける、それ以外は適当)、
ルナやユーシェと比べるとその熱意はいかにも足りず、まるで怠け者代表のようにすら見えてしまいます。
そんな湊が勉強から取り残されていくのはある意味当たり前と言えます。
周囲にいたのがルナやユーシェ、瑞穂と才能豊かな人間ばかりだったのも痛かったのでしょう。
彼女は周囲の人間と比較し、卑屈になっていきます。
そこに追い討ちをかけたのがイジメ問題で、まるで怠け者である湊に天罰を下すかのように、彼女は悲惨な境遇に落ち込んでいきます。
アイドルのように扱われ多くの人々に囲まれる地元での描写と、場違いなところにやってきてしまい、周囲から迫害を受け、自信をなくしていく都会での描写のコントラストもよく、
過酷な状況へとヒロインを追い込む筆致はなかなか迫力があり、胸糞は悪いもののよく描けていると感じました。
ところが、です。
湊がメイドになったあたり、あるいは滋賀へと帰ったあたりから、物語の展開が怪しくなっていきます。
バイトをすれば初日からチヤホヤ。まぁこれは、地元アイドルとしてアリっちゃアリなんですが、
突然メイド喫茶のメイドとして大活躍、東京に出てそこでも大活躍~って一体何事でしょうか。
努力によって勝利を掴む、硬派で熱血なユーシェルートやルナルートに比べ、
努力でも才能でも二人に及ばない湊は、だからこそ上述のように落ちこぼれ、
(怠けていたからではありませんが)いじめにもあい、とうとう専門学校をやめて実家に帰ったわけです。
なのにここに来て、大した努力もせずの大出世。意味がわかりません。
湊が別の道で成功を収めるのは構いませんが、天才のはずのルナだって努力をして成功を掴んでいるのです。
そんなルナ、ユーシェ達の反面教師として湊ルート前半の悲惨な流れは位置づけられるように思いますし、
そこにこそ、このルートの意義があったように思います。
しかし後半の意味不明なメルヘン展開により、その軸はブレにブレてしまいました。
非常に残念です。
湊ルートを徹底したバッドエンドルートとして描ききる、もしくは後半湊が(別の道で。メイド喫茶でもいいですが)努力奮起する、あるいはアクセサリ作成の技術だけはトップレベルということなのでそちらで大活躍する。
そういった展開が見られれば湊ルートだけでなく、「月に寄りそう乙女の作法」というゲーム全体の評価も更に上がったと思っているだけに……。
余談ですが、僕自身も才能はないのに努力も大してせず、ダラダラとやっている夢のようなものがありまして、
湊の態度には色々とツッコミたい一方で、モヤモヤとするところはあります。
☆まとめ
ルナシナリオとユーシェシナリオは楽しめただけに、これと肩を並べるだけのシナリオが湊にも用意されていれば、85点以上も狙えたのにと思うと残念でなりません。
もっとも物足りなさはあれど、楽しめたのは確かです。
次にプレイする「乙女理論とその周辺」に期待しつつ、ここで筆を置かせていただきます。
長文乱文をお読みいただき、ありがとうございました。