【前置き】
「りんごはおかずだよ」のk-pさんから、『好きなRPGを10作品、理由やエピソード等も添えて挙げてください』というリクエストをいただきました。
プレイ直後の感想を書く機会は多いのですが、プレイ後しばらくしてから振り返る形での感想はほとんど書いてこなかった身として、このようなリクエストはこちらとしても大変ありがたく、良い機会を与えていただけて感謝しております。
同時に、リクエストをいただいてから時間が過ぎてしまったことをお詫びいたします。
言い訳といいますか、注意点としていくつか。
1:ここに挙げた全てのRPGは5年以上前のプレイであるため、細部あやふやなポイントがございます。
2:『RPG』の概念が、僕と他の方とで違っている場合がございます。
ここでは『RPG』、『アクションRPG』、『シミュレーションRPG』の三つを取り上げましたが、僕がRPGだと思っているゲームについて、「それはRPGやない! SLGや!」というツッコミを友人からいただいたこともありました。
僕はSLGとシミュレーションRPGの違いが今一つわからないので、ひょっとすると本記事のゲームでもSLGが混ざってしまっているかもしれません。
3:記事の性質上、ネタバレは避けて通れない……というか本記事はネタバレには全く配慮しておりません。
ネタバレを踏みたくないゲームに関しては、スクロールして飛ばしていただくようお願いいたします。
4:結果として『エロゲRPG』や『ブラウザRPG』は一つもトップ10には入りませんでしたが、『コンシューマーRPG』+『エロゲRPG』+『ブラウザRPG』から選出させていただきました。
(二次創作の同人RPGは候補に入れておりません。もっとも、候補に入っていてもベスト10に入ったかと聞かれると多分入りませんが……)
5:全部で23000文字ととても長い文章になってしまったため、4~5回に分割してお届けします。
その際、関連のあるゲーム同士をまとめたため、紹介する順番と順位が全く一致しておりません。
順位は……順不同でも構いませんが、一応10作品の紹介を終えた後につけた方がいいのかな?
それではよろしくお願いします。
【ファイナルファンタジー タクティクス】
『五十年戦争』に敗れたイヴァリース王国は、重税により貧富の差が拡大。
更に王位継承権を巡って内乱の兆しが見え、国も民も疲弊し、骸旅団と呼ばれる盗賊団が勢力を拡大していた。
北天騎士団に所属する貴族の御曹司ラムザと、平民出身でラムザの幼馴染でもあるディリータは、初陣として骸旅団の討伐を命じられる。
平民出身でありながら後にイヴァリース国王となるディリータと、その陰に隠れ名を残さぬ名家出身のラムザ。
歴史家アラズラムによれば、ラムザもまた「真の英雄」であるという……。
このイヴァリースという世界は中世のイギリスがモデルであり、
劇中の「五十年戦争」と「獅子戦争」はそれぞれ、「百年戦争」(AD1339~1453)と「薔薇戦争」
(AD1455~1485)が対応するものと思われます。
RPGといえば、一般的には正義を代表するキャラクターが、悪を代表するキャラクターを倒すもの。
子どもの頃の僕はそう思い込んでいたものでした。
「ドラゴンクエスト4」のピサロだとか、あるいは「テイルズオブデスティニー」のイレーヌのように、
単純な正義と悪ではない、立場の違いと呼べるものに出会ったことはありましたが、
*1『主人公側の方がおかしいのではないか?』と思ったゲームはこれが初めてでした。
1章中盤、レナリア台地の中ボス、当時の僕に大きな衝撃を与えたミルウーダの台詞。
FFタクティクスが自分の中で特別なゲームとなったのは、このミルウーダとの戦闘からでした。
https://www.youtube.com/watch?v=G9YxA7E477Q (VSミルウーダ戦。会話イベントは6;42~7:27 9;54~10;53など)
(それに対する『味方』側のアルガスの発言は、
「同じ人間だと? ふん、汚らわしい!
