評価はA。

1958年、メイン州デリー。七人の少年少女の絆が怪物(IT)を打ち倒した。
1985年、再び現れたITを前に、大人になった彼らはデリーへと舞い戻る。今度こそ、ITを完全に滅ぼすために。


と書くと、怪物と闘うホラーなのかなと思いますし、そういう側面もあるにはあるんですが、
どちらかと言うと長尺版の『スタンド・バイ・ミー』な印象でした。


描かれているのは1958年の夏。

どもりのビル、デブのベン、親に虐待を受けているベヴァリー、喘息のエディ、ユダヤ人のスタン、黒人のマイク、おしゃべり(明言されていないけど、精神病なんじゃないかしら…)のリッチィ。
学生生活において、人気者にはなれそうにない彼ら(ベヴァリーはなれそうな気もするけど)は、ほとんど人の通らない荒れ地を遊び場として、”はみ出しクラブ”を結成する。


家では暴力的な親(ベヴァリー)や、必要以上に過保護な毒親(エディ。ベンも若干)、子供に無関心な親(ビル)に囲まれ、学校ではクラスの乱暴モノ、ヘンリー一味に追い掛け回される日々。
そんな状況の中、七人は友情を深めあう。

折しも、メイン州では”IT”が暗躍をしているまっただ中。七人は一致団結し、ITに立ち向かう。


1985年、大人になったマイクはITの復活を察知し、かつての仲間たちへと電話をかける。
27年が経過し、デリーから出てそれぞれの街で生活を築き上げていた彼ら。
もう、デリーの事も、お互いの事も記憶から抜けていた彼らだったが、マイクからの電話で記憶を取り戻す。
デリーで再会した彼らはすぐに昔の調子を取り戻す。
そして再びITとの対決。
スタン、そしてエディという犠牲は出たものの、何とか5人はITを倒し……そして、再び記憶は消えていく。
お互いのことを忘れていく5人。

ラスト、ビルは、猛スピードで(子供の頃にやったように)自転車を漕いでいく。
子どもには出来て、大人には出来ない事がある。
けれど大人にだって、勇気を出して子供の気持ちを持つ事ができれば、あの頃へと帰ることができる。


もう名前も忘れてしまった、少年時代の親友たち。
とても楽しく、輝いていた日々。
そんな彼らの事を、もう少しで思い出せそうな気がする。




こんな感じのあらすじです。


まぁ何というか、とにかく長い。長いだけでなく、結構読んでいてキツかったです。
というのも、糞ガキのヘンリーやベヴァリーのDV父のように、読んでいてムカムカするキャラクターが多く、
胸がスッとするシーンが少ないのが原因で、この辺のバランスはもう少し鞭を控えめに、飴が欲しかったところです。

しかしそんな展開も、ラストの見事な締めの前では「あれもいい思い出だった……」となってしまったりw
ただ、個人的にはベンとベヴァリーのその後はもう少し書いてほしかったかなぁ。
この二人だけは互いを忘れずにいてほしい……そう強く思いました。



自分は最近、学生時代の友人のほとんどと疎遠になってしまって、とても寂しいんですよね。
あんなに楽しい時間を過ごしたというのに……引っ越した事もあるし、環境が変わると切れてしまうものなんでしょうか。
そんな自分の境遇も含めて、色々と感じるものがありました。


やっぱりキング作品は良いですね。