生まれた瞬間からお前たちは俺たち貴族に尽くさなければならない。
生まれた瞬間からお前たちは俺たち貴族の家畜なんだ!」)
団長ウィーグラフやその妹であるミルウーダのように理想を追う革命家肌の人間が結成した骸旅団ですが、
組織が大きくなりすぎたためか、単なる追いはぎのような人間も加入するようになり、組織の意思統一が計れなくなっているあたりにも、リアリティを感じます。
魅力的な登場人物が多数存在する本作ですが、中でもディリータには強く惚れ込みました。
身分の違いからラムザと袂を分かった彼は、平民出身でありながらその実力でどんどん出世していきます。
王妃オヴェリアに恋をして、ついに結婚。国王にまで上り詰めた彼でしたが、その結末は恵まれたものではありませんでした。
https://www.youtube.com/watch?v=WpZGq8bpoPg (エンディング)
ディリータとオヴェリアのすれ違いが描かれる切ないエンディングは、
よくある「世界が平和になってめでたしめでたし」のエンディングとは一線を画す、
とても素晴らしいエンディングだったと思います。
ディリータはオヴェリアを愛していました。しかし、その意思がオヴェリアには伝わっていなかった。
ディリータは不器用な性格で言葉足らずな上に、2章以降では他人に弱みを見せまいと、露悪的な振る舞いをしてきました。
一方のオヴェリアはその境遇故か疑ぐり深く、容易に他人を信用できない人でした。
それでもオヴェリアは一時、ディリータを信じました。そしてあるシーンで、裏切られたと誤解してしまったのです。
今まで他人に利用されてばかりだったオヴェリアが、初めて勇気を振り絞って行った自発的な行動。
それは、自分を愛してくれた恋人を刺すことでした。
「気持ちは相手に伝えなければ、届かない。解ってくれるだろう、と甘えてはいけない」ということなのでしょう。
相手に気持ちを伝えることができず、きっと解ってくれるだろうと甘えてしまったディリータ。
そんな彼が、ラムザに対してだけは、オヴェリアへの気持ちを口にした。
誰にも弱みを見せることのない彼が、*2最期に口に出したのは己の人生への悔恨と、先に亡くなったラムザの名前でした。
そんなディリータの生きざまをしみじみと感じた「FFタクティクス」は、紛れもなくバイブル的作品として今も胸に残っています。
ストーリーの感想から、RPGの本分とも呼べるバトルへと話を移しますが、
こちらに関しても素晴らしい出来で、僕がプレイしたシミュレーションRPGの中では現在でもトップです。
敵のいないオープンスペースに魔法を仕込み、ATBのルールを利用して時限式で発火させたり、
味方に攻撃魔法をかけて人間爆弾として突撃させたり、多様な戦術が楽しめました。
他ゲーをDisるのもあれなんですが、このゲームをプレイしてしまうと、「敵がいるマスにしか攻撃魔法が使えないシミュRPG」なんてやってられなくなりますね。
ここまでべた褒めしてきたFFタクティクスですが、欠点も2つほどあります。
まず1つ目はシナリオ面での不満です。
1章では「貴族」VS「平民」という戦いを描き、様々な葛藤を見せてくれた物語でしたが、2章終盤以降、
ルカヴィという正真正銘、単なる邪悪なだけの敵が出てきてしまい、かなり興ざめな事態になります。
サイドストーリーとしては、前述したディリータとオヴェリアの物語や、ダイスダーグやラーグ公、ゴルターナ公などの権力闘争など、十分面白いんですが、肝心のラムザの物語はどうにも……。
1章の終盤で、今までの貴族としての自分が根底から揺らぎ、全てを捨てて逃げ出してしまうところまでは最高だったんですけどねぇ……。
2つ目はバトル面での不満。
4章に入ると、突然バランスブレイクします。
まず、どう考えてもチートとしか思えないオルランドゥの加入。
彼一人で敵を全滅できてしまうのではないかと思えるほどの強さです。
また、この辺りから雑魚敵の赤チョコボが異常に強くなります。
ボスより赤チョコボがヤバいです。赤チョコボが3体ぐらい出たらゲームオーバーです。
しかしこのゲームには「逃げる」というコマンドがなく、ゲームオーバーになったらやり直しなので、
こまめにセーブをしておかないといけません。
この2点は、大ファンである僕でも擁護できる欠点ではありませんが、それでも僕はこの作品が大好きです。
*1 これに関しては、前作にあたる「タクティクスオウガ」でその洗礼を受けた方の方が多いかもしれません。
このへん、僕はプレイ順が逆でして「FFタクティクス」→「タクティクスオウガ」の順でプレイしたことが、FFタクティクスに対する衝撃度を上乗せしている可能性はあります。
ただ、RPGとしての要素は明らかにFFタクティクスの方が上ですし(上=僕の好みとも言います)、やはり「FFタクティクス」の方が好きです。
*2 どうやらこのあと生き残ったようなのですが、僕はここで亡くなったものだと思ってプレイしておりました。
また、個人的にもここで亡くなった方が綺麗だと思うのでこのように書きます。(←なんじゃそりゃw)
また、ラムザは生きている説もあるようですが、こちらもここで亡くなった方が明らかに綺麗だと思います。
【幻想水滸伝2】
長く戦争を続けてきたハイランド王国と都市同盟。
田舎街で仲良く育った主人公(デフォネームなし)と親友のジョウイは、主人公の義姉ナナミに見送られ、
ハイランド王国兵として戦場へと向かう。
同じ理想を目指した主人公とジョウイだったが、数奇な運命を経て「手段の違い」から袂を分かつ。
主人公は、都市同盟のリーダーとして。ジョウイはハイランド皇国のリーダーとして。
『争いのない世界を作る』という想いを共有しながら、互いへの友情を大切にしながら、二人の率いる組織は泥沼の戦争を続けていく…。
https://www.youtube.com/watch?v=vaW3qAqqYVE (OP。回想OPムービーは3;40~)
上で紹介した『FFタクティクス』とよく似たストーリーラインを持つ中華風RPGが、本作「幻想水滸伝2」となります。
RPGで一番好きな作品を挙げろと言われたら、僕は本作を挙げることになるのかなぁ。
ストーリーはFFタクティクスと違い最後まで失速せず、バトルも最後までバランスは崩壊せず、アイテムクリエイション(料理)要素も楽しめ……と、全てにおいてハイレベルで、欠点らしい欠点も全く思いつきません。
特に素晴らしいのはストーリーと、キャラクターでしょうか。
性格に違いはあれど、『FFタクティクス』のディリータとジョウイの立ち位置には非常な類似点が見受けられます。
まず、主人公の幼馴染であり親友であること。そして、その友情を最後まで失わない事。
にも関わらず立場の違いから、二人は共闘することができない事。
王女に恋をし、結婚をすること(で王になる)も同じです。
違うのは、対立しているようでいて直接刃を交えないディリータとは違い、ジョウイは紛うことなき敵組織のリーダーになっていることでしょうか。
このゲーム内では言うに及ばず、僕がプレイした全RPG中で最も凶悪なオーラを放っている敵が、中ボスにあたるルカ・ブライトです。
https://www.youtube.com/watch?v=KsGZekog5M0(ルカの名シーンの一つ「豚は死ね」)
http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88
(ニコニコ大百科 ルカ・ブライトまとめ)
RPGにおいて、背筋が震えるような恐ろしさを感じた敵はそうそういるものではありません。
(他にはゼノギアスのグラーフと、パラサイトイヴのボスに感じましたが、後者はホラー的な意味合いが強く、純粋に物語の力で恐怖を覚えたのはルカとグラーフだけですね)
ここまで鮮烈なインパクトを持つ敵をラスボスではなく中ボスに持ってきた設計。
にも関わらず、物語の速度は彼が退場した後もまるで衰えなかったことには感嘆を禁じえません。
本作の物語をより読み応えのあるものにしているのは、軍師たちの智謀戦。
前作(幻水1)のマッシュ・シルバーバーグの智謀も相当読みごたえがありましたが、本作のシュウの格好良さも特筆に値すると思います。
そして前作以上に盛り上がるのが、敵軍にもレオン・シルバーバーグという稀代の名軍師がおり、奇策同士が火花を散らす様は読んでいて全く飽きません。
「三国志演義」の諸葛孔明VS司馬懿のような、両頭脳の競い合いもまた「幻想水滸伝2」を大いに盛り上げてくれました。
このゲームで印象的なシーンの一つに、『逃亡ルート』があります。
悲しいことが続き、都市同盟のリーダーであることに押しつぶされそうな主人公を見かねて、義姉のナナミが「逃げよう」と提案するシーンです。
https://www.youtube.com/watch?v=PEPUXlHLkME (4:52~6:25 ナナミの提案。この動画、主人公の名前が「ゲンカクのむすこ」だったり、軍の名前が「なさけない軍」だったりして折角の名シーンが興ざめなんですが、他に動画が見つからないのでやむなく)
https://www.youtube.com/watch?v=HlfeWddgJTQ (0:00~3:20 シュウのビンタ 5:46~6:35 ビクトールの出迎え)
この決断のせいで、リドリー将軍は亡くなってしまいます。
けれど、全てを捨てて責任から逃げ出したくなってしまう気持ちは強くわかりますし、苦しむ主人公を誰よりも側で見守ってきたナナミの気持ちが、痛いほどに伝わってくる名シーンです。
主人公に手を上げるシュウ。そして、帰ってきた主人公を何の屈託もなげに出迎えるビクトールの優しさ。
前向きな選択肢を選び続ければ見ることのできないシーンですが、幻水2の物語に更なる深みを与えた名シーンだと思います。
シュウの名場面と言えば真エンディングのこれも印象深いです。
軍師としての活躍だけでなくドラマシーンにおいても印象に残る彼の姿は、
RPGとしての面白さだけでなく、ストーリーでも記憶に残る本作にそのまま重なります。
https://www.youtube.com/watch?v=DaE_89ChP34 (8:20~ シュウの出迎えとナナミの想い)
もう一つ、個人的に大好きなのがグリンヒルのイベントです。
グリンヒル市は名市長テレーズのもと、長らくハイランド皇国の侵攻に抵抗してきました。
ところが、近隣のミューズ市が陥落。ミューズの難民がグリンヒル市に流れ込んできます。
ハイランド皇国は難民狩りはせず、敢えて難民がグリンヒルへたどり着くに任せるのです。
テレーズはハイランドの目論みを知ってなお、難民を見殺しにはできないとグリンヒルに迎え入れます。
結果グリンヒルは食糧難に陥り、ミューズ難民とグリンヒル市民の対立も発生、とうとうグリンヒルはハイランドに破られてしまいます。
そのグリンヒル陥落の際、テレーズを守るために市民が立ち上がるイベントが僕はとても好きでした。
多分、「幻水2の名シーン!」的な括りではないと思うのですが、こうした1つ1つの街、1つ1つのサブイベントにも
感情を動かす力がある。
幻想水滸伝2は本当によくできた物語だったと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=qHKnvC0rhxs (グリンヒル陥落 0;37~2:20)
ちなみに、前作「幻想水滸伝1」も非常に素晴らしいRPGです。
絵柄が多少古いのと、ゲームバランスが相当簡単なことは欠点かもしれませんが、是非お薦めしたいです。
「2」を制作したスタッフによる、重厚なストーリーは「1」でもしっかり味わうことができます。
ストーリーは独立しているので2からプレイしても楽しめますが、共通キャラが多く、前作をプレイしているといろいろニヤリとできますので、もしできるようならば1からのプレイを推奨いたします。
なお、3以降はやらなくていいと思います。
3はクソゲー。4は途中で投げてしまったので解りませんが、途中まではクソゲーでした。
5は、RPGの水準レベルには達していると思いますが、1や2に比べると相当見劣りがします。
具体的にどこが違うかと聞かれると、1や2では「軍師たちの智謀戦」で敵を打ち破るのですが、
5は「敵のくだらない失策による自滅」が繰り返されているだけなのです。
5の物語を、1や2のスタッフが手がけたらきっとすごく面白いものになったと思うのですが……。
「りんごはおかずだよ」のk-pさんから、『好きなRPGを10作品、理由やエピソード等も添えて挙げてください』というリクエストをいただきました。
プレイ直後の感想を書く機会は多いのですが、プレイ後しばらくしてから振り返る形での感想はほとんど書いてこなかった身として、このようなリクエストはこちらとしても大変ありがたく、良い機会を与えていただけて感謝しております。
同時に、リクエストをいただいてから時間が過ぎてしまったことをお詫びいたします。
言い訳といいますか、注意点としていくつか。
1:ここに挙げた全てのRPGは5年以上前のプレイであるため、細部あやふやなポイントがございます。
2:『RPG』の概念が、僕と他の方とで違っている場合がございます。
ここでは『RPG』、『アクションRPG』、『シミュレーションRPG』の三つを取り上げましたが、僕がRPGだと思っているゲームについて、「それはRPGやない! SLGや!」というツッコミを友人からいただいたこともありました。
僕はSLGとシミュレーションRPGの違いが今一つわからないので、ひょっとすると本記事のゲームでもSLGが混ざってしまっているかもしれません。
3:記事の性質上、ネタバレは避けて通れない……というか本記事はネタバレには全く配慮しておりません。
ネタバレを踏みたくないゲームに関しては、スクロールして飛ばしていただくようお願いいたします。
4:結果として『エロゲRPG』や『ブラウザRPG』は一つもトップ10には入りませんでしたが、『コンシューマーRPG』+『エロゲRPG』+『ブラウザRPG』から選出させていただきました。
(二次創作の同人RPGは候補に入れておりません。もっとも、候補に入っていてもベスト10に入ったかと聞かれると多分入りませんが……)
5:全部で23000文字ととても長い文章になってしまったため、4~5回に分割してお届けします。
その際、関連のあるゲーム同士をまとめたため、紹介する順番と順位が全く一致しておりません。
順位は……順不同でも構いませんが、一応10作品の紹介を終えた後につけた方がいいのかな?
それではよろしくお願いします。
【ファイナルファンタジー タクティクス】
『五十年戦争』に敗れたイヴァリース王国は、重税により貧富の差が拡大。
更に王位継承権を巡って内乱の兆しが見え、国も民も疲弊し、骸旅団と呼ばれる盗賊団が勢力を拡大していた。
北天騎士団に所属する貴族の御曹司ラムザと、平民出身でラムザの幼馴染でもあるディリータは、初陣として骸旅団の討伐を命じられる。
平民出身でありながら後にイヴァリース国王となるディリータと、その陰に隠れ名を残さぬ名家出身のラムザ。
歴史家アラズラムによれば、ラムザもまた「真の英雄」であるという……。
このイヴァリースという世界は中世のイギリスがモデルであり、
劇中の「五十年戦争」と「獅子戦争」はそれぞれ、「百年戦争」(AD1339~1453)と「薔薇戦争」
(AD1455~1485)が対応するものと思われます。
RPGといえば、一般的には正義を代表するキャラクターが、悪を代表するキャラクターを倒すもの。
子どもの頃の僕はそう思い込んでいたものでした。
「ドラゴンクエスト4」のピサロだとか、あるいは「テイルズオブデスティニー」のイレーヌのように、
単純な正義と悪ではない、立場の違いと呼べるものに出会ったことはありましたが、
*1『主人公側の方がおかしいのではないか?』と思ったゲームはこれが初めてでした。
1章中盤、レナリア台地の中ボス、当時の僕に大きな衝撃を与えたミルウーダの台詞。
FFタクティクスが自分の中で特別なゲームとなったのは、このミルウーダとの戦闘からでした。
ミルウーダ
「貴族がなんだというんだ。私たちは貴族の家畜じゃない!
私たちは人間だわ!貴方たちと同じ人間よ!
「貴族がなんだというんだ。私たちは貴族の家畜じゃない!
私たちは人間だわ!貴方たちと同じ人間よ!
私たちと貴方たちの間にどんな差があるっていうの? 生まれた家が違うだけじゃないの!
ひもじい思いをしたことがある? 数ヶ月間も豆だけのスープで暮らしたことがあるの?
なぜ私たちが飢えなければならない?
それは貴方たち貴族が奪うからだ! 生きる権利のすべてを奪うからだ!」
それは貴方たち貴族が奪うからだ! 生きる権利のすべてを奪うからだ!」
https://www.youtube.com/watch?v=G9YxA7E477Q (VSミルウーダ戦。会話イベントは6;42~7:27 9;54~10;53など)
(それに対する『味方』側のアルガスの発言は、
「同じ人間だと? ふん、汚らわしい!
生まれた瞬間からお前たちは俺たち貴族に尽くさなければならない。
生まれた瞬間からお前たちは俺たち貴族の家畜なんだ!」)
団長ウィーグラフやその妹であるミルウーダのように理想を追う革命家肌の人間が結成した骸旅団ですが、
組織が大きくなりすぎたためか、単なる追いはぎのような人間も加入するようになり、組織の意思統一が計れなくなっているあたりにも、リアリティを感じます。
魅力的な登場人物が多数存在する本作ですが、中でもディリータには強く惚れ込みました。
身分の違いからラムザと袂を分かった彼は、平民出身でありながらその実力でどんどん出世していきます。
王妃オヴェリアに恋をして、ついに結婚。国王にまで上り詰めた彼でしたが、その結末は恵まれたものではありませんでした。
https://www.youtube.com/watch?v=WpZGq8bpoPg (エンディング)
ディリータとオヴェリアのすれ違いが描かれる切ないエンディングは、
よくある「世界が平和になってめでたしめでたし」のエンディングとは一線を画す、
とても素晴らしいエンディングだったと思います。
ディリータはオヴェリアを愛していました。しかし、その意思がオヴェリアには伝わっていなかった。
ディリータは不器用な性格で言葉足らずな上に、2章以降では他人に弱みを見せまいと、露悪的な振る舞いをしてきました。
一方のオヴェリアはその境遇故か疑ぐり深く、容易に他人を信用できない人でした。
それでもオヴェリアは一時、ディリータを信じました。そしてあるシーンで、裏切られたと誤解してしまったのです。
今まで他人に利用されてばかりだったオヴェリアが、初めて勇気を振り絞って行った自発的な行動。
それは、自分を愛してくれた恋人を刺すことでした。
「気持ちは相手に伝えなければ、届かない。解ってくれるだろう、と甘えてはいけない」ということなのでしょう。
相手に気持ちを伝えることができず、きっと解ってくれるだろうと甘えてしまったディリータ。
そんな彼が、ラムザに対してだけは、オヴェリアへの気持ちを口にした。
誰にも弱みを見せることのない彼が、*2最期に口に出したのは己の人生への悔恨と、先に亡くなったラムザの名前でした。
そんなディリータの生きざまをしみじみと感じた「FFタクティクス」は、紛れもなくバイブル的作品として今も胸に残っています。
ストーリーの感想から、RPGの本分とも呼べるバトルへと話を移しますが、
こちらに関しても素晴らしい出来で、僕がプレイしたシミュレーションRPGの中では現在でもトップです。
敵のいないオープンスペースに魔法を仕込み、ATBのルールを利用して時限式で発火させたり、
味方に攻撃魔法をかけて人間爆弾として突撃させたり、多様な戦術が楽しめました。
他ゲーをDisるのもあれなんですが、このゲームをプレイしてしまうと、「敵がいるマスにしか攻撃魔法が使えないシミュRPG」なんてやってられなくなりますね。
ここまでべた褒めしてきたFFタクティクスですが、欠点も2つほどあります。
まず1つ目はシナリオ面での不満です。
1章では「貴族」VS「平民」という戦いを描き、様々な葛藤を見せてくれた物語でしたが、2章終盤以降、
ルカヴィという正真正銘、単なる邪悪なだけの敵が出てきてしまい、かなり興ざめな事態になります。
サイドストーリーとしては、前述したディリータとオヴェリアの物語や、ダイスダーグやラーグ公、ゴルターナ公などの権力闘争など、十分面白いんですが、肝心のラムザの物語はどうにも……。
1章の終盤で、今までの貴族としての自分が根底から揺らぎ、全てを捨てて逃げ出してしまうところまでは最高だったんですけどねぇ……。
2つ目はバトル面での不満。
4章に入ると、突然バランスブレイクします。
まず、どう考えてもチートとしか思えないオルランドゥの加入。
彼一人で敵を全滅できてしまうのではないかと思えるほどの強さです。
また、この辺りから雑魚敵の赤チョコボが異常に強くなります。
ボスより赤チョコボがヤバいです。赤チョコボが3体ぐらい出たらゲームオーバーです。
しかしこのゲームには「逃げる」というコマンドがなく、ゲームオーバーになったらやり直しなので、
こまめにセーブをしておかないといけません。
この2点は、大ファンである僕でも擁護できる欠点ではありませんが、それでも僕はこの作品が大好きです。
*1 これに関しては、前作にあたる「タクティクスオウガ」でその洗礼を受けた方の方が多いかもしれません。
このへん、僕はプレイ順が逆でして「FFタクティクス」→「タクティクスオウガ」の順でプレイしたことが、FFタクティクスに対する衝撃度を上乗せしている可能性はあります。
ただ、RPGとしての要素は明らかにFFタクティクスの方が上ですし(上=僕の好みとも言います)、やはり「FFタクティクス」の方が好きです。
*2 どうやらこのあと生き残ったようなのですが、僕はここで亡くなったものだと思ってプレイしておりました。
また、個人的にもここで亡くなった方が綺麗だと思うのでこのように書きます。(←なんじゃそりゃw)
また、ラムザは生きている説もあるようですが、こちらもここで亡くなった方が明らかに綺麗だと思います。
【幻想水滸伝2】
長く戦争を続けてきたハイランド王国と都市同盟。
田舎街で仲良く育った主人公(デフォネームなし)と親友のジョウイは、主人公の義姉ナナミに見送られ、
ハイランド王国兵として戦場へと向かう。
同じ理想を目指した主人公とジョウイだったが、数奇な運命を経て「手段の違い」から袂を分かつ。
主人公は、都市同盟のリーダーとして。ジョウイはハイランド皇国のリーダーとして。
『争いのない世界を作る』という想いを共有しながら、互いへの友情を大切にしながら、二人の率いる組織は泥沼の戦争を続けていく…。
https://www.youtube.com/watch?v=vaW3qAqqYVE (OP。回想OPムービーは3;40~)
上で紹介した『FFタクティクス』とよく似たストーリーラインを持つ中華風RPGが、本作「幻想水滸伝2」となります。
RPGで一番好きな作品を挙げろと言われたら、僕は本作を挙げることになるのかなぁ。
ストーリーはFFタクティクスと違い最後まで失速せず、バトルも最後までバランスは崩壊せず、アイテムクリエイション(料理)要素も楽しめ……と、全てにおいてハイレベルで、欠点らしい欠点も全く思いつきません。
特に素晴らしいのはストーリーと、キャラクターでしょうか。
性格に違いはあれど、『FFタクティクス』のディリータとジョウイの立ち位置には非常な類似点が見受けられます。
まず、主人公の幼馴染であり親友であること。そして、その友情を最後まで失わない事。
にも関わらず立場の違いから、二人は共闘することができない事。
王女に恋をし、結婚をすること(で王になる)も同じです。
違うのは、対立しているようでいて直接刃を交えないディリータとは違い、ジョウイは紛うことなき敵組織のリーダーになっていることでしょうか。
このゲーム内では言うに及ばず、僕がプレイした全RPG中で最も凶悪なオーラを放っている敵が、中ボスにあたるルカ・ブライトです。
https://www.youtube.com/watch?v=KsGZekog5M0(ルカの名シーンの一つ「豚は死ね」)
http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88
(ニコニコ大百科 ルカ・ブライトまとめ)
RPGにおいて、背筋が震えるような恐ろしさを感じた敵はそうそういるものではありません。
(他にはゼノギアスのグラーフと、パラサイトイヴのボスに感じましたが、後者はホラー的な意味合いが強く、純粋に物語の力で恐怖を覚えたのはルカとグラーフだけですね)
ここまで鮮烈なインパクトを持つ敵をラスボスではなく中ボスに持ってきた設計。
にも関わらず、物語の速度は彼が退場した後もまるで衰えなかったことには感嘆を禁じえません。
本作の物語をより読み応えのあるものにしているのは、軍師たちの智謀戦。
前作(幻水1)のマッシュ・シルバーバーグの智謀も相当読みごたえがありましたが、本作のシュウの格好良さも特筆に値すると思います。
そして前作以上に盛り上がるのが、敵軍にもレオン・シルバーバーグという稀代の名軍師がおり、奇策同士が火花を散らす様は読んでいて全く飽きません。
「三国志演義」の諸葛孔明VS司馬懿のような、両頭脳の競い合いもまた「幻想水滸伝2」を大いに盛り上げてくれました。
このゲームで印象的なシーンの一つに、『逃亡ルート』があります。
悲しいことが続き、都市同盟のリーダーであることに押しつぶされそうな主人公を見かねて、義姉のナナミが「逃げよう」と提案するシーンです。
https://www.youtube.com/watch?v=PEPUXlHLkME (4:52~6:25 ナナミの提案。この動画、主人公の名前が「ゲンカクのむすこ」だったり、軍の名前が「なさけない軍」だったりして折角の名シーンが興ざめなんですが、他に動画が見つからないのでやむなく)
https://www.youtube.com/watch?v=HlfeWddgJTQ (0:00~3:20 シュウのビンタ 5:46~6:35 ビクトールの出迎え)
この決断のせいで、リドリー将軍は亡くなってしまいます。
けれど、全てを捨てて責任から逃げ出したくなってしまう気持ちは強くわかりますし、苦しむ主人公を誰よりも側で見守ってきたナナミの気持ちが、痛いほどに伝わってくる名シーンです。
主人公に手を上げるシュウ。そして、帰ってきた主人公を何の屈託もなげに出迎えるビクトールの優しさ。
前向きな選択肢を選び続ければ見ることのできないシーンですが、幻水2の物語に更なる深みを与えた名シーンだと思います。
シュウの名場面と言えば真エンディングのこれも印象深いです。
軍師としての活躍だけでなくドラマシーンにおいても印象に残る彼の姿は、
RPGとしての面白さだけでなく、ストーリーでも記憶に残る本作にそのまま重なります。
https://www.youtube.com/watch?v=DaE_89ChP34 (8:20~ シュウの出迎えとナナミの想い)
もう一つ、個人的に大好きなのがグリンヒルのイベントです。
グリンヒル市は名市長テレーズのもと、長らくハイランド皇国の侵攻に抵抗してきました。
ところが、近隣のミューズ市が陥落。ミューズの難民がグリンヒル市に流れ込んできます。
ハイランド皇国は難民狩りはせず、敢えて難民がグリンヒルへたどり着くに任せるのです。
テレーズはハイランドの目論みを知ってなお、難民を見殺しにはできないとグリンヒルに迎え入れます。
結果グリンヒルは食糧難に陥り、ミューズ難民とグリンヒル市民の対立も発生、とうとうグリンヒルはハイランドに破られてしまいます。
そのグリンヒル陥落の際、テレーズを守るために市民が立ち上がるイベントが僕はとても好きでした。
多分、「幻水2の名シーン!」的な括りではないと思うのですが、こうした1つ1つの街、1つ1つのサブイベントにも
感情を動かす力がある。
幻想水滸伝2は本当によくできた物語だったと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=qHKnvC0rhxs (グリンヒル陥落 0;37~2:20)
ちなみに、前作「幻想水滸伝1」も非常に素晴らしいRPGです。
絵柄が多少古いのと、ゲームバランスが相当簡単なことは欠点かもしれませんが、是非お薦めしたいです。
「2」を制作したスタッフによる、重厚なストーリーは「1」でもしっかり味わうことができます。
ストーリーは独立しているので2からプレイしても楽しめますが、共通キャラが多く、前作をプレイしているといろいろニヤリとできますので、もしできるようならば1からのプレイを推奨いたします。
なお、3以降はやらなくていいと思います。
3はクソゲー。4は途中で投げてしまったので解りませんが、途中まではクソゲーでした。
5は、RPGの水準レベルには達していると思いますが、1や2に比べると相当見劣りがします。
具体的にどこが違うかと聞かれると、1や2では「軍師たちの智謀戦」で敵を打ち破るのですが、
5は「敵のくだらない失策による自滅」が繰り返されているだけなのです。
5の物語を、1や2のスタッフが手がけたらきっとすごく面白いものになったと思うのですが……